異世界ダンジョンで最深部を目指したら出会いがあるのは間違いない 作:あやふやな真実
眩しい。
底抜けに明るい鮮烈な白に塗りつぶされ、開けない瞼越しに光を感じる。
次に気づくのは、その匂い。鼻奥に浸透する“生”の香り。呼吸から体中に澄み渡っていくかのような心地よさを実感する。
僕はその安心感に身を委ね掛け、しかしその誘惑に抗って少しだけ目を開けて体を起こす。
「――?」
その視界に飛び込んできたのは、眩しいく反射する金の髪色。
まるで後光が差すかのように、はっきり発光する整った顔立ちのそれの、ガラスのような澄んだ瞳がこちらを覗き込んでいた。
あまり働かない意識で完全に体を起こし、頭を動かして辺りを見回すと、僕は石造りの仰々しい空間で、見知らぬ人物に膝枕をされていた、ということが伺えた。
唐突で現実感の乏しい状況にぼんやりと辺りを『観察』することで、何やら小さな祭壇のようなものが並ぶここは大雑把に『祭壇』であるらしいことを理解した。
好きだったゲームの画面越しにはよく見知った、だけど現実ではあまり見ない「それっぽい」雰囲気の飾りのついた小さな蝋燭台とと二本の燃えた残りかす。何かの見慣れない生き物の皮らしきものが、供えられるように添えられた作り物には見えない西洋剣にみえるもので地面に突き刺さっている。
「なにこれ……」
「――■■■?■■、■……■■■?」
僕は呟いた。
独り言として零したそれは、考えることを放棄していた傍らの人物に受け止められて何らかの意思の伝達を果たしたようだった。
「――■■、■■?■■■■。■■」
「……意味がわからないよ」
目の前の人物――金髪の非常に美しい少女の言葉もそうだが、この状況に理解が追いついていなかった。
聞いた感じ、英語などの自分の知っていそうな言語ではなさそうで、いつの間にか収まっているさっきの発光現象などから、この少女が天使か何かである、とかの非現実的な妄想の類であるという考えが一番しっくりときてしまうぐらいであった。
未だに夢から覚めていないのだろうか?
けれど、それにしては意識も実感もはっきりしすぎており、かと言ってここは見慣れた自室からはかけ離れていて、眠りに付いていたはずのベッドも、毎朝夢から叩き起こす目覚まし時計も、無機質な電気の明かりも、ない。
思い出すと恥ずかしい気持ちがこみ上げてくるが、あるのは先ほどまで枕としていた柔かいふとももの感触と、こちらを気遣うことを意図した呼びかけと、馴染みがない不規則な蝋燭に灯された火の照らす明り。――と、先の謎の発光もか。
まず、ここはどこで、君は誰なんだ……。
――ステータス
場所 迷宮
名前 アイズ・ヴァレンシュタイン Hぢ■dx/■8 エぃjP■/1■ghう ク■sゆ 剣士
「……え?」
思考に答えたかのように、突然何かの『表示』は僕の視界に浮かぶのであった。