ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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今回で、ゴブレット編は終了です。

何とか、年内に終わらせる事が出来ました。




交渉

   墓地を後にしてから数秒後にはホグワーツの上空に到着する。

 

 急降下し、バーニアで落下速度を軽減し、軟着陸する。

 

 私達の到着に観客の視線が集まる。

 

「2人とも! 無事だったんだ!」

 

「問題有りません」

 

「良かった…セドリックはさっき医務室へ運ばれたよ。かなり危険な状態だったらしい」

 

「そうですか」

 

「うん。でも悪かったね。結局君達をあの場所に置いて来ちゃって」

 

「お気になさらず」

 

 ハリーは申し訳なさそうに笑顔を浮かべる。

 

「3人ともよく無事に戻った…詳しい話を聞きたい。皆この後、校長室へ来てくれんか?」

 

 

「校長! 彼女等は戻ったばかりで疲れ切っている筈です。少し休ませるべきかと…」

 

 

 

 マクゴナガルが意見を上げるが、ダンブルドアは首を横に振った。

 

 

 

「確かにそうかもしれぬ、じゃが、今だからこそ分かる事もある。さぁ」

 

 

 ダンブルドアが近寄り、私達を、校長室へ案内した。

 

『ねぇ! 大丈夫?』

 

 ハーマイオニーから通信が入る。

 

『戦闘が有りましたが問題ありません』

 

『良かった…ねぇ、何があったの? セドリックが運ばれて行ったけど』

 

『後ほどお話しします』

 

『うん。わかったわ』

 

 通信を切り、私達は校長室に通された。

 

 

  校長室には、ダンブルドア、マクゴナガル、シリウス、スネイプが集まっている。

 

 

 

 部屋の中心には、縄の様な物で縛られた、ムーディが床に倒れている。

 

 

「奴はアラスターに化けていたのじゃ。本人はすでに保護されておる」

 

 

 

 それを聞き、ハリー達は胸を撫で下ろしている。

 

 

「さて、では先程何が起こったのか説明してくれぬか?」

 

「はい…」

 

 

 ハリーは数回深呼吸をした後口を開く。

 

「実は、優勝杯がポートキーになっていたんです」

 

「なんじゃと…一体誰がその様な事を…」

 

「恐らく、こやつの仕業でしょう」

 

 スネイプが足元に倒れ込むムーディの横腹を軽く蹴る。

 

「なんと…ポートキーで飛んだ先では何があったのじゃ」

 

 ダンブルドアは椅子に座りながらハリーを見据える。

 

「えっと…飛んだ先は古い墓地みたいなところで、そこで…」

 

「そこでなんじゃ?」

 

「奴に…奴に会ったんです」

 

「奴? じゃと?」

 

 ハリーは一呼吸置く。

 

「クィレルとピーター…そして…」

 

「そして?」

 

「アイツが…ヴォルデモートが居たんです!」

 

「なんじゃと!」

 

 その場に居た全員のメンタルコンデションレベルが低下する。

 

 ヴォルデモートの名前はそれほど衝撃的な物の様だ。

 

「奴は…どうなったのじゃ?」

 

「最初は…なんか死にかけみたいな状態だったんです。でも…よく分からない儀式でアイツが復活したんです」

 

「その儀式は覚えておるか?」

 

「えっと…ピーターの腕と墓場から取り出した骨。後僕の血と賢者の石を使っていました」

 

「なんじゃと!」

 

 ダンブルドアが立ち上がり怒号を上げる。

 

「ハリーよ…嘘では無いな?」

 

「本当です! その時、セドリックが死の魔法を受けて――」

 

「今何と言った!」

 

 再びダンブルドアが怒声を上げる

 

「えっと、セドリックが死の魔法を受けて」

 

「それは本当か!」

 

「え…え、あっはい。この前の授業で見た時と同じ呪文と緑色の魔法だったので…」

 

「セドリックに当たったのは間違いないのか!」

 

「は、はい。それで、それでエイダ達が治療して――」

 

「ちょ、ちょっと待つのじゃ!」

 

 ハリーの説明に対し食い気味にダンブルドアが声を荒げる。

 

「治療じゃと!」

 

「そうだよね?」

 

 その場の全員の視線がこちらに集まる。

 

「心肺停止状態を確認したので、蘇生行動を行いました」

 

 

「蘇生じゃと! それは一体…」

 

「強心剤と電気ショックによる心肺蘇生です」

 

「難しい言葉を使うでない」

 

 ダンブルドアは不機嫌そうに溜息を吐く。

 

「マグル式の蘇生方法です」

 

「なんじゃと…」

 

 ダンブルドアはふら付きながら椅子に座り込む。

 

「そんな方法があったとはのぉ…しかし、マグル式の蘇生術か…それは危険じゃ」

 

「え? なぜです?」

 

ダンブルドアの発言にマクゴナガルが声を上げる。

 

「考えてもみよ。死の魔法は反対魔法は存在せず、それ故、禁止呪文にされてた」

 

「そうですな」

 

「それが、マグルの蘇生術によって無力化されると知れ渡ったらどうなる?」

 

「死喰い人の活動が弱体化するのでは?」

 

「それはメリットじゃよ。しかし、デメリットも存在する」

 

「デメリット? そんなもの無いと思いますが?」

 

マクゴナガルの口調が強くなる。

 

「対抗策が無いゆえに禁止呪文だったのじゃ。対抗策が出来たと知れれば禁止呪文として認定されなくなるかもしれぬ」

 

「しかし、マグル式の蘇生術を魔法界に広めれば、死の呪文で命を落とす者が減るはずです」

 

「マグル式と言うのが厄介なのじゃよ」

 

「え?」

 

「ワシ達魔法族に不可能な事が、マグルには可能。これは魔法界の根幹を揺るがすかもしれぬ。それに――」

 

「それになんです! プライドとでも言うのですか? そんなくだらない――」

 

「とにかくじゃ!」

 

マクゴナガルの発言を遮る様にダンブルドアが声を荒らげる。

 

「マグル式の蘇生術については他言無用じゃ。分かったな」

 

「しかし…」

 

「これは、魔法族…いや、魔法界とマグル界のパワーバランスを崩すかもしれぬ案件じゃ。ワシ等が関わるにはちと荷が重すぎる」

 

「くっ…わかりました…」

 

マクゴナガルは悔しそうに下唇を噛む。

 

スネイプは無表情ながら、溜息を吐く。

 

「話を戻そう。して、その後はどうなったのじゃ?」

 

「えっと、復活したヴォルデモートと同時に魔法を放ったのですが…その、魔法が繋がったような感じがして…」

 

「恐らく杖が繋がったのじゃろう」

 

「え?」

 

「奴の使っている杖とハリーの使っている杖は兄弟杖なのじゃよ」

 

「兄弟杖?」

 

「そうじゃ」

 

「それって…」

 

「大丈夫じゃ。気にするでない」

 

 ダンブルドアは数回頷き、ハリーは自身の杖を見つめる。

 

「ある程度の話は分かった。その他に何か気になる事はあったかの?」

 

 ハリーは少し考え、何かを思い出したように顔を上げる。

 

「確か、ヴォルデモートはゴーレムを作り出していました」

 

「ゴーレムじゃと?」

 

「はい…なんか見た事の無い、3本脚のなんかヘンテコなゴーレムでした」

 

「3本脚…一体何なんじゃ…」

 

「して、そのゴーレムはどうなったったのじゃ?」

 

「えっと、エイダ達が倒してくれました」

 

「そうか…」

 

 ダンブルドアは自身の顎髭を撫でながら考えに耽る。

 

「ふむ…大体の事は分かった。疲れたじゃろう。休むが良いぞ。シリウスよハリーを連れて行くのじゃ」

 

 ハリーはシリウスに連れられ、校長室を後にする。

 

 その後、他の教師陣に拘束されムーディも退室する。

 

「それでは、我々も失礼します」

 

 私達は校長室を後にし、自室へと戻った。

 

 自室の扉を開けると、ハーマイオニーが駆け寄ってくる。

 

「大丈夫!」

 

「問題ありません」

 

「良かった…」

 

 ハーマイオニーは安堵の表情を浮かべ、ベッドに腰かける。

 

「ねぇ、何があったの?」

 

「優勝杯がポートキーに変化していた為、我々は墓地へと飛ばされました」

 

「え?」

 

「そこで、ヴォルデモートが復活しました」

 

「ちょ、ちょっと待って! どういう事?」

 

「僕も少し興味があるね」

 

 タブレット端末からトムの声が響く。

 

「墓地へと移動した我々の前に、ピーター・ペティグリューとクィリナス・クィレルが現れました」

 

「まさか、ピーター・ペティグリューが脱獄したのって…」

 

「恐らく、クィレルとか言う奴がやったんだろうね」

 

「その二人は巨大な鍋に未成熟なヴォルデモートを投入後、墓地から取り出した親族の骨、ピーター・ペティグリューの腕、ハリーの血、メタトロン鉱石を投入しました」

 

「なるほど…それで復活したと」

 

「何てこと…」

 

 ハーマイオニーの表情が歪んで行く。

 

「それで? その後どうなったんだ?」

 

「その後、ヴォルデモートが複数の機動兵器を生成しました」

 

「え?」

 

「どういう事だ?」

 

「恐らく、メタトロン鉱石と融合した事により、無意識下で設計し、それをゴーレムと言う形で造形した者と思われます」

 

「そうなの…ちなみにその兵器ってどれくらい強いの?」

 

「対象を一般的な魔法使いの防衛戦力に想定した場合ですが、1部隊で魔法省を壊滅させることが可能かと思われます」

 

「それって…ホント?」

 

「ドラゴンなどの巨大生物による物理的な破壊は現段階では可能ですが、恐らくそれも時間の問題かと」

 

「そんな…」

 

「これは…本格的にヤバいね。でも君達はそいつらに勝ったんだろ?」

 

「あの程度でしたら30秒で殲滅可能です」

 

「はぁ…冗談…じゃ…無いわよね」

 

「生憎と冗談を――」

 

「だと思ったよ」

 

 ハーマイオニーは溜息を吐いている。

 

「ちょっと待って…その場合、貴女達なら魔法省を制圧できるって事?」

 

「可能です」

 

「ご要望とあらば実行いたしますが」

 

「今の所は止めて頂戴。はぁ…貴方達が敵じゃ無くて良かったと心から思うわ」

 

 疲れが出たのか、ハーマイオニーはベッドに倒れ込む。

 

「もう寝ましょう。明日はハリー達のお見舞いに行こうかしら」

 

「そうですね」

 

 私達もベッドに入ると、ハーマイオニーが電気を消し、数分後には規則的な寝息が聞こえてきた。

 

 

  翌日、私達はハリー達を見舞う為に、医務室へと移動した。

 

 医務室の中では、治療を受けているハリーとセドリックがマクゴナガルを始めとした教師陣とスーツを着込んだ男に何やら話をしている。

 

 セドリックは依然として安静状態の為、頷く事しかできない様だ。

 

 

「嘘を言うんじゃない! 例のあの人が復活した? そんなバカな?」

 

 

「ですがファッジ大臣! 本当なんです! 僕達はあの場に居て、それを目にしたんです!」

 

 ハリーは声を荒らげるが、ファッジと呼ばれたスーツの男は一切聞く耳を持っていない様だ。

 

「馬鹿らしい! 第一…生徒の話を誰が信じると言うのか…」

 

「彼が言う事は事実じゃぞ」

 

 

「っ! ダンブルドア! 貴様まで何を言う! 血迷ったか!」

 

 医務室の奥で椅子に腰変えていたダンブルドアがファッジに近付いて行く。

 

「血迷っては居らぬ。今セブルスに頼み、クラウチに真実薬を飲ませ、計画を聞き出そうとしておる所じゃ」

 

 

 

 

 

「ふざけた事を…」

 

 

 

 

 

 その時、スネイプが、いつもと同じような表情で医務室に現れた。

 

 

 

「セブルス…首尾はどうじゃ?」

 

 

 

「死にました」

 

 

 

「なに!」

 

 

 

「本校では奴が薬品の管理を行って居りました。先日校長が使用した真実薬で吾輩が管理していたのは最後でした。その為奴が真実薬を補充し、その際、保険として毒を混ぜておったのでしょうな。真実薬を飲んですぐに死にました」

 

 

 

「なんじゃと…ワシのしたことが…裏目に…」

 

 ダンブルドアは狼狽し、天を仰いている。

 

「証言者は居ない! つまり例のあの人が復活したなんてのは事実ではない!」

 

 

 

 ファッジが大声を上げ騒ぎだす。

 

 

 

「ファッジよ、ヴォルデモートは復活したのじゃ…ハリーが証人じゃ。それを信じるも信じないもお主次第じゃが…もし復活したのが事実ならば…困るのはお主の筈じゃ…」

 

 

 

 ダンブルドアの言葉を聞き、ファッジはかなり狼狽している。

 

 

 

「だ…だがこんな事…ありえん!」

 

 

 

「それがありえたのじゃよ…ヴォルデモートが帰って来たのじゃ…ファッジよ…今のお主に出来るのはこの事実を認め、必要な措置をする事じゃ…今ならまだ我々がこの状況を救えるかもしれぬ。まずはアズカバンを吸魂鬼から解放する事じゃ」

 

 

 

「ふざけるなよ!」

 

 

 

 ファッジがダンブルドアを怒鳴り付ける。

 

 

「吸魂鬼を取り除くだと! そんな事をすれば、私は大臣職から引きずり降ろされるだろうな!」

 

 

 

「じゃがの…コーネリアス。奴らに監視されているのはヴォルデモートの最も信仰的な支持者じゃ。恐らくヴォルデモートの一言で奴らと手を組むじゃろうな…そうなったらどうなっておるか…お主にだってわかるじゃろ…」

 

 

 

 ファッジは驚きのあまり、言葉が出ないでいる。

 

 

 

「次の策は…」

 

 

 

「もういい!」

 

 

 

 ファッジが大声を上げ、ダンブルドアの言葉を遮った。

 

 

 

「ダンブルドア! 貴様が私を大臣から引きずり落とし、大臣の椅子に座ろうと考えている事は分かり切っている! その手は乗らないぞ! 私は魔法省に戻らせてもらおう!」

 

 

 

 ファッジは大声を上げた後、踵を返し、医務室から出ていった。

 

 

 

 その背中を、私達は見送る。

 

  三大魔法学校対抗試合が終了してから1ヶ月程が過ぎ、今年も終わりを告げた。

 

 ヴォルデモートの復活は、一部の人間のみが信じており、それ以外は皆今まで通りの生活を送っている。

 

 三大魔法学校対抗試合は最終的に最初に会場に帰還したハリーの優勝という事で幕を閉じた。

 

「よかったなハリー」

 

 大量の荷物を担いだロンがハリーの背中を叩く。

 

「まぁね。でも本当は君達が優勝だと思うんだけど」

 

 ハリーは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「過程はどうあれ、結果的には貴方が優勝という事です」

 

「ありがとう。ダンブルドア先生が僕が優勝って事で他の審査員と話し合ったらしいよ」

 

『なるほど、やっぱりあの老害の仕業か』

 

『ここまで来ると露骨ね』

 

「なぁ、優勝賞金はどうするんだよ?」

 

「まぁ、ちょっとしたことに使おうかなって」

 

「なんだよそれ?」

 

「秘密さ」

 

「教えろよ~」

 

 汽車の発車時刻まで残り30分程度になり、私達は荷物をまとめ、談話室の扉に手を掛ける。

 

 扉を開けると、マクゴナガルが廊下で待機していた。

 

「あれ? マクゴナガル先生?」

 

「ミス・イーグリット。校長が2人をお呼びです」

 

「了解です」

 

「え? でももうすぐ汽車が出るわよ」

 

「お気にせずに」

 

 既に荷物はベクタートラップに収納済みなので、私達はそのままマクゴナガルの後に続き、校長室へと移動する。

 

 

 

 

  今年も終わりを告げ、ワシは自室の椅子に腰かけ、外の景色を眺めている。

 

 その時、扉が数回ノックされる。

 

「お連れしました」

 

「入るが良い」

 

 ワシは外の景色を見ながら答えると、扉が開かれる。

 

「良く来たの」

 

 背中越しに彼女達が入室したのを感じると、椅子を半回転させ、彼女達を見据える。

 

「ミネルバ。すまぬが、席を外してくれるか?」

 

「分かりました」

 

 ミネルバは一礼し、その場を後にした。

 

 ワシとイーグリット姉妹だけになった校長室は、静寂が数秒間流れる。

 

 相変わらず表情の読めない姉妹だ。

 

「さて、立ち話もあれじゃ、座るが良い」

 

「はい」

 

「失礼します」

 

 2人は手近にあった椅子に腰かける。

 

「まずは、三大魔法学校対抗試ご苦労じゃった」

 

「いえ」

 

 2人は相変わらず愛想の無い返答をする。

 

「惜しかったのぉ、今回はハリーの優勝となったのぉ」

 

「その様ですね」

 

 2人は表情を変える事無く淡々と答える。

 

 悔しいなどといった感情が無いのだろうか?

 

「ご用件はそれだけですか?」

 

「まぁ、待つのじゃ。もう少しだけ話に付き合ってくれ」

 

「了解」

 

 一切表情の変わらない2人を目の前にするというのは、やはり何処か不気味に思える。

 

「ワシの見解では、ハリーの名前をゴブレットに入れたのはクラウチだと見ておるのだが、お主達はどう思う?」

 

「客観的に見て、その可能性が一番高いでしょう」

 

「ゴブレットがポートキーに変化していた事を鑑みても、彼がハリーを墓地に移動させるために予め仕組まれていたと考えられます」

 

「まぁ…そうじゃな」

 

「しかし、ハリー以外の選手が優勝杯を手にする可能性があった為、完全な計画とは言えません」

 

「総合評価ではCランク程度かと」

 

 やはり、この二人の会話は時々理解しにくい言葉を使う。

 

「さて、話は変わるが、お主達はヴォルデモートを目の前にして、何を感じた?」

 

「特筆すべき事は有りませんでした」

 

「恐怖や、危機感は感じなかったのか?」

 

「はい」

 

 2人ははっきりと答える。

 

 嘘をついている可能性もあるが、どういう訳かこの2人には開心術の類は一切通じない。

 

 強力な閉心術を身に着けている様だ。

 

「もし、奴がお主達をスカウトした場合、どうする?」

 

 ワシは最も気になっていた事を聞いた。

 

 ドラゴンを消し飛ばす程の力を持つ2人だ。もし仮にも死喰い人陣営になったと考えれば恐ろしい。

 

 回答次第では、この場で手を下さなければならない。

 

 ワシは、気が付かれぬようにテーブルの下で杖を握りなおす。

 

「現状ではメリットが無いので、拒否します」

 

 デルフィの方が答える。

 

「私も同意見です」

 

 エイダも同意見なようだ。

 

 しかし、今の回答では、条件次第では死喰い人になるとも受け取れる。

 

 やはり、この2人を野放しにするのは危険だ。

 

「そうか。そう言えばお主達が三大魔法学校対抗試合に参加したのは、優勝賞金が目当てだと言って居ったな」

 

「その通りです」

 

 ワシは、引き出しから金貨の入った箱を取り出す。

 

「ここに1000ガリオンある」

 

「どういうおつもりで?」

 

 その時、汽車の発車を告げる鐘が鳴り響く。

 

 しかし、2人は表情を変える事無くこちらを見据える。

 

「ヴォルデモート…奴が復活してしまった以上、ワシ等は力を付けなければならぬ」

 

 2人は身動き一つせず、こちらに視線を向ける。

 

「単刀直入に言おう。ワシ達の不死鳥の騎士団に入団する気は無いか?

 

「不死鳥の騎士団とは?」

 

「不死鳥の騎士団とは、ワシを筆頭にホグワーツの教員や卒業生で構成された、ヴォルデモート率いる死喰い人に対抗するために作られた兵団だ」

 

「つまり、抵抗勢力(レジスタンス)という事ですか?」

 

「まぁ…そうともいうな」

 

「抵抗勢力《レジスタンス》の規模は?」

 

「それほど大きくは無い。じゃが兵団員の質は一流じゃ。しかし力があるものは1人でも多い方が良い。そこでお主達にも入団して欲しいのじゃ」

 

「我々にはどのようなメリットが?」

 

「入団費用として1000ガリオンを支払おう。その他に月々働きに応じて報酬を出す」

 

「具体的には?」

 

 やはり、2人は金銭的にキツイ状況にあるようだ。

 

 金銭で動くようならば、容易い。

 

「働きにもよるが、最低でも1月に300ガリオンでどうじゃ?」

 

 これほどの好待遇ならば、問題ない。

 

 ワシはそう思っていたが、二人は首を横に振った。

 

「お断りします」

 

「なぜじゃ? 学生の身分であるお主達にとっては悪い話ではないと思うが?」

 

「最低限、入団費用を1人に付き10000ガリオン。月額も1人に付き2000ガリオンを要求します」

 

「何じゃと!」

 

 何と言う高額の請求だ。

 

「その条件ならば、入団します」

 

「その他に、いくつか条件があります」

 

「…言ってみよ」

 

「兵団での活動費用は経費として請求します」

 

「その他、働きに応じ追加報酬を要求します」

 

 何と言う強欲じゃ。学生の身分でここまで要求してくるとは…

 

 しかし、彼女達を敵に回したとして、ワシ一人でもかなり骨が折れるだろう。

 

 足元を見られているとしか思えない。

 

 仕方ない。来年度のホグワーツの予算を水増しし、魔法省へと請求しよう。

 

「わかった…要求を飲もう」

 

 ワシは苦虫を嚙み潰したような表情をしているが、彼女達は相変わらず無表情だ。

 

「交渉成立ですね」

 

「連絡は今まで通り封書で構いません。金銭は後日小切手などでお願いします」

 

「あぁ。分かった。これから頼むぞ」

 

 ワシは立ち上がり、手を差し出す。

 

「失礼します」

 

 彼女達は踵を返すとワシが差し出した手を無視しその場を後にした。

 

「ふぅ…」

 

 一人残されたワシは、再び椅子に全身を預ける。

 

「何と言う守銭奴じゃ…」

 

 頭を抱え独り言を口遊む。

 

 しかし、結果的に彼女達を不死鳥の騎士団に引き入れる事が出来たのだから良しとしよう。

 

 今回の三大魔法学校対抗試合を通して、彼女達の戦闘力は嫌という程見せつけられた。

 

 まずは第1試合でのドラゴン。

 

 ワシと大勢の闇払いによってドラゴンには護りの魔法が何重にも掛けられていた。

 

 これほどまでに重ねれば最強と言われる悪魔の火ですら防ぐことが可能だ。

 

 しかし、彼女達…いや、エイダは巨大な大砲のような魔法を使い、護りの魔法諸共ドラゴンを消し飛ばした。

 

 もし、あれ程の威力がこちらに向けられると考えれば、やはり彼女達を不死鳥の騎士団員にスカウトしたのは得策だったと思える。

 

 第2競技の時も、ホグワーツ湖の水を全て何処かに収納し、選手全員を救出後に再び取り出した。

 

 あれ程の魔法はやはりどこを探しても無い。

 

 改めて彼女達の規格外さを見せつけられる。

 

 その後、セドリックを蘇生し、ヴォルデモートの前から生還した。

 

 

 それらを考えてみてもやはり、出費こそ痛いが、味方に出来たのは大きい。

 

「ふぅ…」

 

 ワシはテーブルの上の書類に目を落とす。

 

 そこには、今大会で発生した請求書だった。

 

 主に、彼女達が破壊した会場などがメインだ。

 

「やはり…」

 

 ワシは例年通り請求書を彼女達に送付した。

 

 

 数日後、経費での支払いを要求する旨の手紙が届いた。

 

「ハァ…」

 

 ワシは今まで感じた事の無い頭痛を覚え、頭を抱えた。

 




検索すると、1ガリオンが約950円なので、日本円に換算すると。

入団費用19,000,000円

最低月額3,800,000円です。

2人の小娘に払うには高すぎる?

最強のOF2機を19,000,000円で購入出来て、月の維持費が2機で3,800,000円と考えれば。

破格! 圧倒的破格!








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