畏れよ、我を   作:hi・mazin

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いや~、久しぶりに確認したら、お気に入りも、評価も凄い事になっててビックリです

どうしよう、着地点を今から決めとかなきゃ(汗)


第六話 ダンジョンで出会いを・・・いや、何でもないです。

 

 

 

 

 

ふわぁぁ。皆さま、おはようございます。私ことカメ子です。昨日ついにヘスティア・ファミリアに期待の新人が加入いたしました。

 

その名も「ベル・クラネル」君です。

ワーパチパチパチ・・・と、一人で脳内拍手喝采しても寂しいだけですね。さっさと起きて着替えますか。女神様が買ってきた服は無駄にフリフリな装飾がされてるから、汚さない様に気を使うんだよね。

 

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さて、サクッと身支度を終えましたし、女神様とベル君が起きてこない内に朝ごはんの用意でもしますか。

 

ふん、ふん、ふ~ん。と鼻歌を歌いながら台所に備えてる保存瓶の蓋をオープン。食料品が私をお出迎・・・え?

 

空っぽ? なぜ? 3日分くらいは買いだめしてたはずなのに・・・あ、そうか。ベル君来たから食料の消費が増えたんだ、それに昨日は歓迎会もしたから鶏肉もジャガ丸君の残りも全部使ったんだった。

 

しょうがない、虎の子の花壇の花を食べましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁぁ。おはよ~カメ子君・・」

 

寝惚け眼で女神様が現れた。今日は何時もより遅かったですね。まぁ、昨夜はお楽しみだったし、しょうがないんですね。

 

おはようございます女神様。もうすぐ朝ごはんの用意が出来ますからベル君を起こしてきてください。

 

「ん、ベル君。そういえば彼はどこで寝ているんだい?」

 

彼ならあそこのほぼ何も入ってない倉庫に寝具を持ち込んで寝ていると思いますよ。

 

「そっか。彼には少し悪い事をしたかな。僕は別にみんな一緒に寝ても良いと思うんだがなあ」

 

さすがに恥ずかしいからダメです。それにあの倉庫はいつも綺麗にしてますし、考えようによってはベル君はヘスティア・ファミリアの入団初日から個室を与えられたんですよ。

 

「う~ん、皆で寝られないのは残念だけど、そういう考えもアリだね。そういえば、今日の朝ごはんは何だい」

 

今日はお花の花びらサラダに、茎のスープに、根っこの素焼きです。

 

「わ~お。久しぶりに出たね、その非常食セット・・・」

 

ダンジョンから帰って来る時に食料は買っておきますから今日はそれで我慢してください。さあて、腕によりをかけますか。

 

味付けは塩味オンリーだけど、素材の味を活かす系だと思って下さい。

 

 

トントン、ジュージュー、ザックザック。おはようベル君、外に水場があるから顔を洗っておいでよ、すぐ朝ごはんできるからね。

 

ん、エプロン姿の女性がそんなに珍しいのかな。別にじっと見つめられても照れんが、何でベル君の方が顔を赤くするのさ?

 

さっさと顔を洗いに行く。

 

うん、いい返事だ。女神様もニヤニヤしてないで席に座ってください。

 

ベル君が行ったのを確認、さて、お皿に料理を盛りつけますか。ダンジョン初日のご飯がこんなに貧相なのもいい思い出になるさ。

 

・・・なるよね―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ついに念願のアイスソード・・・ではなく、ついに念願の前衛職のベル君が仲間に加わり後衛職の私が前線に立つ機会がなくなってしまった。

 

いや~残念だな~。私の華麗な回避テクを披露する事がなくなって、本当に残念だな~

 

「うわぁぁぁ! カメ子さん助けて~!」

 

言ってるそばからこれだよ、ベル君ちょっと主人公度が高すぎひん。ここまでモンスターからヘイト集める人殆どいないよ、お~い、一体なにやらかしたの~

 

「ちょっと、トイレしてたら急に壁から現れて・・・って、うわぁぁ!」

 

私に隠れてやりたいことって・・・と言うか、トイレの時ほど無防備になるから、仲間が周辺を警戒する必要があるんだよ。

 

何恥ずかしがってんだ、ちゃんと私の目の届くところでヤリなさい。

 

「女の子の前でなんて無理だ~~!!」

 

まぁ、分からんでもないが、後でボウケンシャー式トイレ術を伝授せねば、それさえ覚えればトイレの頻度はガクッと下がるし、なぜか【耐久】もupするから覚えて損はないはずだ。

 

て、私に向かって走って来るんじゃない、前衛らしく私の肉かBE・・・コホン、盾になれよ。

 

なにゴブリンの団体さんをお招きしてるんだよ。貴方それでもボウケンシャーですか?

 

ほら、受付のお姉さんが冒険者心得を熱心に教えてくれたでしょう。思い出して、そういう場合は身を隠すんだよ。

 

「もう見つかってるんですから意味がありませんよ!」

 

それもそうか。しかし、初めてのダンジョンなのになかなか動きが良いな、4~5体に追いかけられながらも囲まれることもなく無傷か。

 

さすが原作でソロでダンジョン攻略してた男だ。

 

さて、一応ベル君がモンスターを引き付けていることだし、私もやるべき事をしますか。

...よし、いい感じにモンスターが一塊になったな。

 

では、パーティー戦初めての・・・【畏れよ、我を】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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やっとダンジョンに挑める・・・朝食後にカメ子さんに連れられてファミリアを出発し、組合で冒険者登録をしてもらい、自分のダンジョンにおける担当アドバイザーの『エイナ・チュール』さんにカメ子さんと共に挨拶をした

・・・そこまでは順調だった。

 

「ダンジョンの基本知識を教えましょうか」とエイナさんに笑顔で提案され、カメ子さんも「時間ある、受けるべき」と賛同し、本当はすぐにでもダンジョンに向かいたかった。しかし知識は大事だと思い直し、ダンジョンへの未練を引きずりながら教えを乞うことにした。

 

・・・勉強会はハッキリ言って良かった。だが、スパルタ式とは聞いていなかった、ダンジョンに潜る前からかなり疲弊してしまった。

後でカメ子さんから聞いた話では今日は経験者のカメ子さんがいたから優しくて短かったらしい。

 

これより厳しい勉強会を数日続け、さらにはエイナさんの課題をクリアしているカメ子さんはきっと凄い人なんだなぁと思いました、まる

 

帰り際にエイナさんが「カメ子ちゃんの事、怖がらないであげてね、彼女ホントに優しい子だから」と言ったがよく分からなかった。

確かにカメ子さんは無表情で無口だけど、決して悪い人には思えない・・・そう、その時までは思っていた。

 

ダンジョンでちょっとした油断からゴブリンに追い回され、全力でカメ子さんのところまで逃げてきたら

「これからは私の見てるところでヤレ」と言われてしまった。これに関しては全力で拒否したらため息を吐かれてしまった。

 

カメ子との会話で気が緩んだのか、さっきまで後ろにいたゴブリンに囲まれてしまっていた。初ダンジョンでの絶体絶命のピンチに陥ってしまったその時、彼女の無機質な声が耳に響いた。【畏れよ、我を】という声を―――

 

その瞬間、自分を囲んでいたゴブリン達から殺気が消え、みるみる内にその顔に恐怖が現れ、何匹かはこちらに目もくれず一目散に逃げだしていった。

 

何が何だか分からずにいると「いま!」とカメ子さんの声が聞こえてきた。何が?と一瞬思ったが、目の前には逃げずに立往生しているゴブリンがいた。

 

その姿を見て理解した。今なら倒せると、手に持ったナイフをゴブリンの額に勢いよく振り下ろした。

恐怖により身動きが取れない状態だったので行動を阻害されることなくナイフはゴブリンの眉間に突き刺さり、すぐに灰のようにボロボロと崩れ去り、小さな宝石のようなモノが地面に落ちる。

 

「おめでとう・・・」

 

彼女の簡潔な言葉に、ベルは初めてモンスターを討伐したことを実感した。

 

「やった~~!やりましたよ神様。エイナさ~ん!!」

 

初めてのモンスターの討伐に興奮し叫んでいると、後ろから誰かが服を引っ張られた。

 

「・・・私は?」

 

ジトーとした目でカメ子さんに睨まれ慌てて先ほどの発言を訂正する。

 

「あ、すいませんでした。カメ子さんもありがとうございます!」

 

そう言って頭を下げると彼女は満足したのか「ん」と短く返事を返し落ちている魔石を拾い上げこちらに投げてきた。

「うわっと! あ、ありがとうございます」

 

「ん、それ、ベル君の」

 

「え?」

 

「これでアナタもボウケンシャーの仲間」

 

「は、はい!」

 

「前は任せる、私は後ろから支援する」

 

「はい!」

 

先輩冒険者の彼女から認められたと感じたベルは受け取った魔石を握りしめながら言い表せない歓喜に震えていた。

自分はついに【英雄】へのスタートラインに立ち、一歩前進したのだと。

しかし、ふと、疑問に思うことがある、先ほどモンスターが急に怯え始めたことだ、原因はおそらく彼女だと思うので聞いてみることにした。

 

「あの、さっきのって【魔法】ですか?」

 

「そう、敵を怖がらせる【呪い】を私は使える」

 

呪い? 魔法とは違うのだろうかと思考していると彼女が話を続ける。

 

「敵とは、モンスターだけを指すのではない・・・人間も対象になる」

 

「人間にも・・・」

 

「そう、ベル君・・・私が・・・怖い?」

 

「いいえ!むしろ凄いですよ!僕と同じレベル1なのにもう魔法が使えるなんて、ほんと、凄いですよ」

 

そう褒めちぎると彼女の顔が若干朱色に染まったような気がしたがすぐにフードを目深くかぶり直し「出発する」と短く言って彼女は歩きだした。

 

置いて行かれないように慌てて後に続いて歩き始め、そこでダンジョンでエイナさんから言われたことを思い出した。

「怖がらないで、か・・・」

 

まだ少しの間しか彼女に関わっていないがこれだけは断言できる。彼女は怖くない、むしろ、優しい女の子で頼りになる先輩冒険者であると。

 

 

 

 

 






【畏れよ、我を】

怖がらせる=優しい表現

現実=強制SAN値チェック失敗コース

嘘は言っていない(断言)

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