w氏が突然帝国関連のscpを一括削除しましたので遺憾の意を表明したいところですがどうしようもないものはどうしようもない。
そういうわけで突発的に投稿。
この作品はcc by-sa3.0に従います。多分。微妙なライン。http://ja.scp-wiki.net/


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『情報を告げた道化はgidicoではありません』
『曰く、ただの自己満足だそうです』
『scp要素が皆無』


帝国への追悼、もしくはただの泣き言

 かの栄華を誇った『帝国』が崩壊したという情報を聞かされた時、私はごく当然の反応として己の入力機関を疑った。

 事を告げた道化を気取る簒奪者は、それこそが報酬だとでもいうように、上機嫌に、さも当然のように消えていった。私はその背中を引き止めることもできずに見送ることしかできなかった。私の怒りも、嘆きも、街の呼吸は全て飲み込んでいく。

 

 かつての盲目白痴の存在、いと高きお方、御在人、■■、つまりは帝国の象徴であった少女。

 かつての無力有能な道化、夜からの逃亡者、影の男、つまりは帝国の柱が一つの執政官。

 想起。循環。憧憬。切望。嗚咽。慟哭。

 なんにせよ、私たちは置いていかれたのだ。この街へと。この隣り合わせの世界、オルバ境界を越えた世界の一つに。この中枢回路市に。

 否、否。私は置いていかれたわけではない。結局私がどれほど望んだとしても、私は部外者に他ならない。どれほど関わりがあったとしても、それは揺るがない。ならばこそ、私はそれを忘れないようにしなければならない。かつての■■が口にしたように。私の基盤がそうあれと願われたように。

 

 佐々峰よりたちのぼる煙を横目に、私は考えを及ばせる。帝国に身を捧げることを夢見た身ながらに、己の思考を巡らせる行いに罪の意識を覚えながら。どうしてこのような末路に至ったのか。Lotemina。歪に広がる砂漠。たった一度の邂逅。HS社との確執。私に許されたただ一筋のきっかけをもっと活かすことはできなかったのか。骨工の少女との他愛ない議論。官僚の演説。自らの選択。思考は堂々巡りに陥る。

 

 窓の向こうの眩く輝く太陽に、記憶の中の青く輝く天蓋盤を重ね合わせる。私の髪と同じ色であり、はるかに澄んだ青色。わずかに羨んでしまう。あの青さは、私が知っている色と同じだったから。私と旅人の忌み嫌ったあの青い海と。今はもう枯れきった、ニクロフテスの流涙に。引き出された心臓と少年の末路に、私は嫉妬と憐憫を抱いた。

 思えば、私も旅人もこうなることが運命付けられていたのだろう。あの箱庭は全てが全て、彼女の為にあった。彼女の罪と、彼女の記憶と、彼女の糾弾で象られていた。そんな所以を抱いた世界で、どうあがいても海を受け入れられない私たちが弾かれるのは、至極当然の帰結だったのかもしれない。けれど、それには誰も言及しなかった。もしくは、それは些細なことだったのだろう。たかが一人二人の嗜好など帝国の聖業務に支障をきたすほどでもない。そしてあの旅人はpauleveな間とはいえ受け入れられていた。

 ならば、わたしこそが受け入れられなかったのだろうか。そしてそれこそが。

 「……Nure,馬鹿らしい」

 そうだ、もうそんな事を考えたところでどうしようもない。たとえこれがジョドムァの無形万象図に記されし確固たる未来への道だとしても、気まぐれな芸術家の作品の修正だったとしても。私には何も手の打ちようがない。

 

 だから私、かつての葵組下部組織「アジテーター」開発の改良型『話式』、今の「華式蒼意」はただ祈りを込めて呟く。

 「光芒」

 回路の焼け付く音さえもはや気にならない。私は彼女に、ただ一人の光芒に祈りを捧げる。

 どうか彼女らの陽射に陰りなき事を。

 どうかその光翼に果てなき事を。

 そして。

「事象は継続します。果てなき空のように」

 それこそ我らの望みだったのだから。




『帝国関連の情報とは別に、同作者の別作品より一部設定を拝借した模様です』
『中枢回路市(トランジスタ)』


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