神速のGK   作:インパラス

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警告受けて、非公開でした。すみません。
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春休み期間

 

 

 

 寮とか入るんじゃなかった。

 そう考えたのは、最初だけだ。門限や消灯の規則はあるが、実際はゆるゆる。夕食後の点呼後、ロビーで寮母に見つからなければ、外出してもバレることはない。

 で、俺は部屋の窓から直接外に出るから、それすら関係ない。普通に泊まりで、朝帰って来れば気づかれない。来月から、高校始まらなくていいなもう。

 つうか、紅白戦から一週間ちょい消灯後も夜練しているらしい、アフロですら気づかれてねえし。

 

 「あ、ゴンタ!今日も付き合ってくれよ、ほら」

 

 アフロが、ボールを蹴ってくる。

 ダイレクトで返すと、アフロもダイレクトで返してくる。

 

 「チッ、十五分だ」

 「減ってるやんか。毎日三十分の約束だろー」

 「ハイハイ」

 

 紅白戦があった夜、渋るオッサンとアフロに、お嬢様と花ちゃんまで加えて、取り付けられた三十分だ。

 見返りは、アフロのパシリだけだ。全然やる気出ねえ。

 

 

 「……しゃ!…うん、ゴンタとなら…うーん、なんでやろ……大友は双子だから神秘的に心が通じ合ってる証拠って言ってたんやけど…」

 「しゃべんな、気色悪い」

 「だよなぁ、それに俺ら二卵性やし。でも楽しいんだよなあ…ポンポン繋がるし」

 

 それは、俺が上手いだけで、他の奴らが下手すぎるだけだ。比べること自体おかしいから。

 

 「次の動作…次の動作を想定…速く…想像…ゴンタァ!ここだあ!!」

 「どこだよ」

 「…えっ……ほら!あと千往復はやるぞ!」

 「ざけんな。一人でやってろ」

 「あっ!うそ、うそや!待て、行くなって!」

 

 止めて、蹴る。止めて、蹴るをただ繰り返すだけ。こんなもん、目を瞑ってもできることだ。

 適当に蹴っても、アフロの癖に余裕そうなのがウザい。五分に一回、キモいアドリブ入れてくるのもうぜえ。

 止めて蹴る。アフロはずっとブツブツ言っていいながらやっているが、それだけの動作を、ここ一週間毎日三十分続けさせられている俺の身になれ。

 だが、アフロはその後も一人で壁打ち。オーバーワークで、昼の練習時間中、こいつ偶に寝てるからな。アホ過ぎる。

 ドMだろこいつ。引くわ、マジで。

 

 「なあ、ゴンタ」

 「何だよ」

 

 おいアフロ、ボール見てないんだけど。余裕だな。

 お前、それでミスしたら即終わりだから。

 

 「俺、電話したんや、瞬兄に。それで、俺に掛かっている…これから掛かる金額も聞いた」

 「へー」

 

 俺はスカウトでほぼ免除だが、アフロはセレクション合格のため、全額負担だ。年間約三十万プラス、高校は提携校の特待生扱いで、授業料は二割負担だったか。

 セレクションなんか、遅刻して正解だったぜ。

 

 「俺、三年以内に全部返すぞ。それまでに、絶対プロになる。…俺は、お前にも負けない」

 「あー、うん」

 「だから、そのために点を獲って獲って獲りまくる!やっぱり、俺にはそれしかねえ!最強のFWになるぞ!」

 「へー」

 

 聞いていて、冷めるな。コイツはすぐに調子に乗るしよ。

 アフロが現実知った時には、さぞ見物になるだろうが…それまでコレ聞くのは、怠い。

 

 「今日もやってんなー」

 「今ちょっと見ていたけど、もうできてるんじゃないか?アシト」

 「大友、橘…」

 

 ハイ、今日はもう終わり。行くか。

 

 「あ、ゴンタ待てって、まだ三十分過ぎてないやろ」

 「俺いらねーじゃん」

 

 チビと、モミアゲ君が来たから、もう安心だよアフロちゃん。二人より、三人でやる方が練習になると思うから、邪魔者は消えてあげるよ。

 

 「待てって、ゴンタ。ディフェンスやってくれよ」

 「あ"ーー?勝手にやってろ」

 

 正気かよ、このクソアフロ。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 「あ、もしもし…」

 「ああ福田。小合宿での選手たちの状態は、どうだった」

 

 福田と伊達の電話を通しての会話。福田率いるAチームは、一週間の小合宿に出ていた。そして、明日、帰ってくるのだ。

 

 「わかるだろ。結果、見たんだろ、望。」

 「まだ栗林の力が大きいか…」

 「ああ、周りも栗林に慣れていたから、どうしてもズレが起きる。チーム仲はその内修正出来るだろうが…やっぱりアイツがいればっては

、なるよな」

 「そうか。…それで、こちらからなんだが…」

 「おっ、どうだった?青井弟、ミニゲームに入れたんだよな」

 「弁禅からは、聞いているのか」

 「聞いた。一教えたら、十どころじゃない。一回で、技術を自分の物にする化け物だって。練習への姿勢も悪くない。イメージに反して、普通に真摯に指導を受けるから、嘆いていたよ。これ程()()()()()()()奴は初めてだってな。相変わらず指示出しはしないみたいだが」

 「ああ…それで、今月の課題を終えた青井弟は、途中からパスワークの練習に参加させ…今週の集大成としての、今日の4対4のミニゲームだ」

 「もったいぶるなよ」

 「…もはや、GKとは思えない、というのが率直な意見だ」

 「はは、何だよ。そんなのもう分かっていたことだろう」

 

 そう言いつつも、福田の声は弾んでいた。ビックリ箱を前にしたような、そんな心境だった。

 

 「これは、明日見た方がいい。だが、青井弟を参加させていいものか…」

 「いいだろう。参加させるよ。明日は、A対Bで十一対二十一の変則ゲームをやるしな」

 「そうか…だが、まだある。青井…兄の方、青井葦人のことだ」

 「お、そうそうアシト。アシトどうだ、ついていってる?」

 「ああ。この一週間で、自分でもかなりの練習を課したようで、止めて、蹴る動作は他二人のセレクション生と遜色ないレベルだ。元々それなりではあったが、逸脱した成長スピードといえるだろう…だが…」

 「だが?」

 「今日のミニゲームで、私のサッカー人生史上、最も不可解なものを見た……青井葦人は、青井含太を正確に把握していたのだ」

 「…?アシトの視野があるから…いや、お前がそこまで言うんだ。違うのか」

 「そうだ。青井葦人は、目がいい。だが、これに関しては、目の良さが関係しているのではない。文字通り、青井葦人は、青井含太を…青井含太からのボールを()()()()なく、把握している節のある場面が、幾度となくあった。

 私も最初は目を疑った。偶然だと思い返し、その考えを切り捨てた。だが、その直後に起きた、あるプレーで確信させられた」

 「へえ、何だ」

 「…青井兄が前線に上がり、青井弟からのロングパスを、一切見ずに全速力で裏へ抜け出してノータッチ…ダイレクトシュートを撃つまで至った。それを、その後にもう一度、同類のものを見せられた。正直、今でも肌が粟立つ思いだ」

 「アシトは、何て言ってたんだ?聞いたよな」

 「何故かはわからない、ただ、わかるらしい。それだけだそうだ。事実、他の選手が相手だと、未熟の一言だ」

 「弟の方は?」

 「気色悪い、としか言わなかった。私が指摘してからは、青井兄にパスを出さなくなり、自分で前に行くようになった」

 「おい。…俺も直接見てみらんとわからないが……ほら、昔から双子ってオカルトな話あるし…んなわけないか。それに、アイツらどう見ても二卵性だよな。顔も体格も全然違うし」

 

 「…福田。一つ考えついたことがある…」

 「奇遇だな。今の話聞いて、俺もだよ。想像した」

 「青井葦人の今後を考えれば、青井含太のポジションは…」

 「ボランチ…日本で言えばアンカーの役割。もしくはWボランチで、青井弟はアンカー寄り、時にはは攻撃にも参加する。味方を使って…いや、個人でのボールの奪取も可能ならば、カウンターの起点にもなれそうだ。身長も…今、170後半だったか?もう少し伸びて180以上は欲しいな。まだ高一にもなってないし、伸びるか」

 「…奴はGKとしても優れた選手になるだろう…どうするんだ」

 「そうだな…両方やらせてみる手もある」

 「…は?いや、それは…しかし」

 「いや、いいんだよ。アイツは、良くも悪くも優れすぎている。栗林とは、また違う方向にな。このままBでキーパーをさせて、勝ち続けたとしても成長の幅は狭い。勝つだけなら、Aにも上げていい。だが…ユースはあくまで育てることを考えなければならない。

 はぁ…何度も思うが、GKがコーチングしないってあり得ないだろ。コミュニケーション取れよ。もう全部アイツが悪い」

 「…他の選手の成長の妨げにもなる、か。そう言えば、指示出しについては、青井兄の方がやり始めたぞ。それも、自発的にだ」

 「おっ、それは朗報。うーん、弟がアレな分、兄は可愛いく思える…。

 青井弟がディフェンスを理解し、心変わりして指示するようになったら良し、両方やれるなら…まあ良しだ。ほら、何の問題もないだろ」

 「(どれも駄目だった場合のことは考えないのか…)」

 「明日が楽しみだ。直接見たい。しかし、どうやってアイツに中盤やらせるか…接触プレー嫌ってたしな…何か良い案あるか?」

 「…考えておこう。ではまた明日…」

 「あ。」

 「どうした?まだ何かあるのか?」

 「いや、さっき話した、アシトが何で弟のことがわかるのかって理由なんだけどな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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