グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか?   作:クウト

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楽しくなってきた。


ロキファミリアのベル君?

クムユを連れて祭を楽しむ。

ジャガ丸くんを始め、クレープやアクセサリーを売っている店。他にも色々と見回ってクムユが銃が見当たらないと、ちょっと落ち込んだりもしたが楽しそうにしてくれている。

 

「お兄ちゃんでよかった」

 

「グランさん?」

 

「なんでもねぇ。なんでもねぇんだよ」

 

クレープ食うか?と差し出しパクつくクムユ。

飲み物飲むか?と差し出し喉を潤すクムユ。

前世では一人っ子だった俺。兄弟というものがたまらなく欲しかった。だが今世ではあのジータの弟。絶望したよね。姉怖過ぎワロタとか言ってられないぐらい怖い。だが、そんな中、旅の途中で出会ったのがクムユ。妹とはこういう事かと理解した瞬間、俺は兄になった。

ちなみにビィにこの話をした時は。

 

『やっぱおめぇも、ジータの弟なんだな』

 

なんて言われた。奴と同列にするとはいくらビィでも許せん。奴のリンゴ食ってやったもんね。まぁもちろん後で少し高めのリンゴを買ってきて謝ったが……。

 

「あ!そういえば、ジータさんから伝言があったんでした!!」

 

え?伝言?

嫌な予感しかしない。

 

「なんでも、グランさんが魔法を自由に使いこなす事が出来たら、報告させるようにとか」

 

「何するつもりだ?あの姉は……!」

 

なんだ?つまりアレか?オイコラそっちに私とルリア呼べや。異世界とか面白そうなところ行ってんじゃねぇよ。とかそんなアレか?てかだいたいその指示こんな感じで出されてるだろ?

 

『愚弟がその魔法を使えるようになったら報告させるように言っておいて。これでもし報告しなかったら締め上げる』

 

こんな感じだろ?クムユが言ったせいで美化されたように聞こえてしまったぜ。危ない危ない。グランくんおちついてる。クールになるんだ。

 

「グランさん?グランさん!」

 

「おぉう!どうした?」

 

「次はあっちに行ってみたいです!何やら騒がしい感じがしやがります!」

 

グイグイと手を引っ張って急かしてくる。

ははは。焦らなくても祭はまだまだ終わらんよ?

だけどね?闘技場の方はいいの?

 

「魔物の調教なんてのは、やろうと思えば向こうでも出来やがります!今はお祭りの方を、楽しむんです!」

 

「そっか。んじゃあ行くか」

 

さっきから騒ぎが起こっている方向に歩いて行く事にした。まぁそこから祭りは祭りでも大騒ぎ祭りになるとは思っていませんでした。なんて言ったらフラグとか立つのかな?……え?調教できるって何?お兄ちゃん、ククル姉ちゃんとシルヴァ姉混ぜて詳しく話し合いたいんだけど?

 

 

 

騒ぎの中心。

そこには巨人型モンスターとそれを相手取ろうとしていた冒険者。そしてそれをたおして去って行くアイズ・ヴァレンシュタイン。その金の疾風はモンスターを斬殺しながら街中を駆け抜けて行った。

 

「うぴゃあああ!!ま、魔獣がこんな街中に!?それにあの人すっごく強いです!!」

 

こっちではモンスターな?

てか、なんで街中に?トラブルの匂いしかしません。

 

「クムユ。武器はちゃんと持ってるね?」

 

「え?はい!ジータさん率いる騎空団の、騎空士としての義務ですから!」

 

なら、行くか。

俺はまた、脇にガシッとクムユを抱える。

 

「ぴぅ!?」

 

「飛ぶよ!」

 

「え?ぴゃあああ!!!!!」

 

いきなり飛翔術を使用してアイズ・ヴァレンシュタインを追いかける。そうして飛び上がった先に見えたのは膨大な土煙が立ち込めている場所。

朧げだが長い蛇のような影が見えた。

 

「あそこか!!」

 

「ぴゃあああ!!速い!速すぎるのですよ!!」

 

クムユの叫び声を聞いたのかアイズ・ヴァレンシュタインがチラリと振り返る。

 

「手を貸す」

 

「……ありがとうございます」

 

アイズ・ヴァレンシュタインは風、俺は飛翔術の出力を上げて土煙が立ち込める場所に全速力で向かう。

 

「!?レフィーヤ!!」

 

その戦場では蛇のようだった植物型モンスター、アマゾネスが二人、エルフの少女が一人が戦っていた。そしてその中のエルフの少女がモンスターに弾き飛ばされ今にもトドメを刺されそうになっている。

 

「クムユ」

 

「ガッテンです!!食らいやがれです!ディスチャージ・ショット!!」

 

パァン!という音が三回鳴り響くと同時に、クムユの銃から三発の銃弾が撃ち出された。この世界ではまだ見た事がない銃で放たれた弾は、アイズ・ヴァレンシュタインを抜きモンスターの横っ面にぶち当たる。クムユが火薬を調合して作った弾は爆発しモンスターを怯ませる。その隙に俺とアイズ・ヴァレンシュタインはモンスターへと接近し。

 

「いくぞ!」

 

「……はい!」

 

銀と青の剣線が閃き、モンスターを斬り倒した。

 

「アイズ!」

 

「ああ!!ベートをボコボコにした冒険者!!」

 

その節はご迷惑をおかけしました。

反省も後悔もありません。

 

「まだ、くるか」

 

地面が揺れ、それはドンドン大きくなっていく。

そして

 

『『『『『キシャアアアア!!』』』』』

 

先ほどの植物型モンスターが五体現れる。

ふむ。やるしかないな。

 

「ええ!?五体とか嘘でしょ!?」

 

「もう来なくていいわよ!」

 

アマゾネスの二人が叫ぶ。

まぁ叫んでもやるしかないんだけど。

 

「クムユ。そいつを守りながら援護、できるな?」

 

俺は倒れているエルフの子をクムユに任せることにした。

 

「ま、任せろです!やってやるですよ!!」

 

「頼もしいよ」

 

俺はバハムートソード・フツルスを構える。

 

「ロキファミリア。三体任せていいか?二体は俺が持とう」

 

ロキファミリアの連中にもモンスターを受け持ってもらう。魔獣、モンスターは馬鹿だが間抜けではない。だからこそ狩りは充分な準備をして挑まないといけない。そう教わった。

 

「なんであんたが、仕切るのかわからないけど、武器もないし任せるわ」

 

「そうだね。あいつ、硬いから気をつけてね」

 

「……お願いします」

 

「任せろ。さて、やるぞ」

 

 

 

さすが大手ファミリアの高レベル達だ。

俺がいなくてもなんとかここを抑える事ができる程の実力はあるのだろう。だがこいつらが出してくる触手が少しばかり多い、対処に面倒だから人は多いに越した事ないんだが。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン!その風でこいつらを撹乱できるか!?」

 

「……やってみる」

 

魔法を使用しているアイズ・ヴァレンシュタインにターゲットが集中している。そのまま敵対心をもたせて隙を突くのが一番楽だろう。アイズ・ヴァレンシュタインには避けてもらっていればそれでいい。そう思って指示を出した時だった。

 

ピキッ!

 

とても小さな音。だがそれはこの場ではなぜか響いて聞こえた。アイズ・ヴァレンシュタインの剣が砕けた。使い手の力量に耐えかねたのだろう。

 

「……あ、怒られちゃう」

 

今はそんなこと気にしている場合じゃねぇ!!!

五体のモンスターは魔法を使っているアイズ・ヴァレンシュタインに集中しているのだ。このままでは攻撃されダメージを負うのは免れない。

俺は素早く飛翔しアイズ・ヴァレンシュタインの首根っこを掴み離脱。こいつ!戦闘で少し破けたとはいえ、服の布面積小さくねぇか!?

 

「……あ!」

 

たが助けたというのに、急に俺の手を振り払おうとする。

この馬鹿が!一体なんだって……!

視線の先に頭が見えた。露店の裏で怯えて蹲っている人がいる。

 

「投げるぞ!」

 

「……うん!」

 

そのまま露店めがけてアイズ・ヴァレンシュタインを投げつける。あの頭の主はなんとか助かるだろう。だが

 

「グランさん!!!」

 

目の前には五つのモンスターの頭。

普段、ファイターでいる俺にはこれは少しまずい。一級冒険者が硬いと怯む相手が五体。それも目の前に迫っていた。

俺に残されたのは一瞬。

ジョブチェンジ。

スパルタ。

 

「ファランクスⅢ」

 

本来なら盾を持っておきたい所だがここにそんなものはない。オーラのように自分の中から気を練り上げ耐久を上げる。腕、足、身体。様々なところを噛まれ、捕まる。

 

「離しやがれってんですよ!コノヤロー!!!クムユ謹製!炸裂弾です!!」

 

クムユはモンスターの根っこにめがけて炸裂弾を撃ち放つ。炸裂弾の衝撃のおかげか俺はすぐに拘束から抜け出す事ができた。……あぁ、それにしても、何で俺は戦っているのだろうか?今日は祭りでクムユまで居るのに傷を作って……。

 

「あぁくそ、イッテェな。センチュリオンⅡ使えばよかったか?面倒だ。さっさと終わらせる」

 

ジョブチェンジ。

ベルセルク。

 

「ウェポンバー「待ってください!」あぁ?」

 

後ろから声が聞こえた。

さっきまで倒れ伏していたエルフが、クムユに心配されながらもおきあがっていた。

 

「私に、私にやらせてください」

 

「レフィーヤ!動いて大丈夫なの!?」

 

無乳。

 

「レフィーヤは休んでなさい!」

 

巨乳。

格差が激しい。今思えばなんだ?この凸凹アマゾネス。ダメだ、思考が乱れた。

 

「わ、私は!私も!ロキファミリアの一員です!このオラリオで最も強く、誇り高い、ファミリアの一員、逃げ出すわけには行かない!」

 

「ほぉ?だが、残念だけど、俺はもう終わらせたいんだ。どっちが速いか競争としようか?」

 

「覚えててください。私は、レフィーヤ・ウィリディス!ウィーシェの森のエルフにして、ロキファミリアの一員です!」

 

あぁ、そういうことか。

こいつは、アイズ・ヴァレンシュタイン達の足枷になって居るのが嫌なのか。だからこそ今ここで立ち上がろうとしている。

 

【ウィーシェの名のもとに願う!森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ】

 

始められたのは詠唱。

 

【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか、力を貸し与えてほしい】

 

ロキファミリアの面々はモンスターを引き付け始める。

 

【エルフ・リング】

 

魔力を感知して、俺を含めて突撃してくるモンスター。

 

「この一回だけ、かばってやるよ。センチュリオンⅡ」

 

モンスターの攻撃をセンチュリオンⅡで無効化しながら後ろの二人をかばう。

って!一体一体がデカイから手も足も身体も全部使ってまで止めてるんですけどこっちは!!センチュリオンⅡのおかげで、痛くも痒くも無いけどさ!!!

 

【週末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け】

 

後ろから大きな魔力を感じる。

 

【閉ざされる光、凍てつく大地】

 

「手助けするよ!」

 

「あんたばっかり、いいカッコさせないわよ!!」

 

「ッッ!」

 

「もう一回、クムユ謹製炸裂弾!食らいやがれです!!」

 

ロキファミリアの三人が三体のモンスターを弾き飛ばす。それに続くように俺もモンスターを弾き追撃とばかりにクムユの炸裂弾が放たれる。

 

【吹雪け、三度の厳冬。我が名はアールヴ!】

 

ジョブチェンジ。

ファイター。

 

「ウェポンバースト」

 

認める。認めようレフィーヤ・ウィリディス。

お前もまた、ベル君と同類だ。

だから、今回は譲っておく。

 

【ウィン・フィンブルヴェトル!!】

 

「レギンレイヴ!!!」

 

大地が凍てつき、凍りついたモンスターが細切れになった。


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