連合、及び退却した宮川と董卓に待っていたのは天を焦がす勢いで燃え盛る漢王朝の首都・洛陽であった。
燃え盛る少し前、虎牢関が落ちたと報せを聞いた揚奉は直に仲達に伝令、作戦を開始した。
作戦は単純で、白波賊を結成してから少しずつ送り込んでいた仲間達に門を開かせ、町中に火を放ったのだ。白波賊と組んでいた商人達も門が開いたと同時に洛陽から離れて行き、残った民や兵達が必死で消火活動を行うも攻め込んできた白波賊に討ち取られて行き火の勢いは宮殿にまで及んだ。
宮殿にいた劉備達は、火の粉を避けて宮川達が入る場外に脱出して行った。しかし、取り残された者がいた。現皇帝である、劉協であった。
「こ、皇叔!どこにおりますか!」
皇叔とは劉備の事で、皇帝の血を引く劉備に劉協が呼ぶ時に使われた名であった。
燃え盛る宮殿の中、劉協は人影を探し彷徨った。そして、見覚えのある紅の髪の人・華歆を見て劉協は嬉々として近づいた。
「か、華歆!無事であった。」
「む、これはこれは陛下。御無事で。」
「う、うむ。そ、そう言えば董承を知らんか。さっきまで傍にいたのだが・・・」
董承とは劉協の教育係を任された人である。
「董承・・・あぁ、董承なら亡くなりましたよ。」
華歆はそういえばと言う感じで応えた。
劉協もこの火災で亡くなったのかと少し暗い気持ちになり下を向いた。
其の瞬間
「俺が殺した」
劉協の腹に剣がねじ込まれた。
「へ、な・・・なんで、どうし・・て?」
口から血を吐き、華歆にしがみついた。
だが、華歆は鬱陶しそうに劉協を蹴り飛ばした。
「なんでだって?そりゃー俺が賊で、張燕様だからさ。」
張燕・・・その名を聞いた時、既に賊の手が宮殿にまで及んでいた事に気づいた。
「な、なんで裏切れるのだ。ここで楽しそうに働いて、飲んで、笑って・・・皆笑って明日を迎えられていた。なんでそれを平気で壊せる!なんで平気で裏切れる!楽しくなかったのか?この日々が!!」
命乞いなのか、非難なのか、それでも劉協は言わねば成らなかった。劉協は幼くして父母を無くしており、華歆に父を求めていた。年もさながら、人がいない時など叱るときは叱り褒める時は褒める等、劉協は擬似とはいえ親子とはこういうものかと失った時間を取り戻す事が出来たのだ。
「くくく、何を甘い事を・・・と、云う所だが陳腐な言い方だが楽しかったぞ。」
張燕は子が居らず、何れはと思っていた。しかし、天下に轟く悪名がそれを成す事を拒んだ。我が悪名を子に継がせるわけにはいかない。我が業は、我だけの物。故に懐いてくる劉協に枯れた父性が目覚めたのか、他人が見たら正に父子の関係に見えるほどであった。
「だがな。」
だからこそ。
この乱世に生き残れないほど弱くなった権力者の末路など哀れな者。
父と思うからこそ。
「楽しかったぜ。今までの人生の中でも・・・だが、裏切らないという理由には成らないんだよ。」
劉協の首を刎ねた。
劉協を私利私欲の輩の人形にさせない為。
張燕は劉協の首を丁寧に包み、懐に手を忍ばせ黄金色に輝く判子・玉璽を手中に収めると宮殿から脱出。揚奉の元へと帰参して行った。
遅れて申し訳ございません。
ようやく主人公の名前を出せましたね。因みに後数話は出てきません、恐らく。
次回は白波三人衆と張遼、??対??でお送りしたいな。
ではまた次回。