畏れよ、我を   作:hi・mazin

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前回、ヘファイストス様の口調を指摘されました。今回はその様な事がないように頑張ってみました。





第十三話 私になぜか死亡フラグが……

 

 

 

 

 

女神様が神の宴に出かけてから二日が経った。

 

とは言っても、私とベル君の日常は何ら変わりはなかった。朝起きて、ダンジョン潜って、商店で買い物して、お家でご飯食べて、お風呂入って寝る。

 

そんな当たり前の日常である。

 

しかし、しかしベル君、ちょっと待ってほしい、キミは本当にハーレム型主人公なのか!? 私…『カースメーカー♀』という美少女と二人っきりで過ごしているのにキミは何もしないのか、なにも意識しないのか!

 

私がお風呂に入っているんだぞ! 主人公にのみ許されたラッキースケベはどうした!? 脱いでる最中もお風呂の最中も寝巻に着替えてる最中も、なぜ偶然にも立ち会わない? なに呑気に武器の手入れをしているんだい?何が『あ、次お風呂良いですか?』だ、絶対なんかされると思って身構えていた私の気持ちはどうなるんだ!

 

食事の時だってそうだ。美少女と二人っきりでの食事だぞ。こう…『なんかこうしていると夫婦みたいですね』みたいな甘酸っぱいセリフとか言えないのか!

 

まぁ、言われても全力で否定するけどね。悪いけどベル君は私の理想とはかけ離れているからね。

私とそういうフラグを立てたかったら、まずはハーレム型主人公から一途系主人公にクラスチェンジして、身長を伸ばして、体をガッチリさせて声優を津田さんに変更してから来てください。

 

いや、何にも無いに越したことはないんだけど…こう…主人公として如何なんだそこんとこ。まぁ、そんなことがあったら呪う気満々だったからどうも言えないんだけど…なんか、腑に落ちない。

 

まぁ、日常はこんな感じで過ごしていますよ、あっ、ダンジョンはまた一緒に潜っています。

 

今日も今日とてダンジョンに来ています。もっともベル君が強くなりすぎたせいで私はサポート要員になっていますけどね。

 

今まさに目の前で戦闘が始まっていますけど、ベル君一人で大丈夫そうだね。

 

ゴブリンの攻撃も危なげなく躱せていますし、これは大丈夫そうですね……おっと、新しくデカいトカゲのようなモンスターが天井付近で生まれ、ベル君を真上から強襲したけど、それを察知していたベル君は華麗に躱し、そのまま飛び上がり、今度はベル君が空から強襲し背中への一撃で仕留めてしまいました。

 

残ったゴブリンはそんなベル君の強さを恐れ、一目散に逃げだそうとしています。

しかし、恐怖を感じたのはまずかったな…

 

【命ず、自ら滅せよ】

 

私の呪いを受けたゴブリンは逃げるのをやめダンジョンの壁に頭から突っ込んで行った。

 

グシャっという音がダンジョンに響き、ゴブリンは壁に血のシミをつけながらゆっくりと倒れていったので、私は動かなくなったゴブリンに近づき手に持ってるナイフを頭に突き刺し、ぐりぐりと脳ミソをかき回す。

 

オーバーキルだと思われるが、ちゃんと殺さないとあとから後ろから奇襲されたり、仲間を呼ばれたりしたら面倒だからね。ダンジョンでは『モンスター殺すべし、慈悲はない』精神で行動しないと足元をすくわれる恐れがあるからね。

 

おーいベル君、ボーとしてないで魔石を回収したら今日はこの辺にして帰還しよう。

 

「あ、はい」

 

うん、良い返事だ。ちょっと見ないうちにベル君ってば相当強くなったよね。

 

「え? 本当ですか」

 

うん、さっきの戦闘も二対一の状況に一時期なってたけど随分と余裕があったように見えたし、何より息切れを起こしていないしね。

 

「…僕は…近づけているのでしょうか…」

 

誰の事を思っているのかは詮索しないけど、ベル君は確実に成長しているよ……先輩である私よりね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バベルの一階までやっとこさ戻ってきたけど…毎回思うけど、人多すぎじゃない?

 

「お、人が集まってきましたね。それにしても、今日は混んでますね」

 

ベル君の言う通り、今日は右を見ても左を見ても冒険者だらけである。もっともそんなに混んでいても私たちの周りは空いてるから歩きやすいんだけどね。

 

なぜかって? 私への誤解のせいに決まってんだろ。おい、そこのお前、露骨に距離を開けるのはやめろ。そこのお前は何かヒソヒソするはいいけど、私が見ていることに気づくと一目散に逃げるのをやめろ。そんなオーバーリアクションばかりされてるとまたいらぬ誤解が生まれるだろうが。

 

「…あれ?」

 

ん、どうしたのかなベル君?

 

「あの、物資運搬用のカーゴ何処のファミリア何でしょう?」

 

ああ、あの時折何かが叩く音が聞こえたり、唸り声みたいのが聞こえるあれかい? あれはねガネーシャ・ファミリアが『怪物祭』の出し物に使うモノだよ。

 

「…モンスターフィリア?」

 

そう、あそこを見てごらん。

 

「あ、エイナさん」

 

そ、ギルド職員のエイナさんが関わっていることから分かるようにギルド公認のお祭りみたいなものだよ。それでその準備を毎年しているのがガネーシャ・ファミリアという訳だよ。さ、今日は彼女は忙しいみたいだから声はかけずに行こうか。

 

「あ、時間があるんでしたら武器を見に行きたいんですけど…」

 

武器…か、そう言えばベル君ってばまだ初期装備のままだったね。貯金もあるし幾つか買ってみるかい?

 

「え!!いいんですか!」

 

おいおい、驚きすぎだよ。私は貯金ができる女なのだよ、この前女神様のドレスを買ったけど…あと10万ヴァリス位なら余裕があるよ。

 

「で、でも。カメ子さんはどうするんですか?」

 

ん? ベル君も女神様みたいに私の装備が気になるの? ははは、大丈夫。私には『カースメーカー』なりきり装備があるから、これ神様に貰ったやつだからかなり頑丈で並の防具以上の硬度があるんだよ。

 

え? 女神ヘスティア様? いや、違うよ。これをくれたのは私を私にしてくれた神様の贈り物で、女神様は関係ないよ?

 

あれ? なんかこのやり取りデジャヴを感じるんだけど?

 

げ! ベル君の顔が何か悲惨な目にあった人を見た人の顔になってる!?

 

まずい! ただ転生してきただけでこの世界では特に壮絶な過去があるわけじゃないのに、ベル君の中で私の過去が捏造され始めている!?

 

大丈夫だよベル君、私は今は…そう今はとても楽しく人生を生きているよ! 私には女神様がいてベル君がいる。こんなにも嬉しい事はない……だからそんな顔しないで、笑って…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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神の宴でヘスティアから武器を作ってくれと頼まれ…断ったはずなんだがあれよあれよとヘファイストスの執務室まで押しかけ、書類仕事をしている机の前で丸まった状態になって二日が経過していた。

 

「……あんた、いつまでそうやっているつもりよ? 私、これでも忙しいの。そこで虫みたいに丸まってもらってると、気が削がれて仕事の効率落ちるのよ。わかる?」

 

何度目かの注意を受けてもヘスティアは頑として動かなかった。

 

「……」

 

「……はぁ。あのねぇヘスティア。何度も言うけど、うちの眷属の武具は最高品質、性能も値段も一流なのよ。子供たちが心血注いで作り上げる武具を友人のよしみで格安で譲る…なんて出来るわけないでしょう?……そもそも、なんなのよ、その格好?」

 

「土下座。これをすれば何をしたって許されて、何を頼んでも頷いてもらえる最終奥義…ってタケから聞いた」 

 

ああ…、とヘファイストスは親交のある神の顔を思い浮かべ、面倒を吹き込むなと内心怒りが込み上がるが、目の前のヘスティアの必死さがその怒りを霧散させていく。 

 

「……ヘスティア、教えてちょうだい。どうしてあんたがそうまでするのか」

 

「あの子の力になりたいんだ!今彼は変わろうとし、高く険しい道のりを走り出そうとしている!だから欲しい!あの子を手助けできる力を!あの子の道を切り開ける武器が!」

 

ヘスティアは視線を床に縫い付けたまま、ヘファイストスの方を見向きもせずに、それにと言葉を続ける。

 

「……何もしてやれないのは、嫌なんだよ…」

 

「……わかったわ。作ってあげる、あんたの子にね」

 

その言葉を聞き、ばっと顔を振り上げたヘスティアにヘファイストスは肩をすくめて見せる。

 

「私が頷かなきゃ、あんた梃子でも動かないでしょうが」

 

「うん!ありがとうヘファイストス!」

 

「でも代価はちゃんと払うのよ。何十年、何百年かかっても、絶対にこのツケは返済しなさい」

 

立ち上がろうとしたヘスティアだったが、長時間の土下座の反動で足がプルプルして立ち上がれず、四つん這いの恰好だったがとてもうれしそうな顔をしていた

 

「あんたの子が使う得物は?」

 

「え…ナ、ナイフだけど?ま、まさかヘファイストス、君が打つのかい?」

 

「当然よ。これは完璧にあんたとの私情なんだから、ファミリアの団員を巻き込むわけにはいかないわ。何か文句ある?」

 

「文句なんてあるわけないじゃないか!天界でも神匠と謳われた君が打ってくれるんだよ!」

 

ヘファイストスはじろりと一睨みするがヘスティアはそんなのお構いなし、顔を輝かせ感動に打ち震えていた。

 

「あんた忘れてない?天界じゃないんだから私は一切『神の力』は使えないんだからね」

 

「ボクは君に武器を打ってもらうのが一番嬉しいんだよ!」

 

まじりっけなしの称賛に若干照れるも、ヘスティアにはもう一人眷属が居ることを思い出した。

 

「そう言えば、あんたのもう一人…カメ子君だっけ?その子には良いの? それとも、その子はどうでもいいって言わないわよね」

 

「そんな事無いよ! ただ…」

 

「ただ?」

 

「カメ子君ってさ、ヘファイストスが知ってるように、冒険者の皆に良い印象を抱かれていないんだ。だから、今回カメ子君にも武器を作ってもらったら余計に悪い噂が立つんじゃないかって心配で…」

 

確かに、ヘファイストスが眷属の子から聞いた話はヘスティアから聞いた人物像からはかけ離れていた。

 

「だから今回は武具じゃなくてカメ子君には可愛らしくて女の子らしい服をプレゼントするつもりなんだ。カメ子君はちゃんとした格好さえすればすんごく可愛いんだから、きっと今までの悪い噂を払拭出来ると思うんだ」

 

ヘスティアの脳内ではカメ子が可愛い服を着て笑顔で年頃の女の子のようにはしゃいでいる姿がありありと浮かんでいた。

 

だからきっとこの選択は彼女の暗い過去を払拭できる良いきっかけになるはずだと考えているのであった。

 

 

 





【カメ子】ステイタス更新

【力】 H 119

【耐久】 I 99

【器用】 G 202

【敏捷】 I 69

【魔力】 B 710

【呪詛】

【畏れよ・我を】『効果』敵全体に中確率でテラー

【命ず・輩を喰らえ】『効果』テラー状態の敵1体に別の敵を攻撃させる

【命ず・自ら滅せよ】『効果』テラー状態の敵1体に自分を攻撃させる

【???】 『効果』 ???

【スキル】

【TPブースト】 『効果』 最大魔力の底上げ
【採取】 『効果』 アイテム取得率up

【発展アビリティ】

【???】 『効果』 ???



やっと魂がこの世界に馴染んできたようである。




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