ディメンター襲撃の翌日、医務室で目を覚ましたハリーは目の前に積み上げられた箒の残骸を見て項垂れていた。
ディメンターの襲撃を受けた際、箒を手放してしまいそれにより、箒が柳の木に直撃し、大破したようだ。
ロンとクィディッチのメンバーが総出でかき集めた様だ。
「はぁああぁ…」
ベッドの上に置かれた箒の残骸を持ち上げては落とすを繰り返している。
メンタルコンデションレベルが低下し、状況はかなり深刻そうだ。
数日後にはクリスマス休暇が始まる。
ハリーは例年通りホグワーツで過ごすことになった。しかし今年は医務室のベッドの上から始まるようだ。
他の面々は自宅へと帰るようだ。
しかし、ハーマイオニーとロンはハリーを気に掛けてか残るようだ。
私達も例年通り自宅へと帰宅する。
クリスマス休暇中、時々来るハーマイオニーからの通信に答えながら、資金繰りにいそしんでいた。
去年の負債により、大幅な金策が必要となった。
その為、人工的な宝石や、金属加工品を魔法界へと持ち込むが、やはり足元を見られているのか、想定よりも低い金利での取引となった。
クリスマス休暇も終わり、ホグワーツへと戻ると、大広間にて依然として腕に包帯を巻いたマルフォイが接近する。
「やぁ、君達。久しぶりだね。良いクリスマスだったかい?」
「例年通りです」
「そうかい、そりゃよかった」
「失礼ですが、腕は既に完治しているのではないですか?」
「あ? これかい? 完治はしているけど傷跡がまだね。それに包帯している方がカッコいいだろ?」
「そうですね」
デルフィは適当に賛同する。
「まぁ、それに父上に事件の事について話をしたら、理事に訴えてくれたみたいでね。近い内にヒッポグリフは裁判に掛けられるだろう。処刑だろうね。まぁ君達は最初から殺処分した方が良いって言って居たけどね。だって、君達が助けてくれなかったら、今頃僕は死んでいたからね」
「その通りです。不用意に危険に足を踏み入れる様な事はお控えください」
「あぁ、分かっているさ。それじゃあ、僕は談話室へと行くよ」
マルフォイはそう言うと、取り巻きと合流し大広間を抜けていった。
クリスマスが終わったころから、ハリーとハーマイオニーの仲が険悪な関係になっている。
理由は恐らく、ハリーがクリスマスプレゼントに新しい箒を貰ったのだが、その送り主が不明で、その事を不審に思ったハーマイオニーがマクゴナガルに申告し、箒を取り上げられてしまったのが原因だ。
『スキャン結果は安全だったんだけどね』
『そんな事言われたって、差出人が書いてなかったんだもん。それに今はシリウス・ブラックがうろついているし…』
談話室では相変わらず、ハーマイオニーがトムと無線で通話している。
これと言って変わった所は無い様だ。
私達は談話室を抜け出し、シリウスの元を訪ねると部屋の中心部で、黒い犬が寒さに凍えていた。
「ご無事ですか?」
シリウスは黒い犬から人型へと変化する
「無事だけど、すごく寒い。毛皮なんて意味が無いな」
どうやら毛皮が有っても寒い物は寒い様だ。
「と言うか君達はそんな恰好で寒くないのか?」
シリウスは私達が防寒具を身に着けていない事を指摘する。
「ご心配には及びません」
宇宙と言う温度差の激しい空間での運用を想定されているので、この程度の寒さでは行動に支障は無い。
「カリストの寒さに比べればこの程度何の問題もありません」
「カリスト? 聞いた事無いな…」
「投棄された事を未だに根に持っているのですか?」
「そんな事は有りません」
デルフィが不思議そうに首をかしげる。
不本意ながら、不愉快だ。
「あー…まぁ…なんだ。それより、ハリーは箒を貰って喜んでいたか?」
どうやら、箒を送った人物はハーマイオニーの見立て通りシリウスで合っていた様だ。
「匿名だったので現在はマクゴナガルが保管しています」
「なんだと! どうして…やはり名前を書いておくべきだったか…」
「ご自分の立場を理解されていないのですか?」
「自分の立場…あっ…そういう事か…」
「これ以上問題を起さないでいただけますか?」
「あー…うん。分かった気を付けるよ」
シリウスは少し悲し気に呟き、犬へと戻っていった。
数日後、マクゴナガルの許可も降り、ハリーの元へと無事、箒が戻り、そのおかげか2人の仲も元に戻った。
「ハリー良かったな」
「あぁ! でもいい箒だよ!」
「そりゃそうだよ! 500ガリオンはくだらないぜ!」
「そいつは凄い!」
ハリーの持っている箒が珍しいのか、周囲に人だかりが出来ていた。
そんな中一人の人物がこちらに近付いて来る。
「君達、ちょっといいか?」
声を掛けてきたのはグリフィンドールのクィディッチキャプテンだった。
「なんでしょうか?」
「ご用件は?」
「ハリーからいろいろと聞いていてね、それにこの前のディメンターとの戦いを見てね。君達は箒が無くても飛べるんだよな?」
「可能です」
「それは凄い、そこで相談なんだが、クィディッチのメンバーに入る気はないか?」
突然の申し出に、周囲の生徒が騒めき立つ。
「まぁ、すぐにレギュラーって訳にはいかないけど、まずは選考試験を――」
「「お断りします」」
私達は声をそろえてメンバーへの参加を辞退する。
「え? どうして?」
「参加するメリットが有りません」
「だけど」
「ならこうしよう」
突如ハリーが箒を手にこちらに歩み寄る。
「僕とスピード勝負だ。もし負けたら選考試験を受けて欲しい」
「我々が勝利した場合はどうなりますか?」
「もう勧誘しないよ。入るも入らないも君達の自由だ」
周囲の生徒が固唾を飲んで見守る中、私達は首を縦に振った。
「了解です」
「OK! じゃあ競技場へ行こう!」
私達は、周囲の生徒に見送られ会場へと移動した。
会場に着くとハリーはさっそく箒に跨り試運転を行う。
速力はそこまでではないが、操作性が良いのか、複雑な軌道を描いている。
「ふぅ、やっぱりいい箒だこれは」
箒に跨ったままハリーは上空に停滞する。
「さぁ! 君達も!」
私達もバーニアを起動し、空中に停滞する。
「勝負は簡単。クィディッチ会場を10周するだけ! 君達の内どちらか一方が僕より先にゴール出来たら勝ちさ!」
「了解です」
箒に跨ったリーダーが笛を咥える。
次の瞬間、甲高い笛の音と共にハリーが急発進する。
数秒後、私達も加速を開始する。
同時には加速しても良いのだが、その場合加速時の衝撃波によってハリーのダメージが入る恐れがあった。
加速した私達は、ハリーの背後を視界に捉えると、こちらに気が付いたのか、更に加速する。
しかし、加速したハリーよりもさらに加速し1週目のゴールを通過すると同時に前面へと移動し、体を反転させ、後方に飛びながらハリーに視線を落とす。
「乗り心地は如何ですか?」
「すごく良いね。でもなんで君達が前に居るんだよ…」
「お気になさらず。ではお先に失礼します。」
並走する意味は無く、更に加速し、周囲に影響のない速度を維持し、数秒で残りの9週を終わらせる。
「終了しました」
「お疲れ様です」
2週目を終わらせたハリーに告げると、項垂れた様に着陸すると、控え室へと消えていった。
それから月日が流れ、学年末テストが始まった。
今回のテストは比較的容易で、皆拍子抜けしたようだ。
その中でも、魔法生物飼育学のテストに至っては、レタス食い虫を1時間観察するだけといった、無意味な物だった。
しかし、占い学のテストの内容は通常ならば水晶に映った物を答えるという内容なのだが、今回は違った。
担当教諭である、トレローニーが『月の石』の提出をテスト内容に組み込んだのだ。
サンプルとして提供した『月の石』はどこにでもある様な花崗岩だった。
提出期限前日、私達は地球を離れ、月面で石を採取すると、除染処理を行い、提出する。
要した時間は30秒程度だった。
そして、テストが終わった頃、談話室に入ると、ハーマイオニー達がどこか神妙な表情で話し合いをしている。
「あ…君達か」
「どうかされましたか?」
ハリーは手にしていた紙をこちらに手渡す。
そこには、ヒッポグリフの処刑執行に関する詳細が掛かれていた。
「どう思う?」
「妥当な判決かと」
「おい! そりゃないだろ!」
ソファーに腰を掛けていたロンが急に立ち上がる。
「処刑だぞ! いくら何でも酷すぎないか! 命を奪うなんて…」
「ですが、これは既に魔法省で可決された案件です」
「だから、可決されるのがおかしいんだよ! だって、マルフォイの奴が失礼な態度を取ったからいけないんだろ!」
「無礼な態度ならば、危害を加えてもいいという問題では有りません。この書類には人命を脅かす行為という事で魔法省が処理したと記されています。上告も拒否されています」
「理不尽だ!」
ロンは大声を上げながら、頭を抱えている。
「私も似たような判例が無いか探してみたけど…ダメだったわ…」
「ちゃんと探したの? もしかしらたら見落としているんじゃないの?」
「そんなことある訳ないでしょ。そこまで言うなら自分で探したらいいじゃない」
「僕にそんな事が出来ると思うか?」
「ロンには無理だね」
「ハリー、君がそれ言うか?」
ハリーは視線をずらす。
「とりあえず、ハグリッドの所へ行くよ。ここでじっとしている訳にもいかないよ」
「あぁ、そうだな。ハグリッドが心配だ…自殺してなきゃいいけど…」
「流石にそれは無いと思うけど…心配だわ」
ハリー達は意を決したようで、ハグリッドの元へと向かっていった。
その後、ヒッポグリフの処刑は行われた。
今回は、ヒッポグリフの処刑が行われました。
いくら2人でも、流石に魔法省で決定された事を、無理やり捻じ曲げる事はしません。(できないとは言っていない)