神速のGK 作:インパラス
短いので、もう一話更新する予定です。
「おい、そのおにぎり寄越せよ」
「あっ、馬鹿それ俺のや。ゴンタさっきいらんって言ったやろ!」
「うるさい」
「あーっ!」
東京駅に着いたのは、昼過ぎてからだった。ダルい。
「えっ、どこ行くんだゴンタ、バスこれやぞ!」
「荷物頼むな。俺行ってくるから」
「はあっ!?十八時集合って…」
「俺今日泊まりだから。明日の十時の撮影会には行くからよ」
手荷物だけ持って、待ち合わせ場所へと向かった。そもそも俺の荷物の殆どは愛媛で配送済みだ。昨日寮に届いたって連絡もあったし。
あー…人多い。
「……もしもし、着いたけど」
『…ごめんね。ちょっと抜けれそうにないから、どこがで時間つぶしておいて』
「あー、はいはい。頑張ってね。気にしないで」
『ごめんね』
まだ四時にもなっていない。今日は早く終わらせるって言っていたが、さすがに無理か。
ファーストフード店に入って時間を潰していると、着信音が鳴った。
なんだ、アフロかよ。
『ゴンタ!早く来いよ!今、今な、トップチームが練習しよるぞ!代表選手とか、ダンヴィッチとか、レオンとか!!だから』
「うるせ」
切った。
興味あるが、今日は約束があるから無理。
これから先、また見る機会くらいあるだろうさ。
「ごめんなさいっ!」
「お疲れ様。俺は全然大丈夫だから。寧ろなんかごめんね」
時間は、七時半。相当急いで来てくれたようで、息は荒く、髪が乱れてしまっている。
あーサラサラで触り心地最高。
「んじゃ、ごちになります」
「…ええ、好きなだけ食べてね」
飯食って、軽く店周って、アホみたいに高いホテルの部屋に泊まった。
偶にはこんなのもいい。うん、待った甲斐くらいはあった。
朝の十時。遅刻だ。普通に寝坊した。
部屋には俺一人だ。書き置きには、仕事があるから先行くねと、ある。
起こしてくれよと思ったが、そういえば明日何時集合とか言ってなかった。
バスに乗って、エスペリオンタウンで降りた時間は、十一時。かなり急いだが遅刻だ。
もう入団式も始まっているだろう。仕方ない。喉乾いたし、ジュース飲むか。自販機、自販機…。
「あ"ー…?」
排気音うるせえと思ったら、近づいてきている。
「チッ」
明らかに族っぽい単車を走らせていた集団が目の前で止まる。
リーゼントが二人降りた。
うわキモっ寒っ。いつまで手握りあってんの?
で、集団がいきなり蒸し始めた。
は?
と、思ったらすぐに止んだ。よかったよかった。
「おいっ大丈夫か!てめえ…足退かしやがれ!!」
族達が何か見ている。釣られて後ろを向く。何もない。俺か。
まあそうか。足元に転がっているのは単車の一台だ。乗り手は吹っ飛んだのか、下敷きにはなっていない。惜しい。
「あ"〜?殺すぞカス共」
臭いんだよ。俺の近くで排気ガス出してんじゃねえ。
にしても、どいつもコイツも殺気立ってきている。
ゴミ掃除するか。いやあ、俺がボランティアするなんて珍しい。
「足退けろって言ってんだろうがアア!!」
先に降りていたリーゼントの一人から胸ぐらを掴まれる。学ランの方だ。
コイツは最初に殺そう。
「触んな。カスの手で…カスがうつんだろうが。消えろ」
ほら、先に手、出せよ。
その後、ちゃんと潰してやるからさ。
「この…!!」
「待て」
誰が邪魔すんのかと思ったら、オッサンだった。マジギレの顔だ。
「冨樫、その手を下げろ。そいつらも帰らせろ。俺との約束を忘れたのか?連中と手を切るか、サッカーを捨てるか選べと言ったはずだ。守れないのなら、お前の席はないぞ」
おいおい、まさかこんなカスがスカウトの奴かよ。こんなトサカ頭、セレクションにはいなかったはずだ。
単車集団も、もう片方のリーゼントの命令で消えていった。しかし、残されたカスには、ずっと睨まれたままだ。うぜえ。
「オッサン、そいつずっとこっち見ててキモいんだけど。どうにかしてくれない?」
「おい、冨樫」
「……チィ!ペッ」
汚ねえな。ツバ吐きやがった。
「おいおい、カス如きが地面を汚すなよ」
「アアッ!?」
「冨樫。青井弟もやめろ」
オッサンが静かに言った。だがカスは視線を外さない。
「お前も遅刻だからな青井」
「俺、一昨日から連絡してたんだけど。急用があるって」
「一時間遅れている。お前も撮影してないだろう」
「すみませんでした。寄り道していました」
「おまえ、謝れんのか」
そんなに驚くことかよ。
寮は、二人部屋を一人で使えることになっていた。人数の関係で余ったらしい。ラッキーだ。
アフロは、さっきのカスと同室だそうだ。最悪だなアフロ。でも、俺の部屋に入れるつもりはねえから。
飯食った後、二時からハーフコートで紅白戦をやるらしい。大活躍した者は、明日から
「で、なんで俺呼び出されてんの?」
「まあまあ、いいだろ」
「よくねえから。紅白戦まであと三十分もねえじゃん」
「すぐ終わるさ。…おまえさ、わかっているんだろ?」
「何がだよ」
「アシトの、お前の兄のことだ。無理だってわかってるよな、お前。でも、まだ言うなよ。ていうか、言ってないよな?」
いきなりなんだよ。そんなどうでもいいことで、態々呼ぶなよ。
「勝手にしろよ。俺には関係ない」
「でもお前、この半年でアシトに少し守備教えたんだろ?」
んなこと誰が…お嬢様しかいないか。お嬢様、オッサンのファンぽかったし。
「だから何。勝手にしろって言ってんだろうが」
「…そうだな。勝手にするよ」
「それより、このポジションのボード…」
「あ、ちょっと待っててくれ」
突然なんだ。
オッサンが牙突のオッサンの耳元に口を近づける。げえ…おえ。
「アシトが外にいる。やる気を出させてやってくれ」
小声だが、そう聞こえた。
去年アフロと話していた女の子(オッサンの妹らしい)が部屋入ってきた。オッサンに頼まれて弁当作ってきたのに、オッサンがもう飯食い終わっていたから怒り始めた。
今日はお嬢様も後から来るそうだ。
「へー、花ちゃんって言うんだ。俺は青井…アシトの弟なんだ。これからよろしくね」
「えっ…ハイ、よろしく」
その後、急に、牙突のオッサンが怒涛の勢いでアフロをディスり始めた。他人使って自分は手を汚さないとか、オッサンも中々だ。アフロ如きのファンらしい花ちゃんによって、遮られて終わったが。
アフロのくせに、完全にフラグ立ってんじゃねえか。実際、アフロと花ちゃんは、そのまま一緒にどっか行った。
「で、オッサンもういいかよ」
「ん?何だったか」
「まだ言ってないから。それそれ、それだよメンバー表」
「これがどうした?」
「変えてよ。さっきのカ…リーゼントが冨樫だろ。向こうとキーパー交代してよ。話聞いたんだからいいだろ」
さっきの遅刻のことは忘れた。俺は引きずるタイプじゃないからね。
「んー、まあいいか。いいよ、かまわん」
「どーも」
もう用はない。オッサンの用もアフロのことだけだったのだろう。それ以上はなかった。戻るか。と、そうだ忘れ物。
「…福田。いいのか?」
「いや、俺も迷ったんだ、五秒くらい。しかし、どう考えてもアイツら仲良くすんの無理。弟の方は、特にな。それなら、反発させあって、成長を促すほうがいいだろう?」