戦闘終了後
部屋に入るとモリーとアーサーが唖然とした表情でこちらを見ている。
「見事な物だな」
椅子に腰かけたスネイプが呟く。
数分後には、先程の戦闘に参戦していたダンブルドア達が戻ってくる。
「悔しいが、あれ程の力を見せ付けられたのならば入団を認めざる負えない」
椅子に腰かけたムーディはモリーが入れた紅茶にミルクを入れると乱暴にかき混ぜながら呟く。
「入団おめでとう」
「君達が味方になってくれて心強いよ」
シリウスとルーピンは私達の入団を歓迎している。
「さて、お主達は未だ学生という身分じゃ。非常事態が起きた時や時間がある時に声を掛ける様にしよう」
ダンブルドアはそう言うと席を立つ。
「さて、ではワシは用事が有るのでこれで」
杖を取り出し、姿現しを行おうとする。
「お待ちください」
「なんじゃ?」
ダンブルドアは移動を中断しこちらに視線を向ける。
「残りの契約金。12000ガリオンをまだ受け取っていません」
「ちぃ…覚えておったか」
ダンブルドアは苦虫を嚙み潰したような表情をすると12000ガリオンの小切手をテーブルの上に叩きつける。
「守銭奴じゃのぉ」
呟いた後、ダンブルドアはその場から消え去った。
「おい…それは…」
アーサーが小切手を覗き込む。
「入団時の契約により、金銭が発生します。今回はその受け取りを兼ねています」
「だが、君達はまだ学生だろ? 12000ガリオンなんて大金を一体…」
「お気になさらず」
「だが!」
「これ以上の詮索は不要です」
小切手を受け取ると、背後の扉が開かれる。
「いやー…見させて貰ったけど凄かったね!」
ウィーズリー家の双子が笑いながら入室する。
どうやら、先程の戦闘を観戦していた様だ。
「まさか、君達が不死鳥の騎士団員になるなんて…信じられないよ」
ロンと共にハーマイオニーが入室する。
『いやーさっきのダンブルドアの表情は良かったね。滑稽だったよ』
『貴女達の戦いを見させて貰ったけど…やっぱり凄いと思うわ』
『ありがとうございます』
『いらない心配かも知れないけど、気を付けてね』
『了解です』
「いやーあの戦いはハリーにも見せてやりたかったぜ」
ロンは腕を頭の後ろで組みながら椅子に腰かける。
「凄く燃え上がったな」
ウィーズリー家の兄弟は先程の戦闘の事で話が盛り上がる。
『それにしても、このぼろ屋敷が不死鳥の騎士団の本部とは、貧相なもんだな』
『よくよく考えたら、トム。貴方はこの場に連れて来るべきじゃなかったかもしれないわね』
『ダンブルドアが知ったらぶっ倒れるだろうね』
『バレない様に気を付けるわ』
『それでは、我々はこれで失礼します』
『えぇ、また何かあったら連絡するわ』
ハーマイオニーはキッチンへと移動すると、モリーの手伝いを開始した。
対する私達は扉に手を掛けブラック邸を後にした。
数日後、ダンブルドアから手紙による招集を受けた。
ブラック邸へと移動すると、奥の一室に暗い顔をした不死鳥の騎士団員の姿があった。
「おぉ、来てくれたか」
円卓に座るダンブルドアは椅子に腰かけながら髭を撫でている。
「状況の報告をお願いします」
「あぁ、現在かなり危険な状態じゃ。実はハリーが魔法省から――」
「少しよろしいですか」
「なんじゃ…」
ダンブルドアは話の腰を折られた事に不満を抱いているのか分かり易く顔を歪める。
デルフィが部屋の扉を開く。
「うおぉ!」
「いでぇ!」
「フレッド! ジョージ! ロン! ジニー!」
すると、雪崩のようにウィーズリー家の4人が倒れ込んで来る。
「ママ!」
「重いぞ! フレッド!」
「アンタ達! なにしてるんです!」
「ちょっと話が気になって…」
扉からハーマイオニーが申し訳なさそうな顔でこちらに視線を向ける。
「盗み聞きですか?」
「そっ…そう言う訳じゃないけど…」
「ねぇ! ハリーに何があったの?」
折り重なった状態でロンが疑問の声を上げる。
その後、全員が順番に起き上がって行く。
「ダンブルドア…」
シリウスはダンブルドアに指示を求めている。
「皆ハリーが心配じゃろう。話せる限りの事を話そう。休暇中にハリーがディメンターに襲われたのじゃ。マグル界の方でな。それで、未成年の魔法使いには臭いと言う魔法を検知する物があってな…マグル界での魔法の使用は基本的に禁止されておる…それにより魔法省から尋問を受けることになったのじゃ」
「そんなのって!」
ダンブルドアの説明に皆驚きを隠せずにいる。
「でも、いくらマグル界で魔法の使用が禁止されていても、特例はあるはずです」
「ハーマイオニー…君の言う通り、命の危険があった場合は魔法の使用が認められることがある」
「それならハリーが魔法を使ったのだって、正当な理由が有るはずです!」
「その通りじゃ。ワシはその点から魔法省に抗議するつもりじゃ…」
「もし、その抗議が通らなかったらハリーはどうなるの?」
ロンが疑問を投げかけ、ダンブルドアがそれに応える。
「恐らくじゃが、魔法省はハリーを退学処分にし、杖の破壊を言い渡すじゃろう」
「そんなのってあるかよ!」
「無論、ワシはそんな事させるつもりは無い! ハリーは大切な生徒じゃ!」
『もしこれが別の生徒だったらここまで熱くはならないね』
『そうかしら? いくらダンブルドア先生だって生徒が杖を剥奪されるような状況なら黙ってない筈よ』
『木偶の坊のハグリッドを見てみろよ。アイツは杖を剥奪されているぞ』
『でも、その原因を作ったのは貴方でしょ?』
『そんな事は忘れたさ。だが、ハグリッドはダンブルドアの大切な生徒だったさ。でも杖を剥奪されているぞ。ハリーだからここまで躍起になっているんだろうね』
『うー…そう言われるとそんな気がしてきたわ』
「尋問はいつ行われるのでしょう?」
「正式な決定はまだじゃが、20日以内に行われるはずじゃ」
「こうしちゃいられない! 僕達も何かしなきゃ!」
ウィーズリー兄妹は顔を見合わせ頷いている。
「フレッド! ジョージ! ロン! ジニー! 2階に上がりなさい! ここから先は騎士団員以外は聞いてはいけません!」
「そりゃないぜ! ママ!」
「ここまで聞かされたんだ! こんなのってないよ!」
「ハリーが危険なんでしょ! 騎士団員以外はダメって言うなら僕等も騎士団員になるよ!」
ロンが声を荒らげ、双子が頷く。
「ダメです! 貴方達はまだ未成年でしょ!」
「そんな事言ったら、エイダとデルフィだって未成年じゃないか!」
「そうだよ!」
「彼女達はダンブルドアや他の不死鳥の騎士団員が入団を認めたから良いのです!」
「そんなのずるいよ!」
「そうだそうだ!」
ウィーズリー兄妹は更に抗議を続ける。
そんな時、ルーピンが立ち上がる。
「友人を思う君達の気持ちはよく分かるよ。でもね不死鳥の騎士団員になるって事は、とても危険な事なんだ」
「でも、そんなに危険なら、なんであの2人は良いんですか?」
「彼女達は自分の身は自分で守れるだけの力がある。まぁ、それ以上の力もあるけどね…」
こちらを見たルーピンは少し苦笑いをする。
「まぁ、君達はまだ子供だ。まだ護られる対象なんだ。危険な事には参加させられないよ」
ルーピンの説得を聞き、ウィーズリー兄妹は黙り始める。
「そうよ、ルーピン先生の言う通りだわ」
「先生はよしてくれ。もう先生じゃないよ」
「そうだったわね」
ハーマイオニーは少し苦笑いをしている。
「さて、君達は2階へ行っていてくれないか?」
「はい…」
フレッドを先頭に、兄妹は少し不満そうな表情を浮かべながら階段を上って行った。
「それじゃあ、エイダ。デルフィ。また後でね」
ハーマイオニーはこちらに手を振ると、彼等の後を追いかけた。
「さて、話を戻そうかの」
円卓に全員が腰かけ、ダンブルドアが口を開く。
「先程も言ったように、ハリーは今危険な状態じゃ。そこで、一時的じゃがハリーをこの屋敷で保護しようと思う」
「賛成です。まずは計画を立てましょう」
「そうじゃの…まずはダーズリー一家を一時的に家から遠ざけてほしい。適当に旅行券でも渡せばいいじゃろう。マグル界の事は詳しくないのでな。イーグリット姉妹に一任しようと思う」
「了解。旅費や諸経費は後ほど請求します」
「相変わらず守銭奴じゃのぉ」
ダンブルドアが溜息を吐く。
「では、作業へ移ります」
「頼んだぞ。ダーズリー一家が旅行へ行ったら作戦開始じゃ。詳しい日程はまた連絡する」
「了解です」
私達は、作戦を開始するため、ブラック邸を後にした。
数日後、旅行券を購入し、ダンブルドアから教えられたダーズリー家の住所へ懸賞として送付する。
ダーズリー家の周辺をステルスドローンで監視すると、旅行券を受け取った次の日には大量の荷物を手に、車で移動するダーズリー家の姿を確認した。
もちろん、3人分でしか送付していなかった為、ハリーの姿はなかった。
ダーズリー家が旅行に出た事を手紙でダンブルドアへと送ると、次の日に返信が来た。
どうやら、2日後にハリーを奪還する作戦を開始する様だ。
2日後、作戦決行日。
私達は、目標地点であるダーズリー家前で待機していると、背後に複数の反応を検知する。
「待たせた様だな」
そこには、ムーディを始めに、シリウス、ルーピン、アーサー、の他に複数名の不死鳥の騎士団員が立っていた。
「ここがそうか?」
「そうです」
「生体反応確認。1つだけです」
「家にはハリーだけか…では行くぞ」
ムーディがドアノブに手を掛ける。
「チッ、鍵か面倒だ」
ムーディが杖を手にする。
「解錠します」
デルフィがムーディの前に割り込むと、瞬時にピッキングで解錠する。
「なんだ、鍵があるなら最初から開けておけ」
「ピッキングです。簡易的な鍵なので解錠は容易です」
「へぇ…マグルはこんなものを使うのか」
デルフィの手にするピッキングツールをアーサーは興味深く見ていた。
「まぁいい、入るぞ。全員警戒を怠るな」
ムーディを先頭に不死鳥の騎士団員はダーズリー家へと侵入を開始する。
「うわぁ、なんだこれ?」
「うぉ! 光ったぞ!」
「こっちは音が鳴った!」
侵入後不死鳥の騎士団員の半数は、周囲にある電化製品を弄っている。
どうやら、電化製品が珍しい様だ。
「不用意に触るな! マグルの物だ。腕が消し飛ぶかもしれん」
「ひえぇ…」
ムーディが周囲を警戒している中、上の階から接近する生体反応を確認する。
「誰だ!」
ムーディが振り向き様に階段の方へと杖を向けると、そこには杖を手に警戒状態のハリーの姿があった。
「おい坊主、杖を下ろせ!」
「え? ムーディ…先生?」
私が室内灯のスイッチを入れると、不死鳥の騎士団員は驚愕したように身構える。
「なんだ!」
「急に明かりが!」
「あれ? エイダにデルフィまで」
ハリーは杖を下ろすと首を傾げる。
「驚かすな。まったっく…まぁいい。先生かどうかはよくわからん。何せ教える機会がなかっただろうが? ここに降りてくるんだ。そしてちゃんと顔を見せろ」
ハリーが階段を降り、こちらへと向かう。
「やぁ。ハリー元気だった?」
「無事か? 食事はちゃんと摂っているのか?」
「シリウス! ルーピン先生!」
ハリーはシリウスに駆け寄ると、抱き着く。
「無事で何よりだ。良く顔を見せてくれ」
シリウスはハリーの両頬に手を添え、顔を覗き込む。
「良し! ハリーだ! 間違いない!」
「本当か? ポッターに化けた死喰い人を連れ帰ったら笑いごとじゃ済まないぞ」
「心配しすぎだぞマッドアイ。ハリーに間違いない」
「だと良いがな」
ムーディは依然として周囲を警戒している。
そんな時、ハリーが手にした杖をズボンのバックポケットに仕舞い込む。
「おい、そんなところに杖を仕舞うな!」
その瞬間ムーディが怒声を上げる。
「もし火が点いたらどうする? おまえよりもしっかりした魔法使いがそれでケツを失くしたんだぞ!」
「それ本当? 一体誰?」
不死鳥の騎士団員の一人が興味深そうに問いかける。
「誰でもよかろう。とにかく尻ポケットに杖を入れるな」
「は、はい」
ハリーは杖を手にした後、どうするか迷た挙句、手に持ったままにしていた。
「さて、目標も無事に達成した。後は帰るだけだな」
「帰るって…どこへ行くんです? それにどうやって?」
「隠れ家だ。帰り道は箒を使う。それしかないだろう」
「でも…僕の箒は…」
「持ってないのか?」
「ホグワーツに…」
「なんてことだ!」
「ご安心ください。退路は確保済みです」
私の言葉に不死鳥の騎士団員の視線が集まる。
「用意周到だな小娘。どうするんだ? まさか歩いて帰るなんて言わないだろうな」
「車を用意して有ります」
数日前にイギリス郊外で仕入れた中古車だ。
この時代は規制が緩く、仕入れ店舗も未登録の店だったようで多少の金額の上乗せにより無免許の未成年でも中古車の購入が可能だった。
無論、この際の金額は経費として後日請求する。
「車で行くの?」
「そうです」
唯一車の知識があるハリーだけが驚いており、不死鳥の騎士団員は首をかしげている。
「本当にそんな物で大丈夫なのか? 敵は何時襲ってくるか分からんぞ」
「周辺3キロ圏内に魔法及び高エネルギー反応は検知されておりません」
「よく分からん言葉を使うな。もっと簡単に言え」
「周囲に敵対する魔法使いは存在しません」
ムーディは少し考えた後、数回頷く。
「分かった。部隊を2つに分けよう。箒で移動する囮と。その車とか言う乗り物で移動する本隊だ」
「了解」
「メンバーは決めておく。小僧さっさと準備をしろ」
「え? うん」
ハリーはリビングから出ると準備を急いだ。
私達は玄関を出て道路へと移動すると、ベクタートラップ内に収納したマイクロバスを取り出す。
「うぉ…どこに仕舞って居たんだこれ? 検知不可能拡大呪文?」
「その様な物だと思っていてください」
「へぇ…」
アーサーはマイクロバスの周囲を移動すると、興味深く見ている。
「いや、私も車を持っていたんだけど。これとは全然違っていてね。かなり綺麗だね。この車は空は飛ばないのかい?」
「飛びません」
「車で空を飛ぶ必要性はありません」
「ま…まぁ…そうだね…」
数分後、荷物をまとめたハリーが下りてきた。
「これに乗るの?」
「はい」
「誰が運転を?」
「私が行います」
デルフィが手を上げる。
「運転できるの?」
「問題ありません」
「何か不安だなぁ…」
ハリーは荷物をマイクロバスに積み込むと、座席に座る。
その後、ルーピン、シリウス、アーサーが乗車する。
「ワシ等は箒で行くぞ」
ムーディを始めとした不死鳥の騎士団員は箒を手に飛び上がる。
「それでは、我々も出発しましょう」
エンジンを始動させる。
「うぉ!」
「揺れたぞ!」
「大丈夫なのか!」
車に乗り慣れていない様で、3人は動揺している。
「問題ありません」
「シートベルトを着用してください」
「あぁ、わかったよ」
「シートベルトってなんだ?」
「これだよ」
アーサーが他の2人にシートベルトの装着方法を教え、全員が装着する。
「発車します」
アクセルと吹かし、緩やかに発車する。
「動いた…」
数分後には大通りに入り、車の流れに合わせ速度を上げる。
「こんなに早くて大丈夫なのか?」
「おい! ぶつかるぞ!」
後部座席で、シリウスとルーピンが声を荒らげ、アーサーはシートベルトを掴んで震えている。
十数分後には問題無く目的地に到着する。
「到着です」
「うぅ…」
「なんか気持ち悪い」
「吐きそうだ…」
乗り物に酔ったのか3人は降車すると顔色を悪くする。
車をベクタートラップ内に収納する。
「じゃあ、今から開けるよ」
シリウスが杖を振ると、ブラック邸への道が開ける。
そのまま、彼等と共に、私達はブラック邸へと帰還する。
AI制御なので、安全で安心な運転です。