ブレイブルー 孤高の山猫(ワイルドキャット)   作:砂嵐に潜む昆虫

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 最近アニメ化されたゴールデンカムイ見て、やべぇめっちゃ面白いって思い、書籍も全巻読み上げまして、それでこの作品を書こうと思いました。楽しんで頂けたら幸いです。


序章『その軍人、山猫につき』

 西暦は2100年。突如日本に出現した巨大な怪物『黒き獣』によって、人類は未だかつて見たことの無い災厄の存在に直面していた。

 その災厄は、瞬く間に日本の領土にいた生命を喰らい尽くしていき、その圧倒的力を前に、世界の国々は壊滅状態に瀕した日本への核兵器による攻撃を決断し、日本へ何十発もの核弾頭を発射した。しかし、大量の核弾頭の効果は、黒き獣には全く認められず、逆にこの核弾頭の一斉放射によって、日本はほぼ永久に生命の生きられない荒れ果てた地へと姿を変えだけの結果となってしまった。更には、黒き獣は新たな生命を求めて、人類の攻撃も虚しく、遂に人類は黒き獣のユーラシア大陸への侵攻を許してしまった。

 あらゆる通常武器を無効化する化け物を前に、力無き人類はただただその存在に怯えることしか出来なかった。

 

 「あれが『黒き獣』?あんなのただの『餓えた獣』だろ?」

 

 しかし、とある黒き獣との戦争で、一人の軍人が『黒き獣』を『餓えた獣』と(のたま)ったのだ。その軍人は、『黒き獣』をかなり近くで見たというのに、微塵も『黒き獣』に恐怖など抱いていなかったのだ。

 これは、そんな一人の軍人(やまねこ)の事象の世界へと巻き込まれていく物語…。

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 巨大な人工島の上に建国された、暗黒時代世界中の通常火器・兵器生産のおよそ三分のニを担っている軍事産業国家『ルドガン』。

 そのルドガンの敷地内のおよそ四割を占めるように設置されている軍事基地の、将校達が仕事を行っている区画を一人の男が歩いていた。歩いている道中、すれ違う軍人全員からは敬礼をされながら、男は『司令官室』と書かれた目的の場所まで到着する。

 

 「失礼します。カサイ、只今到着致しました」

 

 『入れ』

 

 カサイと呼ばれた男は、中にいる将校から入室の許可を貰うと、男は扉のドアノブをひねり、部屋の中へ入室する。部屋は豪華な内装となっており、武器・兵器売買による利潤から、このルドガンはそれなりに富があることは容易に想像出来る。

 扉から入ってすぐ左右には、成人女性の平均的身長程ある豪華な彫刻が施された壺が置かれてあったり、将校が職務を行っているデスクも美しい彫刻が施させている。美しい自然が描かれた絵画が壁に掛けられていた。

 しかし、豪華な部屋の内装は、将校の違和感で少し不自然に感じれてしまう。将校は部屋の中だと言うのに軍帽を深く被っており、その軍帽から覗く眼光は鋭く、カサイを射殺さんと睨み付ける。だが、カサイはそんな目を向けられているにも関わらず、無表情で将校と見つめ合う。

 

 「よく来てくれたカサイ、だが3分遅れたぞ。何処かで道草を食っていたのかな?」

 

 「申し訳ありません。昼食に頼んだアジの開きの身を食べるのに四苦八苦してしまい、こちらにお伺いするのが少し遅れました」

 

 「ほぉそうかそうか!それならば致し方あるまい。私もアジの開きは好きでね、身を全部綺麗に食べないと気が済まないんだ」

 

 先に口を開いたのは将校の方からであった。将校はカサイが遅れた理由を聞き、カサイはその理由を淡々と述べる。理由を聞いた将校は機嫌良さげに笑い出し、カサイも連れて笑みをこぼす。

 ただ、その二人の目が笑っていないのが、この雰囲気をぶち壊しているのだが。

 

 「今日貴様を呼んだのは他でもない、私達ルドガンがなんとか同盟関係にまでこじつけた魔道協会から救援要請が来た。内容は人員派遣、そこで貴様の部隊にはこれからイシャナに向かってもらいたい」

 

 「お言葉ですがゼンジ司令官、何故我々なのですか?人員派遣ならば我々の隊は数が少ないすぎます。それなら我々第四部隊よりこのルドガンで最も兵が多い第十一部隊が宜しいのではないでしょうか?あの部隊の兵の数は、約9師団分いるではありませんか」

 

 「そうしたいのは山々なんだが今現在第十一部隊は他の仕事で九割方が出払っている。それにイシャナの魔道協会の連中は、屈強な兵士で構成された部隊寄越せと条件に突きつけてきたんだ。そこで、我ルドガンで随一の戦闘のスペシャリストが集まっているお前の部隊に白羽の矢が立った訳だよ。お願い出来るかね?」

 

 「了解致しました。その責務、このカムイ率いる第四部隊にお任せあれ。必ずや任務を遂行出来るよう善処致します」

 

 「ウム、その言葉が聞けて良かった。ただ…お前達第四部隊の連中揃いも揃って血の気の多い奴が多い。何か問題が起きなければ良いのだが…」

 

 カムイは、敬礼しながら任務を受諾する。それを聞いたゼンジは満足そうに頷きながら、おもむろに椅子から腰を上げ、ゆっくりとカムイの(そば)まで歩いていく。

 

 「お前のような冷静な奴でも、時に感情が荒ぶる時だってある。イシャナには気難しい性格の魔法使いもいるらしいからな………イシャナの連中といざこざだけは作るんじゃないぞ?」

 

 途端に冷たくなった声と共に、いつ抜いていたのか右手には軍刀が握られており、それがカムイの頭スレスレを通過する。

 空を切った軍刀であったが、カムイの被っていた軍帽が風圧で宙に舞い、真っ二つになって地面に落ちる。カムイはそれでも眉毛一つ動かさずに敬礼の姿勢を保つ。そんカムイを見ながらゼンジは小さく頷くと、軍刀を鞘に収める。

 

 「我々ルドガンは長い年月を掛けてやっと魔道協会と数少ない同盟を結ぶ事が出来た。あまりあちらで問題を起こして同盟関係に亀裂が走るのはなんとしても避けたい。それも十分理解した上で、今回の任務に取り組んでくれたまえ」

 

 「了解であります」

 

 「よろしい、下がってよし」

 

 ゼンジけら退室を許可されたカムイは、部屋から出ると、自身の部隊が生活している兵舎に向けて歩き出す。

 その道中、ふと開いている窓から外を見る。窓の外は中庭のようになっており、その花園で三人の少女が楽しそうに遊んでいた。その内の一人がこちらの視線に気付き、満天の笑顔をして手を振ってくる。他の二人も続くように笑顔で手を振ってくる。

 

 「カムイ中佐!今からお仕事ですかぁ!!」

 

 最初に声を掛けてきたのは、灰色のショートヘアーに、同じく灰色の瞳をした、カムイに最初に気付いた少女アメノだった。その頬は、僅かにだが朱に染まっている。

 

 「あぁ、今からここを発ち、イシャナへ行く。俺が留守の間、何か馬鹿をするじゃないぞ。特にガーラン」

 

 「…カサイの旦那ぁ、アタシらはそこまで頭足らねぇ馬鹿じゃねぇよ。しっかりお留守番しててやらぁ。但し、帰ってきたら今度こそ絶対アタシと手合わせしろよな!」

 

 ガーランと呼ばれた少女は、半袖にロングスカートをして、暁色の髪をポニーテールにしている紅蓮色の瞳の三白眼である。ニヤリと笑った口はギザギザの歯が見えており、獰猛さを醸し出しているようだった。

 

 「お前はまず、満足に留守番が出来るかどうか云々よりもその性格が心配なんだが。手合わせが出来ないストレスでトレーニングルームの備品を片っ端から破壊するんじゃないぞ」

 

 「う、うるせぇ!ありゃ悪かったって思ってるよ!それでも、逆にあんな簡単に壊れる方が悪いだろ!」

 

 「お前はもう少し手加減というものを覚えろ。俺との手合わせはまずそこからだ」

 

 しかし、カムイが指摘すると、途端に顔を赤くし反論する。しかし、その真っ赤な顔で反論しても、説得力皆無である。

 

 「まぁまぁカムイ様、そうガーランをいじめないであげて下さい。この子は少しカムイ様に見栄が張りたいだけなんですよ」

 

 「おいシュラ、変なこと言うなよ!アタシは別に見栄なんて張ってない!」

 

 「その否定の仕方は、貴女が本当の事を言われた時の反応なのよねぇ。どう頑張っても説得力無いわよぉ」

 

 「うるせぇ!」

 

 「シュラ、お前が俺よりガーランをいじめてどうする」

 

 「あらあら私のしたことが、あまりにガーランが可愛いものでしたからつい」

 

 シュラと呼ばれた少女は、糸目で、腰まで届く藍色のロングヘアーに、出るところ出て、引っ込むところは引っ込んでいる、所謂グラマーな体型の少女だった。そんな彼女は、Sの気があるのか酷く焦り戸惑っているガーランの様子を心底楽しそうに眺めていた。

 

 「お前達、ここで俺と駄弁るのは一向に構わんが、そろそろ自由時間も終わる頃だ。早く寮に戻ってやることしっかりやれよ」

 

 「「「はーい」」」

 

 カムイはそんな仲の良い三人の光景に一瞬口元に笑顔を作り、直ぐに無表情に戻ると、再び歩き出す。彼女達も、遊び疲れたのか談笑しながら寮の入り口に向かって行く。しかし、最初にカムイに気付いた少女だけは、その場から動かず、カムイの姿が完全に見えなくなるまで笑顔を絶やさずに手を振り続けていた。




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