今回はベル君視点で書こうと思ったけど、カメ子ちゃん消極的過ぎて……
まあ、次回からがんばります。
「ナイフが見つからない……どこに落としちゃったのかなぁ」
ギルドにて受け付け嬢のエイナさんにナイフがないことを指摘されたベルは来た道を逆走しながらナイフを探していた。
「カメ子さんもいつの間にかいなくなっちゃったし…」
ギルドを出た時は確かに後ろを付いてきてくれていたのだが、しばらくすると鎖を引きずる音がしなくなったのを感じ、後ろを振り返ると彼女の姿は何処にもなかった。
ナイフが見つからない焦りと頼りになる先輩がいない不安感のせいで若干早足で歩いていると、路地裏から何かが勢いよく飛び出してきた。
「あうっ!」
「わっ! な、なにっ!?」
不意打ちのように飛び出してきた物体に驚きながらも視線を向けると、そこには思いがけない人がいた。
「リ、リリっ!?」
「ふあっ……ベ、ベル様っ!?」
ゼーゼーと息があがり、倒れこんでいる彼女を心配してベルはすぐに駆け寄った。
「ちょっ どうしたの!?」
「ぜー、ぜー、実は凶暴な女……じゃあなくてっ、イカれ……た野良犬に襲われてしまいまして…」
「大丈夫! カメ子さんが持たせてくれたポーションが余ってるから」
傷ついたリリのため腰のポーチからポーションを取り出そうとしたら、路地裏から新たな人影が現れた。
「……まさか逃げられるとは…カメ子さんに気を取られ過ぎましたか」
「ちょっ、リュー速いよっ…」
「え、リューさんにシルさん!? 一体何が……」
いきなり路地裏からポンポン知り合いばかり出てきて混乱気味のベルだが、リューは丁度良いとばかりに話し始める。
「ああ、クラネルさん。ちょうど良かった、実は貴方の……」
何かをベルに伝えようとしたリューだったが、ベルにしがみつくリリの存在に気がつくと彼女に詰め寄った。
「クラネルさんどいてください!」
「ひゃっ!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
またしても怒濤の展開にベルは情報を処理し切れず混乱していると、リューはリリのフードを剥ぎ取り、リリの犬耳が露になる。
「……
「いきなりどうしたんですか! リリ大丈夫!?」
「は、はぃ……」
リューのいきなりの行動に驚きながらも震えるリリを落ち着かせるため抱き寄せたベルはリューに抗議した。
「すみません 人違いでした……ところで、いつまでそこで見ているつもりですか?」
頭を下げたリューはそう言って後ろの路地に目を向けると、またしてもベルの知り合いが姿を現した。
「か、カメ子さん!? いなくなったと思ったら何でそんなとこから!?」
「…ナイフ…あったよ」
どうしてそこにいたか、というベルの質問には答える気がないようで、マントの下から取り出したナイフをベルに向けて投げてきた。
それを難なくキャッチしたベルはそれが本当に自分の落としたナイフであるか確認する。
「僕のナイフです! カメ子さん本ッ当にありがとうございます!」
「…先に見つけたのはリューさんだから…お礼はそっちに…あ、そうだ…」
何かを思い出したカメ子は今までの空気なぞ知るもんかとリリの下に歩いてきた。
「あ、あの…なんでしょう?」
カメ子に対してどこか緊張してるというか、怯えているような声色のリリだったが彼女がフトコロから取り出したものを見た瞬間キョトンとした表情になった。
「は、 え、 あ、はぃ?」
「…今日のサポーター代。受け取らずにいなくなったから…」
ズシッと重い袋を差し出されたリリはひどく混乱していたが、そんなことは気にしないとばかりにカメ子はリリの手を掴み袋を強制的に持たせた。
「……明日も来てくれるよね?」
感情の読み取れない顔でリリにズズッと顔を近付けるカメ子。
青い顔で何度もうなずくリリ。
「カメ子さんがそんなこと言うなんて、リリってやっぱり優秀なんだなぁ」
そんな今のやり取りを見てそんな感想しかでてこないベルであった。
……………………………………………………………
ナイフを盗んだリリルカ・アーデさんを当てもなく探していたが転生系主人公パワーで見事遭遇したカメ子ちゃん。
そしてリリさんとちゃんと遭遇したリューさんとシルさんを見て、世界が原作の流れ通りに動いていることに安堵した。
……しかし、リューさんが拾うはずのナイフは今現在私の手の内にあります。
……どうしよう、ベル君のリューさんフラグを折ってしまった……
いやまてまだあわてるじかんじゃないこのないふをどうにかしてりゅーさんにわたしてべるくんとおててつないでもらわないとふらぐがたたないせっかくげんさくのながれが……
あ、脳内会議が終わる前にリューさんが表通りに逃げたリリさんを追っていった。
…もうダメみたいですね。あ、シルさんお疲れ様です、リューさんなら泥棒追いかけて表通りに走って行きましたよ。
「え~、ちょっ、リュー、置いてかないでよ~」
シルさんもリューさんを追いかけて表通りに走って行きました。
きっと原作通りベル君と鉢合わせすることでしょう。私も急いで向かわないと流れに乗り遅れちゃうなぁ。
はぁ、行きたくないなぁ。フラグ潰しておいてどの面さげてベル君に会えばいいんだろう。
……仕方ない、リリの疑惑イベントはスルーして、リューさん達が帰ってから、何食わぬ顔でベル君に合流してナイフを渡そう。
これ以上イベントに関わったら要らぬ心労を溜め込みそうだよ…
・
・
・
「……ところで、いつまでそこで見ているつもりですか?」
はいばれたー。物陰から現場の様子を視ていたら、いきなりリューさんに私が隠れていることがばれたー。
あーもーメチャクチャだよ、もーこれ私が出ていかないとお話が進まないパターンだよ。
みんなの視線がこっちに向いて私の登場を待ち望んでいますね。
アハハハハハ、もーどーにでもなーれ。
「か、カメ子さん!? いなくなったと思ったら何でそんなとこから!?」
やめて、そんな驚愕の表情で私を見ないで、凄まじく空回りしたお馬鹿な私を見ないで(泣)そして何で路地裏から出てきたなんて聞かないで。
まあ、ぶっちゃけベル君からしたら、急にいなくなった私がリリさんやリューさんとおなじ路地裏から出てきたなんて理解できないよね。
でもごめんねベル君、私の事情はこの世界の人には話せないの、メタ的な意味で…
だから君の疑問を無視してナイフを取り出して、あったわよアピールをしてお茶を濁すぜ!
おお、ベル君のお目目がキラキラと輝いてますねえ。でもごめんね、リューさんの代わりにお手手ニギニギイベントを起こさせないために君に近付けないんだ。
だからナイフをベル君に向けて全力投球!!
ベル君難なくキャッチ。
あれ?私の全力ショボすぎない。
ベル君たらそんなに大声で喜ぶとみんながびっくりするじゃない。
ん?リリさんや私が登場してからずっとベル君に引っ付いていますけど………ああ、ベル君ったらいつの間にかリリさんの好感度稼ぎに成功してたんですね。
私がいない数分でお互いに抱き合う関係まで持ってけるなんて最近のハーレム型主人公は進んでるんだな。
しかし、リリさんのあの目、私は鈍感系オリ主ではないから分かる、あれは私に怯えてますね(焦り)
しかしおかしい、私は彼女に特に何をしたでもないのに何故怯えられている?
私の容姿が原因?いや、女神様もエイナさんもベル君も商店のおばちゃんたちも怖がらないし、それはないな。
私の魔法が原因? いや、彼女に【畏れよ、我を】誤射してないし、ベル君が初めて見たとき怖いとは言わずスゴいと言って喜んでたし違うはず。
路地裏で出会ったから?いや、私何にもしてないし。
被害を与えたのリューさんだし、顔合わせただけで怯えるとかそれこそ意味不明だし。
結果、よくわからないけど何か誤解してる。
なんで?
それはさておき、このままではリリさんが私に怯えて明日は私たちのサポーターをしてくれないかもしれない。
それは不味い、こうなったら変な勘違いしてそうなリリさんの下に行きまして……はい今日のサポーター代金(賄賂)
そうだよ守銭奴のリリをやる気にさせるには金しかねぇ。
「は、 え、 あ、はぃ?」
はぃ?…じゃねーんだよ、私に怯えてないで受けとらんかい!
はい受け取ったこれで交渉成立明日も来てね。
うん何度も頷いてくれたし、これは了承してくれたに違いない。
ふー、これで最低限のフォローは出来たし、今日はぐっすり眠れそうだね。
追伸 リリルカ・アーデさんは次の日も来てくれました!
ベル君と仲良く並んで歩いてます。きっとフラグがきれいに立ったためだと思われます。
リリ
「あのイカれ女ホントに何なんです! ナイフを盗んだのを泳がせて追い詰めたと思ったらサポーター代って言って大金渡してくるし!リリをどうするつもりですかなんですか!……明日もあのイカれ女のサポーター……なるべくベル様から離れないようにしよう」
カメ子ちゃん
「フフフ、明日も明後日もずうっと一緒だよ…」
ベル君
「ナイフも戻ったし、リリも僕たちのサポーターを続けてくれるみたいだし、これから賑やかになりそうで嬉しいな」
なんて考えてるかもね。