神速のGK 作:インパラス
後書きに、変なこと書いたから消そうかなと思って開いたところ…倍近くの方が評価して下さっていました。
卑屈な愚痴に、温情をありがとうございました。
最後に…オリ主タグ付けて小説始めましたが、失敗な気がして。
しかし、阿含そのまま書けば、話が進まないと思いました。原作あとの方の、ほんのり薄まった気がする阿含をイメージすればよかったのか…?
それで、書きたいように書いて出来上がったのが、基本悪思考で、家族にはそれなりに情があるという(雲水に対してはあった筈だ)、こうだったらいいなという妄想です。
無論、神龍寺戦前からの阿含は、今でも最高な悪役です。
つまり、意味のない設定です。申し訳ありません。
FW アシト
MF 黒田 平(C) 大友
DF 朝利
以下略
第一節、成京高校戦です。
「サッカーは、一人では何もできない。思ってる以上にな」
「は?」
グラウンドに入る前に、オッサンから呼び止められる。そして突然、オッサンは脈絡のないことを言い始めた。
「これさ、さっきアシトに言ったんだ。まだサッカーの楽しさを知らない、アシトに。お前はどうなんだ?」
「楽しいとか、俺には関係ねえよ」
「そう言うと思ったぜ。そんな反抗期の弟君に、一つの課題を持って、この試合に臨んでもらう」
「断る」
俺がいるだけで負けることはない。その事実以上に、必要なものはねえから。
「パンチングに専念しろ。至近距離以外では、キャッチングはなしだ。これを破った瞬間に、お前は交代」
「あ"ーー?」
「今日の相手は都リーグでも下位のチームだ。まさか無理だとは言わないだろう。第一は味方に繋げろ、第二に敵を避けろ、第三に…これはまあいいか。お前のことだ、意図はわかっているよな?その上で納得して、今日はプレーをしろ…って、どこに行く」
「パスだ。今日の試合に出ねえから」
「じゃあ、今後も使わない。と、言ったら?」
「このユース、辞めるかな」
「待った。最後まで聞いてくれよ」
前半三十分。
アホらしい試合。
前半開始から、ミスの連続で何度自陣に攻められていることか。技術ねえから、シュート撃たれても、余裕で止めれる。つまんねー。
カスなのは、アフロの左ラインだけかと思ったが、他の繋ぎも全然、意思疎通がクソだ。パスの意図が次の、他のプレーヤーに伝わらず、プレーが一々止まっている。
シュートを撃たれた回数は、既に四回だ。他のDF陣の修正も甘い。何回同じようなことされてんだよ。
「パーンチ」
これで、五回目。パンチングで飛ばす先は一つ、ミスの多いアフロのラインの後尾、金髪くんだ。さっきから、アイツにしか飛ばしてない。当然、意図的にやっている。
その方が、よくシュートに繋がるからだ。敵チームのな。そう考えれば、パンチングも使えるわ。
「キーパー!次はこっちにくれ!」
右の奴が何か言ってるが、無視だ。聞く必要はない。お前には、やらねーよ。
うわ、またやったぜあのライン。次は三人でボールをお見合いって…すげー笑える。あんなの初めて見たんだけど。
で、抜けてきた相手FWと一対一だ。コイツは三回目だ。
逆へのパスは、ない。
ステップずらしてのフェイント、分かりやすく、目線は右。身体の向きもやや右に開いている。だが、腰があからさまに左に残っている。
釣られてやろう。
重心を残したまま、右に身体を傾ける。相手の顔が喜色ばむ。
アウトサイドで撃ってくるのは、足首の動きで、わかっていたことだ。
腰を回転させ、目標を定めて拳を出す。
ボールの曲がり幅は狭い。余裕。
「アオパ〜ンチ」
六回目のセーブ。
また金髪くんに飛ばすが、今度は拾いもしなかった。ボールがサイドを割る。お見合いのショックからって、とこか。もう駄目だろ、代えろよ。
「クソがッ…!!」
「ん?ほら、早く位置取らないと。おたくらの攻撃続いてますよ。ほらチャンス、チャンス。来いよ」
「…!!」
「お前ら…なんてザマだ!!」
怒鳴りと共に、そいつはロッカーに手を叩きつけた。うるせえ。物に当たんなよカス。お前も人のこと言えねえから。ていうか、誰だよ。
高校がどうだとか、エスペリオンの看板がどうだとか、騒ぎ立てている。
「"僕達"はちゃんとやってます」
反論したのは、金髪くんだ。中々言うな。自分でもミスしといて、大した自信だよお前。
「…だからよォ〜、その"僕達"ってのは、どういう括りなんだよ、朝利ィ?」
チビがキレた。お前、アフロ派か。
チビは、みんなが悪いんだよ!と正論を言い、金髪くんはそういうことじゃないよ!と反論する。じゃあ、どういうことなんだよ。アフロがウザいんだろ、お前。はっきり言え。
「やめろ!!」
言い合いを止めたのは二年だ。確か、今日のゲームキャプテン。
面白かったのにさ。
「がっかりだぜ…お前らには。練習中の悪い空気を試合に持ち込んで、連携の一つもない。あげく、ミス連発だ。…サッカー以前の問題だ、ガキども。プロ目指してるんじゃねえの?今のお前らには、プロフェッショナルのカケラもねえよ」
全員が黙り込んだ。しかし、俺には全く関係ない。外行こう、野郎ばかりで吐き気がしてきた。
「そこのニヤニヤしている…青井弟。お前もだ。何で朝利にしか、ボールを出さない?それに、後ろからの声があれば、もっと点に絡む動きが出来た場面が何度かあったぞ」
「あ"ーー?何で俺が…」
「協力してくれ。俺は、勝ちたいんだ。このレベルの相手に引き分けなんて、許せねえ」
おい、近づいてくんなよ。暑苦しい。
言うことには、まあ同感だ。だが、それとこれとは話が別な。
「いいだろう」
「…!!」
俺じゃねえ。ホワイトボードの前で、黙っていた牙突のオッサンが言った。
「キーパーは、青井弟から二階堂に交代だ」
「望コーチ!?なぜ青井を」
「そして、DFの長野がアウト。青井弟は、そのまま中村と中盤に入れ」
「でも、それじゃDFが…」
「そうだ。フォーメーションを変える。スリーバックになる…が、
「俺は、DFもできますけど…いや、いけます」
「おい」
誰も、いいとか一言も言ってねえだろ。つーか、公式戦では、中盤やらないって言ってただろうが。
「青井、少し来い」
牙突のオッサンが、ドアの外に出て行った。
ついていくのは、癪だ。
「ゴンタ、コーチ行ったぞ?」
「そうだな、早く行けよアフロ。呼ばれてんだろ」
「お前のことだ!」
周りのカスどもが頷いている。
殺すぞテメえら。
後半が始まる。
敵の奴らは、驚愕って顔だ。
「なあなあ、青井。それ、そのユニフォームって…」
チビが、妙に馴れ馴れしい。
俺が今着ているのは、コイツと同じ色だ。さっき、牙突のオッサンから渡されたヤツだ。
つい、キレそうになったね。コレがあるってことは、ハナからそのつもりだったってことだ。
条件が無ければ、帰っていただろう。
「いーなー、二つあるんだろ」
「これなら、やるよ」
「いや、それは駄目だろー。欲しいけど。選べるなら、GKの方かな。じゃ、今日もよろしくな!」
アシト↓
楽しい、ワクワクしている。身体が、一気に軽くなったみたいだ。
前半は何だったのだろう。これから、やっとサッカーが出来る気がする。
「そうだ、ここからなんや」
ゴンタなら、俺は点が取れる。ゴンタは、俺を理解してくれる。逆にいる大友だって、俺の意図をわかってくれる。
DF五人がなんだ。こっちは、Aチームにも通用した三人なんだ。
これから、点が取れる。
「よし!」
パスカットを成功させたゴンタが、前線に上がる。平さんが、代わりに後ろに下がるのが見えた。
逆にいる大友も、中央よりの、いい位置に上がってきている。
これだ。
あの時と、俺と大友の位置は逆だけど、同じ形だ。いける。この三人を維持して、攻撃に……あれ?
……三人?
何だ、これ。
だって……俺と、黒田と朝利だって、三人やんか……。
敵陣に入って二人を抜いたゴンタに、相手のディフェンスが、集中する。
ゴンタは、接触プレーが苦手だ。
苦手というか、小学生の頃、一度ブチ切れて相手の腕の骨を折った後から、GKしかしてこなかった。
だから、ゴンタはここでパスを出す。
DFの五枚も、ゴンタに意識を取られている。
今だ!
思ったところに、パスが来る。スペースに置かれるように出された、これ以上に上手いのはない、受けやすいパス。
シュートが、撃てる。
やっと、やっとだ。
この時を、ずっと待っていた。敵は前に一枚しかいない。
ドリブルで抜いて、撃てる。
パスを受ける前に、大友の姿が見えていた。走り込んできている。今ならば、オフサイドでもない。DFの裏をついた、フリーになる位置。ゴンタだって、後ろについてきている。一度、戻すことも出来る距離感。
パスを、出すのか。せっかく点が取れるのに。
「アシトぉ!」
いや、もう出していた。
シュートを撃ちたいのに、大友が見えた時から、俺はパスを出す体勢に移っていたんだ。
わからないけど、身体が動いていた。
フリーになった大友が、シュートを撃つ。
まっすぐに、ネットが持ち上げられた。
「う…おおおおあああ!」
俺の声だった。
全身が燃えるように熱くなって、勝手に口が叫んでいた。
「よっ…しゃー!!アシト、ナイスアシストーー!!」
大友が抱きついてくる。
目の端で、黒田と朝利の姿が見えた。みんなが喜ぶ中で、あの二人だけは笑っていなかった。
「大友、ちょっと…」
「ん…あ?アシト、お前どこに…」
今の、大友の動きが、朝利の動きと重なる。朝利だって、前の空いているスペースに…よくオーバーラップをしていた。でも、いつのまにか、いつも俺の後ろにいた。
黒田だって、俺と朝利の間を、取り持つような位置に、いつもいたんだ。
ゴンタと大友と点が取れて、黒田と朝利とは点が取れない…?
それは、違う。
違うんだ。
俺は、あいつらに俺のことを見てほしかった。プレーを理解して欲しかった。
でも、そんな俺が、あいつらのことを見て…いなかった……?
2ー0。
アフロが前に繋がったボールに対して、カバーミスをした後。それから左ラインが変化した。
言っても、人並みに動けるようになったというだけだか。今までがカス以下だっただけだから。
周りをガン無視して、左ラインの三人だけでパス回しを始めた時はアホかと思ったが、その
一人が囮として、DFを右へと引きつけ、アフロの前が空く。
だが、アフロはミドルを撃たずに、左裏に抜けた金髪くんへの
フィールドが高まる中、条件通りにボードが上がる。
これで、今後の中盤は無し。
「えー!?青井交代って……またキーパーかよ!DFに、冨樫が入るのか」
我突のオッサンから出された条件は、アフロにトライアングルを理解させることだった。俺とチビとではなく、あの左ラインで。
容易だが、面倒だった。あの七三の動きを意識するのは、マジで反吐が出たわ。
めでたくGK復帰というわけだ。もう自陣に、そう攻めてはこねえだろうけど。
そこからは、語るまでもなく一方的だ。
暇だ。だか、楽でいい。欠伸もかませる。
何かあったと言えば、調子に乗ったアフロが、コーチングをやり始めたくらいか。金髪くんも、素直になっちゃってよ。
お、またチビが決めた。アフロ囮で、金髪くんからの中央へのパスをフリーで受け取り、ワントラップを入れてシュート。アフロは、無様に倒されているが、今の一連のプレーはアフロの指示でやったことだ。
自分を囮に、金髪くんの視線を誘導し、チビへと繋げてみせた。おそらく、ジェスチャーも交えての誘導。
これは、指導者陣からしても、予想外の成長だろう。
あえて言いたくなる。
アシト↓
「スローイン、アシト!」
ボールがラインを割って、スローインから。
時間的にも、もう数プレーくらい。あと一点、あと一点獲れる。
…俺が、獲りたい。
あれから、朝利、黒田、大友と決めたんだ。俺も…。
頭が、ボーっとする。
変なモンが見え始めてから、頭が追いついていない感覚。
「くそっ……あ、すんません、ボール…」
「……」
「……」
花がいた。ラインの向こう側で、ボールを、花が持っていた。
「…キミ…ちょっと、落ち着け………っごめん」
ボールを受け取る。苦虫を噛み潰したような、顔だ。ムスッとしたまま、でも謝ろうとしている、そんな顔だ。
半月前、喧嘩して以来だ。この声を聞いたのは。
「はははっ…点、獲ってきてやるよ」
だから、俺もごめん。
……ああ、今日は、いい日やったなあ。
最高や。
トライアングル、アイコンタクト…俺は今日、サッカーを学んだ。これからも、もっと学ぶんだ。
ああ、今日は、本当に楽しかった。
試合終了 東京都リーグ第一節
エスペリオンB 6ー0 成京高校
大友優作 後半6分
朝利淳 後半20分
黒田勘平 後半27分
大友優作 後半34分
青井葦人 後半45分
青井含太 後半45分+2