戦力差
死喰い人がホグワーツを占拠してから数週間後。
魔法省は完全に死喰い人に占拠される。
それと同時に、ダンブルドアは職を失った闇払いや、志願者を集め、不死鳥の騎士団を大規模な物にした。
大規模になった不死鳥の騎士団は、死喰い人に宣戦布告し、両陣営は戦争状態に突入した。
しかし、現在魔法界では、戦争らしい戦争は起きていない。
両陣営、睨み合いのまま、死喰い人はマグルの誘拐。
不死鳥の騎士団は、ダンブルドアの名を使い各国の魔法省と連絡を取り、軍事力を拡大している様だ。
「なんか…魔法界は大変なことになっているわね」
手にした日刊予言者新聞を読みながらハーマイオニーは溜息を吐く。
「この欄を見てごらんよ。不死鳥の騎士団は僕達を指名手配している様だね」
「こっちの欄には、死喰い人が私達に懸賞金を掛けたって出てるわ」
「コイツは厄介だな」
「それにしても、なんで日刊予言者新聞は両方の事を書いているのかしら?」
「上手い事立ち回っているんだろう。まるで蝙蝠みたいなもんだな」
「蝙蝠?」
「そういう童話があるのさ」
「へぇ…」
「我々は現在、両陣営に手配されているという事ですね」
「そういう事。大変だわ」
ハーマイオニーは日刊予言者新聞を投げ捨て、ソファーに横になる。
「まぁ、ここにいる限りは安全だろう。下手すれば、向こうが危険に飛び込むレベルさ」
「周辺の防衛装置を強化してきます」
「殺意高いねぇ。ちなみに戦力の差はどんな感じだ?」
「ホグワーツ陣営は各国の魔法省の援護を受けている為推定される兵数は1個師団相当です」
「凄いわね。死喰い人は?」
「ヴォルデモート率いる死喰い人の推定兵数は1個中隊から大隊程度と推定」
「かなり戦力差があるわね」
「しかし、保有武装にOFが含まれている為、戦力的有利にあると思われます」
「うわぁ…ちなみに…ここは?」
「現在我々の総兵数は3です」
「3…貴女達と私?」
「はい」
「まさに三つ巴だな」
「なぜかしら…圧倒的な数の差なのに不安じゃ無いわ…」
「まぁな、ところで僕は入ってないのか?」
「貴方に何が出来るの?」
「計算くらいかな…まぁ、こんな体じゃねぇ…せめて人の体があればいいんだが」
「人の体ねぇ…」
「クローン技術やサイボーグ技術を応用すれば、人格AIを人工的な体に移す事は可能です」
「いいね。さっそく頼むよ」
「現代の科学レベルでは不可能です」
「上げて落とすなよ」
「まぁ、いずれ用意するわよ。いずれね」
「はぁ、期待せずに待って居よう」
トムは気楽に告げる。
その時、警戒範囲内に、空間湾曲を検知する。
「空間湾曲を検知。侵入者です」
「え? だれ?」
「モニターに出します」
周辺に設置したカメラの映像をホログラム化する。
「あれは…マクゴナガル先生! それに、シリウスとルーピン先生も!」
「警戒範囲内に接近、迎撃しますか?」
「ちょ、ちょっと待って! どんな会話しているかわかる?」
「音声を再生します」
映像内で、3人は杖を手に、周囲を警戒している。
「本当に、こんな所に居るんですか?」
「えぇ、私が彼女達に入学案内を届けた時、ここへ来ました」
「でも、こんな人気の無いところに…」
3人はしばらく歩き、警戒ラインを越える。
「警戒ラインを越えました。威嚇行動に移ります」
周辺の、セントリーガンやホーミングミサイルなどといった自衛兵器を展開させる。
「なんだこれ!」
「くそ! 囲まれた!」
3人は互いに背中合わせになり警戒態勢を取る。
「警告。これより先は警戒ラインです。侵入するようでしたら、迎撃を行います」
「この声は! 私達は貴女達と話をしたいだけなんです!」
マクゴナガルが両手を頭の上に挙げる。
「マクゴナガル先生! お願い! 先生達と話をさせて!」
「了解」
ハーマイオニーのナノマシンを周囲のスピーカーに繋ぐ。
「先生! 聞こえますか?」
「ミス・グレンジャー? 貴女もそこに居るのですか?」
「はい」
「無事ですか?」
「私は無事です! エイダとデルフィも無事です!」
「それは良かった…」
マクゴナガルは安堵の表情を浮かべる。
「先程も言った通り、私達は話をしたいのです。聞いていただけませんか?」
「私からもお願い」
「了解。防衛装置を解除します。迎えに行きます」
「え?」
私は扉を開くと、ゼロシフトで目的地へと移動する。
「お待たせしました」
「うぉ!」
「一体…いつの間に…」
「腕は…大丈夫なのですか?」
「問題ありません。それでは案内します。武装を解除してください」
「えぇ」
マクゴナガルは私に杖を渡す。
それに倣う様に、シリウスとルーピンも杖をこちらに寄越す。
「武装解除確認。こちらです」
杖を回収後、私は3人を家へと招く。
「どうぞ」
「失礼します」
3人は入室後、周囲を見回す。
「これは…なんだ?」
シリウスが発電機や周辺機器に興味を持ち、手を触れようとする。
「あまり人の家の物に触るのは感心しないな。下手に触れるとダンブルドアの様に手が無くなるぞ」
「え?」
「誰だ!」
ホログラム化したトムが、階段を下りて来る。
「貴方は、トム・リドル。ここに居たのですね」
「ま、マクゴナガル先生! 今何と?」
「トム・リドルと仰いましたか?」
「えぇ」
マクゴナガルが頷くと、シリウスとルーピンは警戒態勢を取る。
「まさか…ヴォルデモートが…」
「やはり、ダンブルドアの言っていた事は本当だったのか?」
「あぁ、そんなに気張らないでくれ、僕には敵意は無い。僕にはね」
「トム。あまりからかわないの」
「はいはい」
トムはホログラム化を解除する。
「消えたぞ!」
「トムに敵意は無いんです。安心してください」
「とは言われても…」
「彼に敵意は無い筈ですよ。私はその様な気がします」
「ま、まぁ…マクゴナガル先生がそう言うなら…」
シリウスとルーピンは警戒を解き、近くの椅子に腰かける。
「ご用件は?」
「確か、私達に話があるんでしたよね」
「えぇ」
マクゴナガルも着席する。
「実は先日、校長に貴女達と接触するように指示を受けたのですよ」
「そうなんですか?」
「えぇ、なんでも、貴女方がヴォルデモートの分霊箱。『スリザリンのロケット』を所持していると聞きました」
「こちらですか?」
私は前回、洞窟から接収した『スリザリンのロケット』を取り出す。
「これです。これを持ってくるようにと」
「そうですか。ではお渡しします」
マクゴナガルは『スリザリンのロケット』を受け取ると、ロケットを開く。
「手紙が…入ってますね…これは…」
マクゴナガルは折り畳まれた手紙を取り出すと、テーブルの上に広げる。
『闇の帝王へ。あなたがこれを読むころには、私はとうに死んでいるでしょう。しかし、私があなたの秘密を発見したことを知ってほしいのです。本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです。死に直面する私が望むのは、あなたが手ごわい相手にまみえたそのときに、もう一度死ぬべき存在となることです。R.A.B』
「R.A.B?」
「誰かしら?」
マクゴナガルとハーマイオニーは首を傾げる。
「R.A.B…レギュラス・アークタルス・ブラック…」
「シリウス! それって君の…」
「あぁ、私の弟だ…」
「シリウスの…弟?」
「その通りだよ。ハーマイオニー。アイツは死喰い人に入って…そして死んだ…」
「死喰い人が、なぜヴォルデモートに立て付く様な事を?」
「少し…待ってくれ…『クリーチャー』!」
シリウスが大声を上げると、空間湾曲を検知する。その後、1体の屋敷しもべが姿を現した。
「何の御用ですかな?」
「弟から…何か預かっていないか…ロケットの様な物だ」
「はい、預かっております」
「なに! すぐに持って来い!」
「かしこまりました」
屋敷しもべは軽く指を鳴らすと、その場から消え去り、数分後にまた姿を現した。
「こちらがそうでございます」
その手には、スリザリンのロケットがしっかりと握られていた。
「これを…弟が…」
「弟君はとても勇敢な方でいらっしゃりました。このロケットを私めに託されると、すぐに破壊しろとお命じになられたのですが、どのような手を使っても破壊できませんでした」
「そうか…ご苦労だった…下がっていいぞ」
シリウスがそう一言呟くと、屋敷しもべは何処かへと消えていった。
「これが…本物なのか?」
「本物の『スリザリンのロケット』ならば、蛇語で開ける事が出来るはず…ただ…この場に蛇語を話せる者は」
「トム。頼むわ」
「はいはい」
トムは再びホログラム化し、テーブルに接近する。
「まったく…人使いが荒いんだから…さて…と…えーっと…確か…」
その後、トムは蛇語で話しかけると、ロケットが開く。
「本物だな」
「そうね」
「後は、これを壊すだけですね…」
マクゴナガルはロケットを回収しようとする。
「あまり触れない方が良いぞ。分霊箱だ。呪いに掛かるかも知れないぞ」
「うっ…」
マクゴナガルは手を引く。
「あまり先生をからかわないの」
「忠告しただけさ」
「もう…これは壊せば良いんですか?」
「え? えぇ」
「エイダ。頼めるかしら?」
「了解です」
私は、『スリザリンのロケット』を手に取るとエネルギーを過供給する。
それにより、『スリザリンのロケット』がエネルギーに耐えきれず、爆発を起こす。
爆発はベクタートラップ内に抑える。
「処理終了です」
「一体…どうやって…」
「なんだか…複雑な気持ちだな」
「何が?」
「必死になって作った分霊箱がこうも簡単に壊されるのがさ」
「まぁ、仕方ないじゃない」
「はぁ…まぁ、そうだな」
「あっ。そうだ。後これもお願いできるかしら?」
ハーマイオニーは鞄から髪飾りを取り出す。
「何ですかこれ?」
マクゴナガルは興味深そうに髪飾りに目をやる。
「ロウェナ・レイブンクローの髪飾りです。これも分霊箱らしいんですよ」
「え?」
「あぁ、僕が言うんだから間違いない」
「え?」
「了解。処理します」
デルフィが髪飾りを手にし、先程と同様に処理する。
「え?」
マクゴナガルを始めに3人はただ茫然とその光景を目の当たりにしていた。
「これで、2つ処理できました」
「そう…ですね」
「分かっている限りだと、残りは確か…」
「ヘルガ・ハッフルパフのカップだな」
「それで、全部ですか?」
「いや、僕の事だ特定の数字にこだわるはず。推測だが後1つあるだろう。それが何かまでは分からないがね」
「そうですか…ふぅ…これで、校長からの指令は終わりましたね」
「ダンブルドアは今どうしてる?」
「不死鳥の騎士団本部で、元闇払いや志願兵を管理しています。そう言えば、ミス・エイダの右腕を移植したそうですよ」
「エイダの腕をですか?」
「えぇ、どの様にしたのかは分かりませんが、スネイプ先生が施術を行ったようです」
「まったく…あの老害は一体何を考えているんだか…メタトロンの集合体のような物を…どうなっても知らんぞ」
トムは呆れた様に呟く。
「はぁ…」
マクゴナガルは一息入れると、溜息を吐く。
「それと、これは、私達個人のお願いなのですが…」
「お願い? なんですか?」
ハーマイオニーは紅茶を入れてきたようで3人の前にティーカップを置く。
「実は、現在ハリーは親戚の家で暮らしています」
「まだあの家に居るのね」
「事情があるようで。そして、近いうちハリーは17歳の誕生日を迎えます」
「そこでダンブルドアはハリーを家から連れ出し、不死鳥の騎士団本部に移送しようと考えているんだ」
「でも、それには死喰い人の抵抗もあるだろう」
3人は暗い顔をする。
「そこで、校長はある作戦を考え付いたのです」
「作戦?」
「その作戦とは、ポリジュース薬を使い、10人前後の生徒をハリーの姿にし、囮として利用しようとしているのです」
「そんな…それじゃあ、死喰い人は…」
「恐らく、手当たり次第に攻撃するでしょう」
「そうなれば、生徒にも多くの被害が出ます」
「なんでそんな作戦を!」
「ダンブルドアは何を考えているんだ?」
「老害も極まって来たわね…」
「私達だって反対したんだ。でもダンブルドアは、ハリーが生き残る事が最優先だと…」
「私だってハリーが生き残るのは良いと思う。だが、その為に大勢を犠牲にするのは…」
シリウスとルーピンは深い溜息を吐く。
「そこで、貴女達に協力をお願いしたいのです」
「内容は?」
「ダンブルドアに気付かれずに、死喰い人から生徒を守って欲しいのです」
「そんな事が出来るのは君達くらいだ」
「私からも頼む」
3人はその場で頭を下げる。
「ねぇ…何とかならない?」
「作戦区域の地図などはありますか?」
「受けてくれるのですね!」
「出来る限りの事はします」
「ありがとうございます」
「しかし、いくつか条件があります」
「条件?」
「はい。ハーマイオニーとその家族に危害を加えないという事を約束していただきます」
「エイダ…デルフィ…」
「…わかりました。その点に関しては私が命に代えても」
「交渉成立です」
マクゴナガルは一礼後、古びた地図を取り出す。
「現在予定しているルートは、ハリーの家から不死鳥の騎士団本部まで箒で飛行しながら移動する予定です」
「恐らく死喰い人もそのルートは予想している筈です」
「ルート変更の予定は?」
「何度か校長に打診しましたが…最短距離という事で拒否されました」
「やはり…あの老害は無能だな…」
トムは呆れた様に首を左右に振る。
「作戦決行日の情報は敵部隊に伝わっているのですか?」
「スパイ活動を行っているスネイプ先生が偽の日時を伝えたようですが…常時死喰い人が警戒しているそうなのであまり意味はないかと」
「このような状況で…一体どうする?」
シリウスは地図を見ながら呟く。
「了解。作戦立案完了。我々はステルスモードで空中に待機。敵部隊と会敵後、私は近距離攻撃を行います。エイダはスナイパーによる長距離支援をお願いします」
「了解」
「しかし、空中で待機して居たら他の生徒に気付かれるはずです」
「あー…その点は大丈夫だと思います」
「え?」
「大丈夫よね」
「はい」
私達はその場でステルスモードへ移行する。
「き、消えた!」
「透明マント? いや、違う!」
3人は周囲を見渡す。
「ね。大丈夫ですよ」
「なんで君が誇らし気なんだ?」
「そ、そんな事無いわよ!」
ハーマイオニーは顔を赤らめる。
「ステルスモード解除」
ステルスモードを解除する。
「これなら…大丈夫です…ね」
「君達は…私達の予想を…毎回超えて来るな…」
「君達が本気を出したらどうなるんだ…」
「深くは考えない方が良いですよ…私はもう慣れました」
ハーマイオニーは紅茶を一口飲み、スコーンを齧る。
「さて…」
マクゴナガルはその場で立ち上がる。
「要件は以上です。お時間を取らせました」
「お待ちください」
私は小型の無線機をマクゴナガルに手渡す。
「これは?」
「無線機です。これにより私達との連絡が可能です」
「わざわざフクロウを飛ばさなくてもよさそうですね」
簡単に使い方を説明した後、無線機を受け取ったマクゴナガルは、ローブの下へとしまう。
「それと…報酬に関してなのですが…」
マクゴナガルが口籠る。
「報酬?」
「はい、とは言っても大した額は用意できませんが…」
ハーマイオニーがこちらに視線を向ける。
「報酬は必要ありません」
「え? 良いのですか?」
「構いません」
マクゴナガルが安堵の溜息を吐く。
「では、これで。作戦日時などが分かりましたまた連絡します」
「了解」
「感謝するよ」
「それでは、また」
3人は一礼後、退出した。
「ふぅ…厄介なことになりそうね」
「全部ダンブルドアが原因だろね」
「貴方もね」
「現代の僕については関知できないね」
「過去の貴方も原因じゃ無いかしら?」
「ノーコメントで」
トムはホログラム化を解除し、姿を消す。
「もう…」
ハーマイオニーは溜息を吐くと、冷めた紅茶で唇を濡らした。
最終章という事で、すこし裏話を。
当初の予定では、1年生の時ハーマイオニーへの誕生日プレゼントはタブレットではなく、箱に詰まったダイヤモンドで、ロンがそれを見て側頭するという内容でしたが、気まぐれでタブレットに変更しました。
つまり、トムがタブレットに居座り、ハーマイオニーのパートナーポジションになっているのは、気まぐれです。