グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか? 作:クウト
今回の話はなんと言うか。
グラン君暴走しますが温かい目で見てやってください。
「それじゃあ行ってきますね!」
翌日。
俺はダンジョンに向かうベル君を見送っている。
まぁこのまま放って置くわけないんだけどな。
「さて、俺も行きますか」
準備は昨日の夜の間に終えている。
向こうとは素材が違うが、ダンジョンで同じ様なドロップアイテム等を使い作った暗器。
ジョブチェンジ。
アサシン。
「必要なら、躊躇なんてしない」
ふとみた鏡には冷たい顔が写っていた。
あぁ、こんな顔を見られたら、団員達に心配されるんだろうな。ラカム達を中心に、アサシンにはなるなって言われてたけど。
「ごめんな」
カヌゥとか言う獣人。
こいつが死ぬ事で少しは静かな日常になるのなら、殺す事も視野に入れる。
「……うだうだ考えるの、やめるか」
用意した外装を被り、暗い路地に溶け込んでいく。
目指す先は、ダンジョンだ。
ベル君はリリルカ・アーデと合流してダンジョンに潜っていく。その際、ベル君がリリルカ・アーデから剣を受け取っていたが、なんでだ?まぁ、気にしなくてもいいか。変な細工とかも無さそうだし。
とりあえず剣について考えるのは後回しにしておく。
ベル君達はダンジョンに入り、どんどん階層を進めて行き着いたのは10階層。
「ここまで、来れたのか」
訓練をつけてあげるばかりで、ダンジョンでの話をしていない事に気がついた。俺も資金集めに奔走していたのはあるが良くないな。もっとベル君と話す時間が必要だと改めて感じれたね。
「そろそろ一緒に、ダンジョンに行くのも悪くないかもな」
うん。悪くない。
ランちゃんも連れて三人でワイワイとしながら進むのもありかもしれない。なんなら他の団員とも交流させて、みんなの生き様を見せてあげるのも勉強になるだろうか?誰がいいだろうか?しばらく考えてみるとするかな。っと。
「何してるんだ?」
さっきからリリルカ・アーデの様子が少し変だ。
オークをうまく相手取っているベル君から距離を取りだした。自然な動きで手馴れているのがわかる。って!
ベル君のレッグホルスターが矢で弾き飛ばされる。リリルカ・アーデが撃ち放った矢だ。
この隙をモンスター達が見逃すはずもなく、ベル君に向けて一斉に襲いかかってくる。
「あぁ、そう言うことか」
やっぱり最初からそれが目的だったのか。ベル君のヘスティアナイフを奪いここでベル君を消す。そうすればリリルカ・アーデには金も手に入って邪魔者も消える訳だ。
「だけど、お前も消される覚悟が、あるんだろうな?」
適当に買ったナイフを掴み飛び出そうとする。
その時だった。
「ッ!!」
ギン!ベキッ!
急に背後からの斬撃。
体を捻りそれを弾く。
「チッ!!」
ナイフが折れた。
それに斬りつけてきたやつのせいで、俺は弾き飛ばされてベル君の視界に入ってしまった。
「誰ッ!?」
ベル君もこっちに気がついたのか警戒してくる。
はぁ、とりあえずやるか。
姿勢を倒し低くして素早く動く。そのままベル君に近づき周りに残っていたオークに向かって麻酔針を撃ち込む。
「行け」
「え?」
呆然とするベル君。だが、俺は悪いと思いながら蹴り飛ばした。
「な!なにを!!」
「行けと言った」
「……ありがとうございます!」
少しばかり考えた様だがそう言って走って行った。はぁ、何者かもわからないのにお礼なんか言うなっての。まぁ、それもあの子の美点の一つかな。
にしてもだ。
「邪魔してくれたなアイズ」
乱れた服装を整えながらそう言った。
フードが少しずれたせいで、アイズから俺は見えてしまっただろう。
「……やっぱり、グランだったね。何をしてるの?」
何をしてるの?か。
まぁ見るからに怪しい雰囲気だしな。疑問に思うのも仕方ないだろう。
「お前には関係ないよ。大人しく見逃してもらえないか?」
「……それは、嫌」
「?なんでだ?」
「……今のグランはなんか変。それに、その目は嫌だから」
「……」
「だから、止める」
「……やってみろ」
俺はアイズに向けて麻痺針を投げる。
勿論弾かれるが俺はアイズに向けて一瞬で近づく。
「速い!?」
「悪りぃけど、通らせてもらうぞ」
「させ、ない!!」
まだ持っていたナイフで斬りつける。だが、それも受けられてナイフが折れる。
チッ!武器の性能が違いすぎる。この事態は想定していなかったからナイフは人を殺せるぐらいの物しか無く、アイズとやるには役不足すぎる。それにまともにアイズと戦うなら、ジョブチェンジをしてもっとまともな戦闘ジョブでやるのがいいんだが。
「どうしても、退かないか?」
「退いてほしいなら、理由を話して」
「はぁ、俺もそれなりの覚悟の元、ここに居るんだけどな?」
「それでも」
「違うファミリアが入り込んでくるな」
アイズが話している途中に、割り込む様に言って突き離す。アイズの表情が若干歪む。
「……それでも、そんなグランは見たくないから」
『お前がそんなに苦しそうなのは、見てられねぇんだよ』
「……あ」
あの時と重なって、しまった。
団も大きくなった頃の事だ。名声が大きくなる毎に羨望の眼差しを受けるだけでなく、暗い欲望も受けてしまう事態になったことがある。
若い団長が率いる騎空団だ。プライドがある騎空士達からのやっかみだけじゃなく、闇と言っていい奴らから命も狙われた。だが団長であるジータは呑気なもので、かかってくる奴らは全員ブチのめせばいいとか言っていただけ。でもそんな事をすれば更に狙われる事になる。だからと言って泣き寝入りするわけにもいかない。
だからこそ俺は、団員達には秘密であるアサシンと関わりを持って技術を学んだ。
何度も狙う奴らを暗殺し続けた時、ラカムやビィ。オイゲンにロゼッタ。他にもゼタとかもなんか居たっけか。何故かある日を境に、そいつらが俺の周りから離れなくなった。
だがそれでも、隙をついて深夜に暗殺に向かおうとした時、ラカムが現れて俺にこう言った。
『お前だけが泥を被る必要なんざねぇだろ?俺達は、仲間じゃねぇかよ』
そう言って止めてくれた。
そんな時と今のアイズが被ってしまったのだ。
「はぁ、わかった。もういいやめた」
「……そう。なら、帰ろう?」
『そうか。なら、このまま帰って男だけで酒でもどうだ?』
……あぁ、そうか。
俺、ただ仲間に会いたかっただけなのか。
だから、狙われたベル君を、あいつらの代わりの様にして過保護に守ろうとして……。
『んな事誰も望んじゃいねぇよ。お前が影で傷ついていくのを黙って見てる方が、辛いに決まってるだろ?』
「……あぁ、そうだった」
「どうかした?」
「いや、帰るとするよ」
「……うん」
俺の手を引くアイズ。
あの時はラカムが肩を組んでくれたな。
アイズの手から伝わる暖かさが、少しありがたかった。
外装を脱ぎ、アイズに手を引かれる。
……いや、待て。ベル君のことすっかり忘れてるじゃねぇか!!
「アイズ。寄りたいところがあるんだけど」
「あの子のところ?」
「あぁ、もう大丈夫だからさ。遠くからでも見たいんだ」
「……うん。行こう」
二人して一気に走り出す。
今から行って間に合うかはわからない。だけどそれでも走る。
9階層も走り抜けて8階層でそれを見た。
「ブレードインパルス!!!」
風の様にキラーアント切り裂く。
「ファイアボルト!!!」
炎の稲光が疾る。
速く、鋭い。その攻撃を繰り出すベル君はまるで嵐の様で。
「……すごい」
「ハハッ。本当にすごいな」
やっぱり過保護過ぎたな。
まだまだ頼りない男の子のままだと思っていたけど、しっかり漢してるじゃんか。
「もう大丈夫だな」
「いいの?」
「あぁ、もう安心した。だから次だ」
その言葉に対して不安そうにこちらを見るアイズ。クシャッと髪を撫で付け安心しろと伝える。
さて、あのキラーアントの大群を見る限りカヌゥとやらの仕業だろう。たぶんあいつはここより先に居るはずだ。
「へへっ。アーデのやつノームの貸し金庫なんて使ってやがったとはな」
あいつか。
「さっさと取り出しにいかねぇとな」
「おい」
「あぁ?なんだガキ」
「それ、返してくれない?知り合いのやつでさ」
「はぁ!?ふざけてんのか?」
俺の言い出した事に過剰に反応し出す。
まぁこうなるわな。
「ふざけてなんかいねぇよ。知り合いのパルゥムがお世話になったんだ。そのぶんのお礼ぐらいさせろや」
ジョブチェンジ。
カオスルーダー。
「あんまりふざけた事言ってると、痛い目見てもらうぞ!」
そう言ってこちらに駆け出してくるカヌゥ。
「ディレイⅢ」
「……な、んだ……これ」
スロウがかかりカヌゥの動きが遅くなる。
「アンプレディクト」
「な、なん……だ!?み、見え、ねぇ!!!」
アンプレディクトで相手の攻撃力、耐久を下げる。ランダム効果は暗闇で視界を奪ったか。
「まぁなんだ。色々と不満のはけ口になってくれや」
「ひぃ!!」
「殺さない様に手加減はしてやるよ!レギンレイヴ!!!」
俺の放った剣線がカヌゥに直撃した。
血を流しながらも壁にぶち当たり気絶したカヌゥにポーションをかける。そのままノームの貸し金庫の鍵とやらを探しアイズに確かめてもらって回収し俺とアイズはダンジョンから出る事にした。
カヌゥは放って来たが、運が良ければ生きているだろ。
この小説は作者がなんの考えもなく書きなぐっているだけです。
ここが苦手だな!とかあると思われます。
読んでて気分が害されるなら、読まないほうがいいかなぁって思っています。時間は有限だからね。気分よく過ごしたいじゃん?
そんなわけでもう一度言いますが『それでもいいよ』って人だけに読んでもらえるとありがたいです。