神速のGK 作:インパラス
タイトル通りです。
「…!!!うおおおお!!こ、こ、ここれはああああああッッ!!」
アフロが、長々と感想を垂れ流し始める。昔から、ヤケに饒舌なのが、クソうぜえ。
「だまって食えよ!!!」
チビが怒鳴り声を上げた。アフロはマジで黙って食え。
「それは違うぞ!!アシト、キミは食べ方がなってない!」
続いて花ちゃん。
そのまま、肉の焼き方をアフロに説明し出した。勘弁してやれよ。家が病院の君と違って、肉なんか食ってこなかったんだ。魚は死ぬほど食ってきたが。
俺は、偶に肉も食ってたが。当然、奢りで。
「…そうして、表面をカリっとさせることによって、肉の食感にアクセントを……カリっもぐもぐ……はふぁ、あああ、あああぁ〜〜っっ!!」
エロい声が近くのテーブルまで伝わった。周りで食っている奴らも、花ちゃんに目を向けている。
昨日の勝利の祝勝会ということで、海堂電機(お嬢様)からの奢りだ。Bチームの全員が、焼肉店に揃っている。
俺は昨日、社長サンにも寿司に連れて行ってもらったがな。もはや、常連になりつつある。
つうか、お嬢様に誘われなかったら、参加しなかった。
「杏里ちゃん、これいい感じだよ」
「…ありがとうございます。弟選手」
「花、お前もっと試合観に来い!次も勝っちゃるけんなーー?」
「にひー」
横で、アフロと花ちゃんが顔を合わせて笑い合っていた。見るからにガキっぽい。
「で、今日はなんでいるんだ?花」
「あ、それは…」
「あたしが呼んだのです。女性一人が心細かったので」
俺がいるだろお嬢様。花ちゃん呼んだのは、ナイスだがな。
「そう言えば、杏里と弟くんって仲いいよな?」
「俺と花ちゃんも仲いいじゃん。昼一緒に食べてるし」
「だね。まあ同じ教室だし。で、杏里は?」
「ごくん…海堂はなー、去年からの付き合いなんや。俺らの地元に別荘があって…」
「…おい」
アフロが余計なことを漏らし始めた。社長サンの話までいったら、面倒なんだよ。クソアフロが。
「去年から偶に海堂が来てなー、俺とゴンタと三人でサッカーしたりもしたぞ」
肉に酔っているアフロは止まらなかった。お嬢様も、我観せず…いや満更でもない様子で、箸をつついている。おい。
「……」
「……」
誰も喋らない。妙な空気が、このテーブルだけに発生した。まあ、話が続かないなら別にいいがよ。お、この肉は中々…。
「あーー!?ゴンタ、それ俺の肉やぞ!」
「あー?」
「ああっ、それも俺が育てたやつ…」
「アシト、私のあげるよ」
「…兄選手、私のもどうぞ」
お嬢様、それさっき俺がやったやつだろ。
「…いじわるは、ダメですよ?」
「ハイハイ」
そっからは、クソ寒い劇を見せつけられた。金髪がアフロに謝って、オチが見え始めた時に、何を考えたのか、モミアゲがアホなことを言い始めた。レッツプレイフットボール!って、ギャグかと思ったぜ。このモミアゲは、寒すぎる青春ちゃんらしい。そのノリで、金髪くんとチビに握手までさせやがったし。
「…じい」
「おそばに」
「今、J1エスペリオン戦がやってるんです。つけてさしあげて」
お嬢様がジジイに命じたのは、テレビの電源をつけることだった。お嬢様してますね、お嬢様。
『交代です!高校2年生…まだ16歳です!エスペリオンユースの至宝、栗林晴久。今、J1の舞台に立ちます!!』
へー、アレが。空かしたツラ。出るのが当たり前って顔だ。
「…ほら、弟選手も立って下さい。皆さん、テレビの前に行ってますよ」
「えー…ここでも見えるよ」
花ちゃんも座ったままだし、一人は可愛そうだろ。
「…いいから、行きますよ」
お嬢様が、両手で腕を抱いた。
社長サンには、まだ劣るが結構あんな。しかも弾力がいい。
花ちゃんに、手招きをする。花ちゃんは、キョトンとした後、立ち上がって付いて来た。
「ん?海堂…お、ゴンタも観んのか、花も」
「ああ、そこ空けろ」
「空いてるやろ」
「…兄選手」
「ん?何や海堂」
「一つ、イメージトレーニングをしてみませんか?…栗林選手の動きだけ追ってみてください。彼は高校生。ポジションは中盤ですが、あなたと条件は一緒です。彼が…」
お嬢様が、アフロに話し始めた。アフロも、真剣に聞いている様子。
「花ちゃんも、ああいう選手のファンだったり?」
「違う。実は、私そんなにサッカー知らないんだ」
「へー、以外。でも、アフロのファンなんだよね」
「…ああ、そういえばあの時弟くんもいたね。そうだよ、私はアシトの世界で最初のファンなんだ。それと…」
「それと?」
「ううん……」
話変えるか。
「明日、スピーキングのテストあるけど、花ちゃんどんな感じ?」
「うーん、ぼちぼちかな。ライティングなら得意だけどな、話すとなると、まだまだなんだよなー。弟くんは?授業でも話せてるよね、先生にもよく当てられてる」
話せるのは、セフレにハーフがいたからなんだよ。俺が東京に出るタイミングで…どこだっけ、アトランタだっけか。帰って、それっきりだ。
「俺は、知り合いがいたからね。…そうだ、今度一緒に勉強とかどう?」
「…!本当か!?私、友達と 勉強会とかしてみたかったんだよな、カフェとかで」
俺も、そんなのしたことねえな。したいと思ったこともないが。
「へぇ、じゃあ明日やる?テストの反省も兼ねてさ。明日は、練習も完全オフだし」
「そうだなー、じゃあ…」
「弟選手」「花」
「あ?」「うん?」
お嬢様とアフロが、俺と花ちゃんを見ていた。なんだ…妬いているんですね。分かりやすすぎんだろ。
「ゴンタ、試合ちゃんと見てたんか?」
「別に」
「花さんも、今、明日の話はいいでしょう」
「あ…ご、ごめ…」
「ごめん、俺が話振って、花ちゃんに相手してもらってたんだ」
「……」
見た感じで、仲良くねえよなこの二人。タイプが違うからか。
「海堂がせっかく教えてくれてたんやぞ。ちゃんと聞けよゴンタ。えっとなー…」
聞く気ないのに、アフロが偉そうに語り始める。お嬢様は、ウンウンと頷いている。花ちゃんは、お嬢様に言われたことを気にしているのか、小さくなっている。
「俺、まだ食いたいからさ、後で教えてくれ、な?今から観てもあれだからさ、アシト目線でどうだったか、後でまとめて教えてくれ」
「…!!わかった、俺にまかせろ!」
「杏里ちゃんも、こいつのこと頼むよ。頼りにしてる」
「…はい」
「じゃ、花ちゃん。席に戻ろうか。肉食べよう、肉」
「…すごいな、キミ」
「何が?」
「ううん、どうも」
どいつもコイツも、チョロい奴らばっかだ。楽でいいがな。
「ここはな…」
「…ああ、なるほど」
教室で、花ちゃんと席を合わせて、仲良く今日の復習をしている。
どっかのカフェの予定だったが、雨が降ってきたため、教室でやることになった。
普段は受けない、放課後のプラス1コマを終え、その後に始めた。もうすぐ七時になる。確か、校舎もそれくらいで閉められるはずだ。
「ふぅー…ありがとう、弟くん!また一緒にやらないか、こんな風にさ!正直、すごく助かるんだけど…」
「どうぞ俺からもよろしく。こっちも勉強になるし、一人でやるよりも楽しいからさ」
実際は、勉強なんて、した記憶ほとんどねえ。大体見たら分かるし、一回聞いたら覚えるしな。
つうか、この子。ガキっぽいと思ってたが、素直で可愛いわ。ニコニコと笑顔がいい。オッサンの妹ってのが、足を引っ張るが。
うーん、やっぱり、顔とスタイルが良くて、金持ってる楽な女が一番だ。
花ちゃんを送った後、今日も行くかな。
「これさ、アシトに渡しておいてくれないかな?弟くん」
「ん?これって…」
見たことあるなと思えば、あれだ。愛媛の実家の、冷蔵庫に貼られていた紙だ。字が同じだ。興味ねえから、読んではいなかったが。
「これって、ウチの冷蔵庫に貼られてたけど、花ちゃんが書いてたんだ」
「そうです。去年のセレクションの後に、アシトに渡したんだ」
「へー」
その時から、アフロちゃんを贔屓にしていると。アフロのくせによ、こんな可愛い子に。
「凄いな。兄貴の飯は前から考えられていたけど、夏過ぎた頃から、ちょっと変わったんだ。花ちゃんのお陰だったんだね。将来は、そういう仕事に?」
「…医者です。スポーツ外科医になるんだ」
「へえ…正直、意外だけど…きっと成れると思うよ。献立一つにここまで考えているし、こうして勤勉的。うん、応援する。頑張れ」
「…!…どうも」
口元緩みまくってる。初心っぽいのが、すげえ可愛い。
「俺もさ、これに書いてある通りに食べてもいいかな?何かできることがあれば、協力するからさ」
「…アシトに、渡してくれるならいいよ。弟くんは、弟くんだしね。……あと…できれば、食べ続けた後の、簡単なデータとか貰えると助かる…かも、しれない」
「データって?」
「クラブハウスにも計測器あるんだけど、筋力量の変化とか…あとは、体感でいいから、運動量の違いとか…その、面倒だと思うけど…」
「いや、全然」
「そ、そうか?」
「俺菓子類食わねえし…まあ、偶に外食したりするけど…」
「あ、それくらいならいいんだ。お昼だって…あ、お昼一緒に食べてるから、お昼ご飯の献立も立てれるな!」
「うん、いいよ。ぜひよろしく」
「嫌いなものは!?」
「ないな。辛すぎる甘すぎるとかの、極端なものはアレだけど」
「あはは、そんなものは書かないぞ。これ、アシト用に作ったものなんだ。だから、弟くん用にも作ってくる。アシトとは、体格だって違うしね。現時点での、身体データって貰える?」
「いきなりすげーやる気…なんでもどうぞ。協力するって言ったしな」
「ははっ…約束だからな!」
有りだ。
逃げて花ちゃん