畏れよ、我を   作:hi・mazin

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長らくストップしてましたが・・・私は正気に戻った。
これからは投稿はなるべく怠りません。







第十四話目 今日は楽しいお祭りです。

 

 

 

 

近頃、いや、主人公であるベル・クラネル君が『ヘスティア・ファミリア』に来てから私はやたらと幸運に恵まれて来ていると思う。

 

私がまだこの『世界』に来たばかりのころは『カースメーカー』の外見のせいで、女神様からは何かしらの悲惨な過去がある子として腫物を扱うように気を使われ、ギルドの職員からも外見のせいでヤベーヤツ扱い、同じ冒険者の人たちはちょっとした事件のせいで誰も私と関わろうとせず、逆に私の魔法の効果を大げさに言いふらし、【イカレ女】なる、ちょっとどうかと思うネーミングセンスの二つ名を付けられてしまった。

 

まあ、上記の勘違いは私が『カースメーカー』なりきり装備に拘らなかったら起きなかったとは言ってくれるな。

私も最近になってやっと自覚したんだから…まぁ止めないんだけどね。

 

話が逸れたけど……主人公が来たことによって、私への周囲の目は若干和らいできた。女神様は私の格好への慣れとベル君への好意で原作並のポンコ……いや恋愛脳……いや、優しい女神様になったし、ギルドの職員は私がベル君と普通の距離感で接しているのを見て私がヤベーやつではないとやっと分かってくれた(エイナさんも陰ながら助力してくれていたらしい)他の冒険者達は、『私=ヤベーやつ』認識から脱却できていないがそれはいいだろ。

 

うん? ベル君のおかげだと思っていたけど、これって、ただ時が解決してくれたってだけじゃね?

 

……よ~し今日は【怪物祭】だし派手に遊んでまわるぞ~

 

いまだに帰ってこない女神様から可愛いお洋服が送られてきたし、今日は目一杯お洒落して遊ぶぞ~

 

でも、【怪物祭】ってモンスターが街中で暴れるんだったよね? こんなリボンがいっぱい装飾されたひらひらお洋服で出かけるのは危ない気がするなぁ。

 

よし、このお洋服は別の日にしよう。と言う訳でいつものなりきり装備を……

 

「ちょっと、待ってください! なんでそっちを着ようとしているんですか!?」

 

おおベル君、いきなり大声出してどうしたんだい? というか、今から着替えるんだから席を外してほしいんだけど。

 

「ああ、すいません……じゃなくて! 神様が『モンスター・フィリア』に着ていきなさいって送ってきてくれたのにどうしていつもの格好を選ぶんです!?」

 

……それは今日の怪物祭はモンスターが逃げ出して街で暴れだす阿鼻叫喚な日になるからです……と言いたいなぁ。

 

でも、ベル君には言えないし、私の身の安全は確保したいし。

 

「その服だってきっとカメ子さんに似合います、絶対に可愛いと思いますよ!」

 

おお、いきなりかましてくれたねこの主人公は。

なに、キミは女の子にフラグを立てないと気が済まない性分なのかい? ドキっとは流石にしなかったがちょっと心動かされかけたよ。

 

「あ!いや、そういう意味じゃなくて……その」

 

はいはい、分かりましたよ。そんなにワタワマしなくても着て行きますよ。

 

まぁ、最悪、女神様と合流したら主人公と別行動すれば危険は無いだろうし、ここで意地になって着なかったら余計にこじれる気がする。

 

じゃ、着替えるからベル君も出かける用意をしてきてね。……さて、ベル君も部屋から出て行ったし、着替えますか。 ああ【神様】私が普通の格好をすることを許したまえ。

 

……ボソッと不穏なことを口走ってしまったが誰にも聞かれなかったよね。

 

この独り言が重要発言とか後々の伏線ぽく勘違いされるなんて止めてよね。

 

 

 

 

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【怪物祭】に 賑わう 大通りをよそに あるカフェの一角は 重い空気に覆われていた。

 

その原因の女神たちは周りの反応なぞ気にせず笑顔で会話を弾ませる。

 

「で?どんなヤツや、目にとまったのは。そっちのせいでうちは余計な気を使わせれたんや、聞く権利くらいあるやろ」

 

空気を重くしている原因の女神ロキがもう一人の原因の女神フレイヤに問いかける。

 

「……そうね、強くは、ないわ。今はまだ頼りなくて傷つきやすくて、簡単に泣いてしまう……そんな子。でも……」

 

そこで一旦言葉を区切り、顔を赤らめながら続きを話しはじめる。

 

「綺麗だった。透き通っていた。あの子は私が今までみたことのない色をしていたわ」

 

フレイヤの赤ら顔を物珍しそうに眺めるロキを半分無視しながら窓の外に目を向ける。

 

「見つけたのは本当に偶然。あの時もこんな風に……」

 

その偶然が再びフレイヤの目に止まる。そして、その隣を歩く少女に……

 

フレイヤが執着する少年、ベル・クラネルと出会ったのが偶然なら、その少女、カメ子と出会ったのも偶然であった。

 

その少女の魂は常識を逸脱するほど歪められ、本来の輝きや形が判別出来ない程であった。

 

だが、とても小さいがその醜さに負けないほどの輝きがその魂にはあった。

 

【希望】という名の光が……

 

ゆえに女神フレイヤはその魂は欲しないが多少は気にかけている人物であった。

 

だが、今はそんな事はどうでもいい。今は優先させるべきは無垢な少年の方だ。

 

女神フレイヤはロキの話を途中で切り上げ、そそくさとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

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履き慣れないスカートに戸惑いながら私とベル君は【怪物祭】の会場に向けて歩いている。

 

隣を歩くベル君はこれから降りかかる女神の試練なぞ知らずにルンルン気分である。

 

私は楽しみ半分、転生者だから絶対に騒動に巻き込まれるだろうな。っていう憂鬱感が入り交じった複雑な気分だ。

 

「どんな出店が出ているか楽しみですねカメ子さん」

 

おお、主人公様は能天気でいらっしゃる。私の苦悩を少しは分けてやりたい、しかし、お祭りが楽しみなのはわかる。

私は出店より闘技場でのモンスターバトルが気になります。【調教】はダンジョンでも見たことがないし、見せてくれる知人もいないからちょっぴり楽しみである。

どのくらい楽しみかと言うと前日から闘技場のタイムスケジュールを把握するくらいかな?

 

「おーい!待つニャそこの白髪頭ー!」

 

おっと、やっぱり引き留められたか。私が着替えたりパンフレットを準備してたりして時間が掛かったが運命には抗えないらしい。

 

「酒場の店員さん?」

 

うんそうだね。彼女のお陰で君はウェイトレスのシルさんとのフラグが立つんだから大切にしなさいよ。

 

「おはようございます……あの、僕に何か?」

 

「おはようニャ。いきなり呼び止めて悪かったニャ。はい、これ」

 

いや、原作通りいきなりですね。ベル君キョトンとしてるじゃないですか?

アーニャさんもやりきった顔しないでください。

 

「アーニャ、それでは説明不足です、クラネルさんも困ってます」

 

「リューはアホニャー、【怪物祭】を見に行ったシルに忘れていった財布を届けて欲しいニャんて話さずとも分かることニャ!」

 

だってさベル君、理解できた?

 

「あ、なるほど。僕は構いませんけど、カメ子さんはどうします?」

 

ん?私? 私も大丈夫だよ。

 

「ニャ? あのおっかない子がどうしたのニャ」

 

ん?このネコ、私がそのおっかないカメ子さんだと気がついていないのか?

 

ハハハ。おとぼけが過ぎますよ。おい、周りをキョロキョロするな、本気だと思われるぞ。

 

リューさんもため息をついてるぞ。

 

仕方がない、肩をツンツンしてこっちを向いたらニコってしてやろう。

 

( ´∀`)σツンツン

 

「ん? 誰ニャ?」

 

よし、こっちを向いたな。フルフル二ィー!

 

「ぎニャ~!! 出たニャ~!!」

 

ハハハ、ナイスリアクション!

 

「脅かしすぎですよカメ子さん」

 

ハハハそんなことないよ。さあベル君シルさんに財布を届けに行こうか。さっき出掛けたばかりだから直ぐに追い付けるはずだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい! ベル君ー! カメ子君~!!」

 

ん?このお人好しポイ声は女神様かな?

あ、やっぱりそうだった。背中に怪しげな荷物を背負ってるけど、あれが噂の【ラブ・ダガー】か。

 

「神様!? どうしてここに!?」

 

原作知らない原作主人公は驚いているけど、流れを知っている私は大して驚いていないがな。

 

「おいおい、君たちに会いたかったからに決まってるじゃないか!」

 

「いえ、僕も会いたかったですけど……今日までどちらに……」

 

そーだそーだ。何処に居たかは知っているけど、心配してたんだぞ。

帰って来ないことを知ってるからご飯も用意してなかったけど心配してたんだぞ。帰って来ないことを知ってるから夜はしっかり鍵閉めてたけど心配してたんだぞ。

毎日八時間寝てたけど心配してたんだぞ。

 

「いやぁ~!本当にベル君と出くわしちゃうなんて!やっぱりボク達はただならない絆で結ばれているんじゃないかなっ!! カメ子君も、ものすごくかわいい!やっぱりボクの考えは正しかったんだ!」

 

夜勤明けのテンション怖いな~、私たちの声がまっっっったく届いてない(汗

 

「あの、すごいご機嫌みたいですけど……何が?」

 

「へへっ知りたいかい?」

 

分かってますけど、ここは「はい」一択ですね。

 

「やっぱり今は教えなーい!お楽しみは後!」

 

徹夜明けのテンション(笑)ベル君もポカーンだよ。

しかも、いきなりデート発言。これにはベル君もタジタジ。

今回は流石に仲間外れにはされなかったが、今回はお断りした。

 

「え~!何でさ!カメ子君はボクとデートしてくれないのか!」

 

はい、モンスターに襲われたくないので……とは言えない。

女神様、さっきベル君が言ったとおり、私たちは財布を届けて欲しいと頼まれています。

 

だからここは二手に別れてシルさんを探しましょう。

それで待ち会わせ場所は闘技場にしましょう。

 

パンフレットに書いてある、この時間に合流して三人でモンスターバトルを観戦して、夜は何処かで食べて帰りましょう。

 

だからここは二人でデートしてきてください。私は気が利く女なのです。

 

 

 

 

 

 






カメ子「押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ!」

フレイヤ「わかった。押さないわ」

カメ子「!!」



ベル君「押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ。」

フレイヤ「いいや、限界だ。押すね」

ベル君「!!」


次回【待ちぼうけ】



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