グランブルーから地上へ行くのは間違っているだろうか? 作:クウト
「このスキル結構使えるな」
現在俺はダンジョン内でスキルの確認中である。
前回ベート・ローガを相手に【ジョブチェンジ】のスキルは使ってみたが【黒竜の加護】の方は使っていないのだ。そんな訳で今は【黒竜の加護】の効果のひとつである武器変化を使ってみているのだが。
「やっべぇ。バハムートシリーズを網羅できるとは思わなかった」
ソードからダガー、スピア、アクス、スタッフ、マズル、ナックル、ボウ、ハープ、ブレイド。
各武器に変化可能なスキル。ちなみに今はソードに戻している。
このスキル、武器にまで影響与えてるけどこれはいいのか?ていうか便利すぎるんだが。
今まで依頼に合わせてジョブや武器を決めて編成していたのだ。それが状況に合わせてポンポン変えることができるようになるとは。
「ジータにバレたらどうなる事か……」
思い出すのは横暴な姉の記憶。
信じられるか?気がついたら武器が消えて新しくなっていたりした。なぜかと聞いてみると「いつまでクラスⅢでいるつもり?一週間後お婆さんの所に行くからそれまでにその武器を完成させなさい」とか言って来る始末である。英雄武器作成の為にシェロカルテの所に通い詰めた。それに俺は絶望する事になる。なぜならゲームじゃないから作るのは一本だけじゃないんだぜ?俺たちプレイヤーがどれだけのヌルゲーをしていたのか改めて実感した瞬間だった。その頃姉は黒猫導師になっていた。
「だいたいあの姉はおかしい。できる気がするとかそんな理由で新しいジョブを習得してしまうとか何者だよ」
もはや可能性の化け物である。
さらにルリアがすごいすごいと褒めてしまうものだから調子に乗るのだ。覚えたばかりのジョブを一時間ぐらいで十全に扱ってしまう。さらにそんな状況を見ていた俺に「グランも一緒にやりましょう!」なんて言ってしまうのだ。ジータのルリアの期待を裏切るのは許さないというプレッシャーの中、俺は新しいジョブを覚える為に奔走する事になるのだ。おそらくあの姉は運営と変な電波で繋がっている。
「ビィの奴どうしてるだろ?心配だなぁ」
思わず声に出てしまうぐらい心配である。
俺が幼い頃からジータに振り回された後、溜まった鬱憤を晴らす為に付き合ってくれるのはビィなのだ。一緒に遊びに出かけたり、美味しいもの食べたり、元気出せよと好物のリンゴまでくれるのだ。あいつ今も元気にリンゴ食ってるのだろうか?
「それはそれでムカついて来るな」
おっと。ブラックな面が出てしまった。
こんな事だからイケメン騎士連中に「やはり団長の弟だな」なんて言われるのだ。ラカムやオイゲンに引かれたことも数え切れないかもしれない。キレてる時のグランはカオスルーダーの時の目だ。なんて言われて引かれてしまう。こちとらいつもスキン使った時並みに目がキラキラしていると言うのに誠に遺憾である。
気がついたら目の前が大自然だった。
「え?あれ?もしかして18階層か?」
考え事を続けながらダンジョンを歩いていたらいつの間にか中層エリアも突破して18階層『迷宮の楽園』にたどり着いていたようだ。なんか取れる魔石も違うなぁなんて思ってたらこれだよ。ジータのせいにしよう。にしてもゴライアスとやらが17階層にいるらしいのだが……。
「復活していないって事か?」
だとしたら運が悪いとしか言えない。
レベルアップするかは微妙だが戦ってみたかった。それにしても
「迷宮の楽園。綺麗な景色は多くみてきたけど、確かに楽園だこれ」
俺は風景を楽しみながら魔法を使うのに最適な場所を探す事にした。
この階層は色々と興味深い。
リヴィラの街とか言うボッタクリの街があったり冒険者の墓場がひっそりとあったり。モンスターもこちらから不用意に接触しなければ襲っても来ない。そして俺は木が生い茂り人気が一切ない場所を見つけた。
「さて、今回はマギサを召喚するつもりな訳だが、うまくいってくれよ?【蒼き空、彼方の絆。結びて繋げ。今ここに求める者との共闘を】」
また視界が歪む。
急いで手に持っているマジックポーションを飲むがそれでも視界は歪んだままだ。だがギリギリ気絶はしない。まあしないだけで体力1で仲間全滅してる並みの絶望感あるぐらいキツイけど。
「なんだここ?ん?お前グランじゃねぇか」
……なんで、なんで。
「カリおっさん……」
「てめぇ、こんな美少女を呼んでおきながらよくそんなことが言えるなぁおい」
「マギサが良かった」
「言いたい事は山ほどあるがまずこれ飲め」
渡されたのはエリクシールハーフ。
ありがてぇありがてぇよぉカリおっさん。
幾度となく俺らの助けになってきた実績のある半汁。これで古戦場を駆け抜けるのだ。
「まずいもういっぱいいっぱい」
「お前の気持ちを言ってんじゃねぇよ」
いろんな意味でいっぱいいっぱいなんだよ!
色々な時に半汁ばっかり飲ませやがって!!こちとら薬物中毒者じゃねぇんだ!!!
「それでぇ。なんでグランはカリオストロじゃなくてマギサを呼びたかったのかなぁって聞きたいなぁ☆」
「魔法の事を話したかったんだよ」
「あーそれな。ユエルから色々と聞いたから推測は出来てるぞ」
「さすがカリオストロ。可愛いだけじゃなくて頭もいいね!頼りになるぅ!!」
「そういうところがジータの弟と言われんだよ。はぁ、まぁいい。話してやるから座れ」
まず話してくれたのはユエルの無事だった。
あれからグランサイファーに戻ったユエルはみんなを集めてここでの事を話したようだ。そしてその話し合いから団員達はいつ呼ばれてもいいように常時武装は手元に、そして俺がまた倒れる可能性があるからエリクシールハーフを持つ事。俺が頼りたかったマギサを始めカリオストロやアルルメイヤ等、魔法職の者達でユエルから聞いた俺の魔法に対しての推測を行う。
「まぁそんな感じか。他にも問題は色々とあるがその辺は気にするな。実害を受けるのはお前だ」
「え?実害?マインドダウンだけじゃなくて?」
「害ってのは言い過ぎか。とりあえずヒントだけやろう。ナルメア達」
「もうわかった察した何とかしてよカリおっさん」
「知るか。自分でなんとかしやがれ」
冷たい。
「まぁなんだ。ユエルから聞いてはいたが、お前が無事で良かったよグラン」
「カリオストロ……」
心配していてくれたのか……。
おっさんって言ってごめんな。
「ちなみにエリクシールハーフはお前の小遣いから出てるからな?ジータがマイナス分は働いて返せだとよ」
「あの姉は別の世界に飛ばされた弟を心配しやがらねぇのか!!!!」
「んなわけねぇだろ。ユエルからの報告があるまでグランサイファーとフロンティアの中探し回ったり近い島に手当たり次第探し回ったり大忙しだったぞ」
ジータ。
「まぁユエルが見当たらないのに気づいたソシエからの報告があってから本格的に探してた感あるけど。ん?聞いてねぇなこいつ」
ジータ。お前も姉らしいところがあるんだな。
荒れ狂ったティアマトの前にミスリルソード一本で放り投げた時は人には見えなかったけど。そうか、心配してくれているのか。
「おーいグラン」
帝国に乗り込んだ時一人だけはぐれさせて囮にさせたのも考えがあってなんだよな。決戦に間に合わないと殺されると思ったから帝国内を走り回ったのが懐かしく思えてしまう。
「聞いてないなら今言うか。ジータは今回のマイナス分はいつ払われるからわからないからってお前の私物売ってるからな?」
「くそやろう!!!!」
「金には敏感だなおい」
このままの方が金銭的には幸せなのかもしれない。
「って話が逸れた。お前の魔法についてだ」
「おぉそうだった」
「まず前回ユエルが呼び出された時って何も考えず魔法を使ったんだよね?」
可愛く喋りながらカリオストロは聞いてくる。
そうだな。確かにお試し感覚だった。
「効果がよくわかってない魔法をお試しで使うなんて、お馬鹿さん通り越して死にたがりとしか思えないけどぉ、結論から言ってグランの魔力不足だね☆」
「魔力不足?」
「おいおいマジでわかんねぇのか?異世界からの召喚ってだけでも異常なのに特定の望む人物を召喚なんて都合がよすぎるだろうが」
言われてみればそうである。
あれ?もしかしなくても俺って超危険な事してた?
「魔法覚えたばかりの子供かよお前。それか死にたがりだわな」
「ごめんなさい」
「でも使わないと効果がわからないし、カリオストロ達の方でもグランの無事を確認できなかったからしょうがないかなぁ☆それに次からはエリクシールハーフも持ってるしね☆」
「確かに」
「お前の小遣いからのだけどな!」
「クソ姉貴め!」
キャハハハッと笑うカリオストロが憎くてたまらないぃいい!!!まぁ冗談だが。
「これからお前がステイタスとやらを上げていけばこの魔法も十全に使える様になるだろうよ。まぁ研鑽あるのみだ。お前達の一族はそういうの得意だろ?」
「否定ができない!」
「魔法についてまとめてやるよ。現状の魔力量なら呼べる人物はランダムだ。向こうで相談した時はお前との絆が深い奴ほど呼ばれやすいんじゃないかと推測している。そしてこの魔法を今のまま使えば確実に魔力不足に陥る」
「上手い事回らないもんだなぁ」
「そうだな。同情してやるよ」
同情?
「言ったろ?呼べる人物はお前との絆が深い奴。そしてランダムだ。つまり一部の団員は今か今かと待ち望んでる訳だな」
「……つ、つまり」
「いつまでも呼ばれなかったら不満が爆発してもおかしくないよね☆」
……世界はいつだって、こんなはずじゃない事ばっかりだ!!
火ソシエが当たりました