何ヵ月も読み専門に戻ってましたけど、私は正気に戻った!!
また投稿を再開します。
カーン、カーン、と今日も元気にダンジョンで採掘作業中。
現在地下七階層、今日はベル君にモンスターの処理を任せて私はのんびり鉱石の採掘に汗を流してます。
別にモンスターの処理が面倒くさい訳でも、連日の私の失言のせいでベル君との連携がギクシャクしてる訳でもないです。
これは原作にはいない私のせいでベル君の単体戦闘能力が落ちているかもしれないという懸念があるため、ベル君には一人狩りという名の修業期間を設けているだけです。
まあ、すでにベル君のステイタスは数値の上では私より圧倒的に上なんですけど、彼の受難と言う名のイベントの数々では低ステイタスの状態では到底生き残れない戦闘もちょくちょくありましたし、このように保険を掛けてあげることは悪いことではないはずです。
まあ、ベル君に原作イベントをこなしてもらわないと救われない人もいるのでこれは仕方がないことなのです。
でも今日のベル君はちょっと様子がおかしいですね、なんかソワソワしてるというか、集中力が欠けているというか……ぶっちゃけ、私の方をチラチラ見過ぎじゃないですか?
まあ、私は鈍感系オリ主ではないのでちゃんと理由は分かっています。
その理由とは……私のそばでモンスターの死体や私が採掘した鉱石を一か所に集めて回ってるリリルカさんのせいですね!
分かりますよベル君、確かにヒロイン候補の女の子が寂しそうな顔で「死に憧れてました」なんてセリフがヒロインの口から出たら、そら心配しますよね、気になって目線がこちらに来ますよ。
ハーレム型主人公であるベル君は「気にしないでください」って言われたら全力で気にするのがデフォですもんね。
でもここは死の危険が付きまとう地下迷宮、そんな半端な集中力では足元すくわれちゃいますよ、だってそこの石柱の陰に角ウサギの姿がチラッと見えましたし、恐らくベル君は気づいてないでしょうからちょっと痛い目に遭うかもね。
もちろん注意を促したり助けには入りません、だって今日はベル君一人で戦う日だし、こんな感じの危険を経験しないと一人前になれないしね。
「ベル様っ!いけませんっ左です!」
お、私の隣でリリルカさんが角ウサギが攻撃に移るのが見えたようで慌ててベル君に注意を呼びかけます。
お金のために近づいてきたくせにすっかりベル君に絆されちゃって、まあ私としてはしっかり原作通りになっているから文句はないですけどね。
はっとするベル君、しかし回避行動に移るには遅い状況であり、足を使って何とか受け切った模様。
はは、めっちゃ焦ってるウケる(笑)
「カメ子様! ベル様が大変です!」
お、リリルカさんも焦った様子で私に話しかけてきました、どうやらベル君を助けてほしいようです、しかし残念ながら私は鉱石を掘るので忙しいので無視しましょうね~(鬼畜)
「聞いていますかカメ子様!? ベル様がモンスターに襲われているんですよ!」
ふーん、そっか…。
ものすごく焦ってるようですが私は断固として助けません、つまり…お前が助けるんだよ!
リリルカさんさあ、持ってるでしょ魔剣をさぁ。昨日のイベントから見てリリルカさんのベル君への好感度は原作同様にあるはずだから、ここはベル君の危険を無視しても問題なし、仮にイベントが起こらずモンスターに襲われたとしても、敵は蟻とウサギの二匹のみ、一息に殺されることはないはず、だから蟻かウサギのどちらかの攻撃がベル君を傷つけたときに【畏れよ、我を】すれば大丈夫なはず。
その後で手持ちのポーションで回復させて「まだまだ未熟だね」とか言ってベル君の成長を促せばベル君はますます強くなるだろし、リリルカさんの好感度も多分上がるだろう。
つまりどちらに転ぼうが私には得しかないのだ。
「カメ子様! 今はそんな事を言ってる場合ではありません、ベル様のピンチなのですよ!」
あれ、すぐにベル君を助けると思ったのに案外私に食ってかかるな。
なんで? 私が助けることを期待してんの? でもまあ大丈夫、(リリルカさんが助けるから)死なないから。
「し、死なっ!」
しかしヒロインイベントだとしてもベル君も災難だよなあ、死角からニードルラビットに奇襲され、それを咄嗟の機転で防御したけど、蟻に着地狩りされ体勢が崩され二体のモンスターから追撃を受けそうになる、うん、低ステイタス進行では詰んでたな、やっててよかった苦悶式、原作ステイタス補完は成功のようですね。
お、私がマジでベル君が傷を負おうが構わないという鉄の意思を察したのかリリルカさんは服の下に隠していた魔剣を取り出し、エンチャントされた魔法で蟻を焼き払いましたね。
その隙にベル君は何とか体勢を立て直し、向かってくるウサギの攻撃を躱し、カウンター気味の一撃でウサギを始末し、すぐさま頭が炎上している蟻の首を落として戦闘を終了させた。
戦闘が終わるとリリルカさんは急いでベル君の下へ駆け出していきました。
さて、私はこの後の説教イベントに巻き込まれたくないから地面に落ちてる鉱石をカバンに詰めたり、さっきベル君の倒したモンスターから魔石をはぎ取ったりしながら二人の様子をのぞき見しますか。
うんうん、原作通りベル君はさっきの戦闘の緊張が解けたのかへなへなと地面へ座り込んだ。
その際しっかりと駆け寄ってきたリリルカさんにしがみ付くという女誑し力を遺憾なく発揮するあたりベル君のハーレム型主人公力もしっかりと成長してるみたいだ。
リリルカさんもベル君に何かクドクドとお説教してるし、ベル君も顔面蒼白でさっきのモンスターの奇襲がいかにヤバく生命の危機であったかを身に染みているみたいだね。
この死ぬかもしれないという感覚や経験はベル君にとっても必要なものだから無事にこなせてよかったよかった。
まあ、私はそんなお説教なんて関係なしにモンスターの死骸から魔石を取り出す作業を黙々としてますけどね。
リリルカさんがツンデレしてベル君が驚く、書籍でも、漫画でも、アニメでも見たことのある光景を目の前で堪能し終えた私は二人にそろそろ帰ろうと声を掛けます。
さて、残りは帰り道でベル君がリリルカさんが所属するファミリアについて聞けば今日のイベントは終了です。
うーん疲れた、今日は勘違いされるような失言もしなかったし、原作イベントも見れたし充実した一日でしたね。
ベル君も帰ることに賛同してくれて、私の採掘した鉱石が入っているカバンを何も言わずに背負ってくれた。
やだ、こんな気遣いが自然にできるなんてベル君ってばカッコいい。
「え? いや、そんなことないですよこれくらい」
おっと、思わず口に出てしまったようでベル君が照れていらっしゃる、しかし今回のは失言ではないのでセーフ、寧ろベル君との円滑なコミュニケーションが出来たし結果オーライだ。
「カメ子様、少しよろしいですか?」
んも~せっかくいい感じに終わると思ったのに、ベル君も何事かと足を止めこちらに来た。
「…あの、なぜさっきベル様を助けてくれなかったのでしょうか?カメ子様、あの時モンスターに気が付いていましたよね」
リリルカさんの発言を聞いてベル君もハっとなり私の顔に視線を向ける。
いや真剣なとこ悪いんだけど、何か問題ある? リリルカさんが気づいてベル君に注意したし、ベル君は咄嗟だけどナイスな判断して無傷で原作通りだし…あれ?やっぱりどう考えても問題ないじゃないか。
「もー!聞いているんですかカメ子様!」
はいはい聞いてます聞いてますよ。さっきも言った通り問題ないと思ったから無視したんですよ、あの程度のモンスターからの攻撃ではすぐに死なないし、ポーションの数にも余裕があったし大事に至る方が稀ですよ。
うん?この言い方だと私って仲間の命に何の興味のない危ない人の発言ぽくない? えっと、あの、その……ベル君ならあれくらい対処できるとタカを括って傍観してしまいました…ゴメンナサイ。
いろいろ言い訳を考えたが今日のところは素直に謝っとこ。
よくよく考えたら今まで私は失言しても自分の意見を撤回せず逃げてたからいらん誤解があったんだと思う、だから今回はいろいろ言わず素直に謝った。
「い、いいですよカメ子さん、頭を上げてください。確かに少し思うことはありましたけど、カメ子さんが僕の強さを信用してくれているって分かってよかったです」
おお!初めて失言の誤解が解けた、やっぱり間違ったら謝るのは必要なことだったんだ。
これなら次回からの失言も恥ずかしがらずに修正していけば私の評価も上方修正されてくるんじゃね?
「はぁ、ベル様がそうおっしゃるならリリからはもう何も言いません。ですがカメ子様…せっかく日の当たる場所にいるのですから、もっと大切にするべきです…」
おや、何かリリルカさんが寂しいような羨ましいような顔をしてますねぇ、原作の彼女を思えば誤解とはいえ闇から抜け出し日の中にいる感じの私の立場はまぶしいものでしょうね。
偶然か必然か、私とベル君が立ってる場所はダンジョンの光が差し、リリルカさんの場所は陰になってる。
大丈夫ですよリリルカさん、もうすぐベル君が日の当たる場所に貴女を連れ出してくれますからもう少し辛抱しててください。
「わわっ! カメ子様何を!?」
私は彼女の手を掴みこちらに引っ張った、そのおかげで陰にいた彼女を日の当たる場所に引っ張れた。私はほとんど何もできませんけど今日は気分がいいのでこれくらいはしてあげます。
漫画的描写ですけどこれでリリルカさんも日の当たる場所に来れましたね。そう言うと彼女は驚いた顔をしたがすぐに何時もの作り笑いに戻った。
早くその笑顔が本物になるといいですね。
今日の三人
カメ子「……ゴメンナサイ」
ベル君「カメ子さんから認めてもらえてる!」
リリルカさん「何なんでしょう…この気持ち…」
みたいな感じかな?
ではまた次回!?