畏れよ、我を   作:hi・mazin

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いろいろゲームをやってたら投稿が遅くなってしまった。
だが私は正気に戻った、これからも投稿を続けるぜ。







第二十三話 私の失言はシャレにならないです。

 

 

 

18時アモールの広場、女神さまとベル君は私が用意した衣服を身にまとい初々しいカップルのような会話をしながらお互い顔を赤らめている。

 

その様子を私は広場の植木の陰から見つめている。一応原作の流れに乗ったから久しぶりにソロでダンジョンに潜ろうと思いリリルカさんを誘うべくしばらく探してみたが見つからなかった。

 

と、探し人が居なかったことで私のテンションが下がり、ダンジョンを諦め、二人の様子を覗き見するべく、スニーキングミッションを勝手に開始することにした。

 

こんな出歯亀じみた事は本来褒められたものではないが好奇心には勝てなかったよ……。

 

おっと、そうこうしてる間にベル君と女神さまは手を取り合って歩きはじめた、私は二人に気付かれないように広場の植木から移動を開始した。

 

もちろん頭に葉のついた木の枝を括りつけ、両手にも葉のついた木の棒を握りしめている伝統芸能スタイルです。

ちなみにダンまち世界には段ボールは存在していないようだ。

 

「あ、いたーっ!? ヘスティアがおったぞ!」

 

そんな声と共に大勢の美女たちがこちらに近づいてくる、どうやら原作通り女神さまの彼氏候補のベル君を興味本位で見に来たようだ。

 

原作通りならこの後女神ヘスティアさまがほかの女神さまに突き飛ばされ、ベル君がハーレム型主人公の特権である美女にもみくちゃにされるイベントが発生することは明白である。

 

まあ、ほっといても良いがちょっとだけ手助けしてあげよう、私がこの世界にいることにより女神さまもベル君成分を充分に補充出来ていないかもしれないし、二人の時間を確保する意味でも意味のない行動ではないはずだ。

 

ではベル君たちと女神軍団の間にジャーンプっ!!

 

「「か、カメ子くん(さん)!?」

 

ふ(強者の余裕) さあ、女神軍団よ、ベル君と女神さまの仲を引き裂こうというなら、先ずは私を倒していくがよい!! 

 

ふ、自慢じゃないが私の悪名という名の風評被害は神様連中にも浸透している、そんな私がとおせんぼしているのだ、ふふふ温室育ちの女神さまは怖くて近づけまい、さあ、二人とも、この場は私に任せて先にすすめ…………む、むぶうぅぅぅぅ!!

 

「やーん 間近で見ると結構かわいい!?」「髪の毛サラサラ」「お顔もシミ一つない奇麗に手入れされてるわー」

「拘束具つけてるけどお肌つるつるだわー」

 

な、舐めてた。好奇心(ごらく)に飢えてる女神たちのバイタリティーを舐めて……た。

いっつもほかの冒険者に怖がられて避けられてるから絶対いけると踏んだけど、まったく躊躇しなかったぞこの女神軍団、あっという間に身に着けていた木の棒は外され、フードを脱がされ、頭を撫でられ、ほっぺをグニグニされ、いろんな所をペタペタ触られる。

 

顔に押し付けられる二つのぽよんぷよんしたものから何とか抜け出しそのまま地面へと倒れこむ。

 

「し、しっかりするんだカメ子君キズは浅いはずだよ」

 

め、女神様……私は……最後まで……役立たず……でした。ガク

 

「カ、カメ子くーん!!」

 

私を介抱してくれてる女神様をよそに原作通り女神軍団に蹂躙されているベル君、時折聞こえてくる声が不憫でならない。

 

好奇心(ごらく)に餓えた神どもめ~! カメ子君だけじゃ飽き足らずベル君まで……ベル君はボクの眷属なのにっ! ボクのものなのに……!」

 

女神様が倒れこんだ私を抱きかかえながら恨み言を吐いてると、女神軍団の輪の中からベル君が飛び出してきた。

 

「ベル君! 無事か!?」

 

「かみ……さま……僕、もう死んじゃってもいいかもしれません……」

 

アニメや漫画でも見たベル君のとろけ顔にイラっときた女神さまは四つん這いのベル君の右脛に蹴りをいれる、ついでに私も便乗して左脛に蹴りをいれ微妙に原作の流れに乗った。

 

「痛ッすみませんでした……‼」

 

「よし、逃げるぞ!」

 

そう言うと女神さまは右手でベル君、左手で私の手を握り走り出した。まあ、ちょっと原作と違うけど私を置いて行かずしっかりと手を握る女神さまにしきりに感心する。

 

……しかし、私はすぐに置いて行かれなかったことを後悔する。原作では逃げ回っているうちにすっかり夜も更けたと描写がある、現在18時20分、この後夜が更けるまで3時間近く街中を逃げ回る羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~ようやく振り切った、もうこれだから神ってやつは!?欲望に忠実すぎるんだよ全く!」

 

全くその通りです、マジでしつこ過ぎましたね。逃げてる時の描写はカットされてますけど、実際は路地に逃げこんだり通路の荷物を倒して進行を妨害したり、店先のタルの中に身を潜めたりと、漫画的表現を使いまくった高難易度の鬼ごっこでしたね。

 

「逃げ回っていたらすっかり夜も更けちゃったし……せっかくカメ子君がお膳立てしてくれたベル君とのデートだったのになぁ~」

 

まぁ、私からすれば失敗することが前提だったデートでも結果を知らなかった女神さまにはそううつるよね。

 

「か、神様! カメ子さん、見てください!」

 

はいはい、夜景ですね、キレイキレ……おお、この世界にきて一年以上たつがちゃんと夜景を見るのは初めてだな。

元の世界と違ってネオンや電球などの強烈な光はないが、私の目の前には光り輝く街が見える、元の世界以下の文明の夜景なぞそこそこのモノだと下に思っていたが、これは確かにきれいでなんか安心できる優しい光にあふれていた。

 

「あの……カメ子さん、もう変に気を遣ってもらわなくても大丈夫ですから……」

 

はい?

 

「確かに神様に恩返しがしたいって思ってましたけど、僕は同じくらいカメ子さんにも恩返しがしたいんです」

 

はい??

 

「……神様、カメ子さん…いつかまた行きましょう、今度こそ絶対に。その時まで僕、もっとお金を貯められるよう頑張りますから。それで…美味しいものを食べて、美味しいものを飲んで……またここに来ましょう」

 

はい???

 

「今日見つけることのできたこの奇麗な夜景を……また三人で見に来ましょう!」

 

ちょっとベル君、あなた何か勘違いしてません? 二人にデートに行けと言ったのはただ原作の流れを辿ってほしかっただけで別にベル君に気を使ったわけではないんですよ?

あと、ナチュラルに私にフラグを立てようとしないでください。こんな奇麗な夜景の前でまた見に行きましょうとかフラグすぎるでしょう。

 

もちろん恋愛フラグとかではなく死亡フラグっぽいのがいただけませんね。脚本家によっては将来『この夜景……カメ子さんともう一度見たかったな……』的な感じになると思う私は汚れているのだろうか?

 

ポジティブに考えても街中から勘違いという名の風評被害にあってる私がベル君が想像するような明るい未来を迎えてもいいのだろうか?

 

「いいに決まってるじゃないか! キミもボクの大切な眷属…いや、家族なんだから」

 

あ、つい口に出ちゃった、女神さまにお手手をぎゅっと握られ慈悲深い笑顔を向けられた……

 

「楽しみにしててくださいカメ子さん」

 

反対のお手手をベル君にぎゅっと握られ、私たちはしばらくの間夜景を楽しみ、帰路につくのであった。

最後に一言いいたい。

 

どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今日も順調でしたねカメ子様、ベル様。冒険者様として軌道に乗った、そう言えるかもしれません」

 

昨日の失言にちょっと参っていたが、やはりダンジョンでの冒険は最高ですね。

迫りくるモンスター、仲間との連携、そして友情! ……最後のはちょっと私には縁遠いが概ね順調である。

 

しかしリリルカさん、私が探すと居ないのにベル君が探すとすぐ見つかるのはなぜでしょうか?

もしかして、私避けられてる? いやまさか、今日だって探索中おしゃべりしたし、私がダンジョンの壁から採掘した鉱石を不思議そうに眺めたりしてたし仲が悪いことはないと思うんですけど……

 

「それじゃあリリ、今日の報酬も山分けしよう」

 

そう言ってベル君はお金の詰まった袋をリリルカさんに手渡している。

もちろんサポーターに支払う金額としては多すぎる額であるが私は特に何も言わない。

このベル君の金払いの良さも後々のリリルカフラグの一要因だと考えると下手に反対できないからだ。まあ、山分けしてもモンスターを狩る効率も格段に上がったし、私が採取するアイテムも残さず持って帰れるから実際はそんなに損害があるわけじゃないので、まあいいかと思ってる。

 

「……ありがたく頂戴しているリリが言えることではありませんが、ベル様は人が良すぎです。危なっかしくて見ていられないというか……つい世話を焼きすぎてしまうというか……」

 

 

ふふふ、流石はハーレム型主人公、無自覚でしょうが女誑し力は相変わらず英雄級ですね。これならリリルカさんが原作から乖離してベル君から離れていくことはないでしょう。

あとは私が悪目立ちしないように気を付けて、昨日のような失言をしなければパーフェクトですね。

 

「やっぱり大きいねバベルは」

 

「……知っていますかベル様、バベルは20階までがテナントとして貸し出されていて……そこから上は神様たちが住まわれているんですよ」

 

お、リリルカさんのバベル講義が始まったということはベル君はちゃんとフラグを回収できたとみて間違いないですね。

私ができることはこの場面ではないので大人しくリリルカさんのお話を聞きますか。

 

「……実は……リリは死ぬことに憧れていたことがありましたよ」

 

「……え?」

 

「一度神様のもとに還れば……今度生まれるリリは今のリリよりちょっとマシになっているのかなぁ……なんて」

 

お、神様転生希望者かな? でも止めといたほうがいいよ。

 

「……カメ子様?」

 

神様転生で力を手に入れても嬉しいのは最初だけだよ……私は……力があっても、誰も私を見てくれないし、私の力に怯えるし、誤解はするし、変な二つ名は付けられるし、仲間募集しても無視されるし、女神さまからの誤解は解けないし、表情筋は仕事しないし、みんな私の過去が悲惨なことだと思ってるし、ちょっと中二発言をするとすごく意味深なことを言ってるって思われるし、恥ずかしいし。

 

どんなセリフかって?「恐怖というものには鮮度が……」とか「怯えろ、竦め、モビル……」とかですよ。

セリフの結果は私の『イカレ女』という風評被害につながりましたよ。

 

解せぬ。

 

「カ……カメ子さん‼」

 

どうしたのベル君そんな大声出してそしてその何とも言えない顔はどうしたんですか?

大丈夫? 私は何も気にしてないから早くお家に帰りましょう。

リリルカさんもぼーっとしてないで帰りましょう。

 

 

 

 







カメ子ちゃん
「力があっても……誰も私を見てくれない……」←手錠のついた手で顔を覆いながら

ベル君
「……カメ子さん、彼女に僕は何をしてあげれるんだろう」←仲間を気遣う主人公の鏡

リリカルさん
「あれ?イカレ女が普通の女の子に見える……」←彼女の悲しい過去に憐れみを覚える

みたいな行き違いが起きてる……かも




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