神速のGK   作:インパラス

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三話目になります。





二節、久留米第一高校戦


崩壊は一方通行

 

 

 

 

 

 

 今日の試合、第二節久留米第一高校戦を観て、AとBの前線の選手を入れ替えるそうだ。俺、全く関係ないけどな、これ。

 オッサンが決めるらしい。そのオッサンと言えば、フィールドで一人だけユニフォームを着ていない。完全に私服だ。

 かく言う俺もユニフォームじゃない。フィールドの中にはいない。サボりだ。

 試合出ないと分かっているのに、行くわけがないだろう。

 大したことねえのに、GKとして有るまじき行為をしたとか言って、今日の出場はなしだ。ついでに、言われたのは昨日。それまでは、何にも無かったのにな。

 あーあ、最後に点取りに行っただけだろうが。

 いけると思った時しか、あんなのしねえっつうの。

 

 

 

 

 

 「うーん…ここからじゃよく見えない…あ!なあ、弟くん。兄ィが中にいるぞ。Bの試合なのに珍しいんじゃないか?」

 「そうだね」

 

 で、なんで態々試合会場に来ているかと言えば、コイツが原因だ。

 今日は、土曜。普通科は知らんが、特進英語は、普通に半日、英数教科の授業がある。四週に一回は、一日授業の日もある。最近仲良くなっている花ちゃんと、放課後勉強会でもしようと考え、学校に行った。

 で、授業終わりにココに連れて来られたわけだ。このガキは、オッサン至上主義だったらしい。だが、試合に行く代わりに、デートの約束を取り付けた。本人は、お出かけとしか思ってなさそうだが。

 こっからだ。速攻でオトす。

 

 「…?」

 「ほら、ハーフタイムが終わるみたいだ。後半が始まるよ」

 「…うん、あのさ、弟くんはゴールキーパーしか、しないんだ?」

 「ん?なんで?」

 「先週の試合の最後、相手からボール奪って、コートの四分の三くらい一人で進んで、ゴール入れたじゃないか。だから、本当は、アシトみたいに前の方のポジションをやりたいのかなと思いまして」

 

 少し焦った。だが、花ちゃんはサッカー全然知らないんだったな。その上、見当違いな勘違いをしてくれている。

 

 「まあ…そうかもしれない」

 「何で、かも?なんだ?」

 「俺、小学生の時は前の方やってたんだけど…ある試合で、相手に怪我させたんだよ」

 「…!!」

 「それから、接触プレーが苦手になってさ、GKに転向ってわけです。また怪我させてしまうかと思ったら、少し怖いんだ。だから、基本的に前が少し苦手で…でも、先週なんかはさ、みんな点入れて…最後に俺もゴールを決めたくなったんだ。やっぱり、少し、未練があるのかも。情け無いよな」

 「そんなことないぞ!!」

 

 来た。畳み掛けるか。

 

 「いや…本当は俺さ、駄目なやつなんだ」

 「…え」

 「いつも自信がなくてさ…他人と話さないのも」

 「ぶっ…あははは!!それは、流石に嘘だって分かるぞ!キミに自信がない?ないない!キミは、自分の力に絶対的な自信を持っている。じゃないと、あんなプレーは出来ないよ。サッカーを知らない私でも分かる、俺が絶対に点を決めてやるって顔だった……でも、相手怪我させて負い目があるってのは本当…だよな?」

 

 微塵もない。

 そもそも骨折ろうとして折ったわけでもねえし、派手に当たりに行っただけだ。それも、プレー中の事故として扱われた。

 ただ、面倒になっただけだ。

 にしても、コイツ。アホそうに見えて…いや、流石に露骨過ぎたかな。

 

 「まあ、それは…いや、悪い。どっちかっつうと、また怪我させることを恐れている方かな。相手のことはそこまで考えてないかも」

 

 九割の嘘に、本音一割。だが、綺麗事を無くした。

 

 「そっか。でも、それでも、それならいいんだ、怪我を恐れてるのは…って、ごめん。私、偉そうに…」

 「いや、俺も冗談言って悪かった。…その、俺友達いないんだ。これは本当。こんな風に、本音言える友達なんか特にな…だから、仲良くしてくれると嬉しい。君だとさ、結構話が合って楽しいんだ」

 

 これは全部本当。セフレはいるけど。まあ、友達とか欲しいと思ったことすらないがな。男は要らね。

 

 「……うん」

 「本当に?」

 「うん。…じゃあ、その、キミの……下の名前で呼んでもいいかな。その方が友達っぽい」

 「いいよ。だせえけど」

 「親から貰った名前を、そんな風に言うんじゃない。それに、私は可愛くて好きだ」

 「褒められてる気がしない」

 「あはは、ゴンタ」

 

 試合、出なくて正解だったわ。礼を言うよ、オッサン。代わりにお前の妹、貰うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方、花ちゃんと健康食レストランで早めの夕食を食って、カラオケに行った。歌ったのは、洋楽オンリーだったが。まあ、その条件で行ったし、結構楽しめた。

 で、門限前に寮に帰るということで、一時間歌ってカラオケ店から出たところ、着信音が鳴った。

 表示は、お嬢様だ。

 

 「花ちゃん、ごめん電話」

 「ん?どうぞ」

 

 

 「もしもし、」

 『兄選手の居場所を知りませんか?』

 「はあ?」

 『試合が終了してから、寮に帰ってないそうです』

 

 俺もまだ帰ってないけど。

 だが、言う必要はないな。

 

 『…兄選手は、DFに転向になったそうです。ショックを、受けていました』

 「そう」

 『…そうって…まさか、知っていたのですか?』

 「うん」

 『…いつからですか?』

 「去年。アフロが使えるのは、サイドバックだよ、お嬢様。今のレベルでFWは出来ても、上に上がったら通用しない」

 『…あなたは、それを分かった上で…!…っ、いえ、すみません。兄選手がどこに行ったか思い当たりはありませんか』

 「ない」

 『そうですか…では、探して下さい』

 「用が済んだらな」

 

 花ちゃんを送らないといけないから。アフロは、その辺にいるだろ。

 

 「なんか、杏里の声が聞こえたけど」

 「うん、アフロがDFに転向したんだってさ」

 「え、転向って…うん?」

 

 花ちゃんのバッグから音が鳴った。メールの様だ。

 

 「……アシト、寮に帰ってないらしいじゃないか」

 「らしいな。でもその辺に…」

 「探しに行こう!心当たりがあるんだ」

 「えー…」

 

 

 

 で、本当にいたよ。

 エスペリオンの、シャトルバス用のバス停のベンチに、アフロは膝に手をついて座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 アシト↓

 

 

 

 

 

 

 「そんな顔、するな」

 

 顔を上げると、花が立っていた。

 何でここが分かったのか。そんな疑問よりも速く、花の後ろに気を取られた。

 ゴンタがいた。

 もう、目に映るのは、弟の姿だけだ。

 

 「ゴンタ、お前知ってたんやな」

 「は?」

 「俺が、DFに…いや、FWは、できないってことだ…!」

 「そうだな。知ってたよ」

 

 ゴンタが、何でもないように言った。

 怒りが込み上げてくる。おっちゃんに言われた時よりも、ずっと、ずっとだ。

 

 「お前は…!お前は!!俺を馬鹿にしてたんだろうが!!」

 

 ゴンタは、呆れたように、本当に馬鹿にしているような、そんな顔をした。

 それが、さらに怒りを促す。

 足が、走り出した。

 

 "おっちゃん…俺が…ゴンタだったら、FWやれていたのかな"

 "…アシト、お前も分かっているはずだ。青井含太は、天才だ。

 お前は、アイツじゃない。でもな…"

 

 おっちゃんは、そこからも何か話していたけど、何も頭に入って来なかった。

 そして、気づいたら、この場所にいた。

 

 「ゴンタァ!!」

 

 殴った。

 初めて、人を殴った。ゴンタは、変わらず冷たい目で俺を…いや、もう俺を見ていなかった。

 

 「お前に、俺の気持ちが分かるか!?俺に、お前みたいな才能があったら…!!」

 「わかんねーな。凡才の気持ちなんてよ」

 「っっ!!」

 

 もう一度、殴った。

 ゴンタは、避けない。ただ、目だけはどんどん暗くなっていく。

 違う。

 こんなことしたいわけじゃない。

 

 「で、終わりか」

 「何で、前に出てきたんだ!キーパーのまま、後ろにいればよかったんだ!」

 

 やめろ、言いたくない。ゴンタは関係ないんだ。

 俺は、俺。これから、FWをやれるんだと、おっちゃんに見せつければいいだけだ。

 そうだ。もっと、もっと練習できる。

 俺は、負けない。おっちゃんにも、ゴンタにも負けない。

 

 「そうしたら、そうしたら……何で、お前がいるんだよ!!何でエスペリオン(ここ)に来たんだ!お前なんか、いなければよかった…!!!」

 「…アシト!!キミ、それ」

 「あっそ」

 「…!!」

 

 掴み上げられ、投げ飛ばされる。

 ゴンタは、一度も俺を見ずに、どこかに行ってしまう。

 

 待ってくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん…?含太くん。なんか、血の味がするけど」

 「んー?ああ、少し切れてたか……あ」

 「…?…あ」

 「アフロ殺す」

 「病院行こう?…えっと、まだ開いてる歯科医院は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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