神速のGK   作:インパラス

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 今日二回目です。




 赤チーム

 FW 橘7 ロアン4
 MF 大友2
 DF 朝利5 増子6 竹島3
 GK 青井弟

 黒チーム

 FW 青井兄2 元木3
 MF 黒田5 亀山4
 DF 冨樫6 島7
 GK 明神


 
 
 


紅白戦〜新入団生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールドに入ると、見知った顔を見つけた。先月会ってからだから、一カ月振りだ。

 

 「杏里ちゃん?」

 「…あ、弟選手。どうも、お久しぶりです」

 「うん、元気だった?これからよろしく」

 「はい。これからも、どうぞよろしくお願いします」

 

 呼び方、変わらねえんだよな。弟選手なんて、他には絶対に呼ばれないと思う。

 ああ、そうだ。

 

 「これさ、バレンタインのお返しです。二日遅れで申し訳ないけど」

 「…あ、ありがとうございます…」

 

 アフロは、多分忘れている。かく言う俺も、昨日買ったけどな。だが、付き添いもいたから、ハズレはない筈だ。ラッピングされた袋の中には、落ち着いたデザインのハンカチが入っている。

 

 「お二人さん、知り合いか?」

 

 なんだこいつ。ウニみたいなヤツがいた。応える義理はない。変なヤツはシカト、シカト。

 

 「手作りチョコ美味しかったからさ…来年も楽しみにしていてもいい?」

 「…は、はい。頑張ります」

 「本当に?ありがとう。お礼のついでに、今日点決めてみせるからさ、見ていてよ」

 「…え?でも弟選手はキーパーで…その、

 セレクションの時のようには…」

 

 しかし、お嬢様はこの半年で社長サンに似てきた気がする。うん、有りだ。いやもうちょっと…。

 

 「杏里、俺チョコとか貰ったことないんじゃ」

 「…?どうして遊馬にあげるんですか?」

 「どうしてって…」

 

 視線が集まっていた。どいつもこっちを見ている。しかし、なんだこのウニは。入ってくんな。

 

 「誰こいつ」

 「…あ、えっとこいつは…じゃない、この人は、元木遊馬です。遊馬のおばさんに、昔からウチの家政婦をしていただいて…」

 

 幼馴染ってヤツか。

 よし決まった。お嬢様は俺の…ってことは無理なんだよなー…。前から、社長サンに釘刺されているからね。娘に手を出したら、もう君とは寝ない、って。

 

 

 

 

 

 

 紅白戦は、ハーフコート各チーム七人三十分のオフサイド有りだ。ビブスは赤黒で分かれている。

 これ、ペナルティーエリア内からでも撃てる距離だ。余裕。

 さっき確認したが、アフロは敵、リーゼントもウニ頭も向こうチーム。潰し甲斐あるな。

 こっちのチームの奴らはどうでもいい。

 だが一人、近づいてくるのがいた。

 

 「…よお。俺、大友って言うんだ。全然似てないけど、アシトの弟なんだってな。俺のこと覚えてる?」

 

 このチビは…確か去年のセレクションの時に、アフロの意図を読んで動いていたヤツか。食堂にもいた気がする。

 

 「いや、誰だよお前」

 「……え、あー、じゃあ、大友です。これからよろしく。このゲームもよろしく」

 

 チビは固まった後、持ち直して改めて名乗ってきた。答える道理はないが、一人くらいはいいか。その図々しさに免じて。足引っぱりやがったら、殺すからな。

 

 

 「青井だ」

 「…!よろしく!青井は本当にすげーよな!セレクションの時なんか、一度もゴール決めさせてなかったもんな!でも、今日はコート半分だけど大丈夫か?」

 

 チビは、横目でDFの奴らを見た。連携しろってことかよ。

 俺に指図すんなよ。

 

 「いらねえよ。俺が一人いるだけで十分だ。点なんか入んねえよ」

 「…そっか!じゃあよろしく頼むなー」

 

 チビは、他の奴らにも声をかけに動いていた。よくやるわ。

 

 

 

 

 

 

 試合がスタートした。

 俺以外の全員が、いきり立っている。A昇格が掛かっているんだから当然か。でもな、こういうのは大体出来レースなんだよ。オッサン達が把握していないわけないだろ。

 

 「うおおおおッボール!ボールボールボール!」

 

 特にアフロが煩え。どうせ点決められないんだからさ、黙れよ。

 

 中央にいるウニから、黒五番にバックパス。アフロは無視されていた。ウケんだけど。

 だが、そのパスは黒五番へは繋がらなかった。DFのリーゼントが、味方の黒五番を押して、ボールを奪ったからだ。やっぱりカスだろあれ。

 で、闘争心むき出しのまま、シュート態勢に。

 決められるわけねえだろ、カスが。

 蹴られたボールは、直線的でわかりやすいコースだ。

 しかもこれ、枠に当たるな、所詮はカスか。

 だが、まあ景気付けに取ろうかな。

 

 「よっと」

 

 軽く跳んで、ドンピシャで両手キャッチング。

 チビが左に動き出している。まあ、当然か。コイツは俺が止めると分かっていた。

 

 そのまま、チビの前のスペースにダイレクトでパント。チビはギリギリで受け取った。下手クソが。

 そこからリーゼントも戻り始めたが、もう遅せえ。おまえ、DF失格だよ。俺がGKじゃなかったら、それでもよかったかもしれないがな。

 チビは空いている左サイドから、斜めにシュートを撃つ。

 だが、ボールは右の上枠に当たって弾かれ、コート外へ。

 

 「うわあああ!しまったー!」

 

 決めろよカス。いや、黒五番の足が掠ったせいか。さっきテメエが邪魔した筈の黒五番に尻拭かれていますよ、リーゼント(カス)ちゃん。

 

 向こうのゴールキック。

 ミスったのか浮いたそれを、こっちのDF赤三番が難なくトラップ。金髪DF赤五番を経由して、マークフリーの赤七番へと繋いだ。

 だが、赤七番は、アフロの横からのタックルによって、すぐにボールを奪われた。だせえ。

 アフロが一人で抜けてくる。

 いや、お前。頑張っちゃってるけど、俺から点取れると思ってんのかよ。

 

 「あ"ーー?」

 

 アフロの目が、変な薬をキメたんじゃねえかってくらいに、トリップした。

 アフロは、左前方のウニ頭にパス。そして、アフロは歩き始めた。アフロをマークしているはずの、こっちの赤六番が対応できていない。

 ゴール前で構築していたディフェンスラインが崩れていく。その事実に、どいつも気づいていない。

 

 アフロが、ギアを切り替えるようにスピードを上げる。それだけで、アフロは裏に抜けてフリーだ。こっちの金髪赤五番が声をかけるが、遅い。アフロが、ウニからボールを受ける。

 

 この位置から見ていると、クソ面白いんだけど。全員馬鹿みてえ。

 

 だがな、俺から決めれるわけねえだろ。

 おいアシトちゃん。

 俺がお前のシュートをどれだけ取ってきたか、分かってんだろ。

 万が一があれば決めれたかもな。その可能性はあったよ。

 だが、その万が一は消えた。今のお前に思考はないんだよ、アフロ。

 GAME OVER だ。これを決めれなかった時点で、お前ら黒チームの負けだ。

 

 前に出て、至近距離でアフロのシュートを受け止める。っと、少しズレたか。

 今度は、チビも…いや、誰一人として次の動作に移っていない。アフロの衝撃から、まだ立ち直っていない。

 

 「ここまでありがとよ」

 

 パントキックで軽く浮かせて、アフロを抜く。

 

 「プレスかけろおッ!」

 

 リーゼントから、指示の声がかかるが、もう遅せえから。

 ハーフウェイライン(ハーフコートだから短い)から、若干斜めに入り、インステップで左足を振り抜く。

 スパイク変えたばかりでまだ甲の皮が馴染まず、コントロールが甘くなった感があったが、直線上に、ボールが放たれた。

 

 何の障害もなく、右上のゴールネットを揺らした。

 ふはは。これで終わりだよお前ら。

 

 「杏里ちゃん、どうだった?約束通り、お礼の点をどうぞ」

 「…あ、ありがとうございます…?あの、早くゴールに戻ったほうが」

 「うん、じゃ」

 

 横目で見えたオッサンは、笑っていた。どうだ、俺はオッサンの想像なんか余裕で超えてきただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 「おい!プレー始めんぞお前らア!」

 

 冨樫の掛け声で、敵味方関係なく全員が動き出した。指導者を除き、試合を見ていた者全てが、異様なプレーの連続に思考を停止させられていたのだ。

 

 「…まるで、お手本のように綺麗なシュートだったね」

 

 月島が目を輝かせながら呟いた。指導者達は、みな同じ気持ちだった。

 

 「でもさ、その前の青井兄君のほうも、凄くなかった?彼、あんな意表を突いたプレーが出来るんだね。あの場面で歩いたことによって、スピーディな変化に対応していたはずの守備陣のリズムが崩れて、得点を…取れるところまで繋がった。それに対して弟君は…セービングして、まだ立ち直っていないフィールドの隙を自らついて、シュートを決めた。技術はあると思うよ。でも、それだけと言えば、それだけなのに…なんで彼のプレーは……あ、また止めた。うん、大友君も動くのが早い」

 

 「あれ、本当はよくないけどな。青井弟がボールを漏らす可能性を考えれば、大友の選択は悪手だ」

 

 福田が、感情のない声で言った。

 

 「ははっ、でもほら…よしっ!決めた!大友君…それに今度は橘君も動いてた。ディフェンス側の冨樫君も反応していたけど…惜しかったね。大友君はもう、信頼しきってるって感じだ。でも、次はないだろうね。黒チームも修正するだろうし」

 

 「そうだな…これはハーフコート故に可能になってもいる部分もある。大友のような動きは、フルコートでは更にリスクがある…が、場合によっては、それも必要な時もある、か。だが、やはり…青井弟も全てが止められるわけではないだろう。キャッチングならば、尚更だ。それに、あの受けの姿勢も危険だ。いつか怪我をするぞ」

 

 伊達が声を低くして言った。

 それに対して、福田が目をを細めて唸る。

 

 「あー、しかし青井弟って…セレクションの時も一度も後ろにボール漏らしてないんだよな。その時からプレーしていた大友の心情もわかるぜ。それに、さっきの流しの練習では、普通に後ろに逸らしていたけど…アイツ、観察してたんだよ。手を抜いていたんじゃない。それこそ、一挙一動を見るように、ゴールを決められても、その相手とボールの癖を観察していた。そのひた向きさを他にも向けろって感じだよな。

 アイツはさ、出来れば早めにミスを経験すべきだ。大友みたいな奴が他に出てきても、それで意識は変わるさ。口で言っても、実際に体感しないと分からないからな。望の言うことも、矯正可能だ。時間はある。しかし…そう、それより、アイツは別の点で駄目なんだ」

 

 「指示出し(コーチング)じゃな」

 

 GKコーチの弁禅が、仕方ないなと頭をかく。

 

 「そうだ。今のプレーもそうだが、さっきのアシトのフリーも、弟はアシトが歩き出した時から気づいていた。それなのに、DFを使わない、声の一つすらも掛けなかった。アイツは、あれを楽しんでいる…GKとしては致命的だ。アイツは、天才だ。思考力も優れている。だが、一番の問題が性格なんだよなー…普通、そんな奴いないんだよ」

 「福田さん。僕、あそこまで点を取りに行くキーパーも初めてみたよ。さすがに、二度目を考えるような無謀なことはしないみたいだけど」

 

 ため息が複数漏れた。福田の言葉から、四人の頭に浮かんでいるのは、セレクションの最終面接の時のセリフだった。

 

 「兄ィ。弟君の性格って?」

 

 花が福田に尋ねる。花の横にいる杏里も、同じことを疑問に思った。

 

 「ああアイツな…」

 「まて、福田。そろそろ上級生達の方に行ったらどうだ。クラブハウスの二階で観戦しているんだろう?お前の意見も待っているはずだ。それに、一部の選手がお前を気にしている」

 「ん?ああ、そうだな」

 「「?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

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