お昼ごはんを食べ、広島駅から、JRに揺られ12駅。
中島駅降りると、ロータリーへと向かうと、久しぶりに見た車が私達を待っていた。
「そろそろ来ることじゃ思うとった」
「ねーちゃん。いつかえってきとったの?」
「ちいと前じゃわ」
運転席でそう言いながら笑った私の姉、高森静流。普段は九州の方でローカルアイドルをしているらしい。いやもう、アイドルって歳じゃないだろ、といいたけれども多分それを言うと私だったものが広がる。
昔から姉と喧嘩して勝てたことがないし、なんかこう頭も上がらない。
そしてスラスラと出る広島弁。関東に出てそれなりになったはずなのに地元に戻ればこんな感じである。まあ、染み付いちゃったからね、それは仕方がない。
「それで、そっちの子がうちのかわいい妹をたぶらかした女の子かな?」
「そう。可愛いじゃろ?」
「うちの妹は昔から怪奇に好かれやすいのがなあ。なんか祟られにゃあええけれど」
「は?」
「ゆわんかったけどうち見えたり分かったりするんよ。そっちの子は、んー…。なるほど、こっちではそう見んけれど、狐の子か」
なんかぴんっ、とメイの耳が警戒するように立ったように、みえる。まあ、初めて会う人でただでさえ緊張しているのに正体がばれてしまってはそうもなる。
しかし姉が見える人なのもびっくりだが私の好きな人が皆怪奇だったっていうのも驚きである。いや私よく無事だったな。というか気がついてたなら助けてくれ姉よ。
小さくため息をつく私。
「あー。そがいに警戒せんでもええよ。見たり分かったりはするけど払う力は一切ないけぇ。それに妹がベタぼれしとる相手を払うほど、うちゃ野暮じゃないよ」
「ナ、何を言い出すんじゃろうか!?」
「そう、ですか?…………お義姉さん」
「もうそこまで進んどるのかー。ますます払うような事はできんね。馬に蹴られてしまうわ」
くく、と笑う静流に、顔を真赤にする私。嫌なんだこの状況。なんで私は路上でそんな話をされないといけないのか。そもそもそんな話になるのは想定外なのでは。
いや、たしかに其の話をするために実家に帰ってきたのは事実なんだけどさあ。事実なんだけどさあ!はー、と深い溜め息をつく私。
なんかメイもまた安堵したように深い溜め息をついた。
「ふぅー…。私の名前は高森メイです。どうぞ、よろしくおねがいします」
「メイちゃんね。うちの名前は高森静流。こちらこそ、末永ううちの愚妹をよろしゅうしたいところじゃ」
「…うちのねーちゃん、変わってるでしょ?」
「いいお姉さんだおともうのじゃよ?」
「せめて見えたり分かったり、なおかつ私の好きな人が人外であることぐらい教えるとかさあ…」
「教えたところで、うちにも帆乃香にもどうしようものうない?」
「そりゃそうだけどー、そうなんじゃけどー…」
払う力はないからどうしようもないのは其の通りなんだけれども、なんかこう、いまさら教えられてももやもやするだけではあった。
そんな感情を持ちながら、私達は静流が運転してきた軽に乗り込んだのであった。