神速のGK   作:インパラス

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 赤チーム

 FW 橘7 ロアン4
 MF 大友2
 DF 朝利5 増子6 竹島3
 GK 青井弟

 黒チーム

 FW 青井兄2 元木3
 MF 黒田5 亀山4
 DF 冨樫6 島7
 GK 明神



 
 紅白戦の続きからです


自己本位の兄弟

 

 

 

 

 

 

 牙突のオッサンから、試合前各チームに原則として与えられた戦術だが、なんか逆になっている。

 守備的プレーを指示された赤が、チビを起点にして攻撃的に。FW赤7番とのワンツーで、追加点を決めた。スコアは2ー0。

 そして、攻撃的プレーを指示された筈の黒が赤に押されるように、どちらかと言えば守備的になっている。

 こいつら反抗期かよ。牙突のオッサンがキレても俺は知らないから。

 俺は、チビにパスやっているだけだ。

 

 アフロは攻めてくるが、いずれもシュートを撃つまでに至らない。半分以上、金髪赤五番に防がれてんじゃねえか。抜けても、別のディフェンスに潰されている。俺まで来ない。

 下手クソなのに、一人で行くなよ、周りを使えよって顔で、他の奴らキレ始めているんだけど、アフロは気づいていない様子。

 

 アフロは、個人技しか頭にねえからな。俺が点を取る取る、取るだ。

 半年間、学校の課題や諸々のパシリと引き換えに、基礎技術は叩き込んだが、それでもこう比べると、他の奴らよりかは二歩は劣る。ちなみに連携は無理だ。周りに雑魚しかいなかったからな。まあ、どっちにしろ、俺がソレに関わる気はなかったが。

 

 とか、考える暇があるほど、いい加減ボールこなくて、退屈なんだけど。

 いや、ボールが来るのは来るが、全て赤チームからだ。俺は、前に(主にチビに)パスを出すだけだ。

 コート狭いんだから、もう戻すなよ。一々、プレスが鬱陶しいから。お前らだけでやってろよ。

 あー、シュート撃って来ない。

 

 ラスト五分に入ったところで、黒チームがアフロをガン無視して、攻めに転じた。アフロも前に出ようとするが、ウニ頭に止められる。完全に駒扱いだ。

 中心はウニ頭だ。全体に指示を飛ばして、ドリブルで左サイドに寄り、赤三番を釣らせている。そして、赤六番も釣られて動いていた。おい。

 黒五番の前が空いた。

 が、それもフェイクだ。ウニはあらかじめ呼んでいた、真後ろの位置にいる黒四番にヒールでバックパス。

 

 やっとかよ。

 中央に、いいタイミングで走り込んできたリーゼントが、フリーで受け取る。

 もう、コイツの癖は分かる。そこそこの技術がある分、余計に分かりやすい。んな面しているのに、素直過ぎんだよ。

 軸足で踏み込み一瞬小さく溜め、力を開放。下半身に回転を加えた、右のインサイドが来る。

 

 ほら来た。

 

 ボールを掴んだグローブから、両手の平に伝わる、確かな手応え。溢れる前に引き寄せる。

 あ"ー、さすがに飛ばなきゃならなかったか。

 

 「ナイスシュ〜ト」

 

 リーゼントの顔がクソ歪んでいる。どフリーだったからな。

 だが、無理だよお前には。決めさせるつもりなんかねえからさ、一生な。

 

 

 

 

 

 

 「…弟選手、後ろからちゃんと指示して下さい」

 

 ホイッスルが鳴った瞬間近寄ってくるチビを無視して、お嬢様のところに行ったら、そんなことを言われた。

 意味わからん。

 …あー、監督目指しているんだったか。めんどくせえんだけど。まあ、適当に流して終わりだ。

 

 「あー、ごめんね。まだ慣れてなくてさ」

 「……真面目に聞いて下さい」

 

 は?何でそんなイラついてんだよ。真面目にって…オッサン達に入れ知恵でもされたのか。

 今はいないが、最初はオッサンもいたからね。

 

 「俺、真面目だよ?点も取られてないよね」

 「…そう言うことではありません」

 

 うざくなってきた。前のは訂正。やっぱ、全然違うわ、似てねえよ。

 牙突のオッサン達も、何黙って見てんだよ。

 

 「じゃ、何が言いたいのかな?」

 「…だから、ちゃんと声かけを…」

 「でもさ、必要ないんだよね」

 「……え」

 「見てたよね。俺、全部一人で防げるからさ、仮に邪魔されでもしたら困るわけです」

 

 なんで、俺が雑魚に合わせないといけないんだよ。

 

 「…っ……でも、今は百歩譲ってそれでも良いかもしれませんが、プロでは…いえ、Aでは絶対に通用しま…」

 「あ"ーー?」

 「ひっ」

 

 しまった。地が出たわ。

 やべえ、修正効くかこれ。いや、まだだ。お嬢様も突然のことで、まだ何が起きたか理解できていないって感じだ。

 よし、乗り切れる。

 

 「じゃあさ、今後の試合形式で一点でも取られたら、杏里ちゃんの言うこと何でも聞くよ」

 「えっ…」

 「それでいいよね」

 「…あ…はい…」

 「ハイ決まり」

 

 よし、いい感じだ。

 

 「あ、そうだ。お返しどうだった?気に入ってくれてたら嬉しいんだけど…」

 「…あ…まだ、開けてません。汚れるといけないから、帰宅して開けようと思って…」

 

 可愛いよな、こういうところはな。

 約束はどうでもいい。俺が点を取られるとか、あり得ねえ。

 

 「青井弟、集合だ」

 「ハーイ」

 

 

 

 

 

 

 牙突のオッサンが告げた、Aへの昇格者は、ウニ頭だけだった。ほら、やっぱ昇格すんの、Jr.ユース上がりのやつじゃねえかよ。プレーも少し見れば分かる、最初から決まってたんだよ、こんなのはさ。何が大活躍だ。

 で、俺は?

 

 

 

 

 

 暇だ。

 飯食ったらする事がなくなった。チビに反省会とか誘われたが、当然パス。勝手にやってろよ。

 遊びに行くかとバス停に向かうと、オッサンと出くわした。

 

 「…」

 「…」

 

 行くか。

 

 「おい、待て待て」

 「はい、何でしょーか」

 「どこに行く気だ?」

 「決めていない。気分転換しようと思ってさ」

 「そっちバス停なんだが。お前、門限あるの知らない筈ないよな」

 

 オッサンが付いてきて、鬱陶しい。あんまり近づくなよ。

 

 オッサンを避けながら、バス停に着く。遠目で誰かいると思ったら、女の子二人だった。

 

 「あれ、花」

 「あー!兄ィー!!」

 

 ハイテンションな花ちゃんが、オッサンに向かって駆けてくる。ブラコンかよ。躾けられた犬みてえ。

 お嬢様は、顔真っ赤で俺を…じゃなく、オッサンを見つめている。

 

 「…ふ、ふふふふふふふふふふふ…」

 「え、何で笑い出したのあの子」

 「…兄ィ」

 「ふふふ福田監督ーー!今日もお見事な采配でした!え、あ、和製モウリーニョとはあなたのためにある言葉で…」

 

 お嬢様が、テンパっている。気づけよ。オッサンと花ちゃん唖然としてるんだけど。

 

 「あんま嬉しくねーな。選手としての実績が全然ない監督なんだ」

 「す、す、す、すみませぇん!!」

 

 うわ、可哀想だなー。

 

 

 

 

 眼鏡コーチが、オッサンを呼びに来た。アフロに迷惑掛けられているらしい。

 最悪だなアフロ。

 

 「は、何で俺まで行かなきゃいけないんだよ」

 「お前の兄のことだろ。それとな、あのまま外出できると思っていたのか?」

 

 あー、短気で嫌だね。このオッサンは、歳食ったら頑固になっていくタイプだぜ。

 アフロは、ふざけんな。

 

 

 

 

 「へー、壁打ちか。青井弟、付き合ってやれよ」

 「は?何言ってんだ」

 「アシトが、止めて蹴る動作を、そこそこ出来るのは、愛媛でお前が見たからだろ。最後までやってやれよ」

 「しねえから。アレでいいだろ別に」

 

 アフロは俺じゃない。すぐに習得はできねえよ。いつまで付き合うことになるか分かったものじゃない。

 アフロに、眼鏡コーチと、花ちゃんとお嬢様が近づいていった。ほら、オッサンも行け。

 

 「それと……お前、個人技やめたらAに上げてやるよ」

 「あ?いきなりなんだ、オッサン」

 「言葉の通りだ。他にも課題は多いが……まず、個人技をやめろ。少なくともDFと連携しろ」

 「いやいや…」

 「出来ることをしないのは、愚かだ。お前は愚か者なのか?」

 「あ"ーー?俺、天才なんだけど」

 「そういうことじゃない。真面目に答えろ。…で、どうするんだ」

 

 そんなものは、決まっていることだ。

 俺一人で十分だ。態々、雑魚の手を借りる必要がどこにある。

 それに、指示出したら、全然ボール来なくなるだろうが。

 

 「断る」

 「…はぁ」

 

 オッサンは、大袈裟にため息をついた。チラチラと見てくる。

 ウザい。

 

 「まあ、いい。いや、何も良くないが…お前、海堂のお嬢さんと約束したんだろ?ゴール決められたら、コーチングやるって」

 「正確には、何でもする、だがな。オッサン、俺がミスると思ってんのか?」

 「ああ、する。お前は明日にでもセーブミスする。そして、素直になる」

 「やめろ」

 「あ、今面白いこと思いついたぜ。ずっとお前がミスなしで、負けなし。リーグでBが昇格して、いずれAと対戦とかな」

 「セカンドチームは、プリンスには昇格できねえじゃん」

 「何だよ知っていたのか。面白くない…」

 

 冗談にもなんねえから。馬鹿にしているだろ。

 

 「オッサン。あんたは、俺をAに上げるよ。当然、俺はミスなしでな」

 「ああ、俺はお前をAに上げるよ。お前がミスしたらな」

 「…くく」

 「…はは」

 「くたばれよ」

 「はは…お前がな…ハァー、もっと上手く生きろよな…面倒なやつ…」

 「あ"〜〜?」

 

 上手に生きているさ。これ以上なく、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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