一通りの食事が終わり、パーティーも終了時刻を迎える。
ハリー達と共に、グリフィンドールの談話室へと向かうが、どうやら入り口でトラブルが発生したようだ。
「なんでみんな中に入らないんだろう」
ロンが怪訝そうに言う。
「通してくれ、さあ。何をもたもたしている。みんながみんな合言葉を忘れたわけじゃないだろう? ちょっと通してくれ。僕は首席だ」
監督生であるパーシー・ウィーズリーが人混みをかき分けて肖像画の方へと近づいていく。
そして騒ぎを聞きつけたのかダンブルドア先生も肖像画の方へと近づいて行った。
私はハリーたちと共に肖像画が見える位置まで移動する。
「なんだこれは!」
ダンブルドアが声を荒らげ、女子生徒が悲鳴を上げる。
本来ならば、肖像画が安置されているのだが、その肖像画が滅多切りにされている。
「まずは婦人を見付けなければならないな…でなければ入れる者も入れんだろう。教職員は総出で婦人の捜索をするのじゃ」
私は人混みを掻き分け、肖像画の前へと移動すると、額縁に手を掛ける。
「これ、あまり絵に触る出ないぞ」
「ハッキング開始」
肖像画に掛けられているプロテクトにアクセスし、ハッキングを行う。
数秒後、肖像画は自動に開き、談話室への通行が再開される。
「なん…じゃと」
「解除完了です」
周囲の生徒の視線が集まる中、突如として甲高い声が響き渡る。
「見つかったらお慰み! 何と言っても絵から逃げ出した後、醜く走り回ってましたからな」
「どうしたのじゃ…ピーブズ…」
「こんなことをする奴は相当残忍な奴ですなぁ! えぇ、まったく、あの悪名高きシリウス・ブラックは」
ゴーストはその場に居る全員に声高らかに言い放った。
シリウス・ブラックがこの学園に侵入したと…
しかし、発信機の反応は依然として、柳の木の下の空間にある。
どうやら、杖を置いて侵入したようだ。
その夜は、シリウスの侵入を警戒して、各寮の担当教諭が、入り口で見張りをすることになった。
「ねぇ…ホグワーツは大丈夫かしら?」
自室のベッドで横になっていると、突如としてハーマイオニーが不安の声を漏らす。
「少なくとも、外部に居るよりは安全かと」
「そうよね…でも不安だわ…」
「ナノマシンの効力により、不安は軽減されている筈です。まだ不安を感じる様でしたら、精神安定剤をご用意いたしますが?」
「そこまでじゃ無いわ。そうね。早い所寝て、不安を吹き飛ばすわ」
そう言うと、ハーマイオニーは眠りに落ちていった。
次の日は、学校全体が、シリウスの噂で持ちきりだった。
どのように侵入したのか、何が目的なのか、やはり、ハリーを狙っているといった噂が独り歩きをしている。
昼頃、人気が少ないのを確認し、ホグワーツを抜け出すと、シリウスの元へと移動する。
部屋の扉を開けると、中央で黒い犬が欠伸をしている。
「どういうおつもりですか?」
シリウスを確認した瞬間、デルフィが口を開く。
それを確認してから、シリウスは人へと姿を変える。
「すまなかったな、だがどうしても、自分を抑えきれなかったんだ」
「不法侵入は避ける様にと忠告したはずですが」
「本当にすまないと思っているよ。まぁ今回は杖が無かったから結構入りにくかったし、ナイフを使うのもしょうがないじゃないか。まぁ学生時代のお礼返しみたいなもんさ」
シリウスはワザとらしく、杖を掲げる。
デルフィはシリウスに近寄ると、その腕を押さえつける。
「おい! なにをする!」
「大人しくしてください」
私はベクタートラップ内から小型の発信機が入った銃型の注射器を取り出すと、腕に突き刺す。
「何のつもりだ! くそっ!」
抵抗するシリウスを押さえつけ、静脈に針を押し付けトリガーを引き、発信機を注入する。
「イタッ!」
「発信機を埋め込みました。小型なので効力は半年程度でしょう」
「ったく…そこまでしなくたっていいじゃないか…」
シリウスは不満を漏らしながら注射後を擦っている。
「今後は勝手な行動は慎んでください」
「あぁ、わかったよ」
詰まらなそうに携帯食料の封を切った後、シリウスは不思議そうに見つめている。
「なぁ?」
「はい」
「缶詰はまだ分かるんだが、このブロックみたいなの。どうやって食べるんだ?」
「その状態で喫食が可能です」
「そうなのか。こんなブロックみたいなのが…」
疑いながら携帯食料を口に含んだ後、その表情を煌めかせる。
「美味いじゃないか! なんだこれは!」
「カロリー計算された携帯食料です」
「こんな美味い物が、イギリスにあったとは…最近は鼠ばっかり食べてたからな…」
シリウスはひたすら携帯食料を頬張っている。
そんな状況を背に、私達は自室へと戻って行った。
数日もすればシリウスによる不法侵入の噂など、無かったかのように平穏な日々が訪れる。
しかし、学校側、特にダンブルドアは依然として警戒を解いてはいない様だ。
次の授業は闇の魔術に対する防衛なので、私達は教室に移動し待機している。
授業開始時刻になるが、担当教諭であるルーピンは姿を現さない。
不審に思って居るのか、数名の生徒がざわつき始める。
そんな時、扉が開かれ不機嫌そうな表情のスネイプが入室してきた。
「先生、今は魔法薬学の時間じゃありません」
ハーマイオニーが言うと、スネイプは相変わらず不機嫌な表情で面倒くさそうに答える。
「そんな事は分かっておる、流石に吾輩も…教室を間違えるバカではない、だが君はそうは思わないようだな、ミス・グレンジャー?」
スネイプの嫌味に、流石のハーマイオニーも耐えられなかったのか、目を逸らした。
「ルーピン先生は体調が優れない様でな、故に今回は吾輩が仕方なく代理をする事になった。仕方なくな」
スネイプは少し自慢げに言うと、さっそく本を取り出した。
その時だった、教室の扉が勢い良く開かれると、ハリーが転がり込んできた。
「ルーピン先生! すいません…おくれ…」
ハリーは教室に居るのが、スネイプだという事を知り、驚愕した表情で、スネイプの顔を見ている。
「大層なご身分だなポッター、授業は既に始まっている。グリフィンドールから10点減点だ。早く座れ」
「ルーピン先生はどうされたんですか?」
「体調不良だそうだ、分かったらさっさと座れ」
「何があったんですか! 怪我とか…」
「心配はいらないと聞いている。それより早く座らぬか…グリフィンドール10点減点だ。これ以上、吾輩に減点させるつもりか?」
スネイプの言葉に、ハリーは少し項垂れながら、席に着いた。
ハリーのメンタルコンデションレベルが急速に低下する。
やはり、スネイプの事が嫌いなようだ。
「さて…それでは本日の授業を始める。今回やるのは人狼についてだ」
スネイプは少し笑みを浮かべながらページをめくると、ハーマイオニーが再び口を挟んだ。
「先生、人狼をやるのはまだ早すぎます。まだそこまで教わっていません」
「この授業は、貴様の授業ではないのだぞ、ミス・グレンジャー…それでは諸君、教科書を開け」
「ですが、先生」
「もう一度だけ言うぞ、貴様の授業ではない。さっさと教科書を開け」
その後は、人狼についての授業が進んでいった。
盛り上がりには欠けるが、比較的分かり易い授業内容だった。
『悔しいけど、分かりやすいわ。なんだか複雑な気分だけど』
『要点がまとめられており、重要項目の選定も評価に値します』
『はぁ…後は性格さえよければ良い先生なのに…スリザリン出身者ってみんなこうなのかしら?』
『それは、僕に対する嫌味かな?』
『別に、でも貴方が性格悪いのは理解しているつもりよ』
『手厳しいね』
授業が終わると、スネイプが人狼についてのレポートを課題として出し、多くの生徒が不満に満ちた声を上げた。
「スネイプの授業なんてもう受けたくないよ、早くルーピン先生に戻らないかな」
「そうね、私もルーピン先生には早く元気になってほしいわ」
「それにしてもどうして、人狼なんてやったんだろう、もっと他にもやることなんて沢山あるのに」
ロンは、呑気そうに呟くと、ハーマイオニーも頷く。
『確かになんで人狼についてなのかしら? その項目はまだ先なはずなのに』
『おや? もしかして、なぜ人狼をやっているか分かっていないのか?』
トムは意味深な事を口走る。
『え? 意味があるの?』
『まぁ、無意味に授業を繰り上げる事なんて普通は無いからね。それに今日は――』
『今日は?』
『本日は、満月です。それが理由でしょうか?』
『ご名答』
デルフィの回答に対し、トムは口調を弾ませる。
しかし、人狼とは不思議な生命体だ。病気の一種に分類されているという文献もある。月の満ち欠けにより、体組織が変化し、運動能力が向上し人狼となる。
それと同時に理性を失う。
一説では人狼の起源は狂犬病によるものと言う文献もある。
しかし、先程の授業内容を見る限りでは、狂犬病の一言で片付ける事は出来無さそうだ。
『満月…体調不良…まさか…』
『気が付いたようだね。きっとあのルーピンとか言う教師は人狼だろうね。今事、薬で抑えているとはいえ、かなり苦しんでいるだろうね』
『そんな…だって人狼は…』
『教員にはなれないだろうね。普通ならば。でもホグワーツの校長はダンブルドアだ。あの変わり者ならやりかねない』
『否定はできません』
『同意見です』
『うぅ…まぁ…そうよね。残念だわ…良い先生なのに…』
ハーマイオニーは残念そうな表情を浮かべながら、分かり易く肩を落としていた。
次回
ディメンターが…
作中の携帯食料はカ〇リーメ〇トです。