ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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少しずつですが、主要メンバーが顔を見合わせします。


蒸気機関車

   店を出ると、マクゴナガルが私達が手にしている紙袋を見て、数回頷いている。

 

「終わったようですね」

 

「おかげ様で必要な物が揃いました」

 

「感謝いたします」

 

「それが仕事ですから、ではそろそろ帰りましょう。買い忘れなどはないですか?」

 

「問題ありません」

 

「では行きますよ」

 

 私達は、来た時と同様に、マクゴナガルの手を取ると、次の瞬間、空間の歪みに吸い込まれた。

 

 

 次に地面に立った時には、見慣れた我が家の前に立っていた。

 

「本日はお疲れ様でした。後日ホグワーツ行きのチケットと、必要な教材を家に届けます。何か質問はありますか?」

 

「特筆するべき点はありません」

 

「そうですか、では次は、ホグワーツで会いましょう」

 

 そう言うと、マクゴナガルの周囲の空間が歪み、一瞬で姿を消してしまった。

 

 あの技術は一体何なのだろう?

 

 ウーレンベックカタパルトの一種だろうか?

 

 

 そんな事を考えながら、私達は我が家へと入って行った。

 

 

  数日後、我が家の前に数十冊の古めかしい教科書と1通の封筒が届いていた。

 

 封筒の中身は、ホグワーツ魔法学校行きの汽車のチケットと教科書類の請求書と詳細な日程表が入っていた。

 

「9月1日が入学式ですか…数日後ですね」

 

 背後から日程表を覗き込んだデルフィは詰まらなそうに呟く。

 

「そうですね。準備を始めましょうか」

 

 私達は、必要な学用品をベクタートラップ内に収納すると、届いた教科書を速読しデータベースに記録していった。

 

 30分程で目の前にある教科書の内容をデータベースに記憶する事が出来た。

 

「書籍データの記憶を終了しました」

 

「これでこの本は用済みになりましたね」

 

「そうですね」

 

 私は本を手に取ると、ベクタートラップ内に収納する。

 

「これで、必要な物は揃いましたね」

 

「そうですね」

 

「では、休息を取りましょう」

 

 私達は、パジャマ姿になると、同じベッドに潜り込む。

 

 ベッドで横になると同時に、デルフィが私の頬を突き始めた。

 

 3度目を突こうとした瞬間、その手を取り、捻る。

 

「痛いです」

 

「当然の結果です」

 

 私が手を離す。そこにはデルフィの折れ曲がった腕があった。

 

「失礼しました」

 

 折れた腕を見ていたデルフィは軽く腕を振ると、折れた腕が一瞬で元通りになる。

 

「それでは、おやすみなさい」

 

「えぇ、おやすみなさい」

 

 私は目を閉じ、休息を取る。

 

 

 数日が経ち、9月1日がやって来た。

 

「準備はできましたか?」

 

「万全です」

 

 私の問いかけに対し、デルフィはポケットから取り出したチケットをチラつかせる。

 

 私達は現在、ホグワーツ指定の制服のデータを体表に投影している。白いシャツ、青い色のネクタイにベストを羽織り、ローブに腕を通し、プリーツスカートに白いニーソックスと黒いローファーを着込んでいるように見える。

 

 制服を着用しても良かったのだが、その場合ある問題が発生する。

 

「では出発です」

 

 我が家を出た後、自立型の防衛システムを起動させ、私達はバーニアを展開し、ある程度の高度まで飛び上がる。

 

「ステルスON」

 

 上空でステルスシステムをONにする。

 

 その瞬間、私達の姿は周囲の背景と同化する。

 

 服を着ていた場合、服は周囲の景色と同化する事は無いので、服だけが浮ているような状況になってしまう。

 

「巡航モードへ以降。発進します」

 

 バーニアの出力を上げ、周囲の環境に影響のない程度の速力で、飛行を開始する。

 

 最大出力ならば数秒も必要ないだろうが、その場合ソニックブームによる衝撃波の影響で甚大な被害が出る。

 

 速力を調整した結果、5分程で私達は、キングス・クロス駅の上空にやって来た。

 

 上空からスキャンし、人気のない場所を探し出すと、その場に向かい、降下を開始する。

 

「着地します」

 

 音を立てないように着地した私達は、ステルスを解除し、周囲を見渡す。

 

 先程のスキャン結果で分かっていたことだが、この駅には多くの人々が行きかっている。

 

「では行きましょうか」

 

 隣に着地したデルフィから1枚のチケットを受け取る。

 

 チケットには『キングス・クロス駅 9と3/4番線』と記載されている。

 

 周囲を注意深く確認すると、駅のホームの支柱の一部に空間の歪みの様な物を検知した。

 

 それと同時に、その柱に大量の荷物を載せたカートを押しながら走り込む人物の姿を捉えた。

 

「発見しました」

 

 私達は、柱の前へとやって来た。

 

 周囲の人々と違うところと言えば、カートを押していない事くらいだろうか。

 

 

「突入します」

 

 歩き出したデルフィの体は、柱にぶつかる事なく、そのまま飲み込まれていった。

 

 私もその後を追う様に、柱の中へと入って行った。

 

 柱を抜けた先は、先程のホームとは別のホームとなっており、紅い色の蒸気機関車が停車しており、時々蒸気と警笛を鳴らしている。

 

「蒸気機関とはまた古い物を」

 

「えぇ、あまりにも非効率的です」

 

 古風な蒸気機関を一瞥した後、再び周囲を見渡すと、駅のホームだと言うのに、猫が走り回り、空にはフクロウが飛び交い、地面にはカエルが飛び跳ねている。

 

 恐らく、ホグワーツへ通う生徒達のペットなのだろう。

 

 蒸気機関車の客室部では、窓から身を乗り出した生徒が、両親と思われる人物と別れを惜しんでいる姿が見受けられる。

 

 私達は、そんな一団の横を通り抜けると、蒸気機関車へと乗り込んだ。

 

 客室部は、通常の列車とは異なり、扉の付いた、コンパートメント型の様だ。

 

 私達は、空室のコンパートメントの席に腰を掛ける。

 

 コンパートメントの内部は、それほど広くはなく、定員が7名前後と言ったところだろうか。

 

 

 

 

  しばらくすると、発車を告げる警笛が鳴り響き、車体が振動すると同時に、低速で動き始めた。

 

 車窓から見える風景は、火星の大地とは異なり、自然あふれる景色と青い空が広がっている。

 

 しかし、生憎な事に、私達にそれを楽しむ機能は付いていない。

 

 現在の車両速度とおおよその目的地との距離関係から到着予想時刻を計算したが、少なく見積もっても付くのは日が傾いてからだろう。

 

 特にやる事も無いので、私達は日課となったシステムチェックと、火器管制のチャックを行おうと、ホログラムを展開させる。

 

 ホログラムの展開が完了すると同時に、扉がノックと同時に開かれる。

 

「あの……相席良いかし……何やってるの?」

 

 コンパートメントの扉を開けた、茶髪でぼさぼさの長い髪で少し出っ歯の少女は、ホログラムを見て唖然としている。

 

「お気になさらず。空いているところへどうぞ」

 

 私達はホログラムを仕舞い込むと、バックグラウンドでの作業に入りながら、唖然とした表情の少女を招き入れた。

 

「なら、そうさせてもらうわ。それにしても今のは何? 魔法?」

 

「その様な物だと考えていただいて結構です」

 

 デルフィが適当に話を合わせると、少女は目を輝かせながら、饒舌な口を開く。

 

「やっぱり魔法ってすごいと思うの。私自身、魔法の素質があるなんて知らなかったわ。自己紹介がまだだったわね。私はハマイオニー・グレンジャー。でも皆、ハーマイオニーって呼ぶわ。だからハーマイオニーで良いわよ。ところで貴女達名前は?」

 

「エイダ・イーグリットです」

 

「デルフィ・イーグリットです」

 

「エイダにデルフィね。2人は姉妹なの?」

 

「えぇ。そのように認知していただいて問題ありません」

 

「ふーん…なかなか面白い喋り方をするのね。貴女達って。同じ年なんだからそんな硬い喋り方じゃなくても良いのよ」

 

「お心遣い感謝いたします。ですが、我々はこの方が落ち着くので」

 

 私はデルフィの意見に賛同するように、数回頷く。

 

「そう。ところで――」

 

 目の前の少女、ハーマイオニーが何かを喋ろうとした瞬間、再びコンパートメントの扉がノックされる。

 

「あの…ここってまだ空いてる? 他の所は一杯で……あっ。でも女の子だけで話をしたいなら別に…」

 

 扉の向こうには、おどおどとした丸顔でを丸めている少年が立っていた。

 

 私はデルフィの方を一度見ると、互いに頷く。

 

「私達は問題ありません」

 

 丸顔の少年は、対面に座っているハーマイオニーの方に視線を向ける。

 

「私も良いわよ。私はハーマイオニー・グレンジャー。で、こっちの2人が、エイダとデルフィ。姉妹らしいわ。だから声も似ているのね」

 

「エイダ・イーグリットです」

 

「デルフィ・イーグリットです」

 

「うん、ありがとう。僕はネビル・ロングボトム。よろしく…」

 

 少年は、一言開けそう言うと、大きな荷物を荷台に仕舞い始めた。

 

「そう言えば、エイダにデルフィ。貴女達の荷物が見当たらないけど。どうしたの?」

 

 必要な荷物は全てベクタートラップ内に収納しているが、ここでその話題を出すのは不適切だろう。

 

「私達の荷物は少量なので、先に目的地に届けてあります」

 

「そうなの? 確かにその方が便利ね。私もそうすれば良かったわ」

 

 ハーマイオニーは何度か頷くと、思い立ったように、荷物を漁り始める。

 

「これじゃなくて…えーっと…あった!」

 

 ハーマイオニーは荷物の中から、1冊の本を取り出した。

 

 表紙から判断するに、今年の授業で使う教科書だ。

 

「ねぇ、彼方達、もう教科書には目を通した? 本当にすごいわね。私なんて何回も読んで、暗記したわ!」

 

「す、すごいね…僕なんて表紙すら開いてないよ」

 

「読んだ方が良いわよ。とても素晴らしいわ! ねぇ、貴女達はもう読んだ?」

 

「全ての書籍は一通り拝読し、記憶しました」

 

「やっぱり! なんか、貴女達って勉強が好きそうな感じだもん!」

 

 私の回答に対して、ハーマイオニーは上機嫌で答えた。

 

 その時、コンパートメントの端で、自身の荷物を漁り始めたネビルが不安交じりの声を上げた。

 

「あれ…どうしよう…」

 

「どうかしたの?」

 

 ハーマイオニーが問いかけると、メンタルコンデションレベルが低下し始めたネビルが声を荒げた。

 

「居ないんだよ! 僕のトレバーが居ないんだ!」

 

「トレバー?」

 

「うん。僕の蛙なんだけど…どうしよう…」

 

「大変じゃない! どこで居なくなったか分かる?」

 

「えーっと…わかんないよ!」

 

 焦り始めた二人は、軽いパニックを起こしている。

 

 私は車両全体をスキャンすると、最後尾車両の一角に、人間よりも微弱で、体温の低い生体反応を検知した。

 パターンから考えて、変温動物であることが予想される。

 

「最後尾車両に、動体反応を検知しました。おそらくお探しのカエルかと推測されます」

 

「ホント? 僕ちょっと行ってくる!」

 

 踵を返す様に、勢い良くコンパートメントの扉を開けはなったネビルが勢いそのままに外へと出て行った。

 

「貴女、本当にトレバーの場所が分かったの?」

 

「現状から考えた結果です。高確率で正解でしょう」

 

「でもどうしてわかったのよ」

 

「魔法の様な物です」

 

「そうなの?」

 

 魔法という言葉は随分と便利な物だ。

 

 数分が経った頃、ハーマイオニーがそわそわしながら立ち上がった。

 

「私心配だわ…ちょっと見て来るわ」

 

「そうですか」

 

 私達はコンパートメントとの扉を開けて外へと出ていくハーマイオニーの後姿を見送った。

 

 

  しばらく歩いた後、別の車両へ移動したのを確認した後、扉を閉めようとしたとき。

 

「おや、君達はあの時の」

 

 振り返ると、そこには、制服の採寸を行った店に居た少年と、大柄の2人の少年が立っていた。

 

「お久しぶりですね」

 

「そうだね。コンパートメントから顔を出してどうしたんだい?」

 

「カエルを探すと言うので見送っていました」

 

 デルフィが答えると、少年は呆れた様に首を振りながら溜息を吐いている。

 

「ネビルのカエル探しだろ? あいつはドジでいつも何か失くしているんだ。君達も探すのを手伝わさせられているのかい?」

 

「いえ、すでに発見済みです。捕獲は当人達に任せてあります」

 

「なるほど、という事は君達が見つけたのかい?」

 

「大方その様に考えていただいて構いません」

 

 私が答えると、少年は数回頷いている。

 

「あのカエルを見つけるとはね…どうやら君達は相当優秀なようだね。そうだ、自己紹介がまだだったね。僕はドラコ・マルフォイだ。こっちのデカいのがクラップ。そしてゴイルだ」

 

 マルフォイの後ろに控えていた二人は、軽く頷いている。

 

「私は、エイダ・イーグリットです」

 

「私は、デルフィ・イーグリットです」

 

「エイダに、デルフィ。2人ともよろしく。あまり聞かない名前だね。もしかして出身は遠いのかい?」

 

「アンティリアです」

 

「アンティリア?」

 

 私はデータベース上に地球上でアンティリアに類似する地名を発見する。

 

「正式には、モンターノ・アンティーリア。イタリア、カンパニア州サレルノ県の基礎自治体(コムーネ)です」

 

「あー…つまり君達はイタリア出身? それにしては言葉が上手だね」

 

「我々は多数の言語で会話できますので」

 

「へぇ…それは凄いな…さて、とても有意義な話が出来たよ」

 

「こちらこそ」

 

 マルフォイは軽く挨拶をすると、踵を返し、別の車両へと消えていった。

 

 コンパートメント内に戻り十数分後、満面の笑みで、カエルを小脇に抱えたネビルとハーマイオニーがコンパートメントへと戻って来た。

 

「ありがとう! 本当に最後の車両の隅に居たよ!」

 

「本当に居たわ。でたらめじゃ無かったのね」

 

「当たり前です」

 

「インチキ占いかなにかかと思ったわ」

 

「一緒にしないでください」

 

 嬉しそうな表情で、膝の上にカエルを乗せたネビルのメンタルコンデションレベルは通常よりも高い数値だ。

 

「それだけじゃないんだ! あのハリー・ポッターにも会ったんだ!」

 

「同じ年だとは聞いていたけど、同じ学校だとは思わなかったわ!」

 

 ハーマイオニーとネビルは若干興奮気味に話している。

 

 私達は、『ハリー・ポッター』という人物名に該当するデータが無く、反応を示さないでいると、ハーマイオニーが口を開いた。

 

「まさか、貴女達ハリー・ポッターを知らないの? 生き残った男の子よ! 赤ん坊の時に唯一例のあの人を撃退した有名人よ!」

 

「そうなのですか。こちらについてはあまり詳しい事は知らないので」

 

「そうなの? 貴女達もマグル生まれなのね!」

 

「マグルとは一体何でしょう?」

 

「えっとね。マグルって言うのは両親が魔法使いじゃない人の事だよ」

 

 ネビルの説明に対して、ハーマイオニーは数か頷いている。

 

「そうなのよ。貴女達のご両親は?」

 

「我々に親はいません」

 

 デルフィがそう言うと、2人はバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「その…ごめんなさい」

 

「…………」

 

「お気遣なさらずに」

 

 私がそう言うと、2人は小さく頷いた。

 

 その後、私達は他愛のない世間話を聞きながら、時間を過ごし、終点に到着した車両が速度を落とし始めた。

 




遂に、ホグワーツに乗り込みました。
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