ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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リカバリング

   数日後、書類に記載されていた学用品の買い出しの日がやって来た。

 

 指定時刻の10分前になり、私達は互いに身だしなみチェックし、不備が無い確認した。

 

「問題ありませんね」

 

「その様です」

 

 私はベクタートラップ内に収納されたリストを確認する。

 

 ある程度の金銭と不測の事態に備えて加工済みの人工ダイヤモンドも少し収納してある。

 

 確認が終了すると同時に周辺に空間湾曲を検知した。

 

 時刻を確認すると、予定より8分早い。

 

 生体反応は先日認識したマクゴナガルの反応と同一だった。

 

 マクゴナガルの生体反応は家の扉の前に到達した時点で止まった。

 

 私が行動を起すより早く、デルフィが扉を開ける。

 

「おはようございます。指定の時刻より早いですね」

 

「その割には準備は整っているようですね」

 

「問題ありません」

 

 私はそう言いながら、デルフィと一緒に家の外へと出る。

 

「では行きましょう。私の手に掴まってください」

 

 マクゴナガルはそう言うと、右手を差し出した。

 

「了解です。目的地はどちらで?」

 

「ダイアゴン横丁です」

 

「初耳です」

 

 私はマクゴナガルの右手を取り、デルフィは私の左手に掴まった。

 

「魔法界ですから初耳なのも無理は有りません」

 

「了解。移動方法はどのように?」

 

「『姿現し』と呼ばれる術を使います。初めての方は酔うかも知れませんので注意してくださいね」

 

「問題ありません」

 

 デルフィはそう答えると、私の手を力強く握る。

 

「えぇ、では行きますよ」

 

 マクゴナガルの周囲にメタトロンと同質のエネルギー、魔力によるエネルギーフィールドが発生し、空間が湾曲を開始する。

 

 次の瞬間、破裂音が響き渡り、私達の体は何かに吸い寄せられう様に、湾曲の中心へと移動した。

 

 

  まるで圧縮空間内を移動している様な感覚を数秒ほど味わった後、私達の体は、地面に着地した。

 

「ぐぅッ…」

 

「がッ…」

 

 着地すると同時に、私の目の前の光景にノイズが入り、警告メッセージが流れ、私とデルフィは膝を付いた。

 

「どうやら酔ったようですね…大丈夫ですか?」

 

 ノイズまみれのマクゴナガルの声を聞きながら、現状を改善する為にシステムをスキャンする。

 

 外部から不正なアクセスを検知。システムを強制的にシャットダウンさせようとしている。

 

 私は急ぎ、リカバリングシステムを起動し、外部からのアクセスをブロックする。

 

「大丈夫ですか?」

 

 5秒ほど経っても立ち上がらないので、マクゴナガルは心配したように私達の顔を覗き込む。

 

「リカバリング終了です」

 

 リカバリングが終了し、対策プログラムをインストール後、システムを着床させた私はその場で立ち上がり、デルフィの方を見る。

 

 デルフィは未だに膝を付いたままだ。

 

 私は、耳元に手を当て、デルフィに通信を繋ぐ。

 

『デルフィ、状況を報告してください』

 

『現在何者かによるハッキングを検知し、ブロックしたところですが、リカバリングシステムの構築に苦戦しています』

 

『了解、こちらで複製したリカバリングシステムを譲渡します』

 

『了解、トランスプランテーションの準備はできています。送ってください』

 

 私は、右手をデルフィの方へと向けると、粒子化したプログラムが光となって手の平からあふれ出す。

 

 溢れたした光は、デルフィの体に触れると吸収されていく。

 

「転送完了」

 

「システム修復。リカバリングを終了します」

 

 リカバリングが終了したデルフィはゆっくりとその場で立ち上がった。 

 

「システム譲歩、感謝します」

 

「礼には及びませんよ」

 

 私達が立ち上がったのを確認したマクゴナガルは目を白黒させている。

 

「あの…その…大丈夫ですか?」

 

「えぇ、ご迷惑をおかけしました」

 

「大丈夫ですよ…ところで今のは…」

 

 言葉を詰まらせながらマクゴナガルはこちらを見ている。

 

「お気になさらずに。さぁ、行きましょうか」

 

「えっ…えぇ、そうですね」

 

 何処か納得していない表情のマクゴナガルだったが、時間が押しているのか、町の中へと移動を開始した。

 

 

  町の中はとても活気に満ちていた。

 火星の街並みとは大違いだ。

 

 情報資料にある、19世紀の建造物や、雰囲気がそのまま映し出されたような感じだ。

 

 若干だが、資料と異なる点があり、資料にはない『魔法界』独特の文化による専門店の様な物が多く見受けられる。

 

「ここが『ダイアゴン横丁』ですよ。そこで貴女方に必要な学用品などを買います、これがその詳細なリストです」

 

 資料を受け取った私達は、軽く目を通す。

 

 前日貰った資料にあったような杖や、教科書等の学用品から、制服などの衣服等が事細かに記載されている。

 

 中には、前日の資料には載って居なかったペットのリストまである。

 

「ペットは任意なので強制はしませんが、居た方が良いでしょう。ところで資金は持ってきていますか? 持ち合わせがないようでしたらこちらで立て替えますが?」

 

 マクゴナガルはポケットから1枚の金貨を取り出すと、私達に見せて来る。

 

 どうやら、貨幣が違うようだ。

 

 私は宙に手を伸ばすと、ベクタートラップを小規模展開し圧縮空間に手を突っ込み小さな蒼い小箱を取り出す。

 

 ちなみにこの小箱は、先日買い物途中で見つけた物だ。

 

 デザインが気に入り購入した。

 

 マクゴナガルは私が手を突っ込んだ空間をしきりに見渡し、自身も宙に手を伸ばしている。

 

 しかし何も起こらない様で、首をかしげている。

 

「今のは一体…何をしたのですか?」

 

「お気になさらず。ちょっとした手品だと思ってください」

 

 デルフィが出まかせを言いながら、取り出した小箱を指差した。

 

「その貨幣は持ち合わせていないのですが、こちらで代用はできるでしょうか?」

 

 私は箱の蓋を開け、ダイヤが詰まった中をマクゴナガルに見せる。

 

「こ…これは…ダイヤモンドですか?」

 

「そうです、確認なさいますか?」

 

 マクゴナガルはダイヤモンドを1粒手に取ると、光にかざしている。

 

「よろしければ1粒いかがですか?」

 

「えっ? でも……」

 

 困惑気味のマクゴナガルに対して、デルフィが口を開く。

 

「御構い無く。代わりと言ってはあれですが、換金所の様な所は有りませんか?」

 

「そうですね…」

 

 マクゴナガルは若干考えながら、ポケットにダイヤモンドを仕舞い込んだ。

 

「そう言う事なら、グリンゴッツ銀行が良いですね。ついでに金庫を作る事をお勧めします」

 

「なるほど…では案内を頼みます」

 

「えぇ、こちらですよ」

 

『渡しても良かったのですか?』

 

 私は、耳に手をやり、デルフィに回線をつなぐ。

 

『問題ありません。今後の関係性を円滑なものにする為にも必要だと思われます』

 

『そう言う事でしたら』

 

 私は、マクゴナガルの後ろを歩くデルフィの後を追う様に、その場から歩き出した。

 

 

 先程の場所より5分程歩いたところでマクゴナガルは歩みを止めた。

 

「こちらが、グリンゴッツです」

 

 そこには、小さいながらも人の出入りが多い建造物があった。

 

「さぁ、行きますよ」

 

 マクゴナガルに連れられ、私達は建造物の中へと入って行った。

 

「これは…」

 

「人では有りませんね」

 

 グリンゴッツの内部には、大勢の人が居たが、作業を行っているのは、平均的な人間よりも小柄で、眼付も鋭い存在だった。

 

「あれは小鬼です。見るのは初めてですね。こちらから危害を加えなければ、問題ありませんよ」

 

「こちらの世界には、あのように人とは違う存在が他にもいるのですか?」

 

 人では無い私達が聞くのもおかしな話だが、マクゴナガルは周囲を見回しながら答えた。

 

「えぇ、吸血鬼や巨人族、人狼などが居ますよ。それらについては後に授業で学ぶことでしょう」

 

 そんな事を話しているうちに、私達の順番が回ってきたようで、担当の小鬼がこちらを呼んでいる。

 

「本日はどのようなご用件で?」

 

「換金とこの子達の金庫の開設です」

 

「なるほど…」

 

 小鬼は若干不自然そうにこちらを覗き込んで来る。

 

「まぁ…良いでしょう…換金と仰いましたが、何を換金いたしますか?」

 

 私は、先程の小箱を小鬼の居るテーブルの上に置く。

 

「これです」

 

 マクゴナガルはポケットに突っ込んだ手を取り出すと、小箱の蓋を開けると同時に、ダイヤモンドを中に戻すと、こちらを一瞥した。

 

 どうやら、迷った末に、賄賂かなにかと判断したのだろう。

 

「ほぉ…ダイヤモンドですか…こちら全て換金でよろしいですか?」

 

 私とデルフィは一瞬だけ目線を合わせた後、同時に頷いた。

 

「かしこまりました。鑑定いたしますので、少々お待ちください」

 

 小鬼はそう言うと、小箱を手に持ち、奥へと消えていった。

 

 数十分後、鑑定が終わったのか、小鬼は片手に資料を持ち、こちらに現れた。

 

 資料には想像より多めの金額が記載されていた。

 

「すべて本物です。換金いたしますとかなりの額になりますが、持ち帰りますか?」

 

「いえ、必要最低限だけ現金で受け取ります。残りは口座に預けてください」

 

 一瞬だけ、苦笑いをした小鬼は、ゆっくりと頷いた。

 

「かしこまりました。では、『金庫』に入れさせていただきます」

 

 小鬼はお辞儀をすると、金貨数十枚をテーブルに置き、その場を去ろうとした。

 

「一つよろしいですか?」

 

 そんな小鬼を、マクゴナガルが引き留める。

 

「何でしょう?」

 

「いくら程になったのですか?」

 

「個人の事なのであまり言えませんが、最新鋭の箒が30本は裕に買えるかと…」

 

「…………わかりました」

 

 複雑な表情のマクゴナガルを尻目に、小鬼は嬉しそうな表情を隠しつつ奥へと消えていった。

 

「さて…買い物を続けましょう」

 

「え…えぇ」

 

 私は、15枚の金貨をデルフィに渡すと、マクゴナガルと一緒にグリンゴッツを後にした。

 




リカバリングにより、魔法界でも機械が使える様になりました。
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