ピーター・ペティグリューをディメンターに引き渡す事が決定した後、気を失ったスネイプを起さないように気を使いながら全員が叫びの館から退却する。
「うわぁ…本当に暴れ柳が…」
「あぁ、誰の仕業か知らないが、ここに来た時には暴れ柳が消し飛んでいたんだ、とてつもない爆破音もしたし、きっとそれが原因だろう」
突如、ルーピンを除く全員の視線がこちらに集まる。
「え? まさか君達が…」
「障害を排除したまでです」
「そ、そうか…うん」
皆、納得していないようだが、首を縦に振った。
その時、ピーターが周囲を見回す。
「変な気を起すなよ、ピーター」
「や、やだなぁ。そんなことする訳ないじゃないか」
ルーピンはピーターに杖を突き付けながら、城への道を歩いている。
そんな中、何か思いつめたような表情で、シリウスが口を開いた。
「なぁ、ハリー」
「なに?」
「その…もし私の潔白が証明されたら…私と一緒に暮らさないか…」
「え?」
突然のシリウスの申し出にハリーは驚いた表情をしている。
「誰かに聞いて居るかもしれないが…私は君の名付け親でもあるんだ…それはつまり…君の両親が私を君の後見人に決めたのだ。もし自分たちの身に何かあればと…」
シリウスは声に抑揚を付けながら、どことなく、不安と期待の入り混じった声でハリーに話掛ける。
「もし君が、叔父や叔母との生活に満足しているというなら、無理強いはしない…でも…その考えてくれないか…私が汚名挽回する事が出来たら…もし君が家族を欲するなら…」
「それは…僕が、貴方と一緒に暮らせるという…」
「そうだ…だが君が望まないなら…その…」
シリウスは何処と無く悲し気な表情をしている。
「僕は、あの家からは一刻も早く出たい! 出来る事なら貴方と暮らしたい!」
「良いのか…ハリー…」
「うん!」
シリウスは満面の笑みを浮かべ、ハリーもそれに応える様に、微笑み返している。
「ふぅ…これで一件落着だな」
ルーピンは祝福したような表情で、二人を見守っている。
「良かったわ」
ハーマイオニーも安堵の表情を浮かべる。
『いや、まだ安心するのは早いね』
『え? どういう事よ?』
『だって今日は――』
トムの発言にハーマイオニーは疑問を持つ。
私達は、ブレードとウアスロッドを展開する。
「おいおい、二人ともなんでそんな物騒な物を」
「ううぅうぅぅうううぅ!」
満月の月明りに照らされたルーピンが突如として呻き声を上げる。
「そんな…まさか先生!」
「離れるんだ!」
シリウスが緊迫した声を上げ、ハリーを突き飛ばした。
「うぅうう…うううぅう!」
「リーマス! 落ち着くんだ! 良いから私を見ろ! 自分を失うな!」
シリウスは変貌を続けているルーピンに駆け寄ると、肩を掴み、大声を上げる。
「がぁあ!」
「うっ!」
掴みかかるシリウスを払い除ける様に人狼が爪を振るい、吹き飛ばした。
吹き飛ばされたシリウスの腹は、爪で引き裂かれ、片手で腹を押さえながら、口から血を流している。
「にげ…るんだ…」
シリウスは力なく声を上げる。
その時だった…
「待て!」
先程まで、縄で縛られていたピーターが、ルーピンの落とした杖を拾い上げ、自らに呪文を掛けた。
すると、みるみる体が小さくなっていき、最終的にはみすぼらしい鼠に変貌した。
「逃すか!」
ハリーは、薄汚い鼠に飛び掛かるが、人間が鼠を簡単に捕まえられる筈も無く、ハリーの手を逃れ、走り出した。
「くそっ!」
ハリーは悔しそうに悪態を付く。
鼠は森の入り口へと到達した。
「Fマインリリース」
「投擲します」
私が取り出したフローティングマインをデルフィが手に取ると鼠が居た地点へと投擲する。
着弾と同時に広範囲の爆発が起き、爆風に乗って鼠が足元に吹き飛んでくる。
「おい! なにやってるんだよ!」
爆破を見たハリーが声を荒らげる。
「確保します。生存確認」
鼠の尻尾を摘まんだデルフィが報告する。
全身火傷と複雑骨折を数か所確認するが、辛うじて生きている様だ。
鼠の様な小型生物だった為、爆発に際し発生した破片に当たらずに済んだようだ。
その上、爆破範囲を強化し、低威力に調節したので、生存しているのだろう。
「お任せします」
瀕死の鼠をロンへと預けると、まるで汚物の様に摘まみながらポケットへと収納した。
「ぐがぁあああああ!!」
再びルーピンが雄叫びを上げると負傷したシリウスと、寄り添うハリーに迫る。
「やめて!」
「自分を失うな! 頼む…リーマス…」
人狼へと変化したルーピンが牙を剥きだし、爪を振り上げる。
「ハルバード照射」
私はルーピンとハリー達の間にハルバード照射し、直線的に地面を焼き払う。
それに伴い、炎のカーテンが出来上がる。
「それ以上の接近は敵対行動とみなします」
「最終警告です」
「ぐうぅうぅぅうぅぅぅうう!!」
邪魔されたルーピンは、歯を食いしばり、涎をたらしながらこちらを睨む。
「拘束を開始します」
「殺さないでくれ! その人狼はルーピン先生なんだ!」
ウアスロッドとブレードを構えると、炎のカーテンの向こうからハリーが声を上げる。
「私からも頼む…今は自分を失って居るだけだが…リーマスを…頼む」
「善処します」
ハリー達はふら付きながら、森へと消えていった。
「がぁぁああああああ!!」
咆哮を上げたルーピンがこちらに突進する。
「防衛行動開始」
突進を開始するルーピンのを左右に飛び退き回避する。
「拘束」
回避と同時に人狼の頭部を掴む。
「大人しくしてください」
抵抗する人狼の頭部を地面へと叩きつける。
「がぁあああああ!!」
しかし、依然として戦闘の意思があるようで、尚も暴れている。
「バーニア起動」
バーニアを起動し、人狼の頭部を地面に擦り付ける様に高速で移動する。
「がぁ!!」
十数メートル程移動した後、人狼の動きが停止する。
「ベクタートラップ展開」
デルフィがルーピンの背後の空間をベクタートラップで圧縮する。
それにより、圧縮空間にルーピンの体が地面に縛り付けられ、身動きが取れない状態になる。
「ゲイザー投擲」
対人使用時よりも出力を上げたゲイザーを投擲すると、ルーピンの胴体に着弾する。
「ガガガガッ!!!」
その場で痙攣し、気を失ったようだ。
「拘束完了」
ゲイザーにより無力化に成功した。
「見事な手前だ」
背後から腹部を押さえながら杖を構えたスネイプが歩み寄る。
「人狼は無力化したのか?」
「問題ありません。負傷しているようですが、応急処置を行いますか?」
「結構だ。マグル式のは好かない」
「そうですか」
「あぁ、この人狼は後どれ位眠ったままだ?」
「推定ですが、覚醒措置を施さない限り半日は目を覚まさないかと」
「そうか。ところであの男はどこへ行った?」
「シリウス・ブラックはハリーと共に森の中へと撤退しました」
「そうか」
『すまないが、手を貸してくれないか?』
トムから通信が入る。
『如何いたしました?』
『逃げた先でディメンターの群れに襲われてね』
『了解です。被害状況は?』
『全員気を失っている。そうだなぁ…このまま行けばかなり危ないかもね。持っても後5分かな?』
『了解。急行します』
「救援を要請してもよろしいですか?」
「なんだいきなり」
「ハリー達がディメンターに襲われているとの情報です」
「お手伝いいただけますか?」
「何処の情報かは知らぬが、奴の手助けをするのは不本意だ。だが仕方あるまい。吾輩は教師だからな…案内しろ」
「了解」
私達は、救援要請があった地点へと走り出す。
救援要請地点の巨大な湖の畔でハリー達が倒れ込んでおり、ハーマイオニーの手元でタブレット端末が光を放ち、防御シールドを展開している。周囲には防御シールドによって行動が阻止されているのか、ディメンターが浮遊している。
「エクスペクト・パトローナム」
その時、スネイプの低い声が周囲に響く。
すると、青白い牝鹿が躍る様に、防御シールドの周辺に漂うディメンターを弾き飛ばした。
『遅かったじゃないか。少しエネルギーを消費したよ』
『アンチプロトンリアクターは正常に稼働しています。数秒後には回復するでしょう』
『なるほど、じゃあ、後はよろしく』
すると、防御シールドが消失しトムはスリープモードへと移行した。
「先程の不思議な光は――まぁ良い。貴様等はディメンターを頼む。吾輩がこやつ等を安全なところまで運ぶ。生徒に任せるのは癪だが、競技場での戦闘を見せられては仕方あるまい」
「了解です」
「頼んだぞ」
私達はその場から飛び立つと、ゼロシフトを利用しディメンターの群れへと飛び込む。
「排除開始」
私はブレードを、デルフィはウアスロッドを構え、近接攻撃でディメンターの数を減らす。
近接戦では不利だと感じ取ったのか、ディメンターが周囲に散らばる。
「ホーミングミサイル展開」
「ウィスプ展開」
「ウィスプ3基展開。操作権限を譲渡します」
「感謝します」
競技場での戦闘時、ディメンター対しては、ホーミングミサイルが有効であることが証明されている。
前回のデータ通りに、ホーミングミサイルを展開する。
デルフィも前回の戦闘で有効だったウィスプを展開している。
「「攻撃開始」」
私が腕を振り下ろすと、ホーミングミサイルが周囲のディメンターをロックし飛翔する。
「がっ!」
全てのホーミングミサイルがディメンターに直撃し、その数を減らして行く。
デルフィの方は、展開したウィスプによる近接攻撃により、ディメンターを貫く。
「射撃開始」
私が譲渡した3基のウィスプが高速で飛翔すると、それぞれが、ディメンターに対して有効的な射撃ポイントへと移動し、エネルギー弾によって消滅させて行く。
「敵脅威レベル15%低下」
「了解」
「「ゼロシフト レディ」」
ゼロシフトによる亜光速の瞬間移動を利用し、ディメンターの側へと瞬時に移動すると、そのまま切り裂く。
「ウアスロッド投擲」
デルフィがウアスロッドを投擲すると、回転しながら、弧を描き、ディメンターを切り裂き、デルフィの手元へと戻る。
「敵脅威レベル更に低下」
脅威レベルが40%程低下した時点で、レーダー上のハーマイオニー達の反応が安全圏まで撤退した事を検知する。
「周辺に生命反応は有りません」
「了解。バーストモードへ移行します」
デルフィはバーストモードへ移行後、バーストショット『戌笛』を発射する。
『戌笛』
弾速が異なる二種類の追尾性能を持ったエネルギーショット。ちなみに回避するのが難しく、苦戦を強いられた。
戌笛はディメンターの群れに直撃後、大規模な爆発を起こし、その衝撃波によって、周囲のディメンターを一掃する。
しかし、爆発の余波により、周囲の森が半分程消失した。
「周辺の敵性反応消失。戦闘終了です」
戦闘終了後、目が覚めたのか、スネイプに連れられハリー達が現れた。
「さっきの爆発って…」
「敵部隊との戦闘によるものです」
「先程の戦闘による周辺状況への被害を報告します。建造物損壊無し。死傷者無し。しかし、周辺環境への被害は甚大です」
「コラテラルダメージです」
「何という事だ…とにかく、城へ戻るぞ」
スネイプはシリウスに近寄ると、杖を振り、後ろ手に拘束する。
「さて、喜ぶが良い。貴様を懐かしの母校へ連れて行ってやる。本日は魔法省大臣が城に来ている。丁度良い事にな」
スネイプは見下すように、シリウスは睨み付ける様に互いに睨みあっている。
「待ってくれスニベルス。私は…私は犯人では!」
「その名で呼ぶなと言っただろ!」
スネイプはシリウスの傷口に杖を突き刺し、抉る。
「グッ!」
「フンッ! 詳しい話は城で聞くとしよう」
シリウスを一瞥した後、踵を返し城へと歩き始めた。
ピーター・ペティグリューは生きています。辛うじて。
ゴブレット編がなかなか書きあがらない…
文字数的には既にアズカバンを超えているんですが、結構書きたいことが多くて…
公開には少し時間がかかりそうです。