「よう来たね、入って入って」
「ただいま。いやぁ、やっぱこっち来るのにゃあだいぶ時間かかるね。
駅からは快適じゃったけれど」
「そうじゃろ、そうじゃろ。迎えに行かして正解じゃったわ。
ほら、そちらのお嬢さんも」
「あ、はい」
ということで、今儂は儂の主である帆乃香の実家に来ておる。いやなかなかに広いお家でびっくりしている。いや、まあ、たしかに儂をかえるのだからそれなりにお嬢様だとは思っておったが。
お姉さんもなかなかにお嬢様感はあったけれど、それ以上にアイドル感があったのは確かである。
そして、通された居間がまた、広い。うーんなんかソワソワするの。
「まあ、まあそがいな緊張せず、自分のおうちじゃ思うてくつろいでつかぁさいな。
お父さんもそろそろ帰ってくるけぇのぉ」
「あ、いえ、そんな。お構いなく」
「始めてきた家で緊張するなっていうなぁ割と無茶言いよる思うたほうがええ思うよ、お母さん。
ごめんね、メイ。大変でしょう?」
「いいや、いいのじゃ。主様の素がみれてそれはそれで新鮮で楽しいのじゃよ?」
「普段、この子、猫かぶってんのかー」
「そがいなコトないよ、ねえ、メイ?」
「いや普段は、標準語、じゃろ?」
「…あー」
「それはウチもか。いや、ウチは福岡の方だけど」
まあ、住む所によって色々と言葉が変わるっていうのはるだろうし、そういうのはあまり気にしない方ではあるのじゃ。ただまあ、方便のほうが可愛いっていう意見があるのはわかる気がするし、実際そうだろうな、とは儂はおもう。
というか、方言をしゃべる主様、可愛いのじゃ。うんうん、これは儂だけの特別にしよう。
「二人共広島弁しとってるの?なんてもったいない。そがいなのを使うてこそ彼氏、彼女を捕まえるテクニックじゃ」
「仕事をしとるのに方言は流石に色々とまずいの。お客様はあまり広島弁聞き慣れんのじゃし」
「イメージ的なものがあるんよ。博多弁の方を話したほうが受けがええし」
「そがいなものなのかん。きっともっとええ感じになる思うんじゃけど」
お茶を居間に持ってきながら、主様のお母様がそう言って現れた。
まあ、主様のお母様の言い分もわかるし、主様達姉妹の言い分もわかる。色々と大人の世界って大変なのじゃなあ、って思う。
そりゃ地元で就職したいって人がいるのはわかる。
「こっちならそがいなこたぁないんじゃろうけれどさ。大阪から東の人たちなんて口調すごい優しいけぇのぉ。博多の方へ言うた姉の気持ちはそがいなわからんけれど」
「まあ、そりゃあるかもしれん。たまーに関東の人たちもこっち来るけど、其のたびに「あれ?なんか怒らしてしまった?」っていっとるもん。そがいなコトないんじゃけどのぉ」
「そんなんなのかん」
お母様はそういって、首を傾げながら、座った。