畏れよ、我を   作:hi・mazin

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【悲報】

今回【畏れよ、我を】の出番なし

つまり今回は誰もSAN値チェック失敗からの阿鼻叫喚はありません
残念だと思ったアナタ。次回に期待してください。



【朗報】

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チョーうれしい
やっぱ『カースメーカー♀』は人気者っすね




第四話 誤解だと否定しても誤解が解けるのは稀である

 

 

 

いきなりですまない、私は今危機的状況に陥っている。

 

「いい加減本当の事を言いやがれ、このイカれ女!!」

 

「ベート! 口が過ぎるぞ!」

 

「黙れフィン! このイカれ女は最近ずっと俺たちのファミリアを監視してたんだぞ!何か企んでいるに違いねえ!」

 

「しかし!」

 

お分かりいただけたでしょうか。私はただ、そろそろ主人公が来る時期だな~って思って軽い感じでベル君が来ることが確実なロキ・ファミリアで出待ちしてただけなんです。

 

流石に一日目で遭遇、という訳にはいかず、一週間ほどじ~っと門番のいる出入口を見つめていただけであり、ロキ・ファミリアの皆さんには全く迷惑をかけていません。

なのにそのファミリアの幹部に絡まれるなんて訳が分からないよ。

 

やめて、誤解なの、私の目的は此処に来るであろうベル君であって、貴方じゃないんです。私は貴方にはほんの少しも興味がないんです。

 

「この俺が眼中にないだと! 言ってくれるじゃねえか、レベル1のクソ女が!!」

 

うわ~メンドクサ~。ホントの事を言ったらベートさんガチギレだよ。

 

ベートさんに胸倉掴まれて宙ぶらりん状態にされちゃってるこの状況はある意味凄いな。

この人、基本格下は見下すか罵詈雑言で中傷するくらいで手を出したりはしないと思っていたけど、私今ガッツリ絡まれてる。

 

というか、結構首がしまって苦しい。何気に本気で締め上げてるな。そのせいで意識が飛びそうになる・・・・ ここまでテンプレに誤解されるなんて、一周まわって可笑しくて笑いそうになる、ふふふうふ。

ここは耐えろ、ちょっとでも笑い声が漏れてしまうと比喩表現なしに殺されてしまうかもしれない(迫真)。

 

「こんな状況でニヤついてんじゃねぇ!!」

 

誤解だ~~!! 死ぬほど苦しいんで身体と精神が勝手に自己防衛してるだけなんです。ベートさんを馬鹿にしてるつもりはございません。

 

「どうしても口を割らねぇつもりか、なら!!」

 

うう、その振り上げた右手をどうするんですか、もしかして、処す、処しちゃうの?

 

「なにやっとんのや、ベート。その手離しや」

 

ぐうう、意識が薄れそうな私の耳にエセ関西弁が聞こえてきた。あれ、ココドコダッケ。

 

「チッ!」

 

ぐえ、乱暴に放り捨てられたけど、助かった。誰だか知らないけど、ありがとうございます。

 

「ええよ、ええよ。自分、ヘスティアのとこの眷属やろ。どうしてこうなったかの事情も知りたいし、ちょっと中に来てもらえんかな?ベートもフィンもそれでええな」

 

「チッ!」

 

「僕もかまわないよ。あ、そこのキミ。彼女のためにポーションを一つ用意してくれ」

 

「は、はい」

 

「すまない、待たせたね。では、行こうか」

 

はぁ~、私を置いて話がポンポン進んでいるけど、私、一言も行くって言ってないよ。

ああ、私を置いてみんなファミリアに入って行っちゃった。これって私もついて行かないといけない流れ?

門番さんも凄く引きつった顔で私を見てるし。

 

はぁ~こうなっては仕方がない。少し怖いがお邪魔させてもらおうかな。他の神様のファミリアにお邪魔するのは初めてだから少しワクワクするな、女神ヘスティア様、お昼ご飯の時間には帰れそうにありません。机の上に捌いた鶏肉があるので先に食べててください、と、心の中で謝罪したので大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すいませーん、此処のギルドに入りたいんですけど? あ、今忙しいんだよ。お前のようなチビはお呼びじゃないんだよさっさと荷物まとめて帰りな。そんな、ひどい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アイズ・ヴァレンシュタインは先ほど主神ロキが連れてきた少女を訝しげに観察する。

何でも、ロキ・ファミリアに対してのスパイ容疑で事情を訊いていたのだという。

 

尋問した結果は白。ベートは納得していなかったらしいが、主神ロキが嘘は言っていないと断言していたのでそうなのだろう。

 

そんな彼女に疑ったお詫びと謝罪を兼ねてお茶とお菓子を振る舞うらしい、そして私がお茶の間の話し相手を頼まれたのだが、正直言って話が全く続かない。

 

天気がいいね。と言ったら、うん。と答えられ終了

 

お菓子美味しい?と聞くと、うん。と答えられ終了

 

身体は大丈夫?と聞くと、大丈夫。と答えられ終了

 

一体ロキは私に何を期待してこの子の話し相手に選んだのだろう。幸いなことに彼女もおしゃべりな方ではないらしくただ黙ってお茶とお菓子を食べていた。

 

しかし、頼まれたからには何かしら話を振ったほうがいいと頭の中で考えるが何の妙案も浮かばない。

 

「・・・ごちそうさまでした」

 

考え事をしている間に彼女は食べ終わったらしい。

 

「じゃぁ、私、帰る、ね」

 

そう言うと彼女は立ち上がった。

 

「わかった、玄関まで送る」

 

そう淡々と答え、彼女を連れて玄関まで歩いて行くが、その道中も終始無言であり、会話らしい会話はなかった。

 

「・・・さようなら」

 

何事もなかったように彼女は自然体で帰って行く。アイズは疑問に思う、なぜ彼女はあそこまで自然体だったのだろう。

 

レベル5のベートの殺気を受け、危うく殺されかけたのに何の感情の変化も起こさない。

事情を訊くためとはいえ、他のファミリアの幹部に囲まれてもただ、「違う」と冷静に答えたそうだ。

 

そして、自分とのお茶会の時も何の疑いもなくお茶とお菓子を食べていた。

 

彼女は本当に半年前に冒険者になったばかりなのだろうか? 本当にレベル1なのだろうか。

 

「もし、また話をする機会があるなら、今度はちゃんと話してみよう」

 

誰に言う訳でもなくアイズはそう呟き、彼女が帰った事を主神に伝えに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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はぁ~、やっと終わったし、帰れる。

 

くそ~、何が少し事情を訊きたいだ。ロキ・ファミリアの幹部で囲んで訊くなんて聞いてないぞ。

 

しかも、話してる最中もベートさんはこっちを睨みっぱなしだったし、ロキ様が私は嘘を言っていないと言ってんのに、物凄く疑いやがって、ふざけるな! 嘘ついたら全員でボコるって雰囲気出しとってそれはないだろ。

 

まぁ、終始ガン無視してやったがな(笑) あの悔しそうな顔っていったらなかったな。

 

しかし、あの紅茶とお茶菓子美味かったなぁ。絶対あれ高いやつだ、私たちじゃとても買えない高級品なのがわかる。

 

うちのはセール品で98ヴァリスの安物だし(涙)

 

本当はお代わりしたかったんだけど、アイズさんが物凄くこっちを睨んでくるんだよなぁ。

 

あれはきっと「早く帰れ。私はダンジョンに潜りたいんだ」て意志表示だったんだな、彼女ダンジョン大好きっ子だったと思うし。

 

会話だっておざなりだったし、帰るって言ったら引きとめもせず玄関まで送るってよ。

 

はぁ、ここ最近、ため息ばかりつくな、もう、癖になってしまってるのかな。

 

しかし、明日からどうしよう。何もしなくても、たぶんヘスティア様が拾ってくると思うけど、私がもう眷属でいるから、そこまで必死ではないかもしれないからなぁ。

 

ああ、私という不安材料もあるし、やっぱり明日からも張り込みしよう、最悪、またお茶しに来たっていって上がらせてもらおうかな。

ンなこと言ったら今度こそ殺されるな・・・・

はぁ~お家まで遠いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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唯一の家族であった祖父が逝去してから一人になったベルは、冒険者になるべくオラリオを訪れた。

 

大好きな祖父の話に憧れ、【英雄】となり【ハーレム】を手に入れる事を夢見ていた。

町に着いた当初は「ここから僕の冒険が始まるんだ!」と期待に胸を膨らませていた。

 

しかしその期待はすぐに失くしてしまうことになった。

 

見た目小柄で貧弱な体型であり、専門的な知識などまるで無いベルはどこのファミリアでも門前払いであった。

 

特に最大手のロキ・ファミリアに至っては取り付く島もなかった。

 

冒険者になるにはまず【ファミリア】に入団しそこの主神から【恩恵】を授かることが必須条件である。

 

しかし、ベルはそのスタートラインにすら立てないという現実に、少年の心は無残にもへし折られかけていた。

 

でも、そんな彼にも救いの手が差し伸べられるのであった。

 

ベルに手を差し伸べてくれたのは女神ヘスティアと名乗る少女であった。無論、見た目通りの年齢ではないのは分かっているがそこは黙っておく。

 

ベルにとっては彼女はまさに救いの女神であった、ベルはヘスティアの誘いにホイホイついて行き廃教会の前に着いた。

 

「さぁ、着いたよ。ここが僕のファミリアのホームだ」

 

「えっと、神様。そのボロボロの教会がですか・・・」

 

「む、これでもカメ子君が毎日掃除してくれてるんだぞ。見てみろ、あの花壇、綺麗な花が咲いているだろう。あれもカメ子君が作ってくれたんだぞ」

 

確かに神様の指をさす方向には花が咲いている。だが、農村出身のベルはその花が食用であることがわかってしまった。

 

「え~と、そのカメ子さんって人が道すがら話してくれた先輩ですか?」

 

「うん、そうだよ。半年前に入った子で・・・すごく頑張り屋で優しい子さ・・・」

 

なぜか悲しそうな顔をする神様に対しベルは何か気に障る事を言ってしまったと思い、何かフォローするべきか、謝るべきか、おろおろしている。

 

「いや、暗くなっている場合じゃない。彼女はちょっと悲しい過去があってね、今は少し口数は少ないけど、とても良い子で可愛いただの女の子さ」

 

神様の悲しい過去という言葉に少し思いをはせ・・・・る前に「可愛い女の子」という言葉に心躍るベル君であった。

「もちろん料理も得意さ」という言葉でさらにたぎったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 






カメ子・・・彼女の悲しい過去は一体何時になったら癒されるのであろうか。
主人公ベル・クラネルは彼女の寂しさを受け止めることが出来るのか
女神ヘスティアは彼女の悲しみを癒すことが出来るのか

次回 【出会い】

来週も見てね。



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