シリウスがアーチに吹き飛ばされた瞬間を見たベラトリックスのメンタルコンデションレベルは最高潮を迎えた。
「しーんだしんだシリウス・ブラック!」
「もう良い! 退くぞ!」
ルシウスとベラトリックスは吹き飛ばされていくシリウスを一瞥した後、扉の向こうへと消えていった。
「シリウス!!」
「ハリー…」
ハリーが手を伸ばすが、シリウスの体は完全にアーチの奥へと消えていった。
「シリウスーーー!!」
「そんな…シリウスが…」
アーチに飲み込まれたシリウスを目の当たりにしてハーマイオニーのメンタルコンデションレベルは低下する。
「ねぇ! 貴女達なら助けられる?」
「可能です。ですが可能性はそれほど高くありません」
「お願い!」
「了解」
私達はバーニアの出力を最大にし、ゼロシフトを併用しアーチの中へと突入する。
アーチ内部はワームホールと化しており、空間圧縮率は高位である。
「微弱ながら生体反応を確認。救助対象者だと思われます」
「救助を開始します」
私達は反応の有る地点へと移動する。
そこには気を失い、空間圧縮により、全身の骨と内蔵にダメージを受けている瀕死のシリウスが浮遊していた。
「回収を開始します」
「了解。ベクタートラップ開放」
デルフィはベクタートラップを開放し、空間圧縮の反動を利用し、圧縮空間を拡張する。
それにより、人体にダメージの無いレベルにまで圧縮率が下がる。
私はシリウスに接近し、回収する。
「回収完了。医療用ナノマシン注射」
使い捨ての医療用ナノマシンをシリウスの静脈に注射する。
これにより、応急処置を済ませる。
「帰還しましょう」
私達は低速を維持しワームホールを抜ける。
先にシリウスの胴体をアーチから出し、ベクタートラップを解除し、私達もアーチから出る。
「シリウス!!」
「無事か!」
「全身に重度のダメージを負っています。早急に処置してください」
「分かった!」
不死鳥の騎士団員数名が治癒魔法を施し始める。
「許さない!」
ハリーは突如として走り出し扉を抜けて行った。
「ハリー!」
「追いかけます」
「私も行くわ!」
私達はハーマイオニーと共に先行したハリーを追う。
扉を抜けた先にはハリーとダンブルドア。そして――
「ヴォルデモート…」
ダンブルドアとヴォルデモートは互いに睨みあって居る。
「ほぉ…早速だが予言を渡してもらおうか」
「誰がお前なんかに!」
「ならば力ずくで奪おう」
ヴォルデモートは杖を構える。
「ハリー、下がるのじゃ」
「でも!」
「良いから下がるのじゃ! お主達も手出しは無用じゃ!」
「了解」
『さて、どっちに賭ける?』
『そうね、どっちもどっちって感じね』
『それじゃ賭けにならないじゃないか』
「行くぞ!」
「相手をしてやる!」
ダンブルドアが杖を振り魔法を放つ。
「じゃ!」
対するヴォルデモートは迫り来る魔法を自身の杖で防ぐ。
「どうしたダンブルドア? その程度か?」
「おのれ…」
「では行くぞ!」
ヴォルデモートは軽く杖を振る。
その際体を走るエネルギーラインが光輝き、エネルギーが増大する。
メタトロンのエネルギーが加わった魔法がダンブルドアに直撃する。
「ぐぉおお!!」
魔法が直撃し、ダンブルドアの体が吹き飛ばされる。
「たった1発で倒れるとは…その程度にまで落ちぶれたか…年を取ったなダンブルドア」
「お主…その力は…一体…」
ヴォルデモートは緩やかな足取りで倒れ込むダンブルドアに接近する。
それに対しダンブルドアは倒れたまま後退する
「く、来るな! 来るで無い!」
「俺様が怖いのかダンブルドア? この俺様に恐怖しているのか?」
ヴォルデモートの表情が醜く歪む。
対するダンブルドアは恐怖に顔を引きつらせている。
現状ダンブルドアの生殺与奪はヴォルデモートが握っている。
『今の貴方って結構強いのね』
『メタトロンの影響もあるが、ダンブルドアが年を取りすぎたってのもあるな』
『寄る年波には敵わないって訳ね』
その間もダンブルドアは後退するが、遂には壁際へと追いやられる。
「くぉ…」
「残念だ。まぁいい。これで終わりにしてやる」
ヴォルデモートはダンブルドアに杖を突き付ける。
「や、やめるのじゃ…」
「死ね」
ヴォルデモートは杖を振り上げ、ダンブルドアは子供の様な防御態勢を取り顔をそむける。
「待て!!」
ハリーが叫び声を上げる。
「ん? なんだハリーよ」
「予言を渡す! だからダンブルドア先生を殺すな!」
「ダメじゃ! 渡してはならん!! ハリー!!」
「貴様は黙って居ろ」
ヴォルデモートは倒れ込むダンブルドアの顔を蹴り上げる。
「ぐぉ!」
『うわぁ、今のは良いのが入ったね』
『憎しみが込められていたわね』
『そりゃね』
『そろそろ助けてあげたら?』
『老害が手を出すなって言っていたんだ。もう少し様子見た方が良いだろう』
『そう言うものかしら?』
『そう言うものさ』
「賢い選択だな。予言を渡せ」
「分かった。ダンブルドア先生から離れろ」
ヴォルデモートは杖を突き付けたままダンブルドアから数歩立ち退く。
「これでいいだろ?」
「分かった。予言を渡す」
ハリーはガラス玉を下手で投げる。
投げられたガラス玉は放物線を描きヴォルデモートの手中へと収まる。
「確かに予言だ。感謝するぞハリー」
「予言は渡した! さっさと消えろ!」
「………」
ヴォルデモートは無言でこちらに杖を向ける。
「ど、どういうつもりだ!」
『おや? これは』
『少し不味いわね。シールドの準備をしておいて』
『了解』
タブレット端末の出力がわずかに上昇する。
「貴様との約束はダンブルドアを殺すなと言うだけだ、貴様等を殺さないとは約束していない」
「汚いぞ!」
「ほざくな。さて、手始めにそこの小娘を殺すか」
ヴォルデモートは杖を振り上げる。
それ際、体のエネルギーラインが赤く光り、出力が上がる。
「死ね!!」
「やめろ!!」
ハリーの喚き声が響き、ヴォルデモートは杖を振り下ろし魔法が放たれる。
「防衛開始」
迫り来る魔法攻撃をデルフィはウアスロッドで切り払う。
「攻撃開始」
私はビームガンの1発をヴォルデモートに向け放つ。
放たれたエネルギー弾はヴォルデモートの胴体へ直撃コースに乗る。
「くそぉ!!」
ヴォルデモートは杖を横に薙ぎ、エネルギー弾を杖で受け止め、体のエネルギーラインの輝きを増大させる。
「ぐあぁぁあぁあ!!」
しかし、エネルギー弾を受け止めきれなかったようで、ヴォルデモートの体は後ろへと吹き飛ばされる。
その際、手にしていたガラス玉が零れ落ち、砕け散る。
「ちぃ!!」
吹き飛ばされたヴォルデモートは上空で態勢を整えると、両足と片手の三点で着地する。
『見事な着地ね』
『スーパーヒーロー着地って言うらしいな』
『膝に悪そうだわ』
『しばらくは痛みが残るだろうね』
「くそっ!」
ヴォルデモートは顔を上げ、こちらを睨み付ける。
「ちぃ! どうやら貴様達相手では分が悪い!」
ヴォルデモートは数歩後退り、杖を振る。
すると、周囲の壁が崩れ落ち、メタトロン反応が急増する。
その場に5機のオービタルフレーム反応が現れる。
「まぁいい。貴様等の相手はコイツに任せる」
「敵オービタルフレーム。ラプタータイプを確認。コマンダータイプも確認されます」
ラプター
バフラム軍の主力をなす無人量産型オービタルフレーム。
汎用性が高く、骨格だけの外見が特徴的。
追加武装によって、マミーヘッド、サイクロプス、クラッドへと形態を変える事が出来る。
今回現れたタイプは室内戦闘を想定してか、2mの大きさだった。
コマンダータイプとはパーティーと呼ばれる敵小隊の戦闘力を向上させる指揮官機。
コマンダータイプを優先的に撃破する事で敵小隊の戦闘力を低下させる事が出来る。
「行け!」
ヴォルデモートが杖を振ると、5機のラプターは駆動音を鳴り響かせ宙へと舞い上がる。
『あれは…一体…』
『オービタルフレームラプターです。戦闘が予想されるため退避してください』
『わかったわ!』
「アクシオ! ハリー! ダンブルドア!」
ハーマイオニーは安全圏まで退避後ハリーとダンブルドアを引き寄せる。
「うぉ!」
「なんじゃ! 何をするんじゃ!」
「もう! 大人しくしてください! シールド展開」
『了解』
ハーマイオニーを中心に防衛シールドが展開される。
「これは一体…」
「この光は…」
「退避完了よ。こっちの事は気にしないで」
「了解。戦闘を開始します」
「戦闘予測時間90秒」
「了解60秒で片付けます」
私達は武装を展開し、リミッターを解除する。
「攻撃開始」
私達は同時にゼロシフトで近接攻撃を仕掛ける。
しかし、ラプターはコマンダータイプとコネクトし攻撃を回避する。
「敵コマンダータイプを優先的に撃破します」
「了解」
デルフィは飛び上がり、敵小隊の中心に突撃する。
「バーストモード移行」
私はバーストモードへ移行し、バーストショットの準備を行う。
「敵コマンダータイプ拘束」
敵パーティに突撃したデルフィは敵コマンダータイプを拘束する。
「「攻撃開始」」
デルフィがこちらに向けコマンダータイプを投擲する。
それに合わせ、私はバーストショットを放ち、高速で飛翔する敵コマンダータイプとバーストショットが激突する。
爆音共に周囲にエネルギーの余波が走り、周囲の装飾品や旗を焼き払う。
「うぉ!」
「凄まじいわね」
『シールドが無かったら少し危なかったな』
「敵パーティ、デスコネクト」
敵パーティの連携が乱れる。
「近接攻撃に移行」
「各個撃破に移行します」
連携の乱れたラプターの脅威レベルは低下する。
ゼロシフトを使用し、空接近し、ブレードで胴体部を切断する。
そのまま、上半身を掴むと、背後に接近していたラプターに投擲する。
ラプターに直撃した上半身は砕け散る。
直撃したラプターは体制を崩し、火花を散らす。
「攻撃します」
火花を散らし体制を崩しているラプターを中心から真っ二つに切り裂く。
中心から両断されたラプターは、そのまま両端に分かれると、そのまま小規模な爆発を起こす。
その時、残り2機の敵反応が消失する。
デルフィの展開したウィスプが縦横無尽に飛び回り、突撃攻撃を行い、ラプターを同時に撃破したようだ。
「戦闘終了」
「今回の戦闘における周辺への被害状況を報告します。建造物損壊軽微。味方死傷者無し。敵死傷者甚大」
「総合評価A」
「何と言う…力じゃ…この力は…」
「フッ、潮時か。今回はこれで退こう。次は容赦しないぞ」
「コイツは…まさか…」
「フハハハハハ!!」
戦闘終了後、魔法省の役人が扉を開け放ち突入する。
ヴォルデモートは高笑いをしながら、黒い煙に包まれ索敵圏外へと消えていった。
「何と言う…」
ヴォルデモートの姿を目にした魔法省の面々は、その場で茫然として居た。
ダンブルドア…
お辞儀さんの絶頂期です。