決してかませ犬じゃないよ。
第1課題当日。
代表選手は設営されたテントに集められた。
私達は、ホグワーツの制服ではなく、フレームランナーが装着するパイロットスーツを模した服装をしている。
他の代表選手も各々が行動しやすい服装で居る。
しかし、皆一応に落ち着きが無い。
デラクールは冷や汗を掻き、貧乏ゆすりをしている。
クラムは不安そうな表情で、壁に背を付けている。
セドリックは深呼吸を繰り返していた。
しばらくすると、ハリーが絶望しきった表情をし、おぼつかない足取りでテントに入って来た。
「良し! 全員揃っているな!」
大声を上げ、バグマンがテントの中へと入って来た。
「観客が揃ったら、デラクール、クラム、セドリック、ハリー。君達一人一人に袋を渡そう。その中に入っている模型が君達の相手だ。そして課題の内容は、その相手を出し抜き、金の卵を手にする事だ」
説明を聞きハリーはゆっくりと胸を撫で下ろした。
どうやら、ドラゴンを相手取るつもりだったようだ。
一通り説明を終えた後、バグマンはこちらに視線を向ける。
「イーグリット姉妹はチームというイレギュラーな為、こちらで相手を用意させてもらったよ。悪く思わんでくれよ。それと課題の内容も少し違っているからそのつもりで居てくれ」
「了解です」
「もう一度言うが、持ち込んで良いのは自分の杖だけだ。他の物の持ち込みは禁止だ。だが特例としてイーグリット姉妹には杖以外の持ち込みも許可しよう。その代わり、出番は一番最後だ」
「了解しました」
デルフィの回答にバグマンはにこやかに微笑む。
「さて、それでは袋を取るんだ。誰からにする?」
「レディーファーストでどうぞ」
セドリックがそう言うと、デラクールはバグマンが手にしている袋に恐る恐る手を入れ、少し悲鳴を上げた後小さな模型を掴んだ手を袋から引き抜いた。
「これは、2番手のウェールズ・グリーン種だな。大人しい種類だと聞いているが…どうかな? さて次だ」
次に袋に手を入れたのはセドリックだった。
「コイツは1番手、スウェーデン・ショート・スナウト種だな。動きは俊敏。綺麗な炎を吐くのが特徴。まぁ本人はそんな事、気に留めてる余裕は無いだろうがな。さて次だ」
今度はクラムが手を入れる。
「コイツは3番手、チャイニーズ・ファイヤーボール種だ。一風変わった見た目だが、その動きは素早いぞ」
そして、最後に残ったのがハリーの相手になった。
「コイツは4番手、ハンガリー・ホーンテール種だ。コイツは獰猛で危険だ。さて…どう相手するかな?」
説明を聞いたハリーは暗い表情をしていた。
「さて、何はともあれ、全員が自分が相手をするドラゴンが決まった訳だ。ではセドリック君が最初だ。大砲が鳴ったら飛び出すんだ。では諸君の健闘を祈るよ」
バグマンは楽しそうな表情を浮かべながら、退室時には不敵な笑みを浮かべながらキャンプを後にした。
しばらくすると、地響きのような巨大な大砲の音が周囲に響いた。
「じゃあ行ってくるよ」
セドリックの心拍数が跳ね上がり、興奮状態となっている。
そのまま、勢い良く飛び出していった。
その直後、周囲に歓声が響いた。
競技中、デラクールが口を開く。
【貴女達は随分と余裕そうね】
【我々はどの様な対象が相手なのかまだ知らされておりませんので】
【まぁ、そうだけど、何か策はあるの?】
【殲滅。ただそれだけです】
【殲滅ねぇ…】
その時、一際大きな歓声が上がる。
【終わったみたいね。次は私の番ね。確か相手は…】
【ウェールズ・グリーン種です】
【そうそう、それ】
再び大砲の発砲音が空気を震わせ、次の選手の出番を告げた。
その音を聞き、デラクールは少し不安そうに出口へと歩いて行った。
【じゃあ、行ってくるわ】
【ご武運をお祈りします】
【ありがとう】
デラクールが会場へと飛び出すと、再び歓声が上がる。
それと同時に競技が開始される。
テントの外から、解説の声が聞こえて来る。
「これは睡眠魔法だ! ドラゴンが眠りに付いたぞ!」
「ここで今卵をキャッチ! 少し衣装が焦げてしまったが。それもまた良い! 完璧な手際です!」
どうやら、無事に競技が終了したようだ。
「でヴぁ、いってきまず」
「うん、気を付けて」
ハリーに見送られ、クラムが飛び出すと、砲弾の音が響き渡る。
競技が始まって数分後、ハリーが重い口を開いた。
「僕は、箒を使うつもりだ」
「杖以外の持ち込みは禁止の筈ですが」
「まぁね、持ち込むんじゃなくて呼び寄せるのさ。でも君達は良いよな。持ち込みOKなんだろ?」
「その分、激しい戦闘が予想されます」
「戦闘って…ドラゴンを出し抜いて卵を取るのが目標だろ?」
「我々に関しては、詳細が依然として説明されていません」
「まぁ…そうだけど」
再び歓声が上がる。
「終わったみたいだね」
「その様です」
「さて、次は僕か…」
次の砲弾の音が響き、ハリーの番がやって来た。
「じゃあ、行ってくるよ」
「お気を付けて」
「あぁ」
気合を入れた様で、ハリーは声高らかに会場に走り出した。
誰も居なくなったテントの中、私達の順番が回ってくるのを待っている。
今までの選手より数分早く、歓声が響いた。
外から聞こえる実況は、『やりました! ハリー・ポッターが最短時間で金の卵を手に入れました!』
「どうやら、無事に終了したようですね」
「その様です」
数分後、アナウンスが流れる。
『これより、第5の代表選手の番になりますが、準備と休憩時間を兼ねて1時間程休憩時間にします。少々お待ちください』
アナウンスに答える様に会場から疑問の声が上がる。
それと同時に、テントの中にバグマンが現れた。
「さっきのアナウンスを聞いていたと思うが、すこし準備が必要でね。まぁゆっくりしていてくれ」
「了解です」
「今のうちに必要な物を用意しておくと良い」
言い終えると、バグマンがテントから退室する。
それから数分後、疲れ果てた代表選手が戻ってくる。
【ふぅ…疲れたわ】
【お疲れ様です】
【次は貴女達でしょ?】
【その通りです】
「ふぅ…疲れた…」
「づかれヴぁじた」
「危なかった…」
金の卵を棚に置いた後、各々が倒れ込むように粗悪なソファーに体を委ねる
「ふぅ…」
セドリックが溜息を吐き、クラムが背筋を伸ばす。
そんな時、テントの入り口が開かれる。
「やぁ、お疲れ」
「ロン! ハーマイオニー! どうしたの?」
「ダンブルドア先生が特別に入室を許可してくれたの」
「そうだったのか」
「あぁ、これ差し入れ」
ロンはそう言うと、ハリーに小さな小箱を渡す。
「カエルチョコレートじゃないか」
嬉しそうに活きの良いカエルチョコレートを口に放り込む。
「上手くいったなハリー! 1番じゃないか」
「運が良かっただけだよ。それに次はねぇ…」
「あぁ…」
「しょうぶはヴぁだヴぁだこれからヴぇす」
少し悔しそうな表情のクラムがハリーとロンの会話に入り込む。
「クッ! クラム! 良かったらサインを!」
「いいヴぇすよ」
「あっ! でも羽ペンが無い! 紙も!」
「ペンです」
私がノック式のペンを取り出すと、ロンがそれを奪い取る。
「ありがとう! はいペン! サインはシャツに書いて!」
「あはは…いいヴぇすよ」
【なんか、空回りしてるなコイツ…それになんか変なペンだな…】
【ロンはいつもそうなのよ。気にしないで…あれ?】
【通常のペンと何ら変わらないのでご安心を】
クラムは簡単なサインをロンの来ているシャツに書くと私とハーマイオニーの方へと顔を向ける。
【君達、ブルガリア語が話せるのか?】
【貴女達、フランス語以外も話せるのね】
【え…えぇ】
『これもやっぱり…』
『ナノマシンの影響だね』
『便利だけど…ちょっと驚くわ…』
「すごいや、君達一体何か国語を話せるんだ?」
「え…えぇ…っと…」
「複数習得しています」
「へーすごいね」
ロンは詰まらなそうな相槌を打つと、先程のサインを見つめている。
「戻ったらみんなに自慢しよう!」
「いいな…僕もサイン貰おう!」
ハリーも同様にサインを求め始めている。
「ねぇ、貴女達の出番はまだなんでしょ?」
「恐らく、休憩終了後に始まるかと」
「そう、今まで4体のドラゴンが出たけど、次の相手は何かしら?」
「うーん…多分だけど、ウクライナ・アイアンベリー種じゃなかな?」
「なんでそう言えるの?」
「まぁ、僕の親戚がちょっとね。今まで出てきたドラゴンの他に言っていた名前がウクライナ・アイアンベリーだったんだよ」
「そうなの。どんなドラゴンなの?」
「そこまでは分からないよ」
「そう」
『ウクライナ・アイアンベリー種は動きの鈍いドラゴンだった気がするよ』
『そうなの? なら簡単ね』
『ただ、気性が凄い荒いんだ。吐く炎もかなり厄介だ』
『武装などは?』
『ドラゴンだからね、もはやドラゴン自体が兵器みたいなもんさ。まぁ…それは君達も変わらないか』
『危険視すべき武装の類は無いのですね』
『あぁ、そうだよ』
『なら良かったじゃない。何とか卵を奪えそうね』
『ご心配はいりません』
【ねぇ、君の名前は何ていうんだい?】
突如、クラムがハーマイオニーに話しかける。
【ハマイオニー・グレンジャーです。でも皆、ハーマイオニーって呼びます】
【そうなのか、ハーマイオニー。君はハリーの友達かい?】
【そうですけど…】
【そんなに警戒しないでくれよ。ただ少し話を――】
ハーマイオニーは少し表情を困らせながら、会話を続ける。
そんな時、テントが開かれ、バグマンが姿を現す。
「もう少しで、準備が終わるぞ。そっちの準備は?」
「何時でも」
「それは良かった。さて、競技が終わった代表選手と君達は退室してもらおうか」
【残念だ。もう少し話をしたかったのだが】
【え、えぇ】
【それじゃあ、またね】
代表選手とハリー達は、疲れた体を伸ばしながら、テントを後にした。
数分後、アナウンスが流れる。
『皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、第5の代表選手の入場です!』
砲弾の音が周囲になり響く。
「では行きましょう」
「了解」
私達は、テントを出ると、会場へと歩き出す。
私達が会場に入ると、割れんばかりの歓声と拍手が響いた。
『さて! 最後の代表選手にして、唯一のチーム! イーグリット姉妹です! なんとも不思議な服装での登場です!』
実況の声に合わせて、会場の歓声も上がって行く。
周囲の状況は、フィールドが用意されており、内部は岩場の様になっている。
しかし、どこにも対象である、金の卵の姿はなかった。
『さて、君達の競技については私から説明しよう』
バグマンの声が拡声状態で響き渡る。
『君達は今大会のイレギュラー中のイレギュラー。しかもチームだ。それを考慮して、君達が手にするべき卵は、事前に私が預かっている』
再び会場がどよめく。
『私から卵を受け取りたければ、今回の課題…ドラゴンを討伐して貰おう!』
バグマンの声に合わせて、会場が一際盛り上がる。
『今回用意したのは、ウクライナ・アイアンベリー種だ』
どうやら、トムの予想通りだ。
『しかし、君達の強さは、ダンブルドアから嫌というぐt――話を聞かされている。そこでだ!』
バグマンが指を鳴らすと、フィールドの底から、6個の檻がせり上がる。
『先程までに登場したドラゴン。スウェーデン・ショート・スナウト種。ウェールズ・グリーン種。チャイニーズ・ファイヤーボール種。ハンガリー・ホーンテール種。それともう1体ノルウェー・リッジバック種も同時に相手して貰おう』
それにより、会場が騒めき立つ。
どうやら、合計6体のドラゴンを討伐するのが、今回のミッションの様だ。
『無論、辞退する事も可能だ。どうする?』
私達は同時に首を横に振る。
『よろしい! それでは、健闘を祈ろう!!』
「了解。ミッションを開始します」
バグマンが再び指を鳴らすと、檻の枷が外され、勢い良く6体のドラゴンが現れる。
6体のドラゴンは総てが、魔法によって興奮状態にあるようで、いつ攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。
その上、全てのドラゴンの体表には特殊なエネルギーフィールドを検知する。
「ビームガン発射」
様子見という事で、私はビームガンを構えると、手近にいたノルウェー・リッジバック種に攻撃する。
青白いエネルギー弾がノルウェー・リッジバック種に着弾した瞬間、何かに阻まれる様に消滅した。
『攻撃が効かずに驚いている様だね! もっと強い攻撃をしてみたらどうだ?」
バグマンは腕を組みながらこちらを見ろしている。
「バーストモード移行」
エネルギー効率を高め、バーストモードへと移行する。
そのまま、右手を上に挙げ、エネルギーを供給し、青白いエネルギー球を生成する。
「バーストショット発射」
エネルギー充填後、バーストショットを撃ち出す。
撃ち出されたバーストショットはウクライナ・アイアンベリー種に直撃すると、黒煙が上がる。
「グガアアアアア!!」
咆哮と共に黒煙が薙ぎ払われ無傷のウクライナ・アイアンベリー種が姿を現す。
『ハハハハハ!! 実にイイ! 実はそこに居る6体全てに、ダンブルドアと闇払いを総動員し防御呪文を何重にも掛けてあるんだ!』
バグマンはそのまま高笑いをする。
『少なくとも1体に付き1000人以上が魔法を掛けているから、ダンブルドアと合わせても合計で6001人以上の魔法だ!』
詳細にスキャンすると、何重にも折り重なったエネルギーフィールドにより、空間が圧縮され、質量の断層、及び空間城壁を形成している。
『フハハハハハ! これほどの魔法防壁ならば、悪魔の火すら防げる! さぁ? どうする? 降参する?』
バグマンは不敵な笑みを浮かべながら、こちらを見据えている。
しかし、私達は再び、首を横に振る。
『良いだろう! 精々がんばってくれたまえ!』
バグマンが笑いながら、席に戻ると同時に、ノルウェー・リッジバック種が飛び上がり、こちらに爪を振り下ろす。
「回避行動」
その場で背後に飛び、攻撃を回避する。
しかし、背後に控えていたハンガリー・ホーンテール種が炎を吐く。
高温の炎が私達を包む。
しかし、この程度の熱量では、大したダメージにはならない。
デルフィは炎の中から飛び出すと、そのままウアスロッドを振り下ろす。
しかし、ウアスロッドは空間障壁に阻まれ、ダメージを与える事が出来ないでいる。
『こちらの攻撃が通用しないとなると、多少厄介です』
ドラゴンから離れ、体制を整えたデルフィから通信が入る。
『スキャンの結果、ドラゴンの体表に何重にも折り重なった複数の防衛フィールドを検知。複数に折り重なった為、魔法と魔法の間の空間が圧縮され、圧縮空間を形成していると思われます。圧縮空間による質量の断層の為こちらの攻撃が防がれている模様です』
『まるでアーマーン外壁のようですね。圧縮空間による質量の断層となると、現在の私の武装では、突破は不可能です』
デルフィの武装と私の基本兵装は酷似している為、通常兵器での突破は不可能だ。
まさか、魔法でここまでの防衛機構を再現するとは、やはり魔法というのはメタトロン技術と酷似している部分が多く見受けられる。
アーマーンの外壁同様、圧縮空間による質量の断層ならば突破方法はただ一つだ。
圧縮空間を利用した質量の断層により、こちらの通常攻撃は一切通用しない状況です。
絶体絶命のこの状況を打開する、たった一つの方法とは…
次回 『空間圧縮破砕砲』
ドラゴン達の運命は!
そして、この戦いの行方はどうなってしまうのか(棒)
ネタバレ禁止ですよ。
ネタバレ駄目ね。