たくさんの誤字報告ありがとうございます。
本当に感謝してもしきれません
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ホントだよ
はぁ~。私のせいでベル君がヘスティア・ファミリアに入れなかったらどうしようと思い、あちらこちら走り回ってたのに・・・
「今日は帰って来るのが遅かったね。ちょうどいい、紹介しようベル・クラネル君だ。キミに続いて二人目の僕の眷属、つまりはキミの新たな家族になる子だよ」
あ、はい。女神様ったら、私の苦労も知らずにベル君を捕まえてきたんですね。運命ってハンパないわ~
「え、えっと、ベル・クラネルです。その、よろしくお願いします」
あ、うん。知ってる。しかし小柄だと知っていたけど私よりは背が高いな。なんか悔しいからちょっと背伸びしたのは内緒だぞ。
「ちょっとカメ子君。いきなりで驚いたのかもしれないけど、ベル君が挨拶したんだからキミも挨拶するべきだろ」
あ、そうだった。こっちはベル君の事を一方的に知っているから初対面な感じがしなかったけど、現実世界で顔を合わせるのは初めてだったね。
初めまして、カメ子(仮名)です。おっと、私はただの無口系美少女ではないぞ、コミュニケーション能力はしっかりあるのだ。はい握手。
「あ、あの。そ、その腕の鎖は?」
あ、これ、カースメーカーの必需品、拘束具だよ。あ、手、足、だけじゃなく全身見てる。実は女神様が泣くから、ほぼファッションで付けてるだけだから昔みたいに身体に痣はついてないんだよ。
はい、握手、握手。ちょっと、そんなに引きつった顔をしなくてもいいじゃないか。私は怖くないよ~優しい先輩だよ~、はい、ニコっと笑顔で対応、お、照れてやがるなこの純情少年、ま、カースメーカー♀の容姿は可愛いから仕方ないよね。
さ、帰ってきたからちゃんとローブを脱いで指定の場所にハンガーで掛けましょうっと、私は片づけられる女なのだ。
「え?えええええ!? 見てない。ぼ、僕は何も見ていません!!」
ん、ベル君、何言ってんの? 確かにローブの下は拘束具だけで露出は激しいかも知れないけど大事なところは一切見えてないんだよ。
「ちょっと、カメ子君! キミは女の子なんだからもう少し恥じらいを持たないか。ほら、キミ専用の室内着を買ってきているから向うで着替えてきなさい」
ええ! 女神様、そんなお金どこから捻出したの? うちにはそんな余裕はありませんよ。
あと、恥じらいって。確かにローブの下は肌の露出が多いかも知れませんがちゃんと全年齢審査通った格好ですから、決してエロくないはずです。
「そんなわけあるか! 今にもポロリがありそうじゃないか」
失敬な、私はそんな軽い女じゃないぞ。なんせ前世で童貞を拗らせ今世では処女を拗らせているハイブリッド仕様だぞ。もう鉄壁すぎて、今世も良縁は難しいっぽいけど・・・私は頑張って生きているんだ。
まぁ、今まで女所帯で生活だったからな、面倒だがそこんとこはしっかりしますか。
ちょっとベル君、今から着替えてくるから覗くなよ。もし、ラッキースケベったら・・・【おそれよ~、われを~】からの【めいず、みずからめっせよ~】で切腹させてやるからな。
「のぞっ!ののののの覗きなんてしませんよ!」
おい、動揺しすぎだろ。そこまで挙動不審だと逆にこっちが怖いわ。ま、私は照れ隠しで拳が出る系ヒロインではないから、よっぽどワザとじゃない限りは笑って許してやるからな。
だけど他所の子にはやるなよ、覗きは犯罪だからね。
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神様の案内で廃教会に入ったベルは驚いた。外観は教会なのに、その内装はまるで違っていた。
まず教会にあるはずの沢山の長椅子がない。代わりに教会の中心には大きなテーブルが鎮座していた。
神様曰く、カメ子さんが椅子があっても邪魔と言い、すべて薪にして空いたスペースにテーブルと椅子のセットを置いたらしい。
確かに、隅っこの方に薪が大量に積まれていた。その近くには炊事場らしき施設もあり、よく整理されていた。
神様曰く、カメ子さんがほとんど毎日料理を作っており、神様がアルバイトに出かける際はお弁当も用意してくれるそうだ。
「でも、お肉を捌くのは苦手みたいなんだよねぇ」と、神様はつけたした。確かに、炊事場にある鶏は辛うじて原型が留められているくらいグチャグチャである。しかし、血抜き等はしっかり出来ており、肉の臭みはほとんどなかった。
炊事場の反対側にカーテンで仕切りがされている一角があり、何の仕切りか聞くとカメ子さんが冒険に必要な道具を置いている場所だという。
冒険に必要な道具と聞いて凄く興味を引かれ中を覗かせてもらったが、大きめのリュックサックにツルハシ、鎌、スコップ、クワ、ジョウロ、ハンマーなどなど。冒険道具と言うより農作業道具にしか見えなかった。
ちょっとガッカリしたのは神様には内緒にしよう。
一通り教会の内部を見て回ると、次に隠し部屋に案内された。
「よし、一通り見てもらったけど、どうだい、思ったよりしっかりしているだろう」
「はい! 」
「うんうん、元気があって良いね。じゃ、さっそく僕の眷属になるための【恩恵】を与えよう」
「はい、よろしくお願いします」
ついに来た、とベルは歓喜に打ち震える。ついに自分の冒険が始まるのだ。そして夢である【英雄】となり、【ハーレム】を手に入れる事を心に誓う。
「じゃ、そこのベッドに服を脱いで横になって・・・」
神様の言葉を遮るようにコツン、コツンとこちらに足音が近づいてくる、一体だれだと思うが、神様が警戒してないから、多分カメ子って人だと思った。
その予想は当たり、薄紫色の髪を両側で三つ編みにした碧眼の少女が現れた。
神様が可愛いと言っていた通り本当に可愛かった、色白で儚げな姿がぐっと来た。
「今日は帰って来るのが遅かったね。ちょうどいい、紹介しようベル・クラネル君だ。キミに続いて二人目の僕の眷属、つまりはキミの新たな家族になる子だよ」
「え、えっと、ベル・クラネルです。その、よろしくお願いします」
神様に急に話を振られたのと彼女の容姿に少し見とれていたせいで多少言い淀んだがきちんと挨拶できたとおもう。
しかし、彼女はこちらを見たまま固まっているように見えたがすぐに神様が声をかける。
「ちょっとカメ子君。いきなりで驚いたのかもしれないけど、ベル君が挨拶したんだからキミも挨拶するべきだろ」
「初めまして、カメ子、です」
可愛らしい声だが、少し無機質な喋り方だった。口数が少ないと事前に聞いていなかったら嫌われているんじゃないかと思うくらう簡素な挨拶だった。
だが向こうからハンドシェイクを求めてきたのでこちらも手を出そうとした・・・しかし―――
「あ、あの。そ、その腕の鎖は?」
差し出された彼女の腕には、鉄で出来た手枷と鎖が垂れ下がっていた、よく見ると腕だけではない、差し出された腕とは逆の腕にも、両足首にも同様のモノが付けられている。
その異常さに身体が硬直していたら彼女の方からベルの手を握ってきた。
冒険者とは思えないほど手は柔らかく、そして小さかった。
「よろしく、ね」
そう言って彼女は微笑む、さっきまでの無表情とは違いとても異性としての魅力があふれるものだった。
そう、自覚すると顔が急に熱くなる。
挨拶もそこそこに彼女は壁に掛けてあるハンガーを取りローブを脱ぎ始める。
先輩冒険者がどの様な装備を身に着けているか気になったベルは彼女に注視した・・・しかしローブの下がきわどいなんて聞いていない。
「え?えええええ!? 見てない。ぼ、僕は何も見ていません!!」
急いで目を背け、全力で見ないように気を使っていると神様から着替えを貰ったカメ子さんがこっちに来た。
「私、着替える、覗き、ダメ」
「のぞっ!、ののののの覗きなんてしませんよ!」
「そ。でも覗いたら・・・呪う」
あの目はマジだ。
その後無事【恩恵】を与えられ、カメ子さんが「明日から、ダンジョン行くから」と言ってくれた。
そうだ、僕の冒険はまだ始まったばかりである。
次回「ダンジョンの洗礼」
ベル君は悪意なき恐怖に耐えられるのだろうか?
おそれよ~、われを~