最弱の蟹で学生が航海へ   作:°C

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今回は終盤に向けても抑えておきたい回となってます。是非見てください。


雨と初夏

桜が美しく街を彩り、散り始める。ゆらゆらと落ちるさまがまるで今の僕の不安定で不安な心のようだった。あれから、1週間近くがたった。部活と勉強に追われる日々がまた来たのを感じている。幸いな事にこの1週間あの音がなることはほぼ無かった。あったとしても割とすぐに聞こえなくなっていた。渡辺とはあれから話していない。連絡先を交換したのだが、向こうからもこちらからも特に何か連絡をするわけでもなかった。が、僕は渡辺が言っていた事を覚えている。彼女の誕生日だ。もう、目前に迫ったその日。

 

 

 

 

空はしとしとと雨を散らし僕の体を濡らす。部活終わりに制服に着替えて彼女を待つ間に降り始めたようだ。今は他のことが気がかりで気にはならない。暫く待つと4人ほどで下校しようとする彼女が見えた。周りの人のうちの1人は知っている人だが、大半は知らない人故か恐怖を感じる。

「曜、、、曜、、曜!」

振り返る彼女は1週間前と変わらず綺麗だった。恥ずかしさから僕は下を向く。

「秀介君…久しぶりだね…」

ただ、言葉には前のような明るさを感じない。嫌われたのだろうか。

「これ、この前のお礼とあと、誕生日プレゼント…」

そう言い、ものを渡すと僕は小走りで立ち去った。

「何あいつ、嫌な感じね…」

「ほんとっ、曜ちゃん知り合いなの?」

後ろで話す声に追われるようにして…

 

 

少し前までは女性への苦手意識もなくなったかと思ったが、それは幻想だったようだ。曜に対しては大丈夫になっていたはずなのに、あの声からして嫌われたのだろう。少しだが心が痛い。本当に少しなのかは分からないが。

 

 

雨のせいで自転車を使って帰れないのでバスで帰る。

きっと曜達はもう帰っただろう。正常に働かない頭でとぼとぼと歩く。

気がつくと、バス停の隣の公園へと足が向かっていた。1つ目の過ちだ。

 

 

 

その公園では1人の男が女に対してプレゼントを渡していた。よく分からないが、女は喜んでいる。今のこの沈んだ気持ちから来るのか、どんな奴らかをこの目で見たいと感じた僕は少し近づいて見る。2つ目の過ちだ。

 

男の方はよく知らない人物であったがかなりの美形で優しそうな人だった。

女の方は渡辺曜だった。

渡辺はすごく嬉しそうな表情をしていた。これを見て、僕は走り出していた。部活終わりであるとか、荷物が重いとか気にならなくなっていた。ただ、走った。走った。何かが崩れる。

 

空は激しく雨を落としていた。

その空は僕の記憶にも黒いものを落としていた。そして、春の日の穏やかな空間を洗い流し殺伐とした荒原を創り出していた。

 

 

 

 

7月の頭、、、

ゴールデンウィークという名のただの部活期間を終え、部活の県大会を終え、テストを終えた僕。今は教室でhrが始まるのを待っていた。最近は全てが抜け出てしまったような気持ちになっている。その気持ちとは裏腹に空は青く澄んでいる。

あの一件からというものイラつきに任せて鏡の世界に入り怪物を見つけて殴りまわす事をするようになった。それも1日に何度もである。その時は良いのだが自分の暴力的な面が出てしまい自分を嫌いになっていた。こんな人間だから渡辺にも嫌われたのだろう。そんなことを考えていた。

ただ、怪物を殴るのは悪い事ばかりを生む訳では無い。今までは最低限しか戦ってこなかったのが、以前よりも戦いが増えたので、明らかに力が上がっていることを感じる。が、失踪事件が近くの市で頻発している事を耳にする。所詮僕の努力で人は救われないんだと悟りより自分を嫌う。

 

「おい、秀介、お前呼ばれてるぞ。」

隣の席のやつが教えてくれる。

 

僕を呼ぶのはてっきり男子、しかも、理数科学科か部活の人間だと思っていたのだが両方外れてしまい驚く。

「どなたですか?」

しかも、初対面だ。正確には初対面ではないことを知っていたが嫌な記憶を掘り出したくはない。

「私は、、堕天使ヨハネ、、あなたも私と堕天しない?」

席に戻ろう。時間は有限である。

「あぁ、待って!あなた曜の事どう思ってるの?」

急に聞かれる。きっと、渡辺には彼氏がいるんだろう。そして、俺がまた変な事をしないようにしたいのだろう。

「いや、別に…」

こういっておけばいいだろう。正直渡辺のことをどう思ってるのか分からないので嘘ではない。

「ほんとに感じ悪いわね…なんでこんな奴が…」

ヨハネと名のる方は小声でボソボソ呟くので聞こえない。ただ、気にはならない。本でも読みたい。席に戻ろう。

「ああ!待って!なんでそんなにすぐに戻ろうとするのよ。あんた、曜の事放っておいていいの?どうせ好きなんでしょ?」

なんでこんな発言をするのか分からない。もう、めんどくさいから適当に流す。

「いや、別に…」

そう言って席に戻る。

この時の僕は僕が嘘がつけないことを忘れていたようだ。

 

 

その夜、初夏の暑さと部活によって疲れていた僕は部屋に入るなりベットに飛び込む。部屋が、また汚くなってきてるのを日に日に実感する。今日は鏡の世界に行こうか迷う。が、あの音が聞こえてきたので、行こうと決めた。

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