えぇ…ダンブルドアです。
不死鳥の騎士団本部に帰還したシリウス達はダンブルドアの自室へと移動した。
「失礼します」
「来たか。首尾はどうじゃ?」
「はい。グリンゴッツから無事に分霊箱を回収しました」
ハリーはそう言うとダンブルドアの前に差し出す。
「これがそうか。良く回収してきてくれた」
「はい」
ダンブルドアはおもむろに日刊予言者新聞を取り出す。
「今しがた配られた号外じゃ」
ワザとらしく新聞を捲ると、驚愕する。
「これは驚いた。グリンゴッツに賊が入った様じゃのぉ。これはお主達の事じゃな」
「多分そうだと思います」
ハリーが答えるとダンブルドアは眼鏡を少しずらし、視線を向ける。
「なになに。グリンゴッツに侵入した賊は…おぉ。グリンゴッツを破壊したとある。お主達容赦が無いのぉ。一体どれだけの被害が出た事か…」
「……」
「まぁ良い。それより聞きたいのじゃが」
ダンブルドアは日刊予言者新聞を投げ捨てる。
「お主達にグリンゴッツを破壊させる程の魔法が扱えるのか?」
「そ…それは…」
「無論。今のワシには出来んじゃろうな。じゃがお主達は現にやってのけた。違うか?」
「それは…」
シリウスは俯き、口ごもる。
「出来んじゃろうな。お主達の様な平凡な魔法使いではのぉ」
口調を変えずにダンブルドアは髭を撫でる。
「しかし、ワシはグリンゴッツを破壊させる事が出来る者を知って居る。お主達も知って居る奴じゃ」
「そ、それは…」
「そうじゃ。イーグリット姉妹じゃよ」
ダンブルドアの冷ややかな声にその場の空気が凍り付く。
「ふぅ…お主達。彼女達が裏切り者であることは理解して居るな」
「それは…」
「それにもかかわらず。彼女達と秘密裏に関わって居ったのか?」
「それは…えっと…」
「事と場合によってはお主達も裏切り者と捉えなければならぬ。説明を願おうか」
「それは…」
「私が連絡を取ったのです」
「ミネルバ…」
「マクゴナガル先生!」
扉が開かれマクゴナガルが入室する。
「どう言う事じゃ?」
「彼女達の力が借りれれば分霊箱の回収も容易だと…」
「確かに、分霊箱は回収できた。しかし、彼女達にこちらの情報を渡す事にもなりかねないのではないか?」
「その点は大丈夫です。回収を手伝って貰っただけです」
「そうか…」
ダンブルドアは詰まらなそうに溜息を吐く。
「ふぅ…まぁ良い。分霊箱は回収できたのじゃ。後で破壊しよう」
そう言うと、分霊箱を引き出しへとしまう。
「分霊箱の破壊方法をご存じなので?」
「無論じゃ。馬鹿にするでない」
「そうですか」
「あぁ。もう良いぞ。退室するが良い」
「し、失礼します」
その場の全員が一礼し、ダンブルドアの自室を後にする。
「ふぅ…」
廊下を少し歩きシリウスが溜息を吐く。
「助かりました。ありがとうございます。先生」
「良いのですよ。それより彼女達はどうでした?
「えぇ。相変わらずと言った感じでした」
「それは良かったです」
マクゴナガルは笑みを浮かべる。
「それにしても…最近の校長はどこかおかしい。いや、前からあんな感じだったが最近は少し…」
「過激な思想を持ち始めたと思います」
「確かに…」
「近いうち、死喰い人に対し大規模な反攻作戦を計画しているとか…」
「うーん…死喰い人ならばどうにかなるのだが…ゴーレムに対しては全く歯が立たない…」
「対ゴーレム用にマグル界の武器を大量に輸入しているという情報もあります」
「マグルの武器…一体どんな…」
「詳しくは分かりませんが、筒状で、爆弾を発射するものとか」
「そんな訳の分からない物を…一体誰が?」
「アーサーです」
「アーサーが?」
マクゴナガルの回答にルーピンが驚愕する。
「えぇ、校長の指示だそうで…」
「なんていう事だ…これじゃ…戦争をする気か?」
「校長はそうお考えでしょう。一部の生徒…ロン・ウィーズリーなどがそうですが、校長の思想に影響を受けているようです…」
「我々の戦力で…死喰い人に勝てるのでしょうか?」
「分かりません…しかし、どちらにせよ、血は流れるでしょう…」
「何と言う事だ…」
シリウスは嘆き悲しみ天を仰ぐ。
「こんな時…」
「えぇ」
「彼女達なら…」
「エイダ達ならどうするだろう…」
ハリーは呟き、ルーピンは嘆く。
「はぁ…彼女達に頼りたいですが…これ以上巻き込むわけにもいきません…」
マクゴナガルは溜息を吐き、頭を抱える。
「しかし、相談くらいは…」
「そうですね…」
そう呟いたマクゴナガルは、重い足取りで歩みだした。
ダンブルドアがヴォルデモートの分霊箱を破壊してから数週間後。
ヴォルデモートはホグワーツの校長室で不機嫌そうに苛立ちを募らせていた。
「クソッ! ルシウス!!」
「は、はい!」
不機嫌なヴォルデモートに指名され、ルシウスの声が裏返る。
「俺様の分霊箱がまたも破壊された」
「さ、左様で…」
「なぜこのような事が起きたんだ!」
「な…何故…と…おっしゃられても…」
「ちっ!」
不機嫌な舌打ちをした後、ヴォルデモートは校長椅子に座る。
「こうなれば仕方ない…ルシウス。OFの生産状況はどうなっている?」
「ゴーレムですか? 一般的な確か…ら、ら、ら…」
「ラプターだ」
「そうです。ラプターの武装と操作方法の習得はできたのですが、形作る材料である、賢者の石が枯渇しておりまして…」
「メタトロンが枯渇しているのか…」
「えぇ…メタトロンを作れるのは我が君しかいない為…今ある原材料と言えば岩石などと言った物しか…」
「それでよい」
「え?」
「外部装甲程度、岩石でよい」
「し、しかし、それでは強度に問題が…」
「構わん。それでも戦力にはなるのだろう?」
「並の闇払いにならば負けないとは思いますが…しかしそれでは、ゴーレム特有の高機動戦闘は…」
「戦力になるならば構わん。すぐに量産体制に入れ」
「畏まりました…」
こうして、不完全なOFの量産が開始された。
3週間後、魔法界の情勢が大きく変化する。
大量のOFによる物量作戦でダンブルドア率いる闇払いは後退を余儀なくされる。
その結果、不死鳥の騎士団本部以外の大半を死喰い人により占拠されてしまった。
ダンブルドアは現在、各国の闇払いに協力を仰ぎ、水際で何とか持ちこたえているといった状況だ。
「素晴らしい! やればできるのではないか!」
校長椅子に腰かけ、高笑いをしている。
「貴様も良くやったぞ、ルシウス」
「恐縮至極でございます」
ルシウスは深く一礼をする。
「しかし、未だにダンブルドア共、不死鳥の騎士団本部の制圧はまだなのか?」
「それが…流石に奴等の拠点という事もあり…現在の戦力では…それに奴等、マグルの武器を使って居りまして…」
「マグルの武器だと…」
「はい、破壊力に特化した物のようで…既に多くのゴーレムが破壊されています」
「なんだと?」
「電撃戦の為物資の補給もままならず…このままでは…」
「このままではどうなる?」
「ま…まぁ…このままではジリ貧に…」
「ちっ…」
ヴォルデモートは小さく呟く。
「やはり、当初の予定通り、賢者の…いえ、メタトロンによるゴーレムを作成した方が良いのではないかと…」
「黙れ」
「し、失礼を…」
「まぁ良い、どちらにせよ、決戦の時は近い」
ヴォルデモートは引き攣った笑みを浮かべ、杖を構える。
「ルシウス。有人機の方はどうだ?」
「はい、如何せん操作と魔力に問題があり…今ですと一応動かせるのはベラトリックスだけでして…」
「かまわん。それと、俺様のOFはどうなっている?」
「それが…まだ…」
「なぜ、俺様の機体がまだなのだ?」
「はい、複雑さを極め…まだ完成には…6割程度と言ったところで…」
「急がせろ」
「はっ」
ルシウスは震えを抑えながら、退室した。
不死鳥の騎士団本部。ダンブルドアの自室。
そこでダンブルドアは頭を抱えていた。
「なんと言う事じゃ…」
現状、死喰い人の攻勢により、不死鳥の騎士団本部を除き、多くの拠点を失ってしまった。
「戦況はどうじゃ?」
ダンブルドアはアーサーに問いかける。
「死喰い人の攻勢は激しいですが、こちらも防衛陣地を整えております。その為ゴーレムの攻撃にも耐えられております」
「しかし…防御に徹するだけでは…」
「かと言って攻勢に転ずるには危険すぎます。このまま敵が疲弊するのを待つのが手かと…」
「それでは遅すぎる。すぐに打って出るぞ」
「戦力は十分ですが…危険すぎます」
「しかし、このままではいかんだろう」
ダンブルドアは両膝を叩き、立ち上がる。
「よし…本日、決起集会を行う」
「決起集会?」
「そうじゃ。我等は全戦力を持ってホグワーツを奪還する!」
「しかし! それは…自殺行為では…」
「座して死を待つわけにもいかん。分かったら準備するのじゃ」
「しかし!」
「これは君の息子のロンも賛成するはずじゃよ」
「そ…それは…」
「君は息子の意見を無視するのか? それほど卑しい親なのか?」
「だとしても…」
「早くするのじゃ」
「か、かしこまりました…」
アーサーは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。
その晩、不死鳥の騎士団本部で大規模な決起集会が行われた。
「凄い料理だ」
「こんな豪華な食糧…一体どこに?」
「ダンブルドアの事だ。きっと用意してくれたんだよ」
ロンは目の前の食事に齧り付く。
「さて、皆聞いてくれ」
大広間でダンブルドアが声を張り上げる。
「本日、この様な催しを開いたのには理由がある」
「理由?」
ハリーが不穏な表情を浮かべる。
ダンブルドアが立ち上がる。
「ワシは! ワシ達は! 今日! この瞬間! ワシ等の母校であり、家でもあるホグワーツの奪還作戦を立案する!」
「ホグワーツ」
「奪還作戦!」
次の瞬間、会場全体に歓声が上がる。
「そうだ! ホグワーツは僕達の家だ!」
「死喰い人なんかには渡すものか!」
ロンを始めとした、純血者が声を大にする。
「ホグワーツ奪還作戦…」
「現状の戦力から見て…かなり不利かと…」
会場の一角でマクゴナガル達が不信感を募らせている。
「諸君、ワシは、ホグワーツを愛して居る。心から…生徒達の笑顔を見るのが好きだった。生徒達が苦悩する姿が好きだった。生徒達が協力し、互いに高め合う姿が大好きだった…しかし今、そのホグワーツを侵し、我が物顔で跋扈する不穏な輩が居る。その不届き者は愚かにも世界を手中に収めようとしておる。ワシはそれが許せない! お主等もきっと同じはずじゃ…ワシ達は! 皆協力し! 団結する! さすれば! ワシ達は必ずや! ホグワーツを取り戻す事出来る! ワシ達は家族だ! ワシ達は皆兄弟だ!! 不死鳥の騎士団は! 皆! ワシを信じてくれ!」
「「「「校長!」」」」
「「「「校長殿!」」」」
「「「「ダンブルドア!」」」」
「「「「ダンブルドア校長!」」」」
「「「「ダンブルドア騎士団長殿!」」」」
「「「「校長!」」」」
「「「「校長殿!」」」」
「「「「ダンブルドア!」」」」
「「「「ダンブルドア校長!」」」」
「「「「ダンブルドア騎士団長殿!」」」」
純血者からダンブルドアを称賛する声が上がる。
「諸君。ならば、ワシと共に徒党を組み。悪しき存在を撃ち滅ぼそうではないか! ワシ達にはその力がある! 奴等の主力であるゴーレムも既に何十体と破壊して居る! ワシ達に不可能は無い! ワシ達に敵は無い!」
「おぉおおおお!!」
会場から歓声が上がる。
「諸君! ならば、やる事はただ一つ! ホグワーツを奪還し! 死喰い人を! 闇の帝王を! ヴォルデモートを! トム・リドルを打倒し、再びワシがホグワーツを治め! ワシが全てを導こう!」
会場の興奮度は最高潮に達する。
「作戦を説明する! 不死鳥の騎士団は持てる全ての戦力! 武力を結集し! 死喰い人の包囲を一点突破する! その後、ホグワーツへ突入する為の前段階としてキングスクロス駅を奪還する!」
「キングスクロス駅を奪還…」
「無論、この作戦は危険を伴う。命を落とす者も居るだろう…それはとても悲しいことじゃ…しかし! ワシ達に死を悲しんでいる時間は無い! 悲しみ、涙を流すのは総てを終わらせてからじゃ!」
ダンブルドアは身振り手振りを大袈裟に行う。
「無論…この作戦の参加は強制ではない。辞退するものは今すぐ不死鳥の騎士団本部から去るが良い…じゃが、ワシは信じておる。皆がこのワシと同じ考えで有る事を…」
ダンブルドアが杖を手に取ると会場が静まり返り、数秒が流れる。
ロンを始めとするダンブルドアを信奉している物にとっては刹那に。
しかし、その場にダンブルドアを信奉していない者にとっては永遠にも感じるほど長い時間だった。
それもそうだろう。なぜならば、不死鳥の騎士団本部以外に、彼等を受け入れる場所など既に無いのだから。
そして、ダンブルドアは既に杖を手にしている。
離反するものならば、その場で命が無いだろう。
「誰も居ないという事で良いな…それならばワシは嬉しい! ワシと諸君らは共に、この命をホグワーツへと捧げよう!」
ダンブルドアが杖を掲げる。
「ワシは今誓おう! 必ず、ホグワーツを取り戻すと、そして諸君らを導くと! その為にも、諸君らの命をこのワシに譲って欲しい!!」
数秒後、1人分の拍手が響き渡る。
ロンが始めた拍手は、やがて2人、3人と伝播し、会場全体が拍手の渦に包まれる。
「ありがとう! それでは不死鳥の騎士団各員に通達。騎士団長命令である」
「さぁ、諸君。
目が笑って居ないダンブルドアは口角を持ち上げる。
瞳孔が開き、善と悪の区別がつかなくなっている志願者は歓声を上げる。
顔を俯かせ、ただ狂気に圧倒されながら、徴兵者は心を壊す。
歓声が上がり、志願者が狂信者へ変わり、戦争の準備が整う。
ダンブルドアの演説の幕が降ろされると同時に、開戦への口火が切られた。
関係ないですが、ヘルシングを読みました。
関係ないですが。