グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか?   作:クウト

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古戦場三戦目。勝ちました。
なんとか巻き返せました。いい勝負をありがとう。


自分の全てを知ってる仲間は必要なんだ

目の前には三人の人物がいる。

ベル君、ヘスティアちゃん。そして。

 

「リ、リリルカ・アーデです。は、初めまして」

 

そう言ってリリルカ・アーデは挨拶をした。

色々あったもののベル君はこの子をうちに保護する事に決めたらしい。保護って言うと犬猫みたいだな。まぁ魔法で獣人にもなれるみたいだしそんなもんか?ていうかこいつ、前も思ったけど。

 

「俺がオラリオに来た時、会ったよな?」

 

「え?……あ!?」

 

「え?グランさん知り合いなんですか?」

 

「そうだぞグラン君!君という奴はそうやっていつも何かを」

 

「いやぁこの子俺が街に来た時にさぁ」

 

「ちょっ!待ってください!!」

 

「僕の話を聞けぇ!!」

 

「リリ!?神様!?」

 

「ハッハッハ!!」

 

「グランさんもなんで笑っているんですか!?」

 

リリルカ・アーデはオラリオに初めて来た時、俺の財布をするつもりだったはずが俺に絡まれた奴だった。それを茶化そうとしたらもうこのカオス状態よ。笑うしかねぇよな。

 

「ともかくベル君が拾ってきたんでしょ?面倒見なよ?」

 

「リリは動物じゃないですよ!?」

 

「冗談だって」

 

わちゃわちゃしたが、とりあえずまとめにかかろう。

 

「リリルカ。ベル君をよろしくな?」

 

「は、はい!」

 

「うん。いい返事だ」

 

急に俺と話を深めようとしても、やりづらいだろうからこの辺にしておいて、もう一つの用も済ませるとしようか。

 

「リリルカはこの辺に住んでいる人達に詳しかったりする?」

 

「どういう事ですか?」

 

「これの落とし主を探してるんだよね。俺って知り合い少ないしこんなのを預けれる人とか居なくてさ」

 

ノームの貸し金庫の鍵を取り出す。

 

「そ、それ!リリのです!!どうしてグラン様がこれを!?」

 

「ダンジョンの中で偶然拾ったんだけど。リリルカのなら渡そうかな」

 

「い、いいのですか?……もし、リリが嘘をついていたら」

 

「ちょっ!リリ!?グランさん!リリは嘘をつく様な子じゃ」

 

「わかってるよ。……リリルカ。正直に言って君の事を信用しきってるわけじゃない。でもこれは君に渡すよ」

 

「どうして、ですか?」

 

「ベル君が、君の事を信用してるから」

 

「……ベル様が」

 

「グランさん」

 

「裏切らないでくれると、嬉しいかな」

 

「……はい!!!」

 

晴々としたその笑顔は信用できると確信できた。

 

 

 

さてさて、リリルカとヘスティアちゃんがベル君を取り合うバトルを始めてしまった為、俺とベル君はさっさとその場から逃げ出した。

 

「んで、エイナさんとやらに今回の事を伝えるんだな?」

 

「はい。ソーマファミリアの事、僕達だけじゃ手に余ると思ったので」

 

「自分だけでできない事を、周りに頼るのは正解。抱え込んで潰れちゃったら元も子もないからね」

 

「はい。だからグランさんの事も、頼りにしてますからね?」

 

そう話しながらギルドへ足を踏み込む。

ベル君はすぐに辺りを見回して顔を明るくさせる。どうやらエイナさんを見つけたようだな。

 

「エイナさッ!……」

 

エイナさんとはあの人か。この間ソーマを買った店ですれ違った人だ。ん?てかアイズまでいる。

てか、なんだこの場は。なぜか目を見開くエイナさん。俺たちに振り返りベル君を見つめるアイズ。顔が赤くなって行くベル君。その様子を後ろから見る俺。

 

「何これ」

 

「……!?」

 

ダッ!ガシッ!

ベル君が勢いよく出口へ駆け出そうとしたのを、襟首を掴んで引き止める。……気持ちはわからなくないけど、そろそろ失礼だからね?

 

「グランさん!?」

 

ズルズルとベル君を引きずりながらアイズ達の元へ行く。

 

「うちの団長が失礼をして申し訳ない」

 

「…気にしなくても、いいよ」

 

「もうベル君!顔を見ていきなり逃げるなんて失礼でしょ!」

 

「あ、ベル君。俺、魔石とかの換金してくるから。ほら、アイズ。ベル君逃げちゃうから手掴んでてね?はい。じゃあね!!」

 

「わかった」

 

「ぐ、ググググググランさぁあん!?!?」

 

ベル君!頑張れよ!夢のハーレムはもっと大きくなんだぜ!!!

そんなわけでアイズにベル君を任せてニコニコしながら離れてみた。ハッハッハ見事にテンパってるなぁ。あ、魔石とか換金お願いしまーす。最後に見た光景は真っ赤に染まったウサギが気絶したところなんて面白すぎだった。

 

 

 

あの後、しれっとヘファイストスさんにお金を渡しに行ったり、じゃが丸くんを食べたりして時間を潰し、お金を受け取りアイテムボックスに入れてから三人の所に戻った。さすがにベル君も気絶から起きていてぎこちないながらも話ができていた。俺、ベル君のこと放任するって決めたからさ。これもその一環なんだぜ?この上なくゲス顔になってる気がする。

 

「話し終わった?」

 

「あ!グランさん!!」

 

ベルくんが突撃をかましてくる。

だがしかし、そう簡単にはさせません。

 

「そーれ!」

 

突撃してきたベルくんの腕を掴み、クルリと回転してアイズの方へ投げてみる。

 

「へ?うわぁあああ!!!」

 

投げられたベル君をかわしながら、ベル君の服をひょいと掴むアイズ。そして宙づりになるベル君。

 

「……大丈夫?」

 

「……なんか、ごめんね?」

 

「……ベル君」

 

「……も、もう、殺してください」

 

正直、調子に乗りすぎた。

とりあえず仕切り直す為に何の用だったのかとかを聞いてみた。どうやら俺がベル君を蹴飛ばした時にベル君の装備が落ちたらしい。それをアイズが届けてくれたとの事。アイズはうまく誤魔化して話してくれたみたいで、俺がベル君から話を聞いている時ずっとこっちをみていた。

何?何かしらの形で借りを返せとか?

戦闘の一回でも要求されそうな予感。

 

「……グラン。その子がそうなんだよね?」

 

「?……あぁ!そうそう!頼めるか?」

 

「なんの話ですか?」

 

「アイズがベル君に訓練をつけてくれるんだよ」

 

「へ?……本当ですか!?ていうかなんでそんな事に!?それに何でグランさんはヴァレンシュタインさんと仲が良さそうなんですか!?」

 

「……依頼を受けたから」

 

「依頼!?!?グランさん!どういう事ですか!?」

 

見事に混乱中である。

うーん。答えてあげてもいいんだけど何というか、めんどくせぇ。

さっさと終わらせるか。

 

「ベル君。君は強くなりたいんだろ?なら、訓練をつけてもらう一択だ。こんなチャンス、もうないかもしれないぞ?」

 

「え!?いや、でもそうじゃなくって!」

 

「この場でこれ以上喚くと俺から断る」

 

「えぇ!?」

 

こんな状況に見兼ねたのかアイズが話しかけてきた。

 

「君は、強くなりたいんだよね?」

 

「……はい!」

 

「なら、しばらくの間だけど。私と訓練しないかな?」

 

スッと差し出された手。

憧れの人からの手だ。ベル君の中では様々な葛藤が嵐のように巻き起こっているだろう。でも、君なら。

 

「ヴァレンシュタインさん。ご、ご教授をよろしくお願いします!!」

 

「……うん。よろしくお願いします」

 

その腕を取るよね。

 

 

 

ベル君とアイズの光景を見て、俺はまた向こうの仲間が恋しくなった。

今回は誰か呼んでみようか?会いたい奴らは複数人居るが……。一回何人か思い浮かべながらやってみるか?そう考えながら路地裏に入っていく。

 

「さて、一回試してみるか。【蒼き空、彼方の絆。結びて繋げ。今ここに求める者との共闘を】」

 

同じ虚脱感。思わず頭を抱えしまう。

だがマジックポーションを飲み干して何とか耐える。そして視線を上げた先には。

 

「ん?おぉ!?グランか!?」

 

頼りになる兄貴分のラカム。

 

「あれ?ラカムも一緒なの?って早くグランに、カリオストロの薬を飲ませないと!!」

 

俺たちの妹分の様なイオ。

 

「そうだった!おいグラン!しっかりしろ!」

 

「ちょっと!せっかくの再会なのに、気絶なんかしないでよ!?」

 

少し慌て気味の二人が、懐から取り出した薬を飲ませてくれる。カリオストロの特製だからか今までよりも気分がスッキリした。だけど。

 

「……頭いてぇ」

 

いつもの様に軽く冗談を言ってみる。

 

「ははっ!冗談を言えるってことは、結構元気そうじゃねぇか」

 

「あのね。カリオストロの薬を飲んだのよ?頭の痛さなんてなくなるに決まってるじゃない」

 

「……うん。そうだな、元気、だったよ」

 

あ、ヤバイ。

 

「え?ちょっと、どうしたのよ」

 

「グラン?おめぇ泣いて」

 

「ねぇから!!!」

 

慌てて袖で顔を拭く。

だが、何故なのか。視界はにじんだまま。

 

「気にすんな。今は俺らしかいねぇからよ」

 

ラカムがそっと肩を組んでくれる。

 

「そうよ?別にあたし達の前では、頼りになる副団長の姿じゃなくてもいいんだから」

 

背伸びをしたイオが頭を撫でてくれる。

 

「イオの言ったとおりだ。お前はもう少し肩の力を抜いてけ」

 

「また何かやらかしたんでしょ?聞いてあげるから落ち着きなさい?」

 

情けないなぁ。

でも、カッコ悪い姿を見せてしまったとかは、何故なのか気にもならなかった。

心を埋め尽くしたのは、慰めてくれる仲間の手が、ただひたすらに暖かい。

それだけだった。




グラン君。前世があるとはいえまだ10代です。
普段多くの仲間に囲まれているけど、それだけ張り詰めている部分もあるのではないか?
そう思って前回と今回の話を少し書いてみたかった。
そんなグランを団のみんなは知ってるけど。だからこそ、いつもは見ないフリをしていざという時は全力で支えてくれる。そんなところが書いてみたかっただけなんです。
ジータ?大丈夫だよあれは。

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