まぁ、この小説ではアンブリッジよりダンブルドアの方が質悪い感じになっていますが…
今年からはふくろう試験と言うのが行われる。
学年末に実施されるテストでその結果によって将来の仕事に大きく影響する。
今年に入って初めての闇の魔術に対する防衛術の授業。すなわちアンブリッジの授業の時間がやって来た。
私達が教室に入ると、そこには既にアンブリッジの姿があり、教壇に座っている。
「皆さん! こんにちは!」
アンブリッジの甲高い声が響き渡る。
数名の生徒が呆れた様に挨拶に返事をしている。
「いけませんねぇ、全然元気が無いですね。いいですか、『アンブリッジ先生!こんにちは!』って言ってみましょう」
その後、嫌々そうに大半の生徒が挨拶を返した。
「うん、よろしいです。さて、それでは授業を始めますよ。杖は仕舞ってくださいね。ペンだけあれば大丈夫ですよ」
アンブリッジはそう言うと黒板の前に置かれている椅子に腰かけた。
「さて…皆さん、この科目の授業はかなりおかしな事になっています。毎年先生が替わってしまったせいでしょうかね。不幸な事に皆さんの学力ではふくろう試験を受けるレベルを大きく下回っています。でも安心してくださいね。今年は慎重に構築された理論中心の魔法省指導要領通りの授業にしていきます。さぁ、この本を書き写してください」
アンブリッジが杖を振るうと、教壇に置かれていた分厚い本が私達の前に1冊配られた。
「皆さんに本は行き届きましたね。では始めますよ、5ページを開いてください」
アンブリッジは開かれたページを書き写す様に指示を出した。
その時、ハーマイオニーが真っ直ぐ手を上げた。
「どうかしました? 何か質問でも? でも今は本を読む時間ですよ、質問なら後で受けますよ」
「違います。この授業の目的についての質問です」
ハーマイオニーの質問を聞き、アンブリッジは目を細めた。
「貴女、お名前は?」
「ハーマイオニー・グレンジャーです」
アンブリッジは皮肉を込めたような笑い声を上げる。
「フフフっ…ミス・グレンジャー、授業の目的に付いてはこの本を読めばしっかりと理解できますよ」
「でも、この本には防衛呪文を使う事に関しては何も書かれていません」
「呪文を使うですって? まぁまぁまぁ…ミス・グレンジャー。貴女はこのクラスで防衛術を使うようなことが起きるとでも? そんなことありえませんよ」
『なんだって…あの木偶の坊以上に質が悪いじゃないか…』
『本当よ…最悪…』
「じゃあ、魔法は使わないの?」
ロンがヤジを飛ばすと、アンブリッジは再び目を細めた。
「私の授業で発言したい時は手を上げる事。貴方は?」
「ウィーズリー」
ロンはそう答えると、手を上げる。
それを遮る様に、再びハーマイオニーが手を上げた。
「まだ何かあるのですか? ミス・グレンジャー」
「あります。闇の魔術に対する防衛術は防衛呪文を練習することに意味があるんじゃないですか?」
「ミス・グレンジャー…貴女は魔法省の人間ではないでしょう第一、これは魔法省で決められたことですよ。皆さんが呪文に付いて学ぶのは――」
「そんなの何の役に立つ!」
アンブリッジの言葉を遮る様にしてハリーが声を上げた。
「もしも僕達が襲われるとしたら、そんな方法じゃ!」
「挙手をしなさい! ポッター! 第一誰が皆さんを襲うと言うのですか!」
息を荒らげたアンブリッジが、ハリーに問いだ。
「現状確認される敵対勢力は、ヴォルデモートを中核に置いた死喰い人と推定されます」
「現在のホグワーツの防衛レベルでは、大部隊の敵兵力に対する防衛能力は籠城戦においても不利だと判断されます」
「拠点防衛兵器等の設置をおススメします」
デルフィの発言に、その場に居た全員の視線が集まる。
「グリフィンドール10点減点です! 貴女はデルフィ・イーグリットにエイダ・イーグリットですね!」
アンブリッジは極度のストレス下にあるのか、金切り声を上げる。
「この際ですから、はっきりと言いましょう…皆さんはある闇の魔法使いが戻ったという話を聞かされていますが――」
「アイツは生きていたんだ! 蘇ったんだ!」
「黙りなさい! ポッター! 貴方の言う事は出まかせです!」
「出まかせなんかじゃない! 僕は見たんだ! 君達も見ただろ!」
「はい」
「我々もその場に居合わせました」
「でたらめを言わないで! 3人とも罰則です!」
アンブリッジが叫び声を上げた後、肩で息をしている。
「はぁ…はぁ…良いですか! 明日の夕方、私の部屋へ来なさい! さて皆さん、教科書の5ページを開いて――」
「だからそんなのが何の役に立つっていうんだ!」
ハリーは怒りに任せて椅子を蹴飛ばしている。
「落ち着きなさい! ポッター! 貴方は幻覚でも見たのでしょう、それにこの授業は理論を完璧に覚えられます!」
「理論だけでどうにかなる問題じゃないんだ!」
『実際、魔法ってのは理論でどうにかなるものじゃ無いからね』
『なんだか、こんなの馬鹿馬鹿しく思えて来るわ…』
『いっその事、自習の方が良いんじゃないか?』
『確かにそうね…』
「良いですか! 理論さえ完璧ならば、魔法は完璧なのです!」
「ですが、眼前の敵対勢力が敵意を向けた場合、自衛行動は必須かと思われます」
「五月蠅いです! 私の授業は完璧なのです! 文句があるなら受ける必要はありません!」
アンブリッジがヒステリックになると同時に、終業を告げる鐘が鳴った。
「良いですか! 宿題を出します! 教科書の書き写しを羊皮紙に10枚です! 貴女達は罰則として30枚です!」
アンブリッジはそう言い終えると、教室を後にした。
翌日
私達とハリーはアンブリッジに呼び出され、彼女の自室へと入室する。
「失礼します…うわぁ…」
入室と同時に、ハリーが表情を曇らせる。
部屋の壁紙はピンクで統一されており、猫の写真が大量に飾られていた。
「良く来たわね。逃げるかと思ったわ」
アンブリッジはそう言うと、私達を椅子に座らせた。
「さて…と。貴方達は私の授業で嘘の発言をして、皆を困らせた」
「違う! 本当の事を言っただけで!」
「黙りなさい!」
アンブリッジはヒステリックな声を上げる。
「さて、罰則ですが。簡単です」
そう言うと、私達の前に、羊皮紙と羽ペンが置かれる。
この羽ペンからは、魔力を検知する。
どうやら、書いた文字を使用者の体表に刻印するようなものだ。
魔法とはやはり理解できない技術がまだある。
「羊皮紙3枚に。『私は嘘をついてはいけない』そう書きなさい」
「え…でも」
「良いから早く!」
ハリーは顔を歪め、自分の羽ペンを取り出そうとする。
「ここにあるでしょ。これで書きなさい」
「は…はい…」
ハリーは羽ペンに手を掛ける。
その手をデルフィが掴む。
「え?」
「何をしているのです!」
「ホグワーツでは体罰の類は認められていない筈です」
「ドローレス・アンブリッジ。貴女が行おうとしている行為は虐待及び体罰に当たります」
「事と次第によっては、職を解かれる可能性があります」
アンブリッジは一瞬だけ後退る。
「これは、私の決定です。それはつまり、魔法省全体の決定でもあるのですよ!」
「魔法省は無関係だと思われますが」
「五月蠅い!!」
アンブリッジは手近にあったティーカップをこちらに投げつける。
筋力が脆弱な為、ティーカップは私達の足元に落下する。
「ハァ…ハァ…」
ヒステリックを起したアンブリッジは肩で息をしている。
「満足しましたか?」
「気は済みましたか?」
「うぅうぅう! 五月蠅い! もう結構です! さっさと出て行きなさい!」
私達はアンブリッジの部屋を後にし、その後をハリーが付いて来る。
人気の無い廊下を進む途中、ハリーが口を開く。
「助かったよ」
「お役に立てた様で何よりです」
「まったく、酷い教師だ。スネイプより嫌いだよ」
ハリーはそう言うと、小走りで走り出しだ。
「僕は先に談話室に戻ってるよ。ロンが心配していると思うし」
「了解です」
ハリーは軽く手を振ると、走り始めた。
私達はハーマイオニーに通信を繋ぐ。
『ねぇ、アンブリッジに呼び出されていたみたいだけど、大丈夫だった?』
『問題ありません』
『そう。それなら良かったわ。あのタイプは何をするか分からないから』
『体罰を受けそうにはなりました』
『えぇ! それで、大丈夫だったの?』
『体罰を受けるより前に、追い出されたので問題ありません』
『どういう状況なのよ…あっ、ハリーが戻って来た』
『我々も、少しで到着します』
『わかったわ』
私達は、談話室の扉を開けると、ハーマイオニーが軽く手を振っていた。
数日後
闇の魔術に対する防衛学の授業は、座学が続いた。
「さて、今日は教科書の10ページから25ページまでを羊皮紙に書き写しましょう」
「えぇ…」
「なんだよそれ…」
生徒から不満の声が上がる。
「エヘン。皆さん何か不満でも?」
「はい」
ハーマイオニーが手を上げる。
「またですか。なんです? ミス・グレンジャー」
「教科書を書き写す事にどんな意味があるのか分かりません」
「はぁ…」
アンブリッジは溜息を吐くと、首を横に振る。
「教科書を書き写す事で、しっかりと内容を覚える事が出来ます。そんな事も分からないのですか?」
「教科書なら何回も読んで。もう覚えました」
「はぁ…覚えた…ねぇ…」
アンブリッジは教科書を適当に捲る。
「では、88ページ、3行目の4文字目は?」
「え…」
「覚えているんでしょ?」
「えっと…」
「分からないわよね。間違った答えを言ったら減点20点ね」
「そんな…」
「分からないなら、『分かりません、私は虚栄を張りました、許してくださいアンブリッジ先生』と言えば減点は許してあげましょう」
「うっ…」
ハーマイオニーの表情が曇る。
『gだね』
『え?』
『あのカエル女が指定している文字はgだ』
トムがデータベースの記録を参照する。
「えっと…gです」
「ふふふっ…え? うそ…」
アンブリッジは教科書を何度も見直す。
「か、勘で答えたって駄目です。次は45ページ。9行目36文字目です」
『そのページの9行目は28文字までしか無いぞ』
「そのページの9行目は28文字までしか有りません」
「うそ…」
アンブリッジの表情が曇る。
「まだ続けますか?」
ハーマイオニーが得意げな表情をする。
「貴女1人が覚えたって意味は無いの。分かる?」
「でも…」
「良いから、書き写しなさい! これ以上言うなら減点しますよ!」
ハーマイオニーは溜息を吐きながら着席する。
『あんなのが教師か。ホグワーツも終わりだな』
『本当よ…本気で自分達で学ぼうかしら…』
『それがいい』
ハーマイオニーは嫌々ながら、羊皮紙に教科書を書き写し始めた。
開始3分後、私達は同時に教科書の書き写しを終わらせた。
「終了しました」
「え? うそ…」
提出後、羊皮紙を確認したアンブリッジは唖然としている。
「出来てる…」
「終了でよろしいですか?」
「お、終わったならもう1度です」
「無意味だと思いますが」
「口答えするんじゃありません! そこまで言うなら貴女達は100枚分書き写しなさい!」
「暴論では?」
「五月蠅い! できなければ100点減点です!」
アンブリッジのヒステリックな声が響き渡る。
その瞬間、教室中が騒めき立つ。
「了解」
私達は席に戻ると、両手にペンを持ち、教科書の書き写しを開始する。
「うわぁ…」
「なんだあれ…」
「書いてるよ」
「両利きってレベルじゃないな」
周囲の生徒の視線が集まる中、8分足らずで1人に付き100枚、合計200枚の羊皮紙が積み上がる。
「ご満足いただけましたか?」
「適当にやったんでしょ!! 減点します!」
「確認をお願いします」
「ふん! いい度胸ね少しでも間違ってたら減点よ!」
アンブリッジは羊皮紙を1枚ずつ確認し始めた。
それだけで、今回の授業は終了した。
両手を使う事で、高速でのコピー作業が可能です。
だったら普通にコピー機使った方が効率的ですがね。