静かなBRA。そこのカウンター席で私、高森帆乃香は同期の豊田琴子さんと飲みを初めていた。いや、ここは完全に豊田さんのチョイスで、よく来るお店だそうだ。いやあ、おしゃれな人ってよく来るお店もおしゃれなんだなあ、って思う。
私はマッカランの12年のロックとタコライス、豊田さんはフィノとホットサンド。それと二人で食べるように選んだ色々と。…ううん、私が選んだ組み合わせのおしゃれのなさよ。いや、この場合女子力って言うべきなのだろうか。
よく食事へいく先輩方がそんなに強くないのにお酒大好きな二人なので、あの二人とあとその二人のおつきの人とメイとで夕飯なんか行く時はこういうおしゃれな所じゃなくレストランでビールとかだったりするから、女子力が上がるようなお酒をそこまで知らないっていうのもあるんだろうけれど。うーん、彼女ありとはいえ、女の子としては女子力を上げるようなお酒を勉強しておいたほうがいいのだろうか。
「高森さん、乾杯、しましょ?」
「あ、はい。そうですね。お疲れさまです」
「はい、お疲れさまです。」
あまり音を立てずにコップを合わせる。こういうおしゃれなところで音を立てるのはどうにも恥ずかしい、というか、きっとマナーとしてよろしくないのだろう。
とりあえずあの二人はともかくメイと二人のおつきの人はあまり連れてくるのはよろしくないだろう。…いや、外見的にも多分よろしくないからね。
「・・・というか、ごめんなさい。突然、親しくもない人から相談、それもプライベートの事なんて迷惑、でしたでしょう?」
「いえ、そんなことは。むしろ、頼りにしてくれて嬉しいです。豊田さん、同期の中で高嶺の花でしたし」
「そう、だったの。なんか皆遠巻きにみてるなー、ぐらいでしたが」
「まあ、見てるだけで幸せっていう感じでしたからね。同期の営業の藤嶋に「お前、同期の花の豊田さんの隣の席とか羨ましすぎるだろうが。変わってお前外回り言ってこいよ、その間に俺豊田さんと仲良くなるから」なんて話をされるぐらいですからね」
「まあ…。高森さんだって美しいのに」
「お世辞だとしても嬉しいです。…いやまあ、それはそれとして。相談、でしたよね。どんなことで?」
いや、なんとなくわかってはいる、というか、このお店に入ってから、豊田さんはバーテンダーの人をちらちら見ているため、つまりそういうことなのだろう。ふむ、私はたしかにいるといえばいるがうまく乗れる気がしない。
「…あの人、どう思う?」
「豊田さんが目で追いかけてる人ですか?」
「そう」
豊田さんがそういって頷く。…ふむ、そう言われれば確かにイケメンでいい感じの雰囲気である。いやまあ、内面まではわからないけれど。