グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか? 作:クウト
つまり、わかるな?
あの後、アイズ・ヴァレンシュタイン達に連れられてやって来たのがダンジョンの中にある広い空間。どうやらこういう行き止まりのような空間はいくつもあるらしい。
まぁ俺も見つけたしな。
その空間の壁をアイズ・ヴァレンシュタインが傷つけ始めた。リヴェリアが言うにはこうする事で一時的にモンスターが出て来なくなるそうだ。
一仕事を終えてアイズ・ヴァレンシュタインが戻ってくる。
「ねぇ、なんでリヴェリアだけ名前で呼ぶの?」
「ん?」
しばらく話していたのを聞かれていたのか?
「……私の事、ずっとアイズ・ヴァレンシュタインって呼ぶから」
「あー。上から目線で申し訳ないけど俺、認めた奴ぐらいしか名前で呼ばないんだ。今はベル君にヘスティアちゃん。アミッドちゃんにレフィーヤにリヴェリアさん。これぐらいかな?」
「……私も、呼んでほしい」
「なら、剣で認めさせてみな」
「そうする」
お互い構える。
「ッ!!」
キィン!
アイズ・ヴァレンシュタインの踏み込みはやはり速く、振りぬかれた剣も鋭い。いいな、真っ直ぐな剣だからかカタリナさんを思い出してしまった。……ビィ……。
「そうだな。今回はこれで行こうか」
ジョブチェンジ。
侍。
俺はバハムートソード・フツルスからブレイドに変える。
「……武器が!?」
「武器の変化だと!?」
アイズ・ヴァレンシュタインとリヴェリアさんが驚いている。だが、そんな暇ねぇからな?
「驚いてる暇なんてねぇぞ!画竜点睛!!」
攻撃速度を上げ、連撃を増やす。
武器通しがぶつかる頻度が上がり、アイズ・ヴァレンシュタインにも俺の剣が当たる様になる。
「クッ!」
「速いが!軽い!!」
「なら、
魔法か!!
風を纏い攻撃が重くなる。
カマイタチの様に風が俺の肌や服を裂く。
そのせいで画竜点睛が解けたのか、先程までより俺の動きにキレが無くなる。
「なるほどな。攻撃力が上がって風で範囲も広がるのか。なら、これはどうだ?」
ある事を確かめるために地面の土を蹴り上げる。
「……無駄!」
「だよなぁ!!」
怪物祭の時、風を纏いながら飛んでいたのを思い出し、風を纏う事で防御にも使えるのかと思いしてみたのだが、予想通り蹴り上げた土は風に弾かれる。
「なんとも使い勝手が良さそうな魔法だなぁ!」
ヤバイなぁ。楽しくなってきたぞ?
「もっと上げて行くぞ!」
「……うん!」
「アイテムボックス!!」
ジョブチェンジ。
剣豪。
ジョブチェンジと同時に武器を無銘金重に変える。
「また、違う武器に!」
「驚く暇なんてねぇって言っただろう!?」
また馬鹿みたいに驚いているアイズ・ヴァレンシュタインの懐に『ダンッ!』と勢いよく踏み込む。
「烈刀一閃!!!」
「なっ!?クゥゥ!!!」
一閃で四本の剣閃が疾る。
……防ぐか。だがアイズ・ヴァレンシュタインの剣を持つ手は震え先程までのように振ることはできない。
「まだやるか?」
「……もちろん」
「いいな。気に入ったぞアイズ」
「……やっと、呼んでくれたね」
楽しませてくれてるからな。
望まれた名前呼びぐらいはしないと、こっちの気が済まなくなってしまっているのだ。
「ほら、魔法の出力を上げろよ?さっきまでとは段違いだからな」
「……わかった。絶対に止めてみせる」
いいな。本当にいいぞ!
戦っていてワクワクしてくる。あぁ、この世界は予想外に俺を楽しませてくれる物がゴロゴロとありそうだ。
「さぁ、刮目して我が技をご覧あれ」
ガチャリと震える手を握りしめて構えるアイズ。
さぁ、音を超えるぞ?
「無明斬」
アイズの風を切り払い。
アイズの武器を弾き飛ばし。
アイズの身体を斬り裂いた。
「アイズ!!!」
リヴェリアさんがアイズに駆け寄る。
まぁ斬り裂いたってのは気持ち的な話で峰打ちですけどね?斬り裂いちゃったらベル君の修行とかどうなるかわからんし。まぁ、魔法やらエリクサーやらあるから死なない限り大丈夫だろうけど。ちなみに余談だが俺のリヴァイヴは成功するか運次第だが、生き返ったのち若返るという謎の効果が出たことがある。
故郷の婆さんにジョブを教えてもらっている時、勢い余って婆さんを斬ったジータ。ジータも俺も慌てたが、なんとか正気を取り戻した俺がリヴァイヴを使ったら、少し婆さんが若返ったのだ。
腰痛が治ったとか言い出して修行が五割り増しでキツくなったのは言うまでもない。ジータが鬼の様に俺に向けてエーテルブラストを連発してきたのは今でも根に持って恨んでます。アレもう爆撃じゃねぇか!ふざけんな!!
「峰打ちだから死んでないからね?ほら、回復させるから」
そうしてジョブチェンジをした後、あの時の俺達のように慌てているリヴェリアごとヒールオールをかける。
「な、なんだこの魔法は」
「回復魔法。詳細は秘密で」
「……そうだな。あの時の子が使っていた魔法も含めて色々聞きたくはあるが、君には世話になってしまったから聞かないでおこう」
あの時の子?
あー。カリオストロか。
アレ、子っていう年齢でもないし、なんなら中身おっさんだからね?
まぁそれは置いておいて深く聞かないのはありがたいし軽く礼でもしておこう。
「ありがたい」
さてと、じきに目が覚めるとは思うがもう疲れたし、さっさと戻るとしよう。
「背中に乗せてくれるか?」
「いいのか?」
「俺はいいぞ。まぁ本人の意思確認ができなくて悪いがな。俺はさっさと地上に戻りたいんだ」
「なら、お願いしよう」
リヴェリアがアイズを俺の背中に乗せる。
いいか?この時、お尻なんて触ってみろ?何かを察した何か達が襲いにくる。向こうでの話だが、一度不可抗力で足をくじいた依頼者をおぶる為に担ぎ上げた時、ついお尻を触ってしまったことがあった。俺と依頼者だけだったのに何故かナルメア含める一部にはバレていた。何故だ……!
「さぁ、アイズを背負ってもらって悪いが行くとしようか」
「はいよ。お任せあれ」
俺はリヴェリアさんと眠り姫のアイズを背負いダンジョンを進んでいく。ダンジョンには二日間いた事になるなぁ。軽々しく遠征なんてするもんじゃないなぁ、向こうでは数日かかる依頼なんて最近は特になかったし、あっても町とかに泊まったりも出来たから勝手が少し違う。
「もうだいぶ上がってきたな」
「あぁ、疲れはないか?」
「大丈夫。てかさっきから起きてるだろ?」
「……グゥ」
落としてやろうか。
「起きてるなら降りろよ」
「もう少し、ダメ?」
ダメではないが理由がわからんのだが。
アレか?リヴェリアさんと同じ苦労人感が出ててそれで接しやすかったのか?知らんが。
……放っておくか。
「今頃、外は夜だろうな」
ふと出た独り言にリヴェリアさんが返事をしてくれる。
「そうだろうな。今は6階層だからもう一踏ん張りだ」
「ベル君どうしてるかなぁ」
「あぁ、あの子か。グランから見てどう思う?成長しているのか?」
「そりゃもうグングン伸びてるよ。師匠もつけたし会うのが楽しみだ」
男子三日会わざれば刮目してみよ。
ランちゃんがどう育ててるか、そしてどう育ったか見るのが楽しみである。
「師匠?まさかとは思うが、あの時の少女のような存在か?」
「まぁ、そんな感じ?」
白竜騎士団を率いていて、多くの仲間に信頼されている。そして我らが騎空団の団長のストッパー役の一人でもある頼れる騎士だ。
なんて言ってもわからんだろうしなぁ。
「ふむ。気になるな」
「……その人も、強い?」
「起きたなら降りなさい」
スッとアイズの足を支えていた腕を解く。
首にプラーンとぶら下がった状態になったが、リヴェリアさんが睨んだ事でサッと離れた。
さすが噂に名高いオカンである。教育がされているのを感じた。
そうして順調にダンジョンを進んでいた時である。アイズが声を漏らした。
「あ」
ダンジョンにヘスティアファミリア団長が転がっていた。
「ベル君!!!」
外傷はない。
だがなぜ倒れている?……まさか。
「精神疲弊だろうな」
「やっぱりか」
そうか、魔法を覚えたのか。
本当に、目を離すとドンドン育っていくなぁ。
古戦場から逃げるな