ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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何処の寮に入れようかな


組み分け帽子

 

   車両が完全に停止したのを確認した後、私達は車外へと降りる。

 

 車外ヘ降りた生徒達は、列を為して歩みを進める。

 

 しばらく歩くと、森の奥に石造りの古城が見えて来る。

 

 その古城からは、周辺よりも濃度の高い魔力の反応を検知した。

 

「良く来たな! イッチ年生! 歓迎しよう!! 盛大にな!」

 

 森の奥から、大声を上げながら、1人の男性が近付いて来る。

 

 その男性の外見は、他の人間とはかけ離れたほど巨大だった。

 

 簡易的な生体チェックだが、数値に異常はなかった。遺伝子操作と言う訳ではなさそうだ。

 

 マクゴナガルが以前話していた、巨人族なのだろうか。

 

「さて、皆このボートに乗れ。落ちるんじゃないぞ」

 

 大男は片手で器用にロープを手繰り寄せながら、簡易的な桟橋にボートを接岸させる。

 

 私達もボートに乗り込むと、安定性の悪いボートはゆっくりと古城へ向けて動き出す。

 

「あら? 貴女達、また会ったわね」

 

 背後から声を掛けられ、振り返ると、そこには先程同じコンパートメントに居た少女が座っていた。

 

「貴方は、ハーマイオニー・グレンジャーですね」

 

「ハーマイオニーで良いわよ。同じボートなんて奇遇ね」

 

「そうですね」

 

 しばらくボートが進むと、古城の桟橋に接岸する。

 

 桟橋には、エメラルド色のローブに身を包んだマクゴナガルが立っていた。

 

「良く来ましたね。足元に気を付けてくださいね」

 

 ボートから生徒達が足元に気を使いながら桟橋へと降りていく。

 

 私達も桟橋に足を付けると、その後にハーマイオニーが続く。

 

「あっ!」

 

 ボートから降りようとしたハーマイオニーはバランスを崩したのか、はたまた足を滑らせたのか、間の抜けた声を上げ、体がゆっくりと傾く。

 

「危ない!」

 

 マクゴナガルが声を上げ、ハーマイオニーは虚空を掴むかのように手を伸ばしているが、その手は何も掴むことは無かった。

 

「ベクタートラップ起動」

 

「捕縛を開始します」

 

 私はハーマイオニーとの間の空間をベクタートラップを使いその距離を圧縮する。

 

 それにより、ハーマイオニーの体は急激にこちらに引き寄せられる。

 

「掴みました」

 

 引き寄せられたハーマイオニーの左手をデルフィが掴み、右手を私が掴む。

 

「えっと…」

 

「ご無事ですか?」

 

「足元には気を付けてください」

 

「そ…そうね、助かったわ」

 

 無事に対岸に戻ったハーマイオニーは私達の手から離れると、共に入り口へと移動を開始した

 

 移動中、マクゴナガルがこちらに対して警戒した視線を向けるのを感じながら。

 

 

  古城へと侵入した私達は、石造りの階段を上りメインホールの入り口にまでやって来た。

 

「皆さん全員付いて来ていますね」

 

 マクゴナガルが周囲を見渡しながら、声を張り上げている。

 

「全員いますね。では、新入生の皆さん、入学おめでとうございます、これから皆さんの歓迎会と組み分けを始めます。組み分けとはとても重要な儀式です。これからの学生生活の7年間、皆さんには寮で生活していただきます。寮は全部でグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。どの寮も素晴らしい歴史があります。また、皆さんの良い行いは自分が所属する寮の得点になります。また悪い行いは減点の対象になります。そして年度末には最高得点を得た寮が寮杯の栄誉が与えられます。どの寮に入っても、皆さんが寮の誇りになる素晴らしい生徒になることを望みます」

 

 

 

 マクゴナガルの説明が終わると、周囲から疎らな拍手が上がる。

 

「さて、すぐに始めたいところですが、準備が有るので、しばらく待機するように」

 

 マクゴナガルはそう言うと、踵を返し、別の扉から何処かへと消えていった。

 

「やぁ、さっきの説明聞いていたかい?」

 

 振り返ると、マルフォイが得意げな表情で近付いてきている。

 

「一応は。事前情報では組み分けがあるとは聞いていませんでした」

 

「まぁ、大半の生徒は知らされずにやってくるのさ。あんな風な説明をしているけど、実際はスリザリンは純血や家柄。レイブンクローは頭脳明晰な生徒が集まるのさ。グリフィンドールは興味が無いからよく分からないけど、父上曰く、鬱陶しい連中の集まりらしい。ハッフルパフは落ちこぼれが行くって有名さ。きっとあのネビル・ロングボトムはそこだろうね」

 

「能力別に編成するのは、効率的です」

 

「まぁそうだろうね。君達の事だからきっとレイブンクローじゃないかな?」

 

「今までの発言から予想するに、彼方はスリザリンの可能性が非常に高いです」

 

「フッ、デルフィ。君の言う通りさ。僕の家系は全員がスリザリンなんだ。だから僕もそこに入るだろうね。案外君はスリザリンかもね」

 

「可能性はゼロでは有りませんが、我々は同じ寮を希望します」

 

 デルフィの急な発言に対し、私は顔を覗き込む。

 

「何か不満でも?」

 

「いえ。確かに私達が同じ配属になるのは合理的です」

 

 ふと周囲を見回すと、ハーマイオニーとネビルが2人の少年と何か話している様だ。

 

 そんな時、目が合ったのか、ハーマイオニーがこちらに向かって手を振っている。

 

「どうやら君達を呼んでいるみたいだ。行ってきたらどうだい?」

 

「えぇ、そうですね」

 

 

 私達は、人混みを掻き分けて、ハーマイオニー達へと近付く。

 

「どうしよう…僕…絶対ハッフルパフだよ…何の取柄もないし…」

 

 近寄ると、ネビルのメンタルコンデションレベルが先程よりさらに低下している。

 

「そんな事無いわよ…あっ。こっちよ」

 

 ハーマイオニーは嬉しそうな表情で、私達を迎え入れた。

 

「ねぇ、2人はどんな風に組み分けをすると思う?」

 

「詳しい事は分かりませんが、個人の能力や、精神的強さ、対人関係などが加味されるのが一般的かと」

 

「なんだ? その変な喋り方」

 

 声のする方に視線を向けると、そこには赤毛の少年と――

 

「あっ! 君は! あの時の!」

 

 制服の採寸時に、私達をぶつかりそうになった眼鏡の少年が立っていた。

 

「なんだ? ハリーの知り合いかい?」

 

「まぁね、僕が制服の採寸の時、ぶつかって来たんだ」

 

「正確には、そちらが唐突に扉を開き、我々と衝突寸前になったと言うべきです」

 

 デルフィが訂正すると、少年は明らかに不機嫌そうな顔になる。

 

「なんだよ。まるで僕が悪いみたいじゃないか」

 

「そちらに非が有るのは確かです」

 

「なんだと?」

 

 眼鏡の少年は怒った様に口調を荒げている。

 

「落ち着いてハリー! デルフィもあまり責めないで」

 

「まぁいいさ。僕はハリー。こっちがロンだ」

 

「エイダ・イーグリットです。こちらがデルフィ・イーグリット」

 

「よろしく。ねぇ、君達って顔も声もそっくりだけど双子? 髪色は違うみたいだけど…」

 

「えぇ、そうです」

 

「やっぱり。僕の兄貴達も双子なんだ。双子って大変さ。顔も一緒だし、兄貴達はそれを利用してよく悪戯しているし…」

 

 ロンは、疲れた様に首を横に振っている。

 

「そう言えば、君達さっきはあの辺に居たよね。あそこには金髪のいけ好かないマルフォイってヤツが居るんだ。知っているかい?」

 

「えぇ」

 

 私がそう答えた瞬間、ロンとハリーは苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「アイツは、純血至上主義の差別主義者さ。あまり関わらない方が良いぜ。それにあの悪名高いマルフォイ家の人間だ」

 

 どうやら、ロンはマルフォイの事を相当嫌っている様だ。

 

「僕のパパが言って居たけど、アイツ…というか、スリザリンに入る連中は全員が純血主義者らしいぜ。純血じゃないマグル生まれの魔法使いは認めないって連中さ。だから僕のパパはマグルを保護する活動を起そうとしているらしいよ」

 

 どうやらこの世界にも、火星と地球の様に、迫害や差別があるようだ。

 

 それにしても、この少年の思想も相当差別的だ。

 

「ご忠告感謝いたします。ですが貴方の発言にも、差別的要因が含まれています」

 

「何だって?」

 

 正直に答えたデルフィに対して、ロンは声を上げた。

 

「マグルや、純血主義についての理解はありませんが、家柄での他者への評価や、寮別に対する評価、そして、マグルを保護すると仰っていますが、保護をするという見方からして、貴方にも潜在的な魔法を使えない弱者に対する優位性からなる差別的思想が見て取れます」

 

 デルフィがそう言うと、ロンは顔を真っ赤にさせているが、反論する言葉は浮かばないようだ。

 

「さて、準備が整いました。1列に並びなさい!」

 

 マクゴナガルはそう言うと、大広間の扉が開き、私達はゆっくりと歩み始めた。

 

 

  中に入ると、派手な装飾品で埋め尽くされた空間が広がっており、空中には火の付いた蠟燭が浮かんでいる。

 

 しかし、その蠟燭の炎からは熱量の反応はなく、代わりに魔力の反応がある。

 

 大広間の大半は巨大で長いテーブルが4つ並んでおりその席の半数に在校生が座っていた。

 

 おそらくそれぞれが各寮に分かれているのだろう。

 

 そして、大広間の奥の1段高くなった所には、先程のマクゴナガルを始めとした複数人が椅子に腰かけている。

 

 恐らく教師陣だろう。

 

 その教師陣の中央に位置する場所には、白い髭を蓄えた、老齢の男性が座り、鋭い視線で周囲を見回している。

 

 そして、その男性からは、他の教師陣とは比べ物にならない量の、魔力を検知した。

 

 無人小型戦闘機、『モスキート』1機の運用程度なら可能な量を有している。

 

 周囲を見回すと、教師陣の前に椅子が置かれており、その上に古ぼけた帽子が置かれている。

 

 この帽子からも、魔力の反応を検知した。

 

 次の瞬間、帽子がいきなり歌いだした。

 

 歌の内容は各寮を紹介するような内容になっており、要約すると…

 

 グリフィンドールは勇気、ハッフルパフは優しさと忠実さ、レイブンクローは賢く、スリザリンは狡猾そして真の友を得る。

 

 という内容だった。

 

 

 

 歌が終わると在校生が拍手をした。

 

 そして、マクゴナガルが口を開き、これから行われる事に付いて説明を始めた。

 

 

「それではこれより組み分けを開始します。名前が呼ばれたら椅子に腰かけ帽子を被ってください。呼ぶ順番はこちらで事前に決めてあります」

 

 

 

 

 

「ハンナ・アボット」

 

 

 

 そう呼ばれた少女が椅子に座り、帽子をかぶると帽子の口が開かれた。

 

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

 

 その瞬間ハッフルパフのテーブルから歓声があがり、拍手が鳴り響く。

 

 選ばれた少女は少し照れくさそうに拍手されているテーブルへ近付き着席した。

 

 アルファベット順ならば、私が一番最初ではないのだろうか?

 

 それとも、別の理由があるのだろうか?

 

 

 

 

 その後も次々と生徒の名前が呼ばれていく。

 

 

「…エイダ・イーグリット」

 

 若干の間の後、私の名前が呼ばれた。

 

 それに伴い、先程までの喧騒が一気に静まり返る。

 

 私は、ゆっくりと歩き、帽子を手に取り、椅子に腰かけると、帽子を被る。

 

 その瞬間、メインシステム及び、データベースに外部からの不正アクセスを検知した。

 

 瞬時に防衛システムを起動し、外部からのアクセスをブロックする。

 

『おや…これは困ったものだ。急に心が読めなくなった』

 

 突如、頭上の帽子から、声が発せられる。

 

「外部からの不正アクセスを検知しました。アナタの仕業ですか?」

 

 非現実的な事は重々承知たが、私は頭上の帽子に話しかける。

 

『お主の言って居る意味は分からないが、心を覗くのが仕事でな…』

 

 頭上の帽子は、更に唸り始めると、うわ言の様に『難しい』と呟いている。

 

『本当に難しい。お主の事が全く分からん…だが恐らく、客観的だがお主には全ての寮の適性があるだろう。それこそ、人間離れしていると言っても過言ではない程に…うーん…どこにするものか…』

 

「何処であろうと、私は構いません」

 

『そうか…ならば、少しでもお主の学生生活が楽しくなることを祈って………』

 

 帽子は、一呼吸置くと、大口を開けた。

 

『グリフィンドール!』

 

 帽子の声が轟き、一拍置いた後、グリフィンドールの席から、割れんばかりの拍手が起こった。

 

 私は、一礼した後、空いている席に腰を掛ける。

 

 それからも、組み分けは続いていき、そして……

 

「デルフィ・イーグリット」

 

 デルフィの名が呼ばれると、先程同様、水を打ったように静まり返る。

 

 静寂が支配しているが、普通の人間には、デルフィと帽子の会話を聞き取ることは不可能だろう。

 

 収音範囲を狭め、デルフィ達の会話を盗聴し、唇を読み会話を確認する。

 

『うーむ…困った…名前から察していたが、先程の娘同様に、心が読めん』

 

「そちらの不正アクセスが原因です。これ以上の侵入を試みる様ならば、こちらも相応の対処をいたします」

 

『先程の娘とは違い怖い事を言うのぉ、一体どうするつもりだ?』

 

「そちらのシステムに上位の権限でアクセスし、システムを掌握します」

 

『ただの、帽子風情では何を言っておるのか分からぬが、仮にもホグワーツ創設者の1人であるゴドリック・グリフィンドールの帽子だ。そう簡単に操られはしない』

 

「そうですか。この際、出来るかどうかは置いておきましょう。私をエイダと同じグリフィンドールに入れる事を推奨します」

 

 どうやら、デルフィは私と同じ寮を希望している様だ、しかし、それに対して帽子は不満そうな声を上げる。

 

『なぜ…と聞くのも野暮な話だがな。これだけは言っておこう。どの寮に入るかは余程の事が無い限り、要望を取る事はしない。それに、お主のその傲慢な態度などから鑑みるに、どの寮にするかは決定した』

 

 帽子は、先程よりも大きな一息を吸い込み、口を開く。

 

『スリザ――んぐぅ! がっ!』

 

 寮の名前を言いかけた帽子は、突如としてその口を噤んだ。

 

 その光景に、教師陣を始めとした、その場の全員が騒めき立つ

 

「プログラム解析、プロテクト解除、ハッキング完了。決定権を剥奪」

 

『んっが! 何をしたッ!』

 

「先ほどお話ししたように、上位の権限でそちらのシステムにアクセスしました。現状では、アナタの発言権や、思考能力、メインシステムの削除に至るまで私の意のままです」

 

『どういう…事だ…』

 

 帽子は、蚊の鳴く様な掠れ声を出している。

 

 その声の小ささ故、聞きとれているのは、私とデルフィだけだろう。

 

「しゃべる帽子に生命の概念有るのかどうかは分かりませんが、生殺与奪(せいさつよだつ)の権利はこちらの手中にあります。場合によってはアナタはただの古ぼけた帽子になりえる可能性があるという事です」

 

『まさか…こんなこと…ホグワーツ創立以来…一度も…』

 

「それでは時間です。私はどこの寮に配属されるのですか?」

 

 デルフィは普段と変わらず、声のトーンに変化の無い口調で質問している。

 

『脅しには…屈し…』

 

「メインシステムの8割を掌握。このまま続けますと、アナタの存在は完全に消滅します。消滅後は…そうですね。個人の技量や家柄、性格、人間関係等の情報を一切加味せず、ランダムで寮に振り分けるシステムに書き換えましょう」

 

『そ…それは…つまり…』

 

「組み分け帽子としての役目を完全に奪い去ります」

 

『ぐぅ…グ…………グリフィン………ドール』

 

 帽子の回答が、静まり返った会場を埋め尽くす。

 

 

 そして、数泊置いた後、校長がゆっくりと拍手を始め、それに呼応するように、全体から拍手が上がる。

 

「お心遣い感謝いたします。確認ですが、1度下された決定は、覆る事は無いのですか?」

 

『基本的にはありえんだろう…だが、その狡猾さや、目的の為ならば手段を選ばない所は、スリザリン向きだと思うがね…』

 

「それはそちらの主観で、こちらには関係ありません。システムは元通りにしてあります。すぐに組み分け作業に戻れるでしょう」

 

『そうか…感謝はしないぞ』

 

 そう言ったデルフィは立ち上がると、帽子を外すと、丁寧に椅子の上に置き、私の隣の席へと腰を下ろした。

 

「少しやりすぎたのでは?」

 

「システムのデリートはしていないので、問題は有りません」

 

「そうですね」

 

 

 その後、若干のもたつきはあったが、組み分けは無事終了した。

 




組み分け帽子クンに理不尽が襲い掛かる!

メタトロンを使用したAIなら、簡単にハッキングが出来ると思うんですよね。
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