代表選手の選考が終了し数日が経過したが、学校内は依然として代表選手の話題で持ちきりだった。
3校の正式な代表選手に対しては皆称賛の声を掛け、ハリーに対してはインチキと陰口を言われている。
私達はチームというイレギュラーな為、畏怖を向けられている。
「やぁ、君達。代表選手に選ばれた様だね」
大広間にて、いつもの取り巻きを引き連れたマルフォイが声を掛けて来る。
マルフォイを始めとしたスリザリン生は皆一様に胸に『汚いぞポッター』と書かれたピンバッジを付けている。
「父上から聞いたが、君達は自分達が選ばれる様にゴブレットを操作したんだって?」
「その通りです」
「ゴブレットはそう簡単には操作できないって聞いたけど、良くやるよホントに」
マルフォイの取り巻きも首を縦に振る。
「僕としては君達が勝った方が面白いと思うよ。応援してるよ」
「感謝します」
「本当ならスリザリンから代表選手が出てもおかしくないが…まぁあのメンバーなら君達が勝つだろうさ」
マルフォイとその取り巻きは軽く手を振り、大広間を後にした。
入れ替わる様にセドリックが姿を現す。
「やぁ、これから代表選手は写真撮影があるんだ。集合だってさ」
「了解です」
「あれは、ドラコ・マルフォイだろ? 何を話していたんだ?」
「他愛もない話です」
「そうかい」
大広間を抜け、撮影会場へと移動する。
撮影会場は狭い作りの部屋で机等が部屋の隅に追いやられていた。
部屋の中には代表選手全員が揃っており、バグマンと赤紫色のローブを着込んだ女性と話し込んでいる。
「おぉ! 来たな! これで全員! 6人だったか? まぁいい。全員が揃った訳だ! なぁに、記念撮影ついでに杖調べをするだけだ! 気を楽にしてくれ!」
「杖調べ? なんですかそれは?」
ハリーが疑問を口にすると、他の代表選手も一応に頷く。
「君達、代表選手の杖が万全な状態なのか調べる必要があるからな。その道のプロが今、ダンブルドアと話し込んでいる。そうだ、こちらに居るのがリータ・スキーターさんだ」
赤紫色のローブの女性が一礼し、こちらに顔を向ける。
「ご紹介に預かった、リータ・スキーターざんす。よろしくざんす。さっそくざんすが、そちらのお嬢さん達のお話を聞かせて欲しいざんすなぁ」
スキーターは私達に好奇心に満ちた視線を送ってくる。
「構いません」
「感謝感謝ざんすわー。では早速ざんすが、こちらの部屋へ」
スターキーに促され、私達は別室へと通される。
「ではこちらに座るざんすよ」
用意されていた2脚の椅子に私達は腰かける。
スターキーも机を挟んだ対面に座ると、ワニ革の鞄から羊皮紙と羽ペンを取り出す。
「さてっと、自動速記羽ペンQQQを使っていいざんしょ? こっちのほうが楽できるんざんす」
「ご自由に」
「では使わせてもらうざんすよ。さて、では最初になぜ2人は三大魔法学校対抗試合に参加しようと?」
「優勝賞金が目的です」
「優勝賞金? なんでまた?」
「ホグワーツに多少ながら請求がありまして、その担保に当てます」
「なるほど、一体何の請求ざんす ?」
「それは三大魔法学校対抗試合に関係ないと思われますが」
「手厳しいざんすな。まぁ良いでしょう。イレギュラー選手は金銭的に黒いうわさがあるのかっと…では一体どのように代表選手に? それにチームでの参戦なんざんしょ?」
「我々がチームとして選ばれる様ゴブレットを操作しました」
「不確定要素は極力排除します」
「なるほど、ゴブレットを操作っと。これはまた規格外の選手が…」
その時、部屋がノックされ、ダンブルドアが姿を現した。
「おやおや、これはダンブルドア校長では有りませんか?」
「取材中だったかの?」
「真っ最中ざんす」
「そうか、生憎じゃが、そろそろ杖調べの時間じゃ」
「残念ざんすね」
スターキーは立ち上がると、羽ペン等を仕舞い始める。
「また機会があれば取材させてもらうざんすね」
「了解です」
スターキーが退室後、私達も会場へと戻る。
会場では、他の代表選手が椅子に座り、杖を手にしている。
私達も開いている椅子に腰かける。
正面には5人の審査員が座っている。
「それでは、オリバンダーさんを紹介しようかの。試合に当たって、皆の杖を見てくださる」
紹介を受けた後、オリバンダーが会釈しながら入室してくる。
「御紹介に預かりましたオリバンダーです。それではさっそくですが、マドモアゼル・デラクール。貴女からよろしいですか?」
「どーぞどーぞー」
デラクールは、オリバンダーにやさしく杖を渡した。
杖を受け取ったオリバンダーは、手の上でペンを回すように杖を遊ばせながら、まじまじと杖を見ている。
細部にまで彫刻が施されており、ピンクと金色の火花が散りばめられている。
「見事な杖です。とてもお美しい。24㎝、素材は紫檀。芯には…おやこれは…」
「祖母の髪でーす」
「素晴らしい杖ですな」
オリバンダーは世辞を述べ立た後、デラクールへと杖を返した。
「さて、それでは次にミスター・クラム。よろしいですな?」
クラムはデラクールとは対照的に、堅苦しく、まるで軍隊で扱うように少し荒々しく、杖を差し出した。
杖を受け取ったオリバンダーは、先程と同じように杖を回し何かを確認している。
握り易い様に若干のエッジが施されており無駄な装飾等は一切なく、実用性と耐久性を重視している様だ。
「26㎝、材質はクマシデか。芯はドラゴンの心臓…の琴線か」
「そのとおヴぃです」
「よく手入れが行き届いた、素晴らしい杖ですね」
オリバンダーから杖を受け取たクラムは軽く一礼し、杖をローブの内側に仕舞い込んだ。
「では次は、ミスターセドリック。よろしいですか?」
「はい」
セドリックから杖を受け取ったオリバンダーは興味深そうに眺める。
持ち手部分に模様が彫られているが、それ以外はシンプルな作りになっている。
「少し大きめで30㎝。材質はトネリコ。芯はユニコーンの尾尻の毛ですな」
「お見事」
「私が作った物ですからね。よく覚えていますよ。忠誠心もしっかりしてる。とてもいい杖だ。毎日手入れしますか?」
「昨日磨きました」
「それは結構」
杖を返却されたセドリックは大切そうに仕舞い込む。
「さて、お次です。ミスターポッター」
「はい…」
若干緊張しているのか、ハリーが少し震えながら杖を手渡す。
杖を受け取ったオリバンダーは一瞬だが表情を歪めた。しかしその後は通常通りに杖を見始める。
「長さは28㎝、材質は柊。芯には不死鳥の尾羽…状態は良好だ。手入れはしているかい?」
「昨日は磨きました」
「昨日はねぇ…」
それだけ言い終えると、オリバンダーはハリーに杖を返却した。
「さて…お次は…」
ダンブルドアを始めとした全員の視線がこちらに集まる。
「では、ミスエイダから。よろしいかな?」
「了解」
私はベクタートラップから杖を取り出す。
その光景にハリー以外の全員が息を呑んだ。
「あっ…そうか。僕は見慣れてたけど」
杖を受け取った瞬間、オリバンダーはその感触に違和感を覚えた様に、顔を歪める。
「まるで人の肌の様な柔らかさ…しかし硬度もある…大きさは32㎝…材質は…なんだこれは…芯は…あぁ! わからない!」
オリバンダーは頭を抱える。
「はぁ…最早何も分からないが…とてつもない力を秘めている…それだけは分かる…」
消耗しきったオリバンダーは私に杖を返却する。
「あ…次は…」
オリバンダーは顔を上げデルフィに視線を向ける。
デルフィはベクタートラップからウアスロッドを取り出すと、1度回転させた後、可変機構を用いてコンパクトにまとめる。
「変形するとは…またこれは…それでは…失礼して…」
オリバンダーは杖を受け取った後、ゆっくりと観察を始める。
「長さは35㎝…いつもはどれくらいで?」
「展開」
瞬時にウアスロッドが通常の長さに戻る。
「長さは…180㎝か…これほどの大きさとは…しかし、羽の様に軽い…それでいて鋼の…いや、それ以上に硬く、人肌のような柔らかさ…材質と芯は…やはりわからん」
デルフィに返却後、オリバンダーは頭を抱えて座り込んだ。
「おっ…オリバンダー…大丈夫かの?」
ダンブルドアが近寄ると、オリバンダーは顔を上げる。
「大丈夫です…ただ…少し自信を無くしました…」
肩を落としながら立ち上がったオリバンダーはふら付きながら、その場を後にした。
「……さ…さぁ、杖調べは終わりじゃ…皆今日はもう良いぞ」
「あ、それなら取材がまだの人はこっちへ来て欲しいざんす」
スターキーが甲高い声を上げ、代表選手を手招きする。
行く当てもないのか、代表選手達は取材を受けるべく、別室へと移動した。
そんな中、ダンブルドアは警戒心を込めた視線でこちらを睨みつけていた。
数日後、日刊予言者新聞にスキーターが書いた記事が掲載されていた。
内容は、各校の代表選手についてだが、あまり良い内容ではない。
どちらかというと、ゴシップ記事に近い内容だった。
「なんだよこれ!」
ハリーは記事の内容が気に食わないのか、声を荒らげていた。
「ゴシップね…まったく信用ならないわ」
「こんな事ならインタビューなんて受けなきゃよかった…」
ハリーは日刊予言者新聞を丸めるとゴミ箱へと投げ込んだ。
第1課題が行われる前日。
ハリーを始めとした他の代表選手達は何処か落ち着かない様子で過ごしている。
「明日は課題当日だけど、大丈夫?」
自室にてハーマイオニーが声を掛けて来る。
「問題ありません」
「内容は分かってるの?」
「不明です」
「不安じゃないの?」
「常に最善の行動をするまでです」
「まったく、流石としか言えないね」
トムの声がスピーカー越しに響く。
「そう言えば、ハリーとロンがドラゴンについて話していたような気がするわ」
「ドラゴンねぇ…もしかしたら課題の内容はドラゴンが出て来るんじゃないか?」
「ドラゴンですか?」
「そう、アイツ等はかなり凶暴だからね」
「ドラゴンを倒すのが課題かしら?」
「流石に子供にそこまではさせないんじゃないか? 精々魔法を使って出し抜くぐらいじゃないか?」
「程度にもよりますが、十分に処理は可能かと」
「まぁ、君達ならそうした方が早いだろうね」
「確かにそうよね。応援してるわ」
「ご期待に添えるよう全力を尽くします」
ハーマイオニーはどこと無く心配した様子だが、頷いていた。
ドラゴンか…
どうやって処理しようかな。