畏れよ、我を   作:hi・mazin

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今回も少し短め。だけど、継続して投稿できるように頑張りたいです。





第十一話 運命は廻り、私は流される。

 

 

 

ああ、青い空、白い雲。今日も大変素晴らしい朝ですね。とはいっても、起きているのは私だけですけどね。

 

いや、話せば長くなりますが、昨日『豊饒の女主人』にお食事をしに行ったのですよ、そしたら私が来た瞬間、店の空気が最悪なモノになりましてね、さすがにこのまま誤解されつづけるのはまずいと思って、ちょうどお店にいたロキ・ファミリアの皆さんから、私への誤解を解こうと思って、フレンドリーに挨拶しに行ったら……なぜかさらに誤解が根深くなりました。

 

解せぬ。

 

誤解解きが失敗に終わった私を待ち受けていたのは、ベル君が無銭飲食まがいの事をやらかしたという事実だった。

 

解せぬ。

 

まぁ、ベル君が後から私が来ることを伝えていたから、ベル君の食い逃げ行為はギリ許された。

 

一応頭は下げたが『悪いと思うならしっかり飲み食いしておくれよ』といい笑顔で言われたため、胃袋と財布が限界値以上のお料理をいただくはめになったわけですよ

 

あ、店を飛び出してどこかに行ってしまったベル君は明け方に無事に帰ってきました。どうやら『豊饒の女主人』で自分の現状や弱さを痛感し、強くなる事の意味を理解したらしく、一晩中ダンジョンに潜って熟練度稼ぎを行なっていたそうです。

 

しかし、ベル君はなんで無銭飲食まがいの事をしたのだろうか? なんか原作でそんなことがあったような、なかったような……こっちの世界に来てから、前世の記憶の摩耗が激しいせいで良く分からなくなってきたな。

 

言っとくが、悲観的な理由で記憶が摩耗しているのではないぞ、新たな人生の記憶が増えてきたから昔の記憶が思い出しにくくなってきているだけである。

 

こっちに来てから毎日が必死で、掃除、洗濯、料理、拠点のリフォーム、ダンジョン攻略、装備品の管理、資産管理に家族の健康管理etc。昔を思い出すより今を記憶する方が忙しい。

 

だから次のイベントは怪物祭辺りまでないと記憶にはあるが……よくわかんない。

 

まぁ、女神さまは優しくベル君の帰りを受け入れたが、先輩冒険者の私はベル君の無謀な挑戦を看過できなかったので、傷の手当てをしながらグチグチと苦言を呈してあげましたよ。

 

ベル君は笑って誤魔化そうとしていたけど、その度に傷口に消毒液をぶっかけましたよ。漫画みたいに『し、滲みる~!』と叫んでいたけど、『男なら我慢』と、こちらも漫画みたいな返しをしましたよ。

 

女神さまは『カ、カメ子くん、もっと優しくは出来ないのか?』なんて心配そうにしていたけど、残念、今日は優しくできそうにありません。『豊饒の女主人』で一人にされた恨みをくらうがいい。

 

そんな感じで治療と清拭を済ませるとベル君も体力の限界と眠気には勝てなかったらしく、そのままベッドでダウン、女神さまも待ってる間ずっと起きていたので、そのままウトウトとベル君の隣にダウン、私はしっかりと仮眠をとってたから眠くなかったので二人に布団を掛けて部屋を後にしたのですよ。

 

まぁ、思い出しにくい記憶を思い出す暇があったら、今度あるはずのガネーシャ様の宴会に参加するはずの女神様の衣装にアイロンをかけておく方が有意義ってもんだ。

 

しばらくはベル君も神様も起きてこないだろうし、今日はダンジョンはお休みして家事に専念しますか。

 

ふふふ、前世の独身生活の経験と今世の女子力が融合したパーフェクト家事技能がうなりますねえ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私の目の前では、ベル君のステイタスの更新がされています。普段は更新中は外で待機しているんですけど、今日はなんとなく同席しています。

 

女神さまからもベル君からも文句が出なかったので、今まで気を使っていたのは何なんだろう、と思いながら見ていたら女神さまの顔色が急に悪くなりました。

 

おそらく、ベル君のステイタスがまた急上昇したんだと思われる。

 

ん、女神様、私のほうを見てどうしたんです?ベル君のステイタスを書き写さないんですか?

 

「いや、ベル君。今日は口頭でステイタスの内容を伝えていいかい?」

 

「あ、はい。僕は構いませんけど……」

 

ん、私? 邪魔になるなら、ちょっと外出してくるけど……あ、私にも聞いてほしいんですか? じゃ、ベル君隣に腰かけさせてもらうね。

 

「はっきり言うよ。今君は熟練度がすごい勢いで伸びている」

 

「え?」

 

「それこそ、そこいらの冒険者……いや、君より先に冒険者になったカメ子君を上回るくらいさ」

 

この世界に転生チート貰ったクセに原作チートに負けるオリ主がいるらしいですよ。もちろん私だよ。

 

え、いや。私ベル君より一年も早くダンジョンに潜っているんですよ、確かに一人の時は安全性と安定を重視したため、【畏れよ我を】で逃げ出したモンスターは積極的には狩ってきていないけど、最近はモンスターの討伐数も増えてきたし、この前なんてミノタウロスを単独で撃破したんですよ。

なのに…なのに……負けてるんですか?

 

「…まぁ、そんなわけなんだけど。何か心当たりはある?」

 

「じ、実は一昨日六階層まで行ったんですけど……」

 

ふー、良かった。ステイタスでは後れは取ったみたいだけど、到達階層はまだ私の方が上みたいだ。まあ、彼はまだステイタスの高さによるごり押しで攻略しているみたいだから、私抜きではまだそれくらいが限度だろう。

 

「はあ、本題に入ろう。今の君は理由ははっきりしないけど、恐ろしく成長する速度が速い。言っちゃえば成長期だ」

 

「は、はい」

 

「君には才能があると思う。先輩冒険者のカメ子君の教えのおかげで冒険者としての器量も資質も十分身についている」

 

まぁ、ベル君は基本真面目な子だから、私の【世界樹式攻略術】を真面目にこなしているから、原作よりかはサバイバル術は上がっているものだと思われる。

だが、今だにトイレは一人で行きたがるがな。何度も、何度も、ヤッてる最中は無防備になるから一人ではするなと言っても、顔を赤くしながら勘弁してくださいって謝るのやめろ。

私? 私は一回潜ったら帰るまで一回もおトイレには行きませんよ? これもまた【世界樹式攻略術】の妙技なり。

 

「約束してほしい、無理はしないって。この間のような真似はもうしないって誓ってくれ。君の強くなりたいっていう意志を僕もカメ子君も反対はしない」

 

そう言って女神さまもベル君も私のほうを見たから、私も分かってますよって感じで微笑んで頷きました。ここで変な茶々を入れるほど空気が読めない訳ではありませんからね。

 

「だから…お願いだからボクを一人にしないでおくれ」

 

……女神様。すっっっっっっごくベル君の事を心配している気持ちは分かりますけど、ナチュラルに私がいることを忘れないでくれます?

 

「……はい、無茶しません。頑張って必死に強くなりますけど……絶対に神様を一人にはしません」

 

おい! だからナチュラルに私をハブるな。二人で見つめ合いながら二人の世界に入るなよ。……お、いいところに本が置いてあるな。

この本で二人の頭をパーンと叩く!

 

「「痛ったい!!」」

 

まったく、何二人の世界に入っているんですか? なんです。二人は恋人なんですか? 私はお邪魔虫ですか?

 

「こ、こここここ恋人!! ボクとベル君が……ウヘヘヘヘヘ」「ち、ちちちちち違いますよ!! ぼ、僕にはアイズサンガ」

 

まったく、女神様も言ってたけど、強くなりたいんなら私も協力するから、これからは一人でダンジョンに挑むなんて無茶は程々にね。ベル君はまだまだダンジョンの知識やサバイバル術の知識に偏りがあるんだから、意地はらないで、明日からまた一緒に頑張ろうね。

 

「あ、はい! よろしくお願いします!」

 

うん、よろしい。女神様も、そろそろ妄想の世界から帰ってきてください。

 

「はっ。いけない、いけない。ボクとしたことが。 オホン、二人とも、ボクは今日…いや、何日か留守にするよ」

 

「え? バイトですか? 」

 

「いや、友人の開くパーティーに顔出そうと思ってね。行く気はなかったんだけど、久しぶりにみんなの顔を見たくなったんだ」

 

おお、やっぱり。用意しておいて正解だった。はい女神様、衣装の用意は完璧ですよ。

 

「なんでキミはボクがパーティーに行くことを知っていたんだい?」

 

え、どうして女神様がパーティーに参加することを知っているのかって? やっば、原作で知ってますなんて口が裂けても言えないし……いや、普通に招待状を机の上に出しっぱなしだったし、御迷惑でしたか?

 

「い、いや。嬉しいんだけど、このドレス家に無かったよね?」

 

うん、ありませんでした。だから買っておきました。最高級品は無理だったのでそこそこのものですけどね。

 

「カメ子君、キミってやつは…」

 

はははは、喜んでくれて嬉しいです。じゃ、ベル君、女神様が着替えるからお外に出ていようね。

 

え、私の服です? 買ってませんよ? 私には『カースメーカー』セットがありますから。

 

なんでまた泣くんですか? サイズが合いませんでしたか?

 

 

 

 






悲報、女神ヘスティアのドレスを買うお金があっても、『カースメーカー』なりきりセットから装備品を買い替えないオリ主。

傍から見れば……



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