グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか?   作:クウト

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ヘスティアファミリア

次の日。

特に何も変わることなく朝を迎えてしまった。

昨日はあれから三人で飯を食べて寝る準備。寝るまでの間ベル君を誘導しつつ情報収集をしてみた。あれだね……純粋な子を騙してるみたいでなかなか罪悪感があったね。今までの冒険の話とかでいっても問題ない部分だけ話してみたけど……。嘘は言ってないよ!でもほら?帝国と敵対して本拠地に殴り込みましたとか言ってみ?この世界に帝国があるかは知らないけど勘違いされて芋づる式に色々とややこしくなるだろ?仲間とかとの出会いとか、やたら強い奴に絡まれるとかその辺だけ話してみた。喜んでくれて何よりです。

そして今は何をしてるかと言うと。

 

「ほらほら。その程度かベル君」

 

「ま、まだ!!」

 

早朝からベル君の稽古をしている。さすがに俺の剣を使ったらベル君のナイフはすぐに使えなくなってしまう。その為俺はその辺で拾った少し長めの木を使用する。

しかし農具ぐらいしかまともに触ってないとのことだけあって隙も多いし扱いも雑だ。

少しづつだが腕を打ったりしながら最小限で最適な動きを体に覚えさせる。話を聞いているとダンジョンで生き残るには最も最適な行動を取り続けていくのがベスト。だがまだまだベル君にそれを求めるのは酷というものだ。だからこそまずは体の動きを覚えさせていく。不測の事態が起こっても逃げられるように、逃げれなくても助けが来るまで動き続けられるように。

 

「そうそう。大きな動きは隙になるから相手の攻撃を見極めて避けること。今は大ぶりの攻撃なんてせずに隙を見つけたらそこをつくこと」

 

「は、はい!!」

 

「体力なんて積み重ねる事についていくんだからいかに消耗せず相手を倒せるかだよ。ダンジョンに一人で入るなら必ず必要になることだからね」

 

「がぁ!」

 

バシンッ!とベル君の頭を叩く。

……ふむ。うまく入りすぎて気絶させてしまった。俺も熱が入りすぎたのかな?まだまだだよなぁ。

俺はベル君を担ぎ上げて教会に戻る事にした。

 

 

 

気絶から起き上がりダンジョンに向かうベル君を送り出して俺は街へ遊びもとい情報収集へ行く事にする。今日は昼から神様と交代で仕事をする事になってるしまだ時間はある。

 

「まぁ遊べるほどのお金もないし適当にぶらつくだけなんだがなぁ」

 

改めて街を見回ると本当に色々な人達がいる。冒険者に商人、子供に老人。活気もある街だし居心地は良さそうなんだよなぁ。

 

「おい兄ちゃん。ちょっといいか?」

 

「お、なんだあの果物。うまそう」

 

「おいおい無視か?お前だよお前」

 

肩を組んで来るのは見知らぬおっさん。

 

「この俺を無視するたぁいい度胸だ。ちょっとこっちに来いよ」

 

「嫌だけど?」

 

「口答えするんじゃねぇ。いいから来いよ」

 

スッと周りから目立たないように俺にナイフを突きつける。いや、ちょっと街歩いただけで絡まれるとか治安悪くね?

撃退はもちろんできるけどここでは目立つし何より他の人達の迷惑になるだろうな。しょうがないけどついて行くか。

おっさんと仲よさげに見えはしないだろうがそのまま俺は裏道に連れ込まれた。そこ先には二人の仲間がいる。

 

「金と装備置いていきな。怪我したくねぇだろ?」

 

ヒゲを生やしたヒューマン。

 

「早くしろよ?気が長い方じゃねぇからよ」

 

ずんぐりとしたヒューマン。

この二人はグハハ。と下品に笑いながらの要求をしてくる。

まぁ聞く気もないし断るけどね?

 

「嫌だと言ったら?」

 

「わかんねぇほどガキじゃねぇだろ?」

 

スッと首に移動したナイフがチクリと刺さる。

さて、始めるか。

俺は一瞬で闘気を発動する。

 

「ガハッ!」

 

俺を拘束しているおっさんの腹に肘を打つ。

それと同時にナイフを持っている腕を掴んで自分の身を屈めておっさんを背負い投げる。

 

「な、てめぇ!!」

 

「なにしてやがんだぁ!!」

 

「もちろん抵抗」

 

そのまま他の二人に追撃をかけ様とするが相手も一応は冒険者。自分の間合いを確保してくる。

 

「そいつは不意を突かれたが俺たちはレベル2の冒険者だぞ?」

 

「二人がかりで沈めてやるよぉ!!」

 

剣を振りかぶりながら突撃をしてくる太い方のおっさん。確かにベル君と比べると動きに無駄がない上に間合いを詰めるのも速い。

 

「けど遅いんだよなぁ」

 

こちとらある婆さんに戦い方を仕込まれたんだ。

この程度で傷をつけられたりしたらどうなる事やら……。

振り下ろされる剣を紙一重でかわし相手の腹をカウンターで殴りつける。そしてそのまま!

 

「よいしょお!!」

 

巨体と言うほどでもないが俺より大きい体を打ち上げてそのまま身体を回転させて蹴りつける。

そのままヒゲの生えたおっさんに向けてシュート!!

 

「この程度なら楽かなぁ」

 

「なんだよ……それ……」

 

その一言だけつぶやき気絶。

まともに人間一人をぶつけられたのだ。それも鎧やらで重くなっているし中々の衝撃だったろうな。

 

「まぁ斬らなかっただけマシと思っててくれよな」

 

さっさとこの場から離れる事にした。もう直ぐ昼になるだろうしその前に何か腹に入れておきたい。

 

「にしてもアレでレベル2か……。内功」

 

首の小さな傷を内功で治し適当な屋台を探す事にしたのだった。

 

 

 

あれから屋台を巡りひやかしたりしながら時間を潰しアルバイトに行く。

いやぁ、一人ってのが悲しいね。いつもならジータ達に連れ回されたりラカムと遊んだりするんだがなぁ。

 

「あ、おかえりグラン君!」

 

「ただいまヘスティアちゃん。いきなりだけどファミリアに入れてくんない?」

 

「いいよー!……って本当かい!?」

 

「まぁ条件付きだけど」

 

「条件かい?」

 

まぁ俺から頼んでるのに条件とかおかしな話だろう。だが俺には一応変えるべき世界がある。ここに永住する訳にはいかないのだよ。

 

「うん。今はちょうどベル君も居ないしね。俺の話を聞いてほしい」

 

そこから話したのは俺がこの世界の人間ではない事。俺には戻らないといけない理由がある事。ヘスティアちゃんは驚きながらも話を聞いてくれた。

 

「うーん。僕達は君たちの嘘が見抜けるからね。君の話が本当だというのはわかったよ」

 

「信じてもらえるならありがたい。まぁそんな訳でだ。このままじゃか丸くんを売り続けても俺が求めるものは掴めるはずもない。ならダンジョンにも何かないか調べたいんだよ」

 

「わかった。期間付きなのは残念だけど困ってる子供に手を差し伸べるのも僕達だ。歓迎するよグラン君」

 

「よっしゃ!なら早速」

 

「ひゃわ!」

 

上着をさっさと脱ぎ背中をヘスティアちゃんに向ける。どうだ!なかなか鍛えてるだろ?傷だらけなのは漢の勲章だってグラン知ってる。

 

「じゃあ行くよ?」

 

そう言ってヘスティアちゃんは俺の背中にステイタスとやらを刻む。刻むなんて言っても痛みとかはないけどさ。

 

「えぇ!?なにこれ!?」

 

「ん?何か問題でもあった?」

 

「い、いや!なんでもないよ!」

 

そう言ってステイタスを書き込んだ用紙を見せてくれる。

 

グラン

Lv.1

力:I 0

耐久:I 0

器用:I 0

敏捷:I 0

魔力:I 0

《魔法》

【蒼い空】

・召喚魔法

・縁をつなぐ

・詠唱式【蒼き空、彼方の絆。結びて繋げ。今ここに求める者との共闘を】

《スキル》

【ジョブチェンジ】

・自身のジョブ編成可能化。

【黒竜の加護】

・武器の形状変化

・ステイタスの超高補正

・成長速度の高補正

 

ふーむ。なんというかステイタス最初からスタートなのね。てか黒竜ってこの世界では三大クエストとかなんとか言われて忌み嫌われるモンスターだったんじゃね?ドンマイバハムート。

 

「グラン君。このステイタスは異常って考えおいてくれよ?この事が他の神に知れたらまずいからね?」

 

「面倒ごとはごめんだなぁ。てかこの背中の文字は消えたりしないの?服破れたら周りから丸見えになるけど?」

 

「え?……たしかプロテクトする事ができたようなできないような……」

 

「俺このファミリアに入ってよかったのだろうか……」

 

「す、すぐに神友に聞いておくよ!だから今日の所は我慢しておいておくれ!」

 

「果てしなく不安になってきた」

 

そんな俺の不安をよそに元気な声でベル君が帰宅したのだった。


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