オラリオで日常を謳歌するのは間違っているだろうか 作:アルアール
「うむ、美味しい」
僕はホクホクのジャガ丸くんを齧る。
適度に放られた塩がジャガイモの良いアクセントになっていて、ジャガイモとは思えない美味しさだ。
これが、一つ30ヴァリスは安いなぁ。
「やぁエルフくん。隣いいかい?」
僕がジャガ丸くんと食べていると、突然向かい日が影に隠れる。
目の前を揺れる、日の光に輝く綺麗な黒髪が目に留まり、先ほどの女性ということに気がつく。
我ながら髪で気がつくのはどうかと思うが、どうしたのだろうか。
僕が視線を上げると、目の前で背の小さい彼女がジャガ丸くんを片手に首を傾げている。
お昼休憩かな?
「大丈夫だよ。どうぞ」
僕は席を詰めて彼女が座れるスペースを空ける。
流石にそのまま雨風に晒されているベンチに座らせるのも忍びないので、ポケットに入れていたタオルを敷いた。
「お、君女性の扱いに慣れてるねぇ。ボクなんか嬉しくなっちゃうよ! いつも子供扱いばっかだからさ! まったく!」
「そうかな? はい、ここに」
笑顔が可愛い彼女が頬を膨らませながら、僕が敷いたタオルの上に腰をかける。
そう言えばエプロンをかけていないから彼女の服装がよく見える。
太腿までのかなり短めのピチッとした、ワンピースみたいな服を青い紐で留めている。
なんだろう、言葉にするのは難しいけど、変な格好だなぁ。
それに少し露出が多いんじゃないだろうか。
「ふむふむ、やっぱりボクが作ったジャガ丸くんは美味しいなぁ! そうだろうエルフくん!」
「そうだね。あと僕はダリル・アサギリって言うんだよろしくね」
今更ながら彼女の方に体を向けて名乗る。
さっきからエルフくんって言われてたけど、どうせ話すなら名前で呼んで欲しいからね。
口いっぱいにジャガ丸くんを頬張っていた彼女もそのことに気がついたらしく、慌てて飲み込むと口を開く。
「そっか、ダリルくんって言うんだね。よろしく! ボクはヘスティア。神ヘスティアさ!」
そう言う彼女笑顔は、太陽のような明るい笑顔に凛とした鋭さを感じた。
いや、いやいやいや。
‘カミ’って言うのはあの‘神’の事だろうか?
もしかしでごっこあそびか何かだろうか?
まぁ、神様にあった事がない為断言できないが、ここまで威厳がない神などいるのだろうか。
僕の予想ではもっとこう、見た瞬間体が震えるような威圧感があるかと思っていた。
「そっかよろしくね。ヘスティアちゃん」
「むむむ、まさか君信じてないなー?! 此れでも君の何十倍も生きてるんだぞー!」
そう言う彼女は頬を膨らませて威厳のカケラも感じない。
ちっちゃな可愛さに思わず頭を撫でてしまい、また怒り出していて可愛い。
そうか、でももし本当に神なら態度を改めたほうがいいのだろうか?マガルさんも神様は大切にしろって言ってたし。
「いえ、信じてますよ。ヘスティア様。あなたの神々しいまでのオーラに、思わず畏怖の念に駆られてしまいそうになりました」
僕はベンチから腰を上げると、彼女の前に跪いてその白くて細い手をとる。
柔らかくて、そしてすべすべの綺麗な肌だ。
僕が昔に読んだ本によれば、これが正しい作法であるはずだ。
そうであるはずだけど、なぜかヘスティア様はぼーっと僕の顔を眺めるのみだ。
何か間違えただろうか?
向かい日による為か、彼女の瞳が青く輝いてとても綺麗になっている。
「…ヘスティア様? どうしましたか?」
「…いや、君本当に女慣れしてるねぇ。それにとても絵になるから驚いちゃったよ!」
一瞬呆れた表情になるものの、僕が神様を丁重に扱った為かすごく喜びを表している。
女慣れとはひどく心外であるが、彼女が喜んでいるならそれで良しとしよう。
僕は握っていたヘスティア様の手を離すと立ち上がる。
そのまま顔を上げると、周りの通行人がこちらに注目しているのが目に入った。
「…あれ、みんなどうしたんだろう」
僕が視線を飛ばすと何も無かったかのように通り過ぎていったけれど、もしかして本当はヘスティア様は‘神’ではなくただの女の子で、僕が騙されたからとかだろうか?
いや、別に彼女が本物の神でもごっこ遊びに興じる女の子でも良いけどさ。
「…きっとボクの神のオーラに畏怖していたに違いない!」
ベンチから立ち上がって大きく胸を張っている。
得意げな表情で、とても調子乗っている感が否めないが可愛らしいから良しとしよう。
ーーーみーつけた。
「…え?」
僕が得意げなヘスティア様を眺めていると、何処からか定かではないが透き通るような女性の声が聞こえた。
僕は咄嗟に振り返るが目に映るのは人流れに沿って歩く人々のみ。
誰もこちらに注目していないし、今の声は一体誰が発したのか。
「…一体誰が」
「どうしたんだい? ダリルくん?」
僕がキョロキョロと周りを見渡していたことに気がついたヘスティア様が不思議そうに声をかけてきた。
そもそも、その声が聞こえたからといって見つけた相手が僕であるとは限らない。
昨日の変な視線のせいか、少し自意識過剰になっているのだろう。
「いえ、何でもないですよ」
「ふ〜ん。そっか」
別にそこまで重要な事で話言う必要もないだろう。
ヘスティア様の方は再びベンチに腰をかけると、美味しそうにジャガ丸くんを齧りだす。
僕の自意識過剰のせいで話は途切れたけれど、ヘスティア様がほんとうに神なら、ファミリアとか持っているのだろうか。
「そう言えばヘスティア様。貴方はファミリアを抱えているのですか?」
「んぇ? も、もちろんさ! ボクほどの魅力があればいないわけがないだろう?」
ヘスティア様は一瞬肩をピクンと動かして、あからさまに動揺した様子でこちらを向かずに話す。
手元の食いかけのジャガ丸くんがピクピクと揺れている。
さっきから視線が空中を行き来しているんだけどこれどう言うこと。
「…そうですか。ヘスティア様の美しさならそれも道理でしょうね」
「そ、そうだろう? あ、そう言えばボクもう休憩終わりなんだよ! じゃ、じゃぁまた食べにきてくれよ!」
別にそこまで問い詰める気は無いのだが、ヘスティア様は焦った様子で急に会話を断ち切って、屋台の方に走って行ってしまった。
顔から汗が流れて視線が凄い動いてたけど、何か隠してるのかな。
まぁ、聞かないけどさ。
僕は丈の短い白のピチッとした服を着たヘスティア様を、後ろから眺めて見送る。
ピョコピョコと可愛らしい走り方に、もしヘスティア様が本当の神様なら、彼女の元で仕えても良いかもしれないと、今になって思った。
ふむ、でもやっぱり少し服の丈が短いんじゃないだろうか。
目の前に立たれると少し恥ずかしい。
いや、僕がエルフだからそう思うだけだろうか?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「っと、これが会場かぁ」
僕はジャガ丸くんを食べ終えた後、当初の目的通りに
ジャガ丸くんの屋台から30分ほど離れた所にあった、巨大な建造物を前に僕は一瞬呆ける。
僕の目の前には、直径300メートルはくだらない円型の建物があった。
白い石膏で綺麗に作られた外装が光に反射しており、その巨大な建造物を支える支柱が悠然と建ち並ぶ。
「やっぱ人も多いし、忙しそうだなぁ」
祭を明日に控えているだけあって、その建物の入り口を何人もの人々が忙しそうに行き来している。
外では大きな声を出して人の流れを指示したり、様々な形をした武器がホールの中へと入れられていく。
「…あ、エイナさんもいる」
僕が周りを物珍しいため見渡していると、ホールの入り口で紙とペンを持って忙しそうに口を動かしている女性を発見した。
淡い茶色をした髪を耳にかけて眉間にしわを寄せており、見るからに忙しそうな様子をしている。
「やっぱ、ギルド職員は大変なんだなぁ。それともエイナさんだから忙しいのか」
これは話しかける雰囲気でもなく、僕もこれといって話すことがないから今は話しかけるのはやめておこう。
それより、一通り会場を外から眺め終えて満足した僕は、今日の次の予定を考える事にした。
ホール前の大きな広場に建てられた時計塔を眺めると、その針は3時を示している。
エイナさんとの予定は時間的に8時くらいなため、5時間ほど暇な時間ができてしまっている事になる。
「5時間かぁ。あ、そうだ。どうせなら
腰に挿している刀に手をかけながら、へファイストス・ファミリアの拠点がどこにあるか考える。
確かへファイストス・ファミルアーは鍛治専門のファミリアである為、鍛冶場が確保できるように中心から離れたところに拠点を置いているはずだ。
僕は、場所を確かめるために、例の地図を取り出す。
どうもこの地図は親切な事に、有名ファミリアの拠点も書かれているらしく、入り口と反対側の北側、バベルの上あたりに鍛冶場が溜まっていると記させている。
「よし、行ってみるか」
僕は再び忙しそうなエイナさんに視線を向けて、目の前の巨大なホールを後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「…まぁそりゃあそうだよね」
あれから地図を頼りにへファイストス・ファミリアの鍛冶場が密集している地区に行ったは良いものの、目的の人物である椿・コルブランドさんには会えなかった。
まぁ考えてみれば当然だが、鍛冶場となる地区一帯はへファイストス・ファミリアの所有地である為許可なく入ることはできない。
それに、いきなり鍛冶場に尋ねても追い返されるのがオチである。
と、鍛冶場付近にいたへファイストス・ファミリアの団員に忠告された。
それにその時に聞いた話だが、椿さんは今はバベルの塔にある、へファイストス・ファミリアの販売店舗に顔を出しており、会いたいならそこを尋ねると良いらしい。
「ここが武器屋か」
そうして僕は今、初めてバベルの塔に足を踏み入れている。
ダンジョンの入り口である一階より上は、回復のポーション販売所や食事処、武器や防具のショップが各ファミリアに貸し出されているらしく、その中で武器防具の販売店はへファイストス・ファミリアの店舗が大部分を占めるらしい。
僕はダンジョン入り口の1回横にある”エレベーター‘と呼ばれる移動装置に乗り、目的地である椿さんの店舗がある5階まで移動していた。
’エレベーター‘のピッという音とともに開かれた扉の先には、左右に色々な店の入り口が立ち並び、冒険者の格好をした人達が立ち替わるように出入りしている。
「ちょっと、邪魔よ」
「え、あぁ、すみません」
思わずエレベーターの入り口で止まってしまっていたら、同じエレベーターに乗っていたヒューマンの女性に注意されてしまった。
僕がエレベーターの前から身をどかすと、彼女はそのまま迷うことなく一つのお店に入っていく。
「さて、じゃぁ僕も探すか」
真っ直ぐ伸びる道を、左右に並ぶ高価な武器に目を奪われながら歩く。いくら武器に目がない僕でも分かるくらい、頑丈なガラスに収められている。
「…ここか」
そうして歩いているうちに目的の店を見つけ、目の前に並ぶ武器を眺める。他と同様に店前のガラスケースに武器が陳列されてるが、他と違うのがその値段だ。今まで通った道にあった武器より、平均2桁は0が多い。
やはり、
「失礼しまーす…」
チリンという綺麗なベルの音が、僕が扉を開けた拍子になる。
中の様子は思って居たよりも、いたってシンプルな作りをしていた。
目の前に会計するためのテーブルがあり、脇には奥の部屋へと繋がる扉がある。
それ以外は、脇に休憩用の椅子が一つに、あとは壁に数本の長剣が立て掛けているのみだ。
「それより、店員さんはいないのかな?」
辺りを見渡しても、店員らしき人影が見当たらない。
不用心だなと思いつつ、テーブル脇にある奥へと繋がる扉のを覗き込もうと足を運ぶと、突然の怒声が響いた。
ーーーっふざけんな! 売れねぇってどういうことだ!? ちゃんと金はここにあんだろうがよ!!
「…え? なに今の」
一瞬その声の大きさに、ピクンと肩を揺らしてしまう。
突然のことで驚いたが、聞こえてくるのは恐らく目の前の扉から。
そして、まだ怒声らしき男の怒鳴り声が響いている。
ーーーてめぇ、商売なら金持ってきた客には売るんじゃねぇのか?! あぁ?!
喧嘩かな? 聞いた感じ買いに来たのに売ってもらえなかったとか?
もしかして、ここの
ーーーうるさいなぁ。いくら言っても手前はお主らに剣は売らん。いや、売っても持ち手がお主らじゃぁ、
ーーーっち! もぉいい! お前ら、行くぞ!
男の声以外に、少し女性にしては男らしい口調の声が、怒声に反抗するように聞こえた。
男が諦めたらしく、僕の目の前の扉が乱暴に開けられる。
そのままじめんを踏みつけるように、複数の男たちが肩を切るように出て来た。
見たところ冒険者というには余りにも不釣り合いな、黒のスラッした服を着た男を中心に、後ろに護衛らしい冒険者風の男2名が彼を囲っている。
メガネをかけていて、普段であれば落ち着いた雰囲気がありそうだが、今は怒りのせいか眉間にシワが寄っており闇ギルドの一員と形容してもいい形をしている。
「んあ? なんだお前。ここに買いに来た客か? なら辞めとけ、お前みてぇな貧相なエルフじゃ買えやし…っ!」
「…何ですか、突然」
僕と目があったメガネの男は侮蔑する様に目を細めて何やら行ってきたが、突然僕の刀に視線を寄越すと眼を見開いた。
いや、それより自分が売ってもらえなかったからって僕に当たらないで欲しいんだけど。
そもそもそこまで貧相な姿じゃないし、服だってマガルさんのお下がりだ。そこまで酷くないはずだ。
「おい、そこのエルフ。お前いい刀持ってるじゃねぇか。それを俺たちに売れ」
「はぁ? 売ってもらえなかったからって、こちらに眼をつけないでください。そもそもこれは大切な物なので売れません」
何を言い出すのかと思ったが、目の前のメガネはこちらに近づくと、僕を見下ろす様に刀に向かって顎をしゃくる。
体がでかいからって調子に乗らないで欲しい。
「はぁ? お前エルフだろ? なら持ってても仕方ねぇだろ。大切なものなら俺たちがうまく使ってやるって言ってるんだよ」
「それこそ余計なお世話です。そもそも僕は前衛のつもりですし、この刀くらい扱えます」
先ほどより眉間にしわを寄せて、先ほどより低い声で怒りを表す。
後ろの二人もぼくに圧をかける様に近づいてくる。
このくらいでビビると思ったか。
…くそ、店の中で揉めてるんだ。早く様子くらい見にきてくれよ、椿さん。
顔には出さなかった焦りが伝わったのか、先ほど男たちが出てきた扉から褐色の肌をした女性が姿を現した。
「…えっ!」
彼女の姿のせいで僕は一瞬目を見開く。
身長が僕よりも大きいけれど、そこまで肩幅が大きいわけではない。
しかしながら、彼女は母性の象徴である大きな胸をサラシで巻いており、それ以上にそれ以外上着は着ていない。
そのせいか、健康的な褐色の肌が露わになっており、薄く綺麗に引き締まった括れが丸見えだった。
な、何だこの人は。
もしかして変態なんだろうか?
いや、いくら僕がエルフで少し肌の露出が苦手でも、流石にこれは満場一致で驚くだろう。
「何だお主ら。まだ居たのか? 手前に売ってもらえなかったからって、他の客を当たるとは情けない。これ以上騒ぎを大きくすると、ギルドを呼ぶぞ?」
「っち! 行くぞお前ら」
褐色の彼女、椿・コルブランドさんは呆れた風に肩を上げると、そのまま鋭い目つきに変わって男たちを見つめた。
流石にギルドまで関与するとまずいと思ったのか、男たちは大きく舌打ちを打って、出て行った。
「…お主、大丈夫だったか? すまんな、迷惑かけて」
「い、いえ、大丈夫です」
いや、大丈夫ではない。
今僕は頬を引きつらせて目の視線も安定して居ないだろう。
彼女が僕を心配する様に近寄って着て肩に手を置くが、僕は眼をそらすことしかできない。
何だこの人は!
歩くたびに大きな胸が揺れて、今にもサラシが取れそうになっている。
それに、ほとんど裸じゃないか!!
へ、変態だ!!
「じゃ、じゃぁ僕は、よ、用事があるので、これで!」
「そ、そうか。…ん? その刀、どこかで…」
一先ず、撤退あるのみ。まだ心の準備もできて居ないんだ。
それに刀はどうせまだ無傷である為、本当に必要な時に来ればいい。
椿さんの顔や店も分かったし。
何か椿さんが言ってるが、今はそれどころではない。
「あ、お主! ちょっと待つんだ!」
僕は恥ずかしさを誤魔化す様に、目の前の椿さんに所用があると告げ、そのまま扉をあけて早足で立ち去った。
書いててたのすいいいいいいいいいいいいいい
椿・コルブランドさんの口調は本当に自信がないので指摘お願いします。
アニメで一応確認はしたんですけれど、出番も少なくて違和感があるかもしれません。
言い訳じゃないですけど、恩恵刻むためのイベントを用意しているのでそう簡単に、はい、て恩恵を貰ったりしないんです。
厳密に言うとフェアーフィリア終わりくらいに貰う予定です。