グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか? 作:クウト
それは一瞬だった。
ガギンッ!!!
ドガン!
「かはっ!」
奴の踏み込みを甘くみてしまった俺は、思わぬ力に吹き飛ばされ壁に激突する。
一瞬のうちにここまで踏み込むか!!!
オラリオ最強Lv.7冒険者。猛者オッタル。
「ちょっと、甘く見過ぎた……。ゲホッ」
思えばベート・ローガはLv.5だったか?
レベルが少し上がるだけで、この力の違いかよ。
それにアレは不意打ち気味なところもあった。まぁ?何度戦っても?アレにだけは負けないけど?
「この程度か?ならば、拍子抜けもいいところだが?」
「ハッ。見とけよこの野郎」
ジョブチェンジ。
ベルセルク。
「お返しだオラァ!!!」
先程のオッタルのように俺は一瞬にして相手の懐に入り込む。剣を振り下ろしオッタルを飛ばす。
「ちと油断したけど、この程度、俺でもできる」
「……ぐぅ。なるほど、一筋縄ではいかんらしい」
「ほら、これからだぞ?」
「あぁ、そのようだ」
「ランページⅡ」
ランページⅡ。ゲームでは自身の連続攻撃率を上げるものだった。だがこの現実ではそんな確率などではない。自身の力を上げて瞬発力を大幅に上げ攻撃速度を上げる。そうする事でゲームで言う連続攻撃が可能なわけだが。
ガギンッ!ギギギン!!
対処されたら連続攻撃もあんまり意味ねぇわな。
「グ!!……ハァア!!」
ガギンッ!!
こいつ!身体が俺より大きい分、向かって来られたらこっちが弾かれる!!クッソ!ドラフを相手にしてる気になってきたぞ!!
大剣相手にこの剣じゃ軽い!!!
『黒竜の加護』発動。
バハムートソード・フツルスからバハムートアクス・フツルスに変化。
「何?」
これで武器を重くして!!
「飛べやぁ!!!!レイジぃいい!!」
さらに攻撃力上昇だゴラァああ!!!
ガギィイイン!!!!
「ぐぅううう!!!」
あの武器、不壊属性でも付いてやがんのかよ!!
折れねぇぞおい!!
「……グハッ!……なるほど、強い」
「とっとと、どっかに、行ってくれねぇ、かなぁ?」
「ふん。その強さ、いつまで続くのだろうな?」
「あ?」
「息が、上がっているぞ?」
……は?
いや、まて。少しだが息が上がっている。
猛者オッタル。確かにこいつは、今までの奴等とは強さが違いすぎている。だが、それだけで俺の息が上がる?
「貴様の、その技はいつまで、代償なしで使えているんだ?」
「……あぁ、納得した。ここで、ステイタスかよ」
思っていたより余裕がないみたいだ。
あーくそう。弱くなったとわかれば、嫌でもイラっとするなぁ。
「貴様が強いのは明らかだ。同じレベル。いや、それより下でも俺は負けていただろうな」
オッタルは薄く笑い続ける。
「だが、Lv.1の貴様にやられる程、俺は弱くないはつもりだ」
ガチャリとお互いに武器を構える。
「ハハッ。負かしてやるよ最強」
「負けるつもりはない。最弱よ」
ガギィイイン!!!!
そして、また、俺たちは激突した。
「ハァ……ハァ……」
「ゼェ……ハァ……」
何度、武器をぶつけただろうか。
あぁくそ。嫌と、いうほどわかったよ。
ステイタス。これ、俺の足枷だわ。
こいつがマグナやバハムートより強い訳がないのはわかる。だが、それなら何故、俺がここまで苦戦して更に倒せないのか。
「レベル、上げねぇと、なぁ」
「安心、しろ、今回で上がる、だろう」
「あぁ?そりゃ、お前程度が、俺の壁だと、言ってんのか?」
「実際、倒せていない、だろう」
くっそ。あぁ、認めるよ。
ここまでやっても倒せねぇのは久しぶりだ。
あぁ、ちくしょう。
「楽しいなぁおい!!!」
ガギンッ!
「それには、同意だ!!」
ガギィイン!!
バハムートアクス・フツルスと奴の大剣がぶつかり合う。何度も、何度も何度も。
ダンジョンの壁は砕かれ、地面は抉れる。
それでも、俺達は止まらずに激突しあう。
そろそろ体力的にも、お互い限界に近い。
次が俺達の最後の衝突になるだろう。ここで相手にかけるアビリティを使えば確実に勝てる。
だが、てめぇにだけは、アーマーブレイクやミゼラブルミストとかの小手先技は使わねぇ!!!正面から!!殴って!!!倒してやる!!!!
「おおおおお!!!レギンレイヴぅううう!!!」
「はああああ!!!」
俺の奥義と奴の本気の剣がぶつかり合う。
ガギィイイン!!!!
……ガン!ガラン!!
俺はなんとか奴の剣を弾き飛ばすことに成功した。
「ハァ…………ハァ……。見たか、この、や、ろう……」
「……見事、だ」
だが、俺の意識はそこで途絶えた。
「クッソいてぇ……」
痛さで目が覚めた。何か大きくゴツゴツしたものが……。
「起きたか?」
「あ?……離せ猪野郎!!!」
最悪だ!!俺にそっちの趣味はねぇ!!!
ゴツゴツゴリマッチョにおぶられるとか!!せめてランスロットとかならまだいいのに!!!
「運んでやっていると、いうのにな」
「うるせぇ。あーくそ!最強が最弱に、手加減なしで思い切りやりやがって」
「だがその最弱は最強の剣を飛ばし、しばらく腕の感覚を無くさせた」
ジョブチェンジ。
セージ。
『黒竜の加護』
武器変化。
「ヒールオールⅢ」
「む?」
「認める、俺の負けだ。だが、今回だけだオッタル。次やる時は俺が完膚なきまでに潰す」
「フッ。楽しみにしておこう」
その時、ふと気になることがあった。
「……なぁ、今、時間とか分かるか?」
「時間?……朝になってるだろうな」
「ランちゃん!!!ベル君!!!……あぁ、やってしまった」
俺は思わずしゃがみこんでしまう。
嘘だろ?俺、あいつらの訓練を少しでも見てあげてないのか?なら、次から俺はベル君にどう教えてあげればいいんだ。
「何かあったのか?」
「大事な用だよ!!」
「なら行くがいい」
「終わってんだよもう!!!」
「そうか。残念だったな」
「こいつ!今から殺してもいいかな!?」
「受けて立とう」
……はぁ、馬鹿らしいやめだやめだ。
さっさと帰って寝る。またそのうち召喚すればいい。それにランスロットは期待に答えると言ったのだ。破られる事はないだろう。
「もういいや。帰る」
「あぁ、お前との戦いは、なかなか、楽しかったぞグラン」
「俺も久しぶりにヒリヒリした。次は潰すからなオッタル」
この世界での初めての敗北。
やる事は山積みだ。敗北してしまう相手がすぐそこに居たって事は他に何かがあってもおかしくはない。まず、ヘスティアちゃんにステイタスの更新をしてもらおう。
そして俺は一晩ぶりに教会へ戻ったのだ。
「あ!グランさん!?どうしたんですか!そんなボロボロで!!」
一人で訓練をしていたベル君が叫びながら走ってくる。まぁ今の俺は服は破けているし、泥だらけだし汗の匂いも酷いものだろう。拭う汗は美しいと言うがここまでボロボロなら汚いだけだ。
「まぁ、ちょっとね。それよりどうだった?」
「そうです!ランスロットさんです!訓練の途中、早口で課題だけ言ったら、急に何処かに行っちゃったんですけど」
「ほう。ほんで課題とは?」
「それが、あとは打ち込むだけだって」
「やればいいじゃん」
俺の言葉にベル君は不思議そうな顔を向ける。
「ランちゃんが、後は打ち込むだけだって言ったんだろ?なら恐れず教わった事を、そのまま出してみればいい」
「……けど、ランスロットさんみたいに凄い技は」
「出来なくて当たり前だ。アレはランスロットが努力してきた証。最初から完璧にできるはずがない」
「徐々にって事ですか?」
その通りだ。
「ひたすら繰り返して熟練して行く。そうする事で初めて、強者の領域に手をかける事ができる。ほら、打ち込んできてみな?」
「はい」
俺は剣を構え待ち、ベル君は気持ちを落ち着けて深呼吸を行う。
それからしばらくして
「いきます!!」
ベル君がヘスティア・ナイフを構え、技を打ち出す。
それは、今までのベル君では、考えられないほど速く。強い踏み込み。その瞬間、ベル君は風を纏った。
「ブレードインパルス!」
ギン!!
及第点どころじゃない。これは文句なしに合格だろう。Lv.1でこの速さの攻撃。並みの冒険者なら初見では確実に避けられない。この技は確実にベル君を助ける武器となったのだ。
「うん。合格だね、自信を持っていいよ」
クシャりとベル君の頭を撫でる。
そうしてやるとベル君は嬉しそうな顔で返事をしてくれた。
「……はい!」
これを持って第一回ベル君育成計画を終了とする。俺、何も出来てないけどね。