復讐するは我にあり   作:真庭烏賊

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来る戦いの序章。此れより、真に乱世における憎悪の戦いが幕を開ける。此れに着いていけるものは天すらも分からない。


憎悪の勅命

 

>司馬懿

恐らく来るであろう次の戦いの為に作り上げた手紙を手中に収め私は楊渠帥の部屋に向かった。

 

「お邪魔いたします、楊渠帥。」

 

狂賊、楊奉

 

 

そう世間で謳われた傑物は今、衰弱しきっていた。

 

黒山の陥落、天の御遣いの再来。そして漢王朝が復興の兆しにあるという忌々しき報告。

 

この白波賊は漢王朝憎しで集った集団。故に漢王朝が良くなれば瓦解してしまう脆さがある。

 

そのような集団にドス黒い闇を持つこのお方が今、虚空を眺めるだけになってしまっている。

 

ああ、もしこのお方が私の操り人形だったなら価値無しで殺せる・・・いや、今からでも殺せそうなほど無防備だ。

 

 

だが、決してやらない。

 

 

・・・このお方を王にする・・・

 

 

嘘偽りなく、本心なのだから。

 

故に、私は懐に収めた必勝の物をかのお方に見せるべく部屋に入った。

 

 

 

・・・?

 

 

オカシイ・・・楊渠帥が剣を振ってる。

 

まるで何かを払うかのように・・・されどあの表情は・・・

 

 

まるで欲しい物が手に入った童のようだ。

 

「あ、あの渠帥・・・いかがなさいましたか。」

ふと聞いてみると渠帥は素振りをやめ私にニカッと笑いかけてくれました。

 

「あぁ、来ると思っていたぞ。我が軍師よ。」

 

・・・あなたは女性を喜ばせるのが本当にお上手ですね。そんな笑顔で云われたら期待してしまいます。

 

 

「それで我が軍師・・・策を申せ。」

 

っは!いけないいけない・・・少し悶えてしまった。取敢えず我が策を披露しよう。

 

 

***************************************

「きいーー! 一体全体、どういうことですの?!

 

冀州。黄河の北である河北という広大で肥沃な地の中、鄴という街においてその声は響き渡った。

 

そして鄴を支配するために建てられた城での声に、二人の少女が反応した。

 

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい、麗羽さま~」

 

「そーそー、斗詩の言うとおり。今ここで何を言っても意味無いっすよ。」

 

「お黙りなさい、猪々子さんッ! このわたくしを差し置いて・・・宦官から洛陽を救ったこのわたくしを差し置いて、何で董卓さんが相国として出迎えられ天の御遣い~?を名乗るお・ば・か・さんが帝の御傍にいるのですの?!」

 

「何でって……だって、なあ斗詩」

 

「うぅ……麗羽さま、洛陽の人たち無視で宦官ばっかり攻撃してたし」

 

「ぶっちゃけ、無関係な洛陽の民にも結構な迷惑かけてたしな。しかもその後、放っぱらかしだったし……そりゃ、洛陽にはいられないっしょ。」

 

「何か言いまして、斗詩さん、猪々子さん!?」

 

鋭い目つきで視線を飛ばす麗羽と呼ばれる少女――袁紹は、ふるふると横に首をふる顔良と文醜、斗詩・猪々子の二人の少女から視線を外して、くるくると大いに巻かれた髪へと顔を埋めるようにして思考へとふける。事実、大将軍何進の命に従って洛陽へと入り、混乱に乗じて宦官を討ったことは間違いでは無かったはずである

 

 

なのに、である。

 

 

あれだけ洛陽の民を苦しめていた宦官を廃したにもかかわらず、洛陽の民からはおろか、漢王朝からの使いが来ないのは一体どういうことなのか。袁紹の予想であれば、洛陽を宦官から解放し、さらにははなただ不本意ではあるが何進の後継として大将軍に任命される、と当然のように思っていたのだ。それが、いつまで経っても洛陽からの使いが来ることはなかった。あまつさえ、自らがいたであろう場所に董卓なる少女・宮川という天の御遣いを名乗るお馬鹿さんがいるのは一体如何なることなのか。

 

 

「むきーー! 一体どうしろと言うんですの!?」

 

 

今こうしている間にも、洛陽では董卓達ががその権力を振るっていることだろう。贅沢の限りを尽くし、酒池肉林が如くの饗宴を繰り返し、漢王朝を意のままに操る。酒池肉林に興味は無いが、それでもその権力を董卓達が持つよりは自分が持つことのほうがいいに決まっているのだ。

 

 

だが、洛陽に攻めて無理矢理という方法は袁家に逆賊の汚名を着せる事になってしまう。それでは意味がない。如何すれば良いか頭が痛くなるまで考えた末、我が袁家の誇る知恵袋に相談することに決めたのだった。

 

 

 

 

 

「・・・連合・・・ですって?」

 

そう言って麗羽は翁に詰め寄った。

 

翁、田豊は父の時より麗羽に勉学や礼儀作法等色々と教え、親に次いで信頼を寄せる臣下であった。其の翁にこの胸に収まる事がない怒りをぶつけ如何すれば良いかと詰め寄った所あっさりと解決策を披露してくれたのであった。

 

「ふぉふぉふぉ。麗羽様は洛陽に攻め入り董卓を廃してその跡を引き継ぎ時代の実力者となりたい。じゃが、それを成そうとすると朝敵という汚名を被ることになり、ひいては袁家の存亡に関わることになる。・・・じゃがのぅ、それは袁家のみので事を起こした時の話。董卓が洛陽で暴虐を強い、洛陽の民が暴政に喘いでいるゆえに洛陽解放のために軍を挙げる。その名目をもって連合を結成すれば、漢王朝が何と言えど、衆目からすれば我々は朝敵ではなくなるじゃろうてのう。」

 

「でもさー、董卓を倒しても結局は連合の勝利ってことになって、姫の手柄にはならないんじゃね? そしたら、あまり意味無い気がするんだけど・・・」

 

「故に、麗羽様が連合の発起人となってその主権を握るのです。さすれば、連合が董卓に勝利したとて、主権をもって洛陽へと入ればそれに異を唱える者もおりますまい。もしいたとしても、洛陽で得た兵力によってその意見ごと押しつぶしてしまえば・・・」

 

「で、でも、もし連合を発起したとして、それだけ都合よく諸侯が集まるとは――」

 

「集まるじゃろう、必ず・・・野望を秘めているのは我々だけではないという事じゃ。」

 

慌てたように発言する斗詩の言葉に、翁はふぉふぉと笑って自信溢れる言葉を言いながら斗詩の尻を撫でていた。無論、斗詩は笑顔無言で翁の顔面に裏拳を決め、猪々子は仰け反った翁にジャーマンスプレックスを見事に決め、最後はコンビで翁に逆海老固めを決めたのだった。

 

 

 

こんな乱闘場の中、麗羽は普段滅多に使わない脳味噌をフル回転させていた。

 

 

 

確かに翁の言うことは一理ある。三公四世を輩出した名門である袁家の威光であれば、いかに漢王朝に弓引く形となりうる戦いであっても、それに従うものは後を絶たないだろう。それこそ、大陸中の諸侯が従ってもおかしくはないはずである。

 

 

ならば。

 

 

そう考えた麗羽の行動は迅速であった。

 

乱闘していた斗詩と猪々子に、出陣に向けての軍の準備を命じ、ボロボロになった翁に自分の親友に不埒な事をした罪で減俸にすると同時に反董卓連合の檄文を書くよう命じ、賊討伐に繰り出していた張郃と高覧に帰城命令を出た。

 

張郃と高覧は黄巾の乱の時、冀州にて兵を募った際仕官してきた武将である。高覧はまだまだ、荒削りな所はあるが顔立ちが立派である為将に抜擢された益荒男である。張郃もまた、氷を思わせるほどの美女であり其の武は斗詩・猪々子のコンビを軽く捻る事が出来るほどであった。

 

 

執務室へ入り、いざと言う時翁はふと、懐に仕舞ってある手紙に再び目を通した。

その内容は、先ほど麗羽をあっと言わせた反董卓連合結成についてであった。驚く事に知らないはずの麗羽を知っているかのように誘導し、いかに結成させるか事細かく書いてあったのだった。

 

「ふぉふぉふぉ・・・恐ろしいのう、司馬懿仲達。いや、このような化け物を調服した楊奉とかいう男かの・・・すこし、調べる必要があるかもしれんのう・・・袁家の栄光の為に、麗羽様の未来の為に。」

 

 

そう言って手紙を蝋燭に灯し灰になるのを見届け、筆を動かし始めた。

 

 

その一週間後

 

『都で暴政を行う暴君董卓、その董卓と共に都にて酒池肉林の豪遊を行う天の御遣い宮川。彼の者達、討つべし。』

此れが全諸侯に送られた。

 

 

河北の雄、檄文を発し連合軍の発起人ともなった袁紹。

異民族との前線である幽州において、白馬義従と呼ばれる優れた騎馬隊をもつ公孫賛。

乱世の英雄にして兵質ならば袁姉妹を超える曹操。

先代・姉無き後、その跡を継ぎ袁術の代わり出陣した孫権。

その他大勢の群雄諸侯。

合わせて20万もの兵団が洛陽へと迫って行ったのだった。

 




訂正
司馬懿の髪は黒から金髪にします。今後御間違えの無いように。

そして台風のせいで旅行がパー・・・ちっくしょう!!

ではまた次回。
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