神速のGK 作:インパラス
受験日に死んだら、年遡って別人として生まれ変わっていた。
色々あった。うん。
そんなこんなで中学最後の年。
愛媛の田舎町だが、海が綺麗ないい町だ。
家族構成は、母兄俺アフロの四人。
しかし眠い。日が出るまでヤッてたからな。この身体になって、性欲ありえなくなってる。限界ねーんじゃねえかってくらいだ。
…にしても、いつ見ても景色いい。ここまで綺麗に海が見える場所もそうそうない。
さすがは、金持ちの別荘だ。最初見たときは、全部真っ白とか正気かよと思ったんだっけか。
「…含太くん、」
「もう起きたの?社長サン」
「…もう、その呼び方やめて」
「へいへい」
いやー、もう三十超えてんのに、相変わらず若けーな。化粧なしでこれだ。これで子持ちなんだから、信じらんね。
「ねえ、もうお昼近いんだけど…君、今日サッカーの試合あるって言ってなかった?」
「…あ"」
「お、セーフ。ここでいいから。ありがとう」
「そ。じゃあ頑張ってね」
降りた瞬間、名前も知らない高価そうな外車が去っていった。普通、試合とか見ていくんじゃないかな、こんな時。ドライな人だ。でも、この他人的な距離感がよかったり。
金もかなり貰えるし。
「6対5…勝てるかなー」
「あ!!こら含太あんた、また夜遊びして!ごるァアア!」
「よっと、ほっと」
「避けんな!この不良息子!」
「下いってきまーす」
観客席から降りたところで、アフロが追加点を決めた。これで7対5だ。
しかし不細工な叫び。外の声も鬱陶しい。
「あ、ゴンター!!決めたぞ俺!!逆転だぞーーー!!お前遅刻してんじゃねー!!!早く来い!!」
アフロの声だけがフィールドに響いた。アホみたいに静かになったからだ。
場違いアフロがこっちに寄って来ようとして、足を止めた。なんか、敵チームのキーパーから声をかけられてる。
おお、何か揉め始めた。行こ行こ。
「うぉらあああ!!」
アフロが頭突きをかましやがった。当然レッドだ。俺の出番かな。
とりあえず、フィールドから出ていくアフロに近づく。アホだコイツ。笑いが止まらん。
「よおおおお!アシト君!ナイスヘディング!何であんなことしちゃったのおお!?」
我ながら、中々の煽りだ。
しかし、アフロは無視しやがった。
「もしもし、聴こえてます?」
「侮辱した」
「ハイ?」
「あいつは…!オカンを侮辱したんや!!」
へー。
「ごるぅアアアア!!」
「ひぃっ…ギャッ」
「死ねオラああああああああ!!」
「ゴンタ!待て、そいつもう気ぃ失ってんぞ!やめろお!!」
「うるせえエエエエエエエエエ!!!」
「ちょ、オカンー!オカンー!」
試合は、一時中断した。俺はこれっぽちも悪かないが。変な空気になっていた。
しかし結局試合は負けた。アシトは退場。なぜかおれも退場。相手のカスキーパーも退場。奴はレッドではなかったが、不適切な行為を行ったとして、審議の末に退場。気絶してたから、どうせ退場だけどね。
で、10人ずつで残り時間試合して負けた。同点に追いつかれて、PK負け。それで、中学のサッカーは終わりだ。あっけないもんだ。
俺とアフロは、一度オカンと顔を合わせて、何故か一発ずつ殴られた。オカンは、何も言わずに帰っていった。アフロもいきなり走り出した。
迷った末、どうせ暇だしとアフロについていくことにした。オカンの方は無理だ。
走り出してから、一時間くらい経ったか。同じところをグルグルぐるぐる。帰りたくなってきた。
「…なあ、何で遅刻してきたんだよ!ゴンタが早く来てたら…!」
「わるい、わるい」
いきなり何を言い出すかと思えば…。俺なしでも勝ててただろ。しかし、今の俺は心が広い気分だから、微塵にもそんな気は無いが、適当に謝ってみた。コイツは単純だから、これでも問題なし。
「……いや、ごめん。俺のせいや」
そうそう。
「そう落ち込むなよアフロ君。今日は奮発して焼肉パーティーさ」
「えっっ!!まじで!?」
そうそう。早く帰ろうか。さっきから変なオッサンがジロジロ見てきてんだよ。
「それもなんと食べ放題の安肉じゃありません。でも、好きなだけ食ってよし。俺様の奢りだぜ」
「や、や、やったーー!久し振りの焼肉やー!………いや、今日はいいや。もう少し走る」
えー…。
テンション下がってたら、また変なオッサンの前に来た。バイクはいいんだよ、バイクはな。
「何周する気だ、さっきから」
「コイツが死ぬまで」
「えっ」
「ほら、走んだろ。ほらほらほらほらアフロちゃん」
「おっ、おう!」
「……」
よし、面倒回避。田舎者は、余所者には厳しいんだよ、オッサン。
「待てや、おら」
「あ"あ"?」
「えっ、うわ何だお前いきなり。……本当に中学生か?ドレッドにサングラスってよ…」
人間、第一印象が肝心だ。舐められたらそこで終わりだ。そんなのは許さん絶対。
「へえ、アシトはファーストタッチいいな。さっきの試合でも思ったけど」
「おう!似たような練習やったことあるしな!な、ゴンタ」
「あ"〜、テレビの真似で、したっけか?」
「それな!おっちゃん、ゴンタもできるんだぜ!」
「ほー、やってみろよ」
「やるかよ、めんどくせ」
ここは砂浜だ。靴ん中に砂入るだろ。
しつこい奴らを無視していると、何やらオッサンが小銭をばら撒き始めた。
あ、アフロのオカルト能力に気づいたな、このオッサン。
アフロは、オッサンの財布をぶん取り、財布をひっくり返した。んで並べて満足したのか、アフロは何か語り始める。
そして、オッサンが狂気の笑みを浮かべた。
「き、気色悪ぃ…」
いや全くその通り。
オッサンは、少し落ち着きたいと言って、上への階段を登っていった。
「帰んぞ、アフロ」
「えー…ちょっと、付き合ってくれよ!今すげー蹴りたい気分になった」
まあ、分からんでもない。俺も、試合に出れなかったから、少し消化不良ぎみなとこはある。
「グラウンドならいーよ。ここは無理」
砂入るし。まばらでも、芝生じゃないと。
階段を上がると、まだオッサンはいた。ベンチに寝転んでニヤついていやがる。不審者だ。
俺とアフロは、極力見ないようにして通り過ぎた。
「待て。俺は、東京シティ・エスペリオンFC、ユース監督、福田達也だ」
オッサンが立ち上がっていた。近づいてくる。オイ、俺を盾にすんなクソアフロ。
「俺には野望がある…」
何か語り始めちゃったんだが。アフロは、真剣に聞き入っているようだ。この単純脳が。
「ーー叩きつぶす。その野望のすべてを担うもの、ユースだ」
そして、オッサンはセレクションの受験を進めてきた。東京だってよ、そんな金ねえ。行ってはみたいが。
「んなとこ行けるか」
「…ん?お前じゃない、お前じゃない。アシトだよ。俺が誘ってるのはアシト」
「お、おれ…?」
俺ではなかった。まあ、俺今日何もしてねえしな。
へっ。東京なんてこっちから願い下げだ。
「そういえば、お前のポジションは?」
「ゴンタはな、GKだ!俺の双子の弟、青井含太。おっちゃん、こいつもいいだろ。セレクション受けれねーかな?ゴンタはな、すげーんだー」
勝手に個人情報漏らさないでくれますかね。