オラリオで日常を謳歌するのは間違っているだろうか 作:アルアール
6話 ウサギって可愛いよね。つまりはベル・クラネル。
「長いですね」
「あはは、まぁこれだけ大きな街ですからね。入るのに時間がかかるのは仕方がありませんよ」
思わず人の多さに不満の声を漏らしてしまう。フーリムさんが苦笑しているが、僕の村ではこんな事無かったのだ、不満の一つや二つは出てしまう。
僕の村にも、入り口に警備兵といってもいいか疑問があるが、それらしい人はいた。でもいつもあそこにいるおじさんは、外へ畑に行く途中のおじさんおばさん達と世間話に興じるか、お酒を飲んで眠ってることしかしてなかった気がする。
それに比べてここは随分と警備が厚い。
「そうは言っても、折角
列から少し体を外し入り口へ視線を向けると、三人体制で警戒に当たっている。
「最近、犯罪を主に行うファミリアによって
何故か、フーリムさんが凄く説明口調で教えてくれる。
まぁ、今までの旅で
と、それよりも今だけで知らない言葉が多く出てきた。
ガネーシャ・ファミリアは聞いた通り治安維持に力を入れているファミリアと言うことはわかった。でも、‘いゔぃるす’ってなんだ?
それに、
「いゔぃるすってなんですか?それに、…構成されていた?」
「あぁ、
別に表面だけ見てたわけじゃないけど、こうして実際に汚い話を聞くと夢を汚されたように感じて気が滅入る。
「…そうなんですか」
僕は下がった気分を逸らすために、何か暇つぶしになるようなことがないかと視線を動かす。
バベルの塔は綺麗で見ていて飽きないがこれからここに住むのだ、別に今見る必要もそこまでない。
そうやって視線を動かしていると、ある所で視線が止まる。
「…エルフだ!」
馬車の上に座っているため視線が高く、前の列に並んでいる人がよく見えた。その中で僕の同族と思われるエルフいた。僕は咄嗟に自分の長い耳に手を伸ばしてしまう。
「やっぱり、本に書いてあった通りだ! エルフは実在したんだ!」
「あはは、そりゃそうでしょう」
エルフを見つけたことが嬉しく変なことを口走り、フーリムさんに笑われてしまったが気にしない。
そもそも本に普通に書いてあったのだ、実在しないわけがないだろう。
「あ、またいた。あっちにもいる」
エルフを探すように列を見やると、次々とエルフの特徴である長い耳を持つ人を発見する。どうやらフーリムさんが言っていた通りここ、
それに多少違えどほとんどのエルフがローブと杖を持っており、僕みたいに剣を持つ者は少数である。やはりエルフは魔法を使った遠距離攻撃が主な戦闘手段らしい。
やっぱみんな驚くほど美形だ。線が細い身体に白い肌が幻想的な精霊が具現化した姿みたいだ。
「…みんな美形ですね」
「…いや、あなたもエルフでしょう」
「あはは」
自分の姿を見るのと他人の姿を見るのとでは感じる事が変わってくる。確かに鏡で見る自分の姿は、周りから見たらエルフらしく美形なのかもしれない。
でも、鏡に映る自分の姿に美しさを感じることなど普通はないだろう。
「僕、後ろで座ってますね」
「えぇ、近づいたら声をかけます」
ある程度周りを見終えた僕は、座るところを探しに馬車に荷台へ移る。この1週間ほどで発見したベストスポット、麦袋と麦袋の間に僅かにできた隙間に収まるように身体を入れた。エルフだからか肩幅が狭いから、丁度入っていい感じだ。
まぁ後ろに来ても結局は、ボゥっとして空を眺めていることしかできないのだけれど。
僕は何と無く後ろへ続く列を眺めていると、丁度僕の後ろに並んでいた少年と目が合う。
真っ赤な目に、白い髪を持った少年だ。視線を合わせる前は彼方から見ていたらしく、僕と目があった事で身体をビクつかせて視線をキョロキョロしている。
なんか、眼や髪それにその動作からまるでウサギみたいだなぁ。なんだか、道中に斬ったウサギを思い出して罪悪感が浮かんでくる。
「どうしました?」
「えぇ?! いや、僕小さな村出身だからエルフを見たのが初めてでつい見とれちゃって。ごめんなさい!」
目があったままなのもアレなので声をかけて見ると、どうやらエルフが珍しかったらしい。そこまで謝るほど嫌だったわけじゃないからいいんだけどさ。
「別にいいですよ。僕も自分以外のエルフを見るのは今日が初めてで、先程つい見入っちゃいましね」
「…
「あぁ、僕の村にも他のエルフがいなかったのでね。あ、僕はダリル・アサギリっていいます。よろしくね」
僕がそう自己紹介をするとウサギの少年はまだ名を名乗っていなかったのに気がついたらしく、慌てて自分の名前を言った。
「僕は、今日
馬車に座っている僕を見上げる様に顔を上げた少年はそう名乗った。
こうして僕は、ベル・クラネルと出逢いを果たす。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「じゃぁベルくんって言うんだね。僕は15歳で、歳が殆ど一緒だから砕けた口調でいいよ」
歳も近く同じ小さな村出身で、今日が初めて
「そ、そうですか? じゃ、じゃぁよろしく! ダリル…さん」
まぁいきなり呼び捨てにはできないか。この子、ベルくんはどうにも小動物感が拭いきれない。そういえばどうして
何か買い物とかか?
「そういえば、ベル君はどうして
「実は、冒険者になりたくて。昔から英雄譚の絵本を読んでて憧れてたんだ」
そう語るベル君の目はキラキラと子供のように輝いて見える。
それは僕も抱く
それよりも言っては悪いが、とても争いごとができる様には見えないんだけどなぁ。
「冒険者かぁ。じゃぁ僕と一緒だね。ベル君は何か武道でもやってたの?」
見た感じ剣も持ってなく、農民のような格好をしている。
僕も農家だったけど流石にそのままは来ていない。ダリルさんからもらった服を着ているからか、そこまで変ではないはず。剣も持っていないようだし、もしかして格闘系だろうか?
「ダリルさんも冒険者志望なんだ。僕の家は農家だったから全然剣とか使えなくて。これから使い方を覚えようかと」
「おーお、僕も農業をやってたんだ。なんか悉く奇遇だね」
「あはは、そうだね」
もしや運命だろうか?
いや、男と運命的な何かがあるのは少し気がひけるんだけど。
まぁそれより、この様子じゃぁ剣以外に嗜んでいる様には思えないし、よく
運がいいのだろう。
「ダリルさーん。そろそろですよ!」
「あ、はーい!」
この後此れからどうするのかと聞こうとした時、前の方から声がかかる。どうやら門へ近づいたらしい。
まぁ、同じ冒険者志望の仲間だ。いずれ、ギルドかダンジョンで会える日が来るだろう。
「じゃぁベル君。僕は前に行くね、またどこかで会おう」
「う、うん! じゃぁまたね!」
どちらも生きていればと言う前提があるけどね。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「はい、じゃぁ次の方来てくださいー!」
目の前の冒険者らしき一団が無事に検問を通り抜けて大きな門をくぐる。そのまま警備兵は僕らの馬車を視界に入れて来るように呼びかけた。
「やっとかぁ」
「じゃぁ行きましょうか」
僕は馬車から降りて馬の横に並ぶ様に足を進める。馬車の中を検査するんだ、あそこにいたら邪魔になる。
鉄の鎧という少し重装備を身に纏った三人の警備兵のところまで来ると、一人がフーリムさんに向かい、もう一人が馬車の中を見に行き、残りの一人が僕と御者の人に近づいてくる。
「どうもすみませんねぇ、一応ルールなんで身体検査をしたいんですけど…エルフの方ですよね? 少し触っても?」
「え? 別に構いませんが…」
20代前半くらいの若いお兄さんが、頭を下げながら僕がエルフであることを確認すると変なことを聞いて来た。
触ってもいいって聞かれても検査なら仕方がないけど、なんでそんなこと聞くんだろう。
「ありゃ、こりゃあ有り難いね。じゃぁ失礼しますよ〜」
「ん? もしかしてエルフって触られるの嫌がるんですか?」
お兄さんは断りを入れて僕に近づき、マントの上から検査して行く。
それはそうと、先程から聞いた限り、まさかエルフは身体検査を嫌がるのだろうか。お兄さんが僕がエルフと確認すると一瞬めんどくさそうな表情をしていたし。
「あれ、君知らないの? この事って結構有名だよ? 一部の人だけど、自分が認めた人以外絶対に体に触らせないってエルフがいるんだ。だからだけど、肌の露出を極端に嫌がったり」
「へぇ、そうなんですね」
「そうそう、っと不審物もないし、大丈夫だよ。…じゃぁご協力有難うございましたー!」
エルフは潔癖っぽいこと本にあったからそう言うのもあるとは思ったけど、まぁそれはそれで好感が持てるなぁ。なんか純情っぽくていいし。
お兄さんは、僕の身体検査を終えると右手で敬礼をして去って行く。
そのまま御者の人に近づいて身体検査を始めているのを尻目に、フーリムさんの方に目を向けると、そちらの方も穏便に終わったらしく、警備兵が笑顔で去っていった。
「どうやらそっちも終わったみたいですね」
「えぇ、他の大きな街じゃぁこうも行かないですよ。ほんと、検問の警備兵がガネーシャ・ファミリアで良かったですよ」
「そうなんですか?」
「あはは、残念ながらね」
フーリムさんが去って行く警備兵を見つめつつ苦笑いを浮かべている。
僕もこの警備兵は礼儀正しいなと思ったけど、他の大きな街では違うらしい。どうやら本当にガネーシャ・ファミリアは教育が行き届いているんだな。
「じゃぁ私達も行きましょうか」
フーリムさんは、ゆっくりと動き出した馬車に並ぶ様に歩き出す。街中は基本的に乗馬は禁止である為歩く必要がある。まぁ馬車を連れた商人は専用の預かり場がある為そこまで歩くだけらしい。
僕は、大きな門を眺めながら
オラリオに入るまで長すぎだろって思いました?
大丈夫です。書いてて私もそう思いました。
ごめんなさい