グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか?   作:クウト

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うちには水しかいねぇんだ……


未知の力には相応の準備が必要

あれから数日が過ぎた。

もちろんダンジョンアタックを開始した訳だがなんというかベル君からの視線が少しばかり気になる。ベル君からしたら戦闘経験もある俺の戦闘は勉強になるのだろうがそんなに見つめられても困ってしまう。昨日なんか注意散漫になったせいで湧き出たコボルトに後ろから攻撃されかけていた。

 

「そんな訳で今日は別行動ね?」

 

「そんな!一緒に行きましょうよ!」

 

「昨日の事覚えてるよね?あんまり言いたくはないけど俺と一緒にダンジョンに行って集中を乱して怪我をされると困るなぁ」

 

「うぐっ……」

 

「稽古ならダンジョン以外でつけてあげれる。今の君なら五層ぐらいまでなら問題もないだろう?」

 

「そうですけど……」

 

「今君が身につけるべきは実戦での経験だと思うんだ。その辺で出てくる奴等になら大勢で囲まれでもしない限りは大丈夫」

 

「わかりました。今日は一人で行ってきます」

 

「うん。危険だと思ったら直ぐに逃げる事。守れるね?」

 

「でも逃げるのってかっこ悪くないですか?それになんていうか……」

 

うーむ。英雄を目指すと言っていたベル君には恥ずかしい行為だと思っちゃうのかなぁ?でも駆け出しなんだし恥でも何でもない。むしろその選択が出来るだけ力量をしっかりと見極めているんだから強い証だと思うんだが。

 

「逃げは恥じゃないよ?自分で倒せない敵がいたら直ぐに適切な判断をする。逃げる、仲間に助けを求める、他にもあるだろうけど下手に特攻するのは馬鹿のする事だ」

 

「馬鹿のする事……。グランさんも逃げたりした事あるんですか?」

 

「そりゃもういっぱいあるよ?無理だって思ったら速攻逃げるし助けも求める。死にたくないからね」

 

色々な過去があったなぁ。一番記憶にあるのはジータに一人で行けと各マグナの前に放り投げられたことか……。その後何度ナルメアや他の団員に慰められた事か……。あの姉貴いつか仕返ししてやる。

 

「ともかく死なない程度に冒険をしたらいいよ。無茶をするのは経験をたくさん積んでからってね?」

 

「……はい!じゃあ先にダンジョンに行ってきます!」

 

何か思う事があったのか曇り顔から一気に晴れて走り出すベル君。そういう素直なところって美徳だよなぁ眩しいです。

さて、俺もそろそろ準備しますか。

今日は試したいこともある。それにゴブリンやコボルト程度では肩慣らしにもならなかった。スキルや魔法の確認もしたい。今日はちょっとばかり奥に潜ってみる事にしているのだ。

 

グラン

Lv.1

力:I 92

耐久:I 5

器用:I 96

敏捷:I 98

魔力:I 0

《魔法》

【蒼い空】

・召喚魔法

・縁をつなぐ

・詠唱式【蒼き空、彼方の絆。結びて繋げ。今ここに求める者との共闘を】

《スキル》

【ジョブチェンジ】

・自身のジョブ編成可能化。

【黒竜の加護】

・武器の形状変化

・ステイタスの超高補正

・成長速度の高補正

 

実はこの数日間。ベル君と一緒に、しかもベル君メインの探索だったせいもありモンスター10体も相手にしていないのだ。それでもステイタスの伸びは大きいそうだがこれでは目的達成までを考えれば遅すぎる。ベル君には悪いが先に走らせてもらう事にしよう。

 

 

 

所変わってダンジョン内。

魔法も試す予定だからマジックポーションもディアンケヒトファミリアで購入済み。アミッドちゃんが普通のポーションまでつけてくれた。零細ファミリア所属としてはありがたい。

 

「てか、もう十二層まで来てしまった」

 

ここまでシルバーバックやらオークやらポカポカ倒して来た訳だが手応えとかまるでない。これはあれか俺のレベルアップは遠いという事がわかったな……。

 

「とりあえず魔法試すか。ここら辺なら霧も濃いしわかんねぇだろ」

 

精神疲弊が少しばかり気になるからマジックポーションを一応手に持つ。さてとえーと何だっけ?

 

「たしか、【蒼き空、彼方の絆。結びて繋げ。今ここに求める者との共闘を】」

 

詠唱式を唱えた瞬間視界が歪む。これは、まずい。急いでマジックポーションを飲み込むがそれでも意識が遠くなっていく。これ選択ミスじゃねぇかよ。

 

「あれ?ここどこや?って副団長!?ホンマにグランなん!?って何で倒れんねん!!」

 

聞いたことある声を聞きながら俺の意識は遠くなって行った。

 

 

 

後頭部が柔らかいものに触れている。誰かが俺の髪を撫でている。というかそれよりも

 

「獣臭い……」

 

「ぶん殴るで?」

 

「……ユエル?」

 

目の前には少し涙目のユエルがいた。

あーって事は膝枕か。

 

「グランがグランサイファーから消えてウチらみんなで探し回って急に変な場所に来たかと思ったらグランがおって。見つけたと思ったら気絶して……。どんだけ心配かけんねや!!ジータやルリアから消えたって聞いた時ウチがどんな気持ちになったか!!」

 

「ごめん」

 

「謝らんといて!グランが悪くないのなんてわかってるんや。それでも、それでもよかったぁ。見つかって、よかったぁ……」

 

ポロポロと泣き出してしまうユエル。

騎空団のメンバーの中で古参のユエルだ。今まで色々と一緒にいたからこそ泣くほど心配してくれたのだろう。だったら俺は謝るよりもお礼を言うべきか。

 

「心配してくれてありがとうな?」

 

「ホンマに心配したんやで?……それやのに」

 

なんだ?あの、ユエルさん?そのガシッと俺の顔を掴んだ両手はなんですか?え?あ、あ、熱い!あの!熱いですユエルさん!!!

 

「散々寝る間も惜しんで色々探し回ったウチに対して獣臭いって言うのはこの口かぁああ!!!」

 

「あっつい!あづいです!!!ごめんなさいごめんなさい!!」

 

「ろくに水浴びもできんし着替えもできんほどに走り回ったのにぃいいい!!!」

 

「ごめんなさい!てかキャラ崩壊してますぅうう!」

 

「知らんわぁあああ!!!」

 

 

 

「いい加減お風呂に入りたい。いや、水浴びでもなんでもいい」

 

案内しやがれとばかりに睨んでくるユエル。

あ、はい。案内させていただきます。

 

「とりあえずここから出ようか。街にある浴場に行こう」

 

そして帰り道にこの世界の事を話しながら帰る。ユエルも向こうが今どうなっているのか教えてくれながらだから話が絶える事はなかった。

そうして六層まで来た時だった。

 

「何かくるな」

 

「せやな。複数の足音、それもちょっと大きいで」

 

自身の武器【バハムートソード・フツルス】に手をかける。

 

「きたでグラン!」

 

見えてきたのは複数のミノタウロスだった。

ユエルも双剣に手をかけいざすれ違いざまに抜き放つ!

……え?

 

『ブモォオオオオオ!!!』

 

俺らを無視して走り抜けるミノタウロス。

え?

 

「まさかの素通りかいな!!」

 

「逃げてるのかあいつら?」

 

だとしたら何に?まさかこれより強いやつらが上がってくる?見えてきたのは二人。一人は金髪の女ヒューマン。もう一人は男の獣人だ。

 

「どけぇ!そこの雑魚と獣臭い女ぁ!!」

 

「……ごめんなさい」

 

そうして走り抜けていく二人。

その時だった隣からブワッと吹き出る異様な気配。はっ!殺気!?

 

「グラン。あの犬っころ焼いてきてええかな?」

 

「お、落ち着いて?な?」

 

さっきの獣人のせいで不機嫌になったユエルを抑えつつ歩き出していた時。

 

ほわぁああああああ!!!

 

叫び声。しかもこれは

 

「ベル君!?」

 

思わず走り出してしまった。

 

「ちょっ!グランどないした!?」

 

「さっき話したベル君の悲鳴だ!」

 

そうだよ。あの子は今日もダンジョンにいるのだ。それも五層あたりにいる。ならばあのミノタウロスにかち合ってもおかしくない!!

慌てて追いかけてくるユエルと一緒に走り抜けた先で目にしたものは。

金髪の女剣士と爆笑している獣人。そして返り血にまみれながら逃げていくベル君だった。

え?何があったの?

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